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第30話 大団円……?
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――植物の魔物を倒した後、現状を説明するため俺だけ屋敷に戻った。
念のためあれが復活などしないよう、フリンクに見張ってもらっている形だ。
「――ということで、恐らく原因はその魔物かと」
「なんと……! 倒したのか、さすがと言わねばならんな……」
「倒した場所まで案内してくれるのだな?」
「もちろんです。念のため戦える人もいるといいかもしれません」
「ギルドで冒険者を呼ぼう」
ローク様に報告をすると、セキトさんが現場に案内してくれと言ってきた。
もちろん断る理由はないので頷いておいた。
メンバーはセキトさんとセバスさん、それとギルドの冒険者を数人という編成で再びフリンクの下へと戻った。
「こいつです」
「派手に燃えてるな……」
『あ、帰って来た! 一応、根っこを掘り返してズタズタにしておいたよ』
「おう!? なんだこいつ……!?」
「ああ、俺の相棒です。まだ頭は原型が残っているかな」
「いや、こんなでかくて口のある花は居ないから魔物で間違いないだろう。ギルドマスター、すみませんがサンプルを回収してもらえますか?」
セキトさんが息を飲み、花弁のある頭部分の回収をお願いしていた。冒険者さんには申し訳ないがフリンクの記憶は後で消すつもりだから紹介は適当だ。
しばらく現場は騒然となり、似たような魔物の変異種か? といったようなワードが耳に入る。
「これを宮廷魔法使い様に渡して調査依頼だな」
「そちらはお任せします」
「承知しました。カイ様がこれで治ると良いですな」
「まだわからないが期待したい」
俺を見てセキトさんが不敵に笑う。嫌味な感じではなく、信頼してくれている視線だ。倒した甲斐があったというものだ。
で、このサンプルは宮廷魔法使い様に渡して対策を考えてもらうとのこと。
一通り作業が終わってからこの場を撤収し、再び屋敷へと戻って来た。
ギルドに入る際に冒険者からフリンクの記憶は消させてもらう。
「あ……! レンさん!」
「お、カイさん。体調はどうです?」
「少し咳は出ますけど、身体の怠さは取れました! 部屋に入っても違和感がなくなりましたよ」
「それは良かった……! どれ……」
俺が結界を張ってみると――
『あ、少しまだ侵食されるけど消される程じゃないね』
「だな。これで俺の目的も果たせたか……」
イルカ・アイでカイさんを確認すると、まだ胸の辺りに危険信号は出ていた。
これから徐々に治っていくのか、治療を施さないといけないのかはわからないけど、ひとまず大丈夫だろう。
指輪は宮廷魔法使い様に報告してから外すつもりらしい。賢明な判断だ。
……しかし謎は残る。
勢いで倒してしまったけど、あの植物魔物がどうして自分の分身のようなものを観葉植物の鉢へ残すことができたのかが特に。
「今、セバスに調査させていますがあれはわたくしが買って部屋に置いたのです。購入したお店、それともその前からあったのか……」
「無差別に狙ったのだとしたら恐ろしいですね……」
カイさんが狙われる理由はないということで無差別テロの可能性を考えていた。
だけど、本当にそうだろうか。
侯爵家の子息が怪しい気もするけど、二年接触無しだしなあ……
「後はこちらで出来る限り調査をしてみるよ。観葉植物は処分したいが、宮廷魔法使い様に見せてみることにする」
「あ、確かにそれも必要ですね」
『ま、カイはこれでひとまず安心だと思うし良かった良かった♪ それじゃみんなの記憶を消して帰ろうか』
「「「え!?」」」
フリンクがあくびをしながら明るく言い、バートリィ家の人々が驚愕した。
黙って消すつもりだったから余計なことをと思う。
「もうすでに共に過ごした者達だ、それはしなくてもいいんじゃないか?」
「フリンクを愛でた記憶がなくなる、と? それは嫌ですわね」
「そ、そうですよ! 治ったという事実に矛盾ができるじゃないですか!」
「まあ、そこはギャ……セバスさんがなんとかしたとかで納得してくれればいいかな、と」
「わたくしめはそんなに万能ではございませんぞ……」
俺の言葉に不満があがる。
しかしここはぴしゃりと言い放つことにした。
「俺の目的は村の平穏でしたからね。フリンクと俺のことが外に漏れないためにも決行します」
「むう……そうなると報酬は」
「無しで大丈夫です。数日、ここでお世話になりましたからね」
「そんな……」
「屋敷を建てたのに治る手はずが整ったのが申し訳ないくらいですよ」
「娘の恩人がなにをいうか。これでは気が済まないぞ」
みんないい人達だ。俺達の記憶なんてなくても困らないだろうに。
こういう時は貴族らしく『報酬を渡さずラッキーだった』とでも言ってくれた方が楽だなあ。
「では荷物をまとめてきます」
『僕、早く着ぐるみを脱ぎたいよー』
出発の準備をしに戻るため、俺達は頭を下げて借りていた部屋へと足を運ぶ。
◆ ◇ ◆
「ううむ、謎の魔物を打倒してカイの病気の原因も突き止めた。そんな彼をこのまま忘れ去るのか……」
「わたくしは嫌ですよ、せっかく合格できる者が現れたというのに」
「でも、恐らく気づいた時にはもう遅いんじゃないかしら……」
レン達が出て行った後、バートリィ家の人間達は冷や汗をかきながら話し合いをしていた。
屋敷が無駄になることよりも礼を尽くせないのが貴族の恥ではないかと不満を漏らす。
「誰か記憶を残せる者は――」
アリシャがそう口にした瞬間、
「……記憶? どうしてわたくし記憶の話をしていたのかしら……?」
「えっと……なんででしょう……?」
その場に居た者達からレンとフリンクの記憶が失われた。
だが――
「(お嬢様達の記憶が消えた? レンさんのことをわたしは覚えている……もう一人居たようなきもしますが――)」
何度か消されていたサーナだけは耐性がついたのか、微かにレンのことだけは覚えていた。
◆ ◇ ◆
「町全体の人間の記憶から俺達のことだけ消しておいた。これでいいだろ」
部屋に戻って荷物を回収した俺達はそのまま窓の外へと飛び出して町の遥か上空にいた。移動する際にイルカアローを放っておいたので記憶は全員消えている。
『いいのか、黙って出てきて』
「どうせ忘れちまうんだ。構わないよ」
『でもカイの身体が治ったことについて謎が残らないか?』
「そこは冒険者達が証拠を持っているし、彼等がやったと思ってもらうしかないな。なあに、治ったことが重要だ。その内どうでもよくなるさ」
『レンがそれでいいなら、俺は構わない。さて、なら久しぶりに村へ帰るか』
「結界も張り直さないとな」
『着ぐるみも脱ぎたいぜ……』
俺達はそんな話をしながら村へと戻っていく。
これで一件落着で、またいつもの日常が戻るだろう――
念のためあれが復活などしないよう、フリンクに見張ってもらっている形だ。
「――ということで、恐らく原因はその魔物かと」
「なんと……! 倒したのか、さすがと言わねばならんな……」
「倒した場所まで案内してくれるのだな?」
「もちろんです。念のため戦える人もいるといいかもしれません」
「ギルドで冒険者を呼ぼう」
ローク様に報告をすると、セキトさんが現場に案内してくれと言ってきた。
もちろん断る理由はないので頷いておいた。
メンバーはセキトさんとセバスさん、それとギルドの冒険者を数人という編成で再びフリンクの下へと戻った。
「こいつです」
「派手に燃えてるな……」
『あ、帰って来た! 一応、根っこを掘り返してズタズタにしておいたよ』
「おう!? なんだこいつ……!?」
「ああ、俺の相棒です。まだ頭は原型が残っているかな」
「いや、こんなでかくて口のある花は居ないから魔物で間違いないだろう。ギルドマスター、すみませんがサンプルを回収してもらえますか?」
セキトさんが息を飲み、花弁のある頭部分の回収をお願いしていた。冒険者さんには申し訳ないがフリンクの記憶は後で消すつもりだから紹介は適当だ。
しばらく現場は騒然となり、似たような魔物の変異種か? といったようなワードが耳に入る。
「これを宮廷魔法使い様に渡して調査依頼だな」
「そちらはお任せします」
「承知しました。カイ様がこれで治ると良いですな」
「まだわからないが期待したい」
俺を見てセキトさんが不敵に笑う。嫌味な感じではなく、信頼してくれている視線だ。倒した甲斐があったというものだ。
で、このサンプルは宮廷魔法使い様に渡して対策を考えてもらうとのこと。
一通り作業が終わってからこの場を撤収し、再び屋敷へと戻って来た。
ギルドに入る際に冒険者からフリンクの記憶は消させてもらう。
「あ……! レンさん!」
「お、カイさん。体調はどうです?」
「少し咳は出ますけど、身体の怠さは取れました! 部屋に入っても違和感がなくなりましたよ」
「それは良かった……! どれ……」
俺が結界を張ってみると――
『あ、少しまだ侵食されるけど消される程じゃないね』
「だな。これで俺の目的も果たせたか……」
イルカ・アイでカイさんを確認すると、まだ胸の辺りに危険信号は出ていた。
これから徐々に治っていくのか、治療を施さないといけないのかはわからないけど、ひとまず大丈夫だろう。
指輪は宮廷魔法使い様に報告してから外すつもりらしい。賢明な判断だ。
……しかし謎は残る。
勢いで倒してしまったけど、あの植物魔物がどうして自分の分身のようなものを観葉植物の鉢へ残すことができたのかが特に。
「今、セバスに調査させていますがあれはわたくしが買って部屋に置いたのです。購入したお店、それともその前からあったのか……」
「無差別に狙ったのだとしたら恐ろしいですね……」
カイさんが狙われる理由はないということで無差別テロの可能性を考えていた。
だけど、本当にそうだろうか。
侯爵家の子息が怪しい気もするけど、二年接触無しだしなあ……
「後はこちらで出来る限り調査をしてみるよ。観葉植物は処分したいが、宮廷魔法使い様に見せてみることにする」
「あ、確かにそれも必要ですね」
『ま、カイはこれでひとまず安心だと思うし良かった良かった♪ それじゃみんなの記憶を消して帰ろうか』
「「「え!?」」」
フリンクがあくびをしながら明るく言い、バートリィ家の人々が驚愕した。
黙って消すつもりだったから余計なことをと思う。
「もうすでに共に過ごした者達だ、それはしなくてもいいんじゃないか?」
「フリンクを愛でた記憶がなくなる、と? それは嫌ですわね」
「そ、そうですよ! 治ったという事実に矛盾ができるじゃないですか!」
「まあ、そこはギャ……セバスさんがなんとかしたとかで納得してくれればいいかな、と」
「わたくしめはそんなに万能ではございませんぞ……」
俺の言葉に不満があがる。
しかしここはぴしゃりと言い放つことにした。
「俺の目的は村の平穏でしたからね。フリンクと俺のことが外に漏れないためにも決行します」
「むう……そうなると報酬は」
「無しで大丈夫です。数日、ここでお世話になりましたからね」
「そんな……」
「屋敷を建てたのに治る手はずが整ったのが申し訳ないくらいですよ」
「娘の恩人がなにをいうか。これでは気が済まないぞ」
みんないい人達だ。俺達の記憶なんてなくても困らないだろうに。
こういう時は貴族らしく『報酬を渡さずラッキーだった』とでも言ってくれた方が楽だなあ。
「では荷物をまとめてきます」
『僕、早く着ぐるみを脱ぎたいよー』
出発の準備をしに戻るため、俺達は頭を下げて借りていた部屋へと足を運ぶ。
◆ ◇ ◆
「ううむ、謎の魔物を打倒してカイの病気の原因も突き止めた。そんな彼をこのまま忘れ去るのか……」
「わたくしは嫌ですよ、せっかく合格できる者が現れたというのに」
「でも、恐らく気づいた時にはもう遅いんじゃないかしら……」
レン達が出て行った後、バートリィ家の人間達は冷や汗をかきながら話し合いをしていた。
屋敷が無駄になることよりも礼を尽くせないのが貴族の恥ではないかと不満を漏らす。
「誰か記憶を残せる者は――」
アリシャがそう口にした瞬間、
「……記憶? どうしてわたくし記憶の話をしていたのかしら……?」
「えっと……なんででしょう……?」
その場に居た者達からレンとフリンクの記憶が失われた。
だが――
「(お嬢様達の記憶が消えた? レンさんのことをわたしは覚えている……もう一人居たようなきもしますが――)」
何度か消されていたサーナだけは耐性がついたのか、微かにレンのことだけは覚えていた。
◆ ◇ ◆
「町全体の人間の記憶から俺達のことだけ消しておいた。これでいいだろ」
部屋に戻って荷物を回収した俺達はそのまま窓の外へと飛び出して町の遥か上空にいた。移動する際にイルカアローを放っておいたので記憶は全員消えている。
『いいのか、黙って出てきて』
「どうせ忘れちまうんだ。構わないよ」
『でもカイの身体が治ったことについて謎が残らないか?』
「そこは冒険者達が証拠を持っているし、彼等がやったと思ってもらうしかないな。なあに、治ったことが重要だ。その内どうでもよくなるさ」
『レンがそれでいいなら、俺は構わない。さて、なら久しぶりに村へ帰るか』
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