イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

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第49話 そっちかよ!?

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「おー! いいじゃん、さすがリエナ!」
「背が高いからジャケットは難しいのよね。寸法は図ったから仕立てるわね。お代は……これくらいで」

 ひとまず上下を見繕ってもらい披露すると、クレアが鼻を鳴らしながら俺の背中をバシバシ叩いて来た。
 銀貨5枚か、服なら妥当……というか生地とか考えると安いくらいだろう。
 白いシャツに紺色のベスト、それとコットンのベージュ色をしたズボンだ。
 
 今まではブイネックの黄土色のシャツに作業に便利な厚手のジャケットにやはり厚手のズボンだった。見た目はザ・村人って感じである。ちなみに動きやすいので気に入っていた。

「兄ちゃんなんかかっこよくなったな」
「かっこいい。好き」
「こら、ルー。よじ登ろうとするんじゃない。それじゃお代だ」
「ありがとうございます♪ 結構すんなり払いましたね」
「仕事と家の往復しかしていなかったから金はあるんだ」
『レン、これも買ってー』
「んあ?」

 リエナが『優良物件じゃない……?』などぶつぶつ言いだしたところで、フリンクがくるりと回りながらこっちへきた。
 ヒレになにか持っており、それを差し出す。

「なんだ? 帽子か?」
『背びれにちょうど入りそうじゃない? 可愛いかと思って』

 確かに今の声は可愛いが、不意にハードボイルドに戻った時に後悔しそうだな思う。
 子供が寝る時にたまにつける三角の帽子で、先っぽにケサランパサランみたいなのがついた可愛いものである。

「入るかな……? というか自分でつけられないだろ」
『そこはこう、誰かにつけてもらえればいいかな』
「わたしつけてあげるよー」
『ほら』
「いるかなあ……」
『ほしいー!』

 フリンクがその場でバレルロールを始めた。器用なやつだなと同時に珍しく主張している。はしゃいでいるのが目に見えてわかるので買ってやるとしよう。

「リエナ、あれも頼むよ」
「わかりました! 銅貨5枚で!」
「あ、買ってあげるんだ。良かったわね、フリンク♪」
『やったぁ!』
「それじゃ頼むよルー」
「うん!」

 ルーをフリンクの背中に乗せて帽子をぎゅっと背びれに差し込んだ。

「んー!」
「あ、ダメよそんなに引っ張ったら――」

 クレアが慌てて止めようとしたが、間に合わず。憐れ、ナイトキャップは背びれを貫通してしまった。背びれは幅があるためちょこっと乗っける程度しかできないのだ。

「あーあ、破れちゃった」
「ふー」
『ふー……じゃないよ!? うああ……』

 一仕事終えた感を出すルー。
 帽子はというと、さらに裂けてしまい無残にも床に落ちた。破れた帽子を見てフリンクはヒレでそれを拾い、さめざめと泣いた。

「リエナ、特注でいいからこいつの背びれにあう帽子を作ったりできないか?」
「ふふ、いいですよ! ちょっと寸法とったら取り掛かります! まだ町にいるんでしょ? 帰る時にでも取りに来てください」
「ありがとう、助かるよ。良かったなフリンク」
『ありがとうレン!』
「うわ!? まとわりつくな!?」
「相変わらず仲がいいわね。それじゃ次に行こうか。雑貨屋さんはあんたたちも欲しいのあったら一個だけ買ってあげるわ」
「いってらっしゃい♪」

 ということで悲しい事件はあったものの、俺達は服屋を後にする。元の服はまだ着れるのでカバンの中だ。

「なんか買ってくれるってよ!」
「やったねモント」
「迷子にならないようフリンクに乗っててね」
「「「はーい」」」

 クレアが三人を乗せてから再び前を歩き出した。俺もフリンクの後ろについて歩き出す。

「……」
「いい服があったわね……ってどうしたのよそんなに後ろで歩いてさ」
「いや、色々とは話を聞いたからそろそろかと」
「そろそろ?」

 クレアはモテる。それは俺でもよく分かる。そして、この町でよく声をかけられていた……となると――

「クレアじゃないか……!」
「ん? あら、ハンスさん、こんにちは」

 ――ほらきた。
 こうやって知り合いに出くわすというわけだ。面倒ごとになりそうなので、俺はとりあえずクレアとは距離を取る。
 声をかけてきたのは茶髪のややツリがちな目をした長身の……いや、クレアとあんまり変わらないか。
 クレアと俺は頭一個分くらい違うので推定166サンチcmくらいだな。クレアは163くらいのはずだ。

「どうしたんだ? 村に帰ったんじゃなかったっけ?」
「ちょっとこの子達と遊びに来たのよ」
「こんちはー」
「よっ!」
「こ、こんにちは……」

 クレアが笑顔でフリンクの背中を見ると、子供たちが挨拶をした。
 ハンスと呼ばれた男が声を出そうとしたところでフリンクがずいっと体を出した。

『こんにちは! フリンクだよ!』
「うおおおおお!? なんだこいつ!?」
「フリンクよ」
「名前はいま聞いたよ!? どういう存在かって話だ!」

 お、意外と冷静だな。そう思いながら尻尾の陰に隠れて見守る俺。
 
「この子はレンの……あれ? レン? どこよ?」
「レン? そいつも村の?」
「うん、幼馴染なんだけど村から出るの初めてだから私が連れて来たの」
「……そこに隠れているやつか?」
「なに!? 完璧な潜伏なのに!?」
「あ、いた! 馬鹿なことやってないで、こっち。これが幼馴染のレンで、こっちが冒険者のハンスさん」
「……ふむ、よろしく」
「ったく、そのままスルーで良かったのに……レンです、よろしく」

 握手をした瞬間、思いっきり握りこんできやがった。すました顔で笑みを浮かべている。こいつもクレアに好意をよせているヤツの一人と言うことだな。
 こういう陰険な奴には勿体ないのでふるいにかけてやろう。

「……!? てめえ……」
「? どうしたの?」
「いや、なんでもない。雑貨屋に早く行こうぜ、こいつらも待っているし」
「あ、うん! それじゃあハンスさん」
「あ、ああ……」

 ハンスとやらはクレアと俺を交互に見た後、汗をぬぐう。

『レンは強いから喧嘩は売らない方がいいよー?』
「だからお前はなんなんだよ……!?」

 ハンスの怒声を背中越しに聞きつつ、俺達は雑貨屋を目指す。
 しかし、予想以上に――
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