イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
46 / 105

第46話 はしゃぐフリンク

しおりを挟む
「それじゃあしゅっぱーつ!」
「「「おー!」」」
『魔法で落ちないようにしているけど、気を付けてねー』

 というわけで俺とクレアは馬車に乗り、ガキ達はフリンクの背中に乗って出発となった。

「大丈夫かぁ?」
「ま、行ってみるよ」

 門の当番だったらしいケリィが若干心配そうにな顔で声をかけてくれた。割と町へ出向くことがあるだけに、俺……というよりフリンクが気になるらしい。

「精霊だし言えば迂闊に手を出して来ないと思うけど、クレアやガキ共も居るし注意しろよ。特にクレアだ」
「私がなによ?」
「いや、大丈夫か?」
「サンキュー、そんじゃな」
「いくぞー」

 父さんがハリソンとメドレーに指示を出してゆっくりと進みだす。
 ちなみに馬車はいつもより二人増えたくらいならハリソンだけで十分だけど、クレアが一緒に居させて欲しいと言われて連れて来た。
 二頭とも足取りが軽いため良かった。いつもはのんびりした顔で草をむしゃむしゃと食べているだけのハリソンがキリっとして見える。

「いやあ、まさかレンと町へ行くことになるとはな」
「俺もそう思うよ。別に村だけでも困らなかったし、あいつも居るからさ」
『ひゃっはー!』
「「「わああ!」」」

 俺は調子に乗ってバレルロールをするフリンクを指差してからそう言う。
 魔法の力で落ちないため、ちょっとしたジェットコースター気分だろうなアレ。

「でもレンは神様の加護があるし、フリンクだって精霊でしょ? 崇められるんじゃない?」
「まあ俺はともかくフリンクは誤魔化しようがないからな。目立つし説明が面倒だろ?」

 むしろ崇められると困るし。
 クレアにそう返してやると、父さんが口を開く。

「こいつは村のことも考えて隠れていたところがあるから勘弁してやってくれクレアちゃん。結局、事件で貴族にばれてしまったけど、遅かれ早かれその内なにかあったと俺は思っている」
「そうなのか?」
「ああ。結界は初耳だったから驚いたが、宮廷魔法使い様ほどでなくても気づく人間は居ただろうし、たまに海に出て遊んでいるみたいだったからな」
「ああー……」

 同級生たちとも夜中に遊びに出たことがあるため、クレアが冷や汗をかきながら曖昧な感じで声をあげる。
 その可能性はあったけど、一応遊んでいる間は周囲に結界を張っていた。

「村は大丈夫じゃない? フリンクは珍しいけどあんたは珍しくないし」
「そりゃあ普通の人だし、俺」
「「それはない」」
「父さんは否定しちゃダメだろ!? あんたの息子だぞ!?」

 俺がそういって肩を叩くと『うわはっは』と豪快に笑っていた。なんだかテンションが高いな。そう思っていると、父さんが俺に視線を向けた。

「いや、神様の加護とか言ってもレンはやっぱり人間だしな。魔法が強力ってんならそれこそ宮廷魔法使い様と変わらない。だからあまり気にしなくていいと思うんだよ俺は」
「まあ……」
「そうね。フリンクもまあ、なんとかなるでしょ」
『うほほーい!』

 ウェイブしながら空を泳ぐフリンクを指差してクレアがあっさりと言う。
 結構でかいし、町に入れてくれるかねえ?
 そんな話をしながら40ファールほど進んだところで町が見えてきた。
 空から見たことはあるけど、地上からは初めてだな。

「外壁……でいいのか? 随分と高いな」
「魔物避けだから乗り越えられないようにしているって感じだな。クマ系の魔物でも破壊できないくらい硬いぞ」
「トカゲとか壁に張り付くやつとか、空を飛ぶ魔物は居るから絶対じゃないけど、安心感はあるわね」
『僕なら一撃で壊すよ!』
「そういうのはいい」

 なにを張り合っているのか。しかしフリンクこいつも随分テンションが高い。俺に合わせてくれていたが、やはり町には行きたかったのかもしれない。
 元々、水族館の人気イルカの内の一頭だったため人に見られたり、芸をするなどをやっていたので人間は好きだしむしろ抵抗がないのかとも思う。
 
「でも、フリンクって精霊だけあって他に見たことがないフォルムよね。魚っぽいけど」
『魚じゃないよー。でも別の世界には似たヤツもいるんだ。サカマタとか』
「サカマタ?」
『僕よりちょっと大きくて狂暴なんだよ……!』
「そんな精霊もいるんだ」

 話が聞こえていたのか、フリンクが近づいてきてそんなことを言う。
 ちなみにサカマタとはシャチの別名である。
 分類としてはハクジラ亜目でフリンクの仲間なのだ。しかしあいつがああいう言い方するには理由がある。水族館時代に仲の悪いシャチがいたせいだ。
 ライムというシャチがいたんだけど、よくフリンクにちょっかいを出しては喧嘩をしていた。
 俺がプールに入ってフリンクの状態を確かめたりしていると寄ってきて俺を乗せて逃げるなどだ。

『サカマタはこの世界に居ないし、大丈夫だけどね!』
「フリンクみたいなのならちょっと見てみたいなあ」
「そしたらレン兄ちゃん達も乗れそうだもんね」
「これ以上は飼えないから居なくて良かったよ」
「フリンクは大飯ぐらいだからな!」

 父さんがそう言って笑うと、フリンクは『そんなこと無い』とむくれていた。
 自分で餌を獲りに行くからまだいいが、実際めちゃくちゃ食うからな……

「お、門が見えてきたぞ」

 というわけで門が見えてきた。
 さて、服装とかはクレアから見て大丈夫そうだったし、せっかくだから色々見て回るか。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...