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第43話 帰って来た同級生in地獄
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「あれ? クレアじゃない!」
「ただいまー、オリア!」
「仕事は終わったの?」
村に帰った私は飼い馬であるメドレーを引き、軽い足取りで自宅を目指していた。
本当はもう少しかかる予定を頑張って急いで縮めたのだ。
町は便利だし、移住を勧められているけどやはり生まれ育った村は落ち着くと感じていた。こうやって友達とも会えるしね。
そんなことを考えつつ、そばかすの残る女の子、オリアと会話を続ける。
「うん! いくつかの毒に効果のあるポーションを作ってきたわ! ギルドの人たちにめちゃ感謝されちゃった」
「クレアは相変わらず凄いね。私なんてなんにもないもの」
「そんなことないよ。オリアだって服を作れるじゃない」
「あはは、まあ実家がそうだしね。また町へ行くの?」
オリアは恥ずかしいと頬をかきながら困った笑顔を見せ、話題を変えて来た。
服を作れるのはいいことだと思うけどね?
「依頼があればね。町だとずっと契約して働くことはできるけど、山へ採取に行って研究するなら村がいいもん」
「そうなんだー。あ、レン君も居るしね!」
「ぶっ!?」
「ひゃあ!?」
胸の前で手を合わせてから微笑むオリアが、とんでもないことを口にしたので思わず吹き出してしまった。
「な、なんでレンの名前が出てくるのよ!?」
「え? クレアってレン君が好きなんだよね? 学校時代、レン君が女の子に告白されるたびに顔を赤らめたり青らめたりしていたよね?」
「し、してないわ! どうしてみんなあいつと私をくっつけようとするのかしら……」
「小さいころから一緒にいるからじゃない? フリンクちゃんとも仲がいいでしょ」
「フリンクは可愛いからね!」
フリンクの名前が出て私は鼻を鳴らす。なんかよくわからない、お魚に似た姿をしているんだけど、神様の遣いとか精霊様らしい。
(お? こいつが気になるのか? 乗ってみるか?)
(こんにちはー! フリンクだよ!)
小さい頃、フリンクが気になってじっと見ている内に、向こうから声をかけてくれたのよね。レンはあの頃からイケメンだったわね……って違う!
「あはは、そっかあ。でも、もしかしたらそう言われなくなるかもしれないし、いいかな?」
「え? どういうことよ」
「お! クレアじゃん!」
と、オリアが意味深なことを言い出したので首を傾げていると今度は同級生の男達と出会う。
「やっほー、帰って来たわよ」
「おかえり! いやあ、帰って来ちゃったかあ……」
「なによ、私が帰っちゃまずいの?」
「「うん……」」
「なんでよ!?」
レンの友人二人が揃って、気まずそうに肯定を口にした。怒声を浴びせると、オリアが続けた。
「えっとね、最近この村に貴族の人が来たんだけどそこのお嬢様とメイドさんと仲良くなったって噂があってね」
「そうそう。向こうは名指しで屋敷に招いていたし、これはついに――」
「は?」
「「うお!?」」
なに? レンがお嬢様とメイドと知り合ったってこと? しかもレンからじゃなくお嬢様に好かれているって?
「クレア、ちょっとまずい顔になってるわ」
「あ、そ、そう?」
「ま、まあ、経緯はともかく……これでクレアも大人たちから色々言われなくて良くなるしいいよな!」
「あ?」
「その顔止めて!?」
この悪友なら話半分で笑い飛ばしたところだけど、オリアまでそう言っているのは穏やかじゃない。別にレンのこととかどうでもいいけど、幼馴染として聞いておかなければいけないわね。
「あれ? どこいくの? 家はそっちじゃないでしょ?」
「……いいの」
「あ、おい! ……行っちまった」
「からかいすぎたかな?」
「まあ、これでクレアが焦ってくれるといいけど」
◆ ◇ ◆
同級生達と別れた私はレンの家に到着した。馬のメドレーはキョロキョロと誰かを探すように首を動かす。この時間、ハリソンはおじさんと町じゃないかしら?
そう思いながらドアをノックするも――
「あれ? 返事がない。おばさんはいると思ったのに買い物かしら?」
――誰からも応答が無かった。
おじさんは町、おばさんは洗濯などをしていると思ったけど……レンは畑かな?
フリンクはいつもレンと一緒だからね。
「寝てるのかなー?」
念のためおばさんが倒れたりしているとまずいので窓から覗いてみる。するとそこには驚くべき光景があった。
「あれ!? か、家具がなくなっているわ!? ど、どこ行ったの!?」
さっきの同級生の反応だと家を引き払ったことは知らないようだった。となると村の人は知らない……?
そういえばお嬢様から名指しで呼ばれたとか言ってたし……
「まさかもう婿に……!?」
私はピーンと来た。
しかし、そんなに簡単にレンが受けるかしら? ……どうかなあ……あいつハッキリ言われたら断らないかもしれない……
「と、とりあえず畑仕事には行っているかもしれないし! あいつが畑をサボるわけないもんね!」
気を取り直してメドレーを引っ張っていく。ハリソンが居なかったことにがっくりしている愛馬を見て複雑な気持ちになった。
「……遅かったのかなあ」
畑に到着するもレンは居なかった。なんか見たことないキモい人形があったけど。
でも、畑は全然きれいだから手入れはしていると思う。
「一体どこへ……?」
「おや、クレアじゃないか。帰って来たのかい?」
「あ、お母さん! レンが居ないんだけど、どこに行ったか知らない?」
「え? レンかい? というか自宅じゃなくレンのところに行くってあんたやっぱり……」
「い、いいから! なにか知っていたら教えて!」
「はいはい、まったく我が娘ながらまどろっこしいねえ。あいつはさ――」
◆ ◇ ◆
『うはははは』
「こら、あんまり飛び跳ねるな。布団が破れるだろ」
『すまない。これで毎日眠れるとなると嬉しくてな』
「安上がりな精霊だよなお前」
だが、実際気持ちよく眠れたので効果は高い。晴れているし、敷布団は干すかと思ったところで母さんがやってきた。
「おはようレン、フリンク。お客さんよ」
「客? 俺にか?」
なんだか嫌な予感がする……
「ただいまー、オリア!」
「仕事は終わったの?」
村に帰った私は飼い馬であるメドレーを引き、軽い足取りで自宅を目指していた。
本当はもう少しかかる予定を頑張って急いで縮めたのだ。
町は便利だし、移住を勧められているけどやはり生まれ育った村は落ち着くと感じていた。こうやって友達とも会えるしね。
そんなことを考えつつ、そばかすの残る女の子、オリアと会話を続ける。
「うん! いくつかの毒に効果のあるポーションを作ってきたわ! ギルドの人たちにめちゃ感謝されちゃった」
「クレアは相変わらず凄いね。私なんてなんにもないもの」
「そんなことないよ。オリアだって服を作れるじゃない」
「あはは、まあ実家がそうだしね。また町へ行くの?」
オリアは恥ずかしいと頬をかきながら困った笑顔を見せ、話題を変えて来た。
服を作れるのはいいことだと思うけどね?
「依頼があればね。町だとずっと契約して働くことはできるけど、山へ採取に行って研究するなら村がいいもん」
「そうなんだー。あ、レン君も居るしね!」
「ぶっ!?」
「ひゃあ!?」
胸の前で手を合わせてから微笑むオリアが、とんでもないことを口にしたので思わず吹き出してしまった。
「な、なんでレンの名前が出てくるのよ!?」
「え? クレアってレン君が好きなんだよね? 学校時代、レン君が女の子に告白されるたびに顔を赤らめたり青らめたりしていたよね?」
「し、してないわ! どうしてみんなあいつと私をくっつけようとするのかしら……」
「小さいころから一緒にいるからじゃない? フリンクちゃんとも仲がいいでしょ」
「フリンクは可愛いからね!」
フリンクの名前が出て私は鼻を鳴らす。なんかよくわからない、お魚に似た姿をしているんだけど、神様の遣いとか精霊様らしい。
(お? こいつが気になるのか? 乗ってみるか?)
(こんにちはー! フリンクだよ!)
小さい頃、フリンクが気になってじっと見ている内に、向こうから声をかけてくれたのよね。レンはあの頃からイケメンだったわね……って違う!
「あはは、そっかあ。でも、もしかしたらそう言われなくなるかもしれないし、いいかな?」
「え? どういうことよ」
「お! クレアじゃん!」
と、オリアが意味深なことを言い出したので首を傾げていると今度は同級生の男達と出会う。
「やっほー、帰って来たわよ」
「おかえり! いやあ、帰って来ちゃったかあ……」
「なによ、私が帰っちゃまずいの?」
「「うん……」」
「なんでよ!?」
レンの友人二人が揃って、気まずそうに肯定を口にした。怒声を浴びせると、オリアが続けた。
「えっとね、最近この村に貴族の人が来たんだけどそこのお嬢様とメイドさんと仲良くなったって噂があってね」
「そうそう。向こうは名指しで屋敷に招いていたし、これはついに――」
「は?」
「「うお!?」」
なに? レンがお嬢様とメイドと知り合ったってこと? しかもレンからじゃなくお嬢様に好かれているって?
「クレア、ちょっとまずい顔になってるわ」
「あ、そ、そう?」
「ま、まあ、経緯はともかく……これでクレアも大人たちから色々言われなくて良くなるしいいよな!」
「あ?」
「その顔止めて!?」
この悪友なら話半分で笑い飛ばしたところだけど、オリアまでそう言っているのは穏やかじゃない。別にレンのこととかどうでもいいけど、幼馴染として聞いておかなければいけないわね。
「あれ? どこいくの? 家はそっちじゃないでしょ?」
「……いいの」
「あ、おい! ……行っちまった」
「からかいすぎたかな?」
「まあ、これでクレアが焦ってくれるといいけど」
◆ ◇ ◆
同級生達と別れた私はレンの家に到着した。馬のメドレーはキョロキョロと誰かを探すように首を動かす。この時間、ハリソンはおじさんと町じゃないかしら?
そう思いながらドアをノックするも――
「あれ? 返事がない。おばさんはいると思ったのに買い物かしら?」
――誰からも応答が無かった。
おじさんは町、おばさんは洗濯などをしていると思ったけど……レンは畑かな?
フリンクはいつもレンと一緒だからね。
「寝てるのかなー?」
念のためおばさんが倒れたりしているとまずいので窓から覗いてみる。するとそこには驚くべき光景があった。
「あれ!? か、家具がなくなっているわ!? ど、どこ行ったの!?」
さっきの同級生の反応だと家を引き払ったことは知らないようだった。となると村の人は知らない……?
そういえばお嬢様から名指しで呼ばれたとか言ってたし……
「まさかもう婿に……!?」
私はピーンと来た。
しかし、そんなに簡単にレンが受けるかしら? ……どうかなあ……あいつハッキリ言われたら断らないかもしれない……
「と、とりあえず畑仕事には行っているかもしれないし! あいつが畑をサボるわけないもんね!」
気を取り直してメドレーを引っ張っていく。ハリソンが居なかったことにがっくりしている愛馬を見て複雑な気持ちになった。
「……遅かったのかなあ」
畑に到着するもレンは居なかった。なんか見たことないキモい人形があったけど。
でも、畑は全然きれいだから手入れはしていると思う。
「一体どこへ……?」
「おや、クレアじゃないか。帰って来たのかい?」
「あ、お母さん! レンが居ないんだけど、どこに行ったか知らない?」
「え? レンかい? というか自宅じゃなくレンのところに行くってあんたやっぱり……」
「い、いいから! なにか知っていたら教えて!」
「はいはい、まったく我が娘ながらまどろっこしいねえ。あいつはさ――」
◆ ◇ ◆
『うはははは』
「こら、あんまり飛び跳ねるな。布団が破れるだろ」
『すまない。これで毎日眠れるとなると嬉しくてな』
「安上がりな精霊だよなお前」
だが、実際気持ちよく眠れたので効果は高い。晴れているし、敷布団は干すかと思ったところで母さんがやってきた。
「おはようレン、フリンク。お客さんよ」
「客? 俺にか?」
なんだか嫌な予感がする……
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