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第40話 余計なお世話ではあるが……
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「あふあ……」
「こんばんは、ここにカイさんと俺の両親が居ると聞いて」
「お、君の名前は?」
「レンです」
『フリンクなんだよ!』
「おう!? でかい!?」
一度見たことあるんだけど、記憶を消しているから初遭遇になるのか。
夜中に見たら確かに驚くよな。
村祭りの夜に焚火に浮かび上がるフリンクの影でガキどもがビビリ散らかしていたのを思い出す。ぼんやりと炎に揺られて浮かぶフリンクはまあまあ怖い。
「ふう……と、とりあえずお話は聞いているから入っていいぞ」
「ありがとうございます」
『ありがとー』
俺達は門を抜けて屋敷へと到着。
そのまま来客を報せる魔動器《呼び鈴》を鳴らした。
「はいはい、こんな夜中にどちらさまでしょう?」
「もしやあなたは?」
すぐに母さんと同い年くらいのメイドさんと若い執事が出迎えてくれた。持ち回りで起きているのだろう。
「こんばんは。ウチの両親がここに居ると聞いて」
『こんばんはー!』
「まあ、大きなお魚……でもお話の通りですね。お休みになられているので、今日のところはお部屋にご案内しますね」
「ま、そうですよね……」
日本時間にして深夜2時半となれば起きている人間は少ない。
俺とフリンクは休んでからにしようと移動する。
「あ、そうだ。冷凍の魔動器はどこにありますか? 魚を獲って来たので、朝食にでも使ってもらえると」
「これは大漁ですな。承知しました、わたしめがお預かりしておきます。寝る前にお風呂に入られては?」
「あ、いいですか?」
「もちろんです。ではこちらへ――」
静まり返った屋敷内を歩き、浴場へと案内される俺とフリンク。
海での汚れを落とせるのはいいなと浮足立っていたが、さらに度肝を抜かれる事態に遭遇した。
『わああ』
自宅の狭いお風呂ではなく、フリンクが少し泳げるくらいの広さを持った浴槽だったからだ。
「ごゆるりと」
「こりゃいいや」
『いやっほぉぉう』
温度も熱すぎず、少しぬるいくらいなので今の時期にはちょうどいい。さっとかけ湯をしてフリンクと俺自身を磨く。
『あ……ああー……そこだ、力いっぱい磨いてくれ……』
「顔も洗うぞ」
『頼む……』
フリンクを洗うとなると割と力仕事になるため滅多に磨いてやることは無い。
だけどこういう時くらいはいいだろう。
よく洗い流してから湯船へと入った。
「ふう……」
『ほう……』
ぷかりと浮いたフリンクの背中にタオルを乗せてやる。
『なあ、レン』
「なんだー?」
すると寄って来てから俺に告げる。
『俺達のことを世に知らしめてもいいんじゃあないか? 力を貸せば見返りもある。この風呂もそうだし、屋敷に引っ越したということは両親は今後ここに住むということだ。もっと楽をさせてやれるかもしれん』
「キャンプから帰ってまだ少ししか経っていないのにもう裏切るのか!?」
流暢に俺を説得しにかかってきたな。
だけど、まあこれを見せられたらフリンクは我儘を言うだろうとは思っていた。それにその権利も有している。
もっと川や海に出たいというのはあるだろう。いまでこそこんななりだけど、最初は手のひらサイズだったと母さんが言っていた。
そのころは目立たなかったから、両親や俺とあちこち遊びに行っていた時期もあったのである。
大きくなってからは俺が出歩くことを止めたので村での生活にシフトした。こいつを出さないなら俺も出ないと決めて。
「……いや、そうだな」
『どうしたレン? 冗談だぞ』
「分かっているよ」
そんなことはいつも一緒にいる俺が一番わかっている。フリンクはつき従ってくれるからだ。
『?』
鼻を撫でてやると不思議そうな顔で身をよじらせていた。
「……17歳か」
この世界は16で成人扱いとなるため、俺ももう立派な成人ということになる。
そんなことを考えながら風呂にゆっくり浸かり、ベッドで休んだ。
そして翌朝――
「レン、帰って来たのね」
「んおお……まだ寝かせてくれ……昨日は遅かったんだ……」
「ダメだ。ローク様達を待たせているからな。話をするぞ」
「ああ、そうか……」
カイさんがここに居るならローク様も居て然るべきかと体を起こす。
『ふごー』
揺すっても起きそうにないフリンクは俺が抱えて持って行くことにして、顔を洗ってから通路へと出た。
「あら、フリンクはまだ寝ているの?」
「遅かったし、風呂ではしゃいだからなあ」
「持つわよ」
「ありがとう母さん」
「それじゃ行くか」
俺がフリンクはを渡すと『大きくなったわねえ』と苦笑していた。父さんと並んで歩き出すと俺に話しかけて来た。
「驚いたと思うが、この屋敷は正式にウチの……というよりお前のものとなった。帰ってくるまで引っ越しはしないつもりだったんだけど、カイ様がどっきりさせましょうと言ってきかなくてな」
「そうだったのか……」
なんかもっと深い理由があるのかと思ったらただのどっきりだった……
脱力した俺が首を振っていると、後ろに居る母さんも口を開く。
「メイドさん達も引き払うみたいなのよ。私達だけだとちょっと広いし、落ち着かないけどキッチンとお風呂がすごくいいの」
「風呂は良かったなあ確かに。キッチンは専属のコックとかが居るようなところだし、そりゃいいだろ」
「これなら何でも作れるわ。それにいい馬車も貰ったからお父さんの仕事も捗るし」
「ハリソンも厩舎でのんびりしているぞ」
なんだかんだで喜んでいるらしい。
……さて、ローク様、というより、恐らく一緒にいるであろうサーラがなんの話をしてくるかが鍵だな。
「こんばんは、ここにカイさんと俺の両親が居ると聞いて」
「お、君の名前は?」
「レンです」
『フリンクなんだよ!』
「おう!? でかい!?」
一度見たことあるんだけど、記憶を消しているから初遭遇になるのか。
夜中に見たら確かに驚くよな。
村祭りの夜に焚火に浮かび上がるフリンクの影でガキどもがビビリ散らかしていたのを思い出す。ぼんやりと炎に揺られて浮かぶフリンクはまあまあ怖い。
「ふう……と、とりあえずお話は聞いているから入っていいぞ」
「ありがとうございます」
『ありがとー』
俺達は門を抜けて屋敷へと到着。
そのまま来客を報せる魔動器《呼び鈴》を鳴らした。
「はいはい、こんな夜中にどちらさまでしょう?」
「もしやあなたは?」
すぐに母さんと同い年くらいのメイドさんと若い執事が出迎えてくれた。持ち回りで起きているのだろう。
「こんばんは。ウチの両親がここに居ると聞いて」
『こんばんはー!』
「まあ、大きなお魚……でもお話の通りですね。お休みになられているので、今日のところはお部屋にご案内しますね」
「ま、そうですよね……」
日本時間にして深夜2時半となれば起きている人間は少ない。
俺とフリンクは休んでからにしようと移動する。
「あ、そうだ。冷凍の魔動器はどこにありますか? 魚を獲って来たので、朝食にでも使ってもらえると」
「これは大漁ですな。承知しました、わたしめがお預かりしておきます。寝る前にお風呂に入られては?」
「あ、いいですか?」
「もちろんです。ではこちらへ――」
静まり返った屋敷内を歩き、浴場へと案内される俺とフリンク。
海での汚れを落とせるのはいいなと浮足立っていたが、さらに度肝を抜かれる事態に遭遇した。
『わああ』
自宅の狭いお風呂ではなく、フリンクが少し泳げるくらいの広さを持った浴槽だったからだ。
「ごゆるりと」
「こりゃいいや」
『いやっほぉぉう』
温度も熱すぎず、少しぬるいくらいなので今の時期にはちょうどいい。さっとかけ湯をしてフリンクと俺自身を磨く。
『あ……ああー……そこだ、力いっぱい磨いてくれ……』
「顔も洗うぞ」
『頼む……』
フリンクを洗うとなると割と力仕事になるため滅多に磨いてやることは無い。
だけどこういう時くらいはいいだろう。
よく洗い流してから湯船へと入った。
「ふう……」
『ほう……』
ぷかりと浮いたフリンクの背中にタオルを乗せてやる。
『なあ、レン』
「なんだー?」
すると寄って来てから俺に告げる。
『俺達のことを世に知らしめてもいいんじゃあないか? 力を貸せば見返りもある。この風呂もそうだし、屋敷に引っ越したということは両親は今後ここに住むということだ。もっと楽をさせてやれるかもしれん』
「キャンプから帰ってまだ少ししか経っていないのにもう裏切るのか!?」
流暢に俺を説得しにかかってきたな。
だけど、まあこれを見せられたらフリンクは我儘を言うだろうとは思っていた。それにその権利も有している。
もっと川や海に出たいというのはあるだろう。いまでこそこんななりだけど、最初は手のひらサイズだったと母さんが言っていた。
そのころは目立たなかったから、両親や俺とあちこち遊びに行っていた時期もあったのである。
大きくなってからは俺が出歩くことを止めたので村での生活にシフトした。こいつを出さないなら俺も出ないと決めて。
「……いや、そうだな」
『どうしたレン? 冗談だぞ』
「分かっているよ」
そんなことはいつも一緒にいる俺が一番わかっている。フリンクはつき従ってくれるからだ。
『?』
鼻を撫でてやると不思議そうな顔で身をよじらせていた。
「……17歳か」
この世界は16で成人扱いとなるため、俺ももう立派な成人ということになる。
そんなことを考えながら風呂にゆっくり浸かり、ベッドで休んだ。
そして翌朝――
「レン、帰って来たのね」
「んおお……まだ寝かせてくれ……昨日は遅かったんだ……」
「ダメだ。ローク様達を待たせているからな。話をするぞ」
「ああ、そうか……」
カイさんがここに居るならローク様も居て然るべきかと体を起こす。
『ふごー』
揺すっても起きそうにないフリンクは俺が抱えて持って行くことにして、顔を洗ってから通路へと出た。
「あら、フリンクはまだ寝ているの?」
「遅かったし、風呂ではしゃいだからなあ」
「持つわよ」
「ありがとう母さん」
「それじゃ行くか」
俺がフリンクはを渡すと『大きくなったわねえ』と苦笑していた。父さんと並んで歩き出すと俺に話しかけて来た。
「驚いたと思うが、この屋敷は正式にウチの……というよりお前のものとなった。帰ってくるまで引っ越しはしないつもりだったんだけど、カイ様がどっきりさせましょうと言ってきかなくてな」
「そうだったのか……」
なんかもっと深い理由があるのかと思ったらただのどっきりだった……
脱力した俺が首を振っていると、後ろに居る母さんも口を開く。
「メイドさん達も引き払うみたいなのよ。私達だけだとちょっと広いし、落ち着かないけどキッチンとお風呂がすごくいいの」
「風呂は良かったなあ確かに。キッチンは専属のコックとかが居るようなところだし、そりゃいいだろ」
「これなら何でも作れるわ。それにいい馬車も貰ったからお父さんの仕事も捗るし」
「ハリソンも厩舎でのんびりしているぞ」
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