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第44話 クレアの主張!
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「居た! レン、あんたなにをしたのよ!」
「げっ!? クレアじゃないか!」
『あ、おかえりー』
リビングに行くと、何故か怒っているクレアに遭遇した!?
まさか俺の客とは彼女のことか!?
「母さん、客と言うのは――」
「うん、クレアちゃんよ♪」
俺が全部言い終わる前に答えてくれた。嫌な予感がしたものの、クレアなら問題ないかと深呼吸をする。
「まずはおかえりクレア。そんなに怒ってどうしたんだ?」
「た、ただいま……そうそれよ! どうしてこんな屋敷に移り住んでいるの!? 村長さんも朝聞いたって」
「やっぱそれかあ」
『それはそうだよね』
こいつがいきり立っている時は反応せずに通常の会話をするようにしている。一緒になって怒声を浴びせたり、飽きれたりするとさらにヒートアップするからだ。
一応、勘違いして欲しくないのはクレアはいい娘だということである。
ずっと一緒にいるから遠慮がないだけで、妹であり姉のような間柄だからこういう態度だったりする。
「手紙も来ないし、町にも来ないと思って帰ったらお屋敷よ? びっくりするでしょう」
「まあ、この屋敷を正式に貰ったのはさっきだったからなあ」
「さっき……そういえば貴族の馬車とすれ違ったけど、関係があるの?」
「そうだな――」
俺はクレアを座らせてから事情を説明する。居なかった間にホント色々あったことを。
『いやあ大変だったよー』
「よしよし、フリンクも大変だったのね」
クレアにすり寄るフリンクの鼻先を撫でながらクレアが苦笑する。ずっと一緒に居るからフリンクのお気に入りでもある。
「とりあえず、事件は解決したってことね。それでこの屋敷を受領した、と」
「まあ、そんなところだ。解決って言うほど結果はいいとは思えないけどな」
「結界の解除かあ……私達も知らなかったもん。なんか帰った時にフリンクの顔を不意に思い出すのが変だなと思ってたけど」
『村の人間は結界の外で忘れるけど、帰ってきたら思い出すようにしていたからねー』
「真実を知るとちょっと怖いわ」
「悪いな」
俺がそう口にするとクレアは目をパチパチさせた。少し前を置いてから口を開く。
「まあ、あんたとフリンクの事情を知っていたら隠したい気持ちは分かるからいいけどさ。この事件まで全然平穏だったから、みんな感謝はしていると思うわよ」
「やっぱりこれからのことよね。私としては元の家に戻ってみんなの記憶を消してもいいかもと思ったけど……」
「それだとまた全員の記憶に齟齬ができる。そこから不信感が増えてくると流石に心証は悪くなるよ」
母さんがドライな意見を言うが、俺がそれを否定する。結界を張り直さなかった理由の一つだ。
結局、サーラというジョーカーが居るため村に再訪問でもされたら二の舞だ。その度にその記憶を消すのは危ないし、俺とフリンクが咎められる可能性も高い。
……意図はまだ図りかねるけど、あいつは俺達を外の世界へ出したいって感じだと思った。
「ま、でも良かったかもね」
「なにがだ?」
「村で一生を過ごすつもりだったのかもしれないけど、これでフリンクも町へ行けるし、色々見て回れるよ。ねー?」
『うんうん! 町へ行こうクレア!』
「って感じよ。まあ、面倒なことはあるかもしれないけど、バートリィ家とその宮廷魔法使いの人も居るから酷いことにはならないでしょ」
「まあ……」
それでも外に行くのは少し躊躇うけどな。俺はともかく、フリンクがどうなるか……?
「明日以降でいいなら案内するから行ってみましょうよ。お金はあるんでしょ?」
「報酬をもらったからある」
「なら決まり! ルーたちも連れて行く? おじさんのお仕事についていく感じならいいでしょ」
「ログさん次第だろ。お前、ルー好きだよな」
「可愛いじゃん。妹が居たらあんな感じかなって」
とか言いながらクレアはフリンクにまたがる。
「レンも畑に行くんじゃない? 連れて行ってよ」
『いいよー』
「俺は歩くぞ……」
「小さい頃は一緒に乗ってたのに」
『僕は大丈夫だよ?』
「いい、いい。行くぞ」
「行ってらっしゃい! お母さんによろしく言っておいてね」
「はい! 引っ越し祝いを持ってくるって言ってたから夜、お邪魔するかも? フリンクいけー!」
『おー!』
クレアは母さんにそれだけ返してフリンクと一緒に通路へ出て行った。相変わらず元気な奴だ。というかお前の仕事の話、一切聞いていないんだけどな……
俺は肩を竦めながら後を追うため席を立つ。
「町へ行ったら色々あるし、いいかもしれないわね。村で過ごす人も多いからレンの言うことも間違ってはいないわよ」
「母さん……ま、なるようになるかな。迷惑がかからないくらいがいいんだけどなあ」
「子供は親に迷惑をかけるくらいでいいのよ。レンは育てやすかったもの。おばあちゃんが可愛がってくれてたでしょ」
「ふむ……」
母さんは手を振りながら笑い、そんなことを口にする。
もしかしたらだけど、母さんも俺が外の世界……少なくとも町へ行くくらいはして欲しいと考えているのかもな。
そういやじいちゃんとばあちゃんを呼んでもいいかも。部屋いっぱいあるし。
「とりあえず仕事してくるよ」
「頑張ってねー」
母さんは天然だからどこまで考えているのやら……ひとまず仕事をしてきますか。
「げっ!? クレアじゃないか!」
『あ、おかえりー』
リビングに行くと、何故か怒っているクレアに遭遇した!?
まさか俺の客とは彼女のことか!?
「母さん、客と言うのは――」
「うん、クレアちゃんよ♪」
俺が全部言い終わる前に答えてくれた。嫌な予感がしたものの、クレアなら問題ないかと深呼吸をする。
「まずはおかえりクレア。そんなに怒ってどうしたんだ?」
「た、ただいま……そうそれよ! どうしてこんな屋敷に移り住んでいるの!? 村長さんも朝聞いたって」
「やっぱそれかあ」
『それはそうだよね』
こいつがいきり立っている時は反応せずに通常の会話をするようにしている。一緒になって怒声を浴びせたり、飽きれたりするとさらにヒートアップするからだ。
一応、勘違いして欲しくないのはクレアはいい娘だということである。
ずっと一緒にいるから遠慮がないだけで、妹であり姉のような間柄だからこういう態度だったりする。
「手紙も来ないし、町にも来ないと思って帰ったらお屋敷よ? びっくりするでしょう」
「まあ、この屋敷を正式に貰ったのはさっきだったからなあ」
「さっき……そういえば貴族の馬車とすれ違ったけど、関係があるの?」
「そうだな――」
俺はクレアを座らせてから事情を説明する。居なかった間にホント色々あったことを。
『いやあ大変だったよー』
「よしよし、フリンクも大変だったのね」
クレアにすり寄るフリンクの鼻先を撫でながらクレアが苦笑する。ずっと一緒に居るからフリンクのお気に入りでもある。
「とりあえず、事件は解決したってことね。それでこの屋敷を受領した、と」
「まあ、そんなところだ。解決って言うほど結果はいいとは思えないけどな」
「結界の解除かあ……私達も知らなかったもん。なんか帰った時にフリンクの顔を不意に思い出すのが変だなと思ってたけど」
『村の人間は結界の外で忘れるけど、帰ってきたら思い出すようにしていたからねー』
「真実を知るとちょっと怖いわ」
「悪いな」
俺がそう口にするとクレアは目をパチパチさせた。少し前を置いてから口を開く。
「まあ、あんたとフリンクの事情を知っていたら隠したい気持ちは分かるからいいけどさ。この事件まで全然平穏だったから、みんな感謝はしていると思うわよ」
「やっぱりこれからのことよね。私としては元の家に戻ってみんなの記憶を消してもいいかもと思ったけど……」
「それだとまた全員の記憶に齟齬ができる。そこから不信感が増えてくると流石に心証は悪くなるよ」
母さんがドライな意見を言うが、俺がそれを否定する。結界を張り直さなかった理由の一つだ。
結局、サーラというジョーカーが居るため村に再訪問でもされたら二の舞だ。その度にその記憶を消すのは危ないし、俺とフリンクが咎められる可能性も高い。
……意図はまだ図りかねるけど、あいつは俺達を外の世界へ出したいって感じだと思った。
「ま、でも良かったかもね」
「なにがだ?」
「村で一生を過ごすつもりだったのかもしれないけど、これでフリンクも町へ行けるし、色々見て回れるよ。ねー?」
『うんうん! 町へ行こうクレア!』
「って感じよ。まあ、面倒なことはあるかもしれないけど、バートリィ家とその宮廷魔法使いの人も居るから酷いことにはならないでしょ」
「まあ……」
それでも外に行くのは少し躊躇うけどな。俺はともかく、フリンクがどうなるか……?
「明日以降でいいなら案内するから行ってみましょうよ。お金はあるんでしょ?」
「報酬をもらったからある」
「なら決まり! ルーたちも連れて行く? おじさんのお仕事についていく感じならいいでしょ」
「ログさん次第だろ。お前、ルー好きだよな」
「可愛いじゃん。妹が居たらあんな感じかなって」
とか言いながらクレアはフリンクにまたがる。
「レンも畑に行くんじゃない? 連れて行ってよ」
『いいよー』
「俺は歩くぞ……」
「小さい頃は一緒に乗ってたのに」
『僕は大丈夫だよ?』
「いい、いい。行くぞ」
「行ってらっしゃい! お母さんによろしく言っておいてね」
「はい! 引っ越し祝いを持ってくるって言ってたから夜、お邪魔するかも? フリンクいけー!」
『おー!』
クレアは母さんにそれだけ返してフリンクと一緒に通路へ出て行った。相変わらず元気な奴だ。というかお前の仕事の話、一切聞いていないんだけどな……
俺は肩を竦めながら後を追うため席を立つ。
「町へ行ったら色々あるし、いいかもしれないわね。村で過ごす人も多いからレンの言うことも間違ってはいないわよ」
「母さん……ま、なるようになるかな。迷惑がかからないくらいがいいんだけどなあ」
「子供は親に迷惑をかけるくらいでいいのよ。レンは育てやすかったもの。おばあちゃんが可愛がってくれてたでしょ」
「ふむ……」
母さんは手を振りながら笑い、そんなことを口にする。
もしかしたらだけど、母さんも俺が外の世界……少なくとも町へ行くくらいはして欲しいと考えているのかもな。
そういやじいちゃんとばあちゃんを呼んでもいいかも。部屋いっぱいあるし。
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