イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

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第29話 植物魔物との戦い

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「これなら……!」

 俺のイルカビームは本気でやれば山が消し飛ぶレベルで撃てる。それを撃つわけにはいかないのでかなり威力を抑えている。
 それでも一撃で倒せるはず……

「オォォォン!」
「あまり効いていない!?」
『植物に水は効きにくいのだろう。こういう魔物と戦うのは初めてだしな』

 フリンクが蔦を尻尾で弾きながらそんなことを言う。あの尾っぽも威力が段違いだけど、骨の無い植物には決定的なダメージが通っていないように見えた。

『だが、これならどうだ?』

 そこでフリンクが取った手は空に飛んでからのイルカカッターだった。防御力はどの程度か? 鋭い水の刃が植物の魔物を襲う。

「ギィシャシャ!」
「いける!」

 上から放ったイルカカッターは伸びている触手をばっさりと落とした。ビームも収束したものを放ったが穿つより斬る方がこいつには効くらしい。
 一瞬だが、ビームを葉っぱで散らすのが見えたからだろう。

「<イルカカッター>!」
「ギィ……!」
「よし!」
『こちらも!』

 俺とフリンクの魔法が伸びてきた鋭い蔦を斬り裂き、数を減らしていく。すると植物の魔物の動きが変わる。

『動く……!』
「大人しくしているタイプじゃないのかよ……!?」

 地面をえぐりながら後退していくのが見え、俺は慌ててイルカカッターを撃ちながら接近を試みる。右手の剣も向かってくる蔦を斬り裂いていく。

『迂闊だぞレン』
「だけどこのまま逃がすわけには……うわ!?」

 フリンクの言葉に返していると急に足を取られた。倒れた先にキノコが生えて来て破裂した。胞子かカビか分からないものをばら撒いたので俺はイルカビームでなぎ倒していく。やはりあれもこいつの仕業か!

「水で口をブロックすれば――」
『レン! ……む!』
「なんだ? 地面から抜けでた!? フリンク!」
『チッ、迂闊なのは俺もか……! 逃げたのではないな、距離をとっただけか。周辺はこいつの蔦が届く結界のような感じだ』
「らしいな……! そして再生もする、と」

 足に絡みついた蔦を剣で切ってから自由になると、そのままフリンクに巻き付いた蔦も切ってやる。
 全方位に集中しながらあれを倒せってことか。しかし再生をするというのは厄介だな。

『さて、どうする?』
「……」

 フリンクが少し高めに浮かび上がりながらそう言う。俺はそれに答えず、不意にイルカビームをぶっ放した。

「ギィエァァァァ!」
『避けたか……』
「いや、それは織り込み済みだ! これははどうだ!?」

 俺はさらに花と地面に両手でイルカビームを放った。すると花の方は回避しただけだが、地面の方は葉と蔦を使い強固なブロックをした。
 だが、威力を手加減していないためそれらを貫いて地面に着弾する。

「ギィィィ……」
「やっぱりか。だけどどうするかな」
『なんだ? 説明しろ』
 
 フリンクが頭の上で蔦を払いながら尋ねてくる。俺は距離を取りながらイルカカッターで迎撃をしていく。

「こいつは移動できるがあくまでも植物。根を絶やせば活動できなくなるってことだ」
『そういうことか』

 地面のガードが硬いのはそのせいだた。俺は確認のため撃ったがビンゴだったってわけ。

「そして俺もイルカ魔法だけ使えるってわけじゃないんでな! <ファイヤーボール>」
「……ギ!?」

 剣の先から炎の塊が飛び出して魔物へと一直線に向かう。威力はイルカビームやカッターの方が高いが、ガードしても燃え移るこっちの方が効率がいい。

「よく狙えよフリンク! <グランドバンプ>!」
『おお!』

 俺の土魔法で地面が隆起した。すると魔物も地面に押し上げられて土の下にあった身体をさらす。

「キ……ギイィィ……!」
「ん!?」
『イルカカッター!』

 瞬間、魔物は花ビラを揺らし花粉をばら撒いてきた。しかし直前で放ったフリンクのイルカカッターが頭と同じ部分になる花ビラをバッサリと斬った。

「花粉か……!? くっ……」
『大丈夫かレン!』
「麻痺性のやつだな……! 痺れる前に――」

 状態異常は加護があるせいか、かなり効きにくい身体のようだ。だけど完全にブロックされるわけではなさそうだ。これはひとつ勉強になったな。
 俺はそんなことを考えながら出てきた魔物の根にファイヤーボールで攻撃した。
 フリンクの攻撃で上に気を取られていたのであっさりとヒットして燃え上がる。
 
「ギィィィィィ……!?」
「悪いな、カイさんの病気の原因は取り除かせてもらうぜ。<グランドバンプ>!」
『出てきたな。イルカカッターでバラすぞ』

 すぐに追い打ちでグランドバンプで全体を掘り起こし、フリンクがバラバラにした後、ファイヤーボールでそれこそ根こそぎ燃やし尽くした。

「ギ……ギ……」
「……ふう」
『終わったか?』
「多分……いや、結構手ごわかったな」
『俺達は村から出ていないからあまり珍しい魔物とは会わないからな』

 確かにフリンクの言う通りか。まあ、平穏の方が大事だが……今後、変な魔物が村に来たら困るよな。

「お、魔力の粒子が消えたな」
『しかし、こいつはどこであの観葉植物に種子を潜ませたのか気になるな』
「それはあるな。カビとの関連性も調べたかったんだけど、とりあえずひとまずは良かったと考えるべきか?」
『あのまま観葉植物を置いていたら他の人間に寄生していたかもしれんからな』

 村に来たカイさんの代わりを探しそうだもんな。
 一応、燃えカスは調べるか。
 そう思いつつ、燃え尽きるのを待つ俺とフリンクだった。
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