49 / 105
第49話 そっちかよ!?
しおりを挟む
「おー! いいじゃん、さすがリエナ!」
「背が高いからジャケットは難しいのよね。寸法は図ったから仕立てるわね。お代は……これくらいで」
ひとまず上下を見繕ってもらい披露すると、クレアが鼻を鳴らしながら俺の背中をバシバシ叩いて来た。
銀貨5枚か、服なら妥当……というか生地とか考えると安いくらいだろう。
白いシャツに紺色のベスト、それとコットンのベージュ色をしたズボンだ。
今まではブイネックの黄土色のシャツに作業に便利な厚手のジャケットにやはり厚手のズボンだった。見た目はザ・村人って感じである。ちなみに動きやすいので気に入っていた。
「兄ちゃんなんかかっこよくなったな」
「かっこいい。好き」
「こら、ルー。よじ登ろうとするんじゃない。それじゃお代だ」
「ありがとうございます♪ 結構すんなり払いましたね」
「仕事と家の往復しかしていなかったから金はあるんだ」
『レン、これも買ってー』
「んあ?」
リエナが『優良物件じゃない……?』などぶつぶつ言いだしたところで、フリンクがくるりと回りながらこっちへきた。
ヒレになにか持っており、それを差し出す。
「なんだ? 帽子か?」
『背びれにちょうど入りそうじゃない? 可愛いかと思って』
確かに今の声は可愛いが、不意にハードボイルドに戻った時に後悔しそうだな思う。
子供が寝る時にたまにつける三角の帽子で、先っぽにケサランパサランみたいなのがついた可愛いものである。
「入るかな……? というか自分でつけられないだろ」
『そこはこう、誰かにつけてもらえればいいかな』
「わたしつけてあげるよー」
『ほら』
「いるかなあ……」
『ほしいー!』
フリンクがその場でバレルロールを始めた。器用なやつだなと同時に珍しく主張している。はしゃいでいるのが目に見えてわかるので買ってやるとしよう。
「リエナ、あれも頼むよ」
「わかりました! 銅貨5枚で!」
「あ、買ってあげるんだ。良かったわね、フリンク♪」
『やったぁ!』
「それじゃ頼むよルー」
「うん!」
ルーをフリンクの背中に乗せて帽子をぎゅっと背びれに差し込んだ。
「んー!」
「あ、ダメよそんなに引っ張ったら――」
クレアが慌てて止めようとしたが、間に合わず。憐れ、ナイトキャップは背びれを貫通してしまった。背びれは幅があるためちょこっと乗っける程度しかできないのだ。
「あーあ、破れちゃった」
「ふー」
『ふー……じゃないよ!? うああ……』
一仕事終えた感を出すルー。
帽子はというと、さらに裂けてしまい無残にも床に落ちた。破れた帽子を見てフリンクはヒレでそれを拾い、さめざめと泣いた。
「リエナ、特注でいいからこいつの背びれにあう帽子を作ったりできないか?」
「ふふ、いいですよ! ちょっと寸法とったら取り掛かります! まだ町にいるんでしょ? 帰る時にでも取りに来てください」
「ありがとう、助かるよ。良かったなフリンク」
『ありがとうレン!』
「うわ!? まとわりつくな!?」
「相変わらず仲がいいわね。それじゃ次に行こうか。雑貨屋さんはあんたたちも欲しいのあったら一個だけ買ってあげるわ」
「いってらっしゃい♪」
ということで悲しい事件はあったものの、俺達は服屋を後にする。元の服はまだ着れるのでカバンの中だ。
「なんか買ってくれるってよ!」
「やったねモント」
「迷子にならないようフリンクに乗っててね」
「「「はーい」」」
クレアが三人を乗せてから再び前を歩き出した。俺もフリンクの後ろについて歩き出す。
「……」
「いい服があったわね……ってどうしたのよそんなに後ろで歩いてさ」
「いや、色々とは話を聞いたからそろそろかと」
「そろそろ?」
クレアはモテる。それは俺でもよく分かる。そして、この町でよく声をかけられていた……となると――
「クレアじゃないか……!」
「ん? あら、ハンスさん、こんにちは」
――ほらきた。
こうやって知り合いに出くわすというわけだ。面倒ごとになりそうなので、俺はとりあえずクレアとは距離を取る。
声をかけてきたのは茶髪のややツリがちな目をした長身の……いや、クレアとあんまり変わらないか。
クレアと俺は頭一個分くらい違うので推定166サンチくらいだな。クレアは163くらいのはずだ。
「どうしたんだ? 村に帰ったんじゃなかったっけ?」
「ちょっとこの子達と遊びに来たのよ」
「こんちはー」
「よっ!」
「こ、こんにちは……」
クレアが笑顔でフリンクの背中を見ると、子供たちが挨拶をした。
ハンスと呼ばれた男が声を出そうとしたところでフリンクがずいっと体を出した。
『こんにちは! フリンクだよ!』
「うおおおおお!? なんだこいつ!?」
「フリンクよ」
「名前はいま聞いたよ!? どういう存在かって話だ!」
お、意外と冷静だな。そう思いながら尻尾の陰に隠れて見守る俺。
「この子はレンの……あれ? レン? どこよ?」
「レン? そいつも村の?」
「うん、幼馴染なんだけど村から出るの初めてだから私が連れて来たの」
「……そこに隠れているやつか?」
「なに!? 完璧な潜伏なのに!?」
「あ、いた! 馬鹿なことやってないで、こっち。これが幼馴染のレンで、こっちが冒険者のハンスさん」
「……ふむ、よろしく」
「ったく、そのままスルーで良かったのに……レンです、よろしく」
握手をした瞬間、思いっきり握りこんできやがった。すました顔で笑みを浮かべている。こいつもクレアに好意をよせているヤツの一人と言うことだな。
こういう陰険な奴には勿体ないのでふるいにかけてやろう。
「……!? てめえ……」
「? どうしたの?」
「いや、なんでもない。雑貨屋に早く行こうぜ、こいつらも待っているし」
「あ、うん! それじゃあハンスさん」
「あ、ああ……」
ハンスとやらはクレアと俺を交互に見た後、汗をぬぐう。
『レンは強いから喧嘩は売らない方がいいよー?』
「だからお前はなんなんだよ……!?」
ハンスの怒声を背中越しに聞きつつ、俺達は雑貨屋を目指す。
しかし、予想以上に――
「背が高いからジャケットは難しいのよね。寸法は図ったから仕立てるわね。お代は……これくらいで」
ひとまず上下を見繕ってもらい披露すると、クレアが鼻を鳴らしながら俺の背中をバシバシ叩いて来た。
銀貨5枚か、服なら妥当……というか生地とか考えると安いくらいだろう。
白いシャツに紺色のベスト、それとコットンのベージュ色をしたズボンだ。
今まではブイネックの黄土色のシャツに作業に便利な厚手のジャケットにやはり厚手のズボンだった。見た目はザ・村人って感じである。ちなみに動きやすいので気に入っていた。
「兄ちゃんなんかかっこよくなったな」
「かっこいい。好き」
「こら、ルー。よじ登ろうとするんじゃない。それじゃお代だ」
「ありがとうございます♪ 結構すんなり払いましたね」
「仕事と家の往復しかしていなかったから金はあるんだ」
『レン、これも買ってー』
「んあ?」
リエナが『優良物件じゃない……?』などぶつぶつ言いだしたところで、フリンクがくるりと回りながらこっちへきた。
ヒレになにか持っており、それを差し出す。
「なんだ? 帽子か?」
『背びれにちょうど入りそうじゃない? 可愛いかと思って』
確かに今の声は可愛いが、不意にハードボイルドに戻った時に後悔しそうだな思う。
子供が寝る時にたまにつける三角の帽子で、先っぽにケサランパサランみたいなのがついた可愛いものである。
「入るかな……? というか自分でつけられないだろ」
『そこはこう、誰かにつけてもらえればいいかな』
「わたしつけてあげるよー」
『ほら』
「いるかなあ……」
『ほしいー!』
フリンクがその場でバレルロールを始めた。器用なやつだなと同時に珍しく主張している。はしゃいでいるのが目に見えてわかるので買ってやるとしよう。
「リエナ、あれも頼むよ」
「わかりました! 銅貨5枚で!」
「あ、買ってあげるんだ。良かったわね、フリンク♪」
『やったぁ!』
「それじゃ頼むよルー」
「うん!」
ルーをフリンクの背中に乗せて帽子をぎゅっと背びれに差し込んだ。
「んー!」
「あ、ダメよそんなに引っ張ったら――」
クレアが慌てて止めようとしたが、間に合わず。憐れ、ナイトキャップは背びれを貫通してしまった。背びれは幅があるためちょこっと乗っける程度しかできないのだ。
「あーあ、破れちゃった」
「ふー」
『ふー……じゃないよ!? うああ……』
一仕事終えた感を出すルー。
帽子はというと、さらに裂けてしまい無残にも床に落ちた。破れた帽子を見てフリンクはヒレでそれを拾い、さめざめと泣いた。
「リエナ、特注でいいからこいつの背びれにあう帽子を作ったりできないか?」
「ふふ、いいですよ! ちょっと寸法とったら取り掛かります! まだ町にいるんでしょ? 帰る時にでも取りに来てください」
「ありがとう、助かるよ。良かったなフリンク」
『ありがとうレン!』
「うわ!? まとわりつくな!?」
「相変わらず仲がいいわね。それじゃ次に行こうか。雑貨屋さんはあんたたちも欲しいのあったら一個だけ買ってあげるわ」
「いってらっしゃい♪」
ということで悲しい事件はあったものの、俺達は服屋を後にする。元の服はまだ着れるのでカバンの中だ。
「なんか買ってくれるってよ!」
「やったねモント」
「迷子にならないようフリンクに乗っててね」
「「「はーい」」」
クレアが三人を乗せてから再び前を歩き出した。俺もフリンクの後ろについて歩き出す。
「……」
「いい服があったわね……ってどうしたのよそんなに後ろで歩いてさ」
「いや、色々とは話を聞いたからそろそろかと」
「そろそろ?」
クレアはモテる。それは俺でもよく分かる。そして、この町でよく声をかけられていた……となると――
「クレアじゃないか……!」
「ん? あら、ハンスさん、こんにちは」
――ほらきた。
こうやって知り合いに出くわすというわけだ。面倒ごとになりそうなので、俺はとりあえずクレアとは距離を取る。
声をかけてきたのは茶髪のややツリがちな目をした長身の……いや、クレアとあんまり変わらないか。
クレアと俺は頭一個分くらい違うので推定166サンチくらいだな。クレアは163くらいのはずだ。
「どうしたんだ? 村に帰ったんじゃなかったっけ?」
「ちょっとこの子達と遊びに来たのよ」
「こんちはー」
「よっ!」
「こ、こんにちは……」
クレアが笑顔でフリンクの背中を見ると、子供たちが挨拶をした。
ハンスと呼ばれた男が声を出そうとしたところでフリンクがずいっと体を出した。
『こんにちは! フリンクだよ!』
「うおおおおお!? なんだこいつ!?」
「フリンクよ」
「名前はいま聞いたよ!? どういう存在かって話だ!」
お、意外と冷静だな。そう思いながら尻尾の陰に隠れて見守る俺。
「この子はレンの……あれ? レン? どこよ?」
「レン? そいつも村の?」
「うん、幼馴染なんだけど村から出るの初めてだから私が連れて来たの」
「……そこに隠れているやつか?」
「なに!? 完璧な潜伏なのに!?」
「あ、いた! 馬鹿なことやってないで、こっち。これが幼馴染のレンで、こっちが冒険者のハンスさん」
「……ふむ、よろしく」
「ったく、そのままスルーで良かったのに……レンです、よろしく」
握手をした瞬間、思いっきり握りこんできやがった。すました顔で笑みを浮かべている。こいつもクレアに好意をよせているヤツの一人と言うことだな。
こういう陰険な奴には勿体ないのでふるいにかけてやろう。
「……!? てめえ……」
「? どうしたの?」
「いや、なんでもない。雑貨屋に早く行こうぜ、こいつらも待っているし」
「あ、うん! それじゃあハンスさん」
「あ、ああ……」
ハンスとやらはクレアと俺を交互に見た後、汗をぬぐう。
『レンは強いから喧嘩は売らない方がいいよー?』
「だからお前はなんなんだよ……!?」
ハンスの怒声を背中越しに聞きつつ、俺達は雑貨屋を目指す。
しかし、予想以上に――
41
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる