イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
40 / 105

第40話 余計なお世話ではあるが……

しおりを挟む
「あふあ……」
「こんばんは、ここにカイさんと俺の両親が居ると聞いて」
「お、君の名前は?」
「レンです」
『フリンクなんだよ!』
「おう!? でかい!?」

 一度見たことあるんだけど、記憶を消しているから初遭遇になるのか。
 夜中に見たら確かに驚くよな。
 村祭りの夜に焚火に浮かび上がるフリンクの影でガキどもがビビリ散らかしていたのを思い出す。ぼんやりと炎に揺られて浮かぶフリンクはまあまあ怖い。

「ふう……と、とりあえずお話は聞いているから入っていいぞ」
「ありがとうございます」
『ありがとー』

 俺達は門を抜けて屋敷へと到着。
 そのまま来客を報せる魔動器《呼び鈴》を鳴らした。

「はいはい、こんな夜中にどちらさまでしょう?」
「もしやあなたは?」

 すぐに母さんと同い年くらいのメイドさんと若い執事が出迎えてくれた。持ち回りで起きているのだろう。

「こんばんは。ウチの両親がここに居ると聞いて」
『こんばんはー!』
「まあ、大きなお魚……でもお話の通りですね。お休みになられているので、今日のところはお部屋にご案内しますね」
「ま、そうですよね……」

 日本時間にして深夜2時半となれば起きている人間は少ない。
 俺とフリンクは休んでからにしようと移動する。

「あ、そうだ。冷凍の魔動器はどこにありますか? 魚を獲って来たので、朝食にでも使ってもらえると」
「これは大漁ですな。承知しました、わたしめがお預かりしておきます。寝る前にお風呂に入られては?」
「あ、いいですか?」
「もちろんです。ではこちらへ――」

 静まり返った屋敷内を歩き、浴場へと案内される俺とフリンク。
 海での汚れを落とせるのはいいなと浮足立っていたが、さらに度肝を抜かれる事態に遭遇した。

『わああ』

 自宅の狭いお風呂ではなく、フリンクが少し泳げるくらいの広さを持った浴槽だったからだ。

「ごゆるりと」
「こりゃいいや」
『いやっほぉぉう』

 温度も熱すぎず、少しぬるいくらいなので今の時期にはちょうどいい。さっとかけ湯をしてフリンクと俺自身を磨く。

『あ……ああー……そこだ、力いっぱい磨いてくれ……』
「顔も洗うぞ」
『頼む……』

 フリンクを洗うとなると割と力仕事になるため滅多に磨いてやることは無い。
 だけどこういう時くらいはいいだろう。
 よく洗い流してから湯船へと入った。

「ふう……」
『ほう……』

 ぷかりと浮いたフリンクの背中にタオルを乗せてやる。

『なあ、レン』
「なんだー?」

 すると寄って来てから俺に告げる。

『俺達のことを世に知らしめてもいいんじゃあないか? 力を貸せば見返りもある。この風呂もそうだし、屋敷に引っ越したということは両親は今後ここに住むということだ。もっと楽をさせてやれるかもしれん』
「キャンプから帰ってまだ少ししか経っていないのにもう裏切るのか!?」

 流暢に俺を説得しにかかってきたな。
 だけど、まあこれを見せられたらフリンクは我儘を言うだろうとは思っていた。それにその権利も有している。
 もっと川や海に出たいというのはあるだろう。いまでこそこんななりだけど、最初は手のひらサイズだったと母さんが言っていた。
 そのころは目立たなかったから、両親や俺とあちこち遊びに行っていた時期もあったのである。
 大きくなってからは俺が出歩くことを止めたので村での生活にシフトした。こいつを出さないなら俺も出ないと決めて。

「……いや、そうだな」
『どうしたレン? 冗談だぞ』
「分かっているよ」

 そんなことはいつも一緒にいる俺が一番わかっている。フリンクはつき従ってくれるからだ。
 
『?』

 鼻を撫でてやると不思議そうな顔で身をよじらせていた。
 
「……17歳か」

 この世界は16で成人扱いとなるため、俺ももう立派な成人ということになる。
 そんなことを考えながら風呂にゆっくり浸かり、ベッドで休んだ。

 そして翌朝――

「レン、帰って来たのね」
「んおお……まだ寝かせてくれ……昨日は遅かったんだ……」
「ダメだ。ローク様達を待たせているからな。話をするぞ」
「ああ、そうか……」

 カイさんがここに居るならローク様も居て然るべきかと体を起こす。

『ふごー』

 揺すっても起きそうにないフリンクは俺が抱えて持って行くことにして、顔を洗ってから通路へと出た。

「あら、フリンクはまだ寝ているの?」
「遅かったし、風呂ではしゃいだからなあ」
「持つわよ」
「ありがとう母さん」
「それじゃ行くか」

 俺がフリンクはを渡すと『大きくなったわねえ』と苦笑していた。父さんと並んで歩き出すと俺に話しかけて来た。

「驚いたと思うが、この屋敷は正式にウチの……というよりお前のものとなった。帰ってくるまで引っ越しはしないつもりだったんだけど、カイ様がどっきりさせましょうと言ってきかなくてな」
「そうだったのか……」

 なんかもっと深い理由があるのかと思ったらただのどっきりだった……
 脱力した俺が首を振っていると、後ろに居る母さんも口を開く。

「メイドさん達も引き払うみたいなのよ。私達だけだとちょっと広いし、落ち着かないけどキッチンとお風呂がすごくいいの」
「風呂は良かったなあ確かに。キッチンは専属のコックとかが居るようなところだし、そりゃいいだろ」
「これなら何でも作れるわ。それにいい馬車も貰ったからお父さんの仕事も捗るし」
「ハリソンも厩舎でのんびりしているぞ」

 なんだかんだで喜んでいるらしい。
 ……さて、ローク様、というより、恐らく一緒にいるであろうサーラがなんの話をしてくるかが鍵だな。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

処理中です...