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第26話 事件は現場で起きている……はずなんだけど?
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「レンさん? 目が……」
「ん? ああ、ちょっと特殊な魔法を使っているんだ。お試し能力をするつもりだからどうなるかは分からないけど」
『僕も僕も』
「あ、本当だわ」
イルカ・アイを使っている間は目の色が青に近い水色のようなカラーに変わる。あんまり使わないのでこれを見たことがある人間はそう多くない。
さて、このイルカ・アイという魔法は前にもあったが、ガキ共を助けるため千里眼のような役目があり、ちょっとチャンネルを変えれば透視能力にもなる。
この切り替え能力を他に切り替えられないだろうかという実験を兼ねてみようと思ったのだ。
「……」
「ど、どうですか? けほっ」
『うーん……』
今回、試してみようと提案したのは『色』である。
例えば、そうだな……なにか俺やフリンクが『危険』だと思うものがあればそれが赤に変わるといった感じだ。
『視える』ものを変えたらどうだろうという実験だな。
『こっちは見えないね』
「部屋の中にはないのか……?」
変わったのは観葉植物と侯爵家の御子息の訪問の二つ。観葉植物が一番怪しいと思ったけど特に赤く見えたりはしない。
「ふむ」
「どう……?」
『あ! カイを見てごらんよレン』
「ん?」
フリンクが空中で飛び跳ねながら俺を呼ぶ。言われた通りにそちらに視線を合わせると――
「む……!?」
「な、なんですか!?」
「胸の辺りが赤く光っている……?」
「ひゃ!?」
「あ、申し訳ない!?」
胸をまじまじと見ていたらそりゃおかしなやつだと思われてしまうよな!? 慌てて顔を背けると、カイさんは困惑しながら口を開く。
「い、いえ、大丈夫……です。赤い、というのは?」
「あ、そうだ! ええっとですね、今、俺の目で『危険』を見ることが出来るんですがカイさんの胸が危険だと知らせてくれていたんです」
「私の胸が、ですか? ごほっ……」
「はい」
『やっぱり病気なのかな? ……それにしてはピンポイントな気がするけど』
フリンクが言うようにあの辺りは恐らく肺。
肺炎のような病気だろうか? しかし、医療技術がまだまだ未発達と言っていいレベルなのでこれを確認するのは難しいかもしれない。
「このことを宮廷魔法使い様に教えればもしかしたら打開策を考えてくれるかもしれませんね」
「そうですね! 今までなにも分からなかったところでこの情報はとても貴重だと思います」
『後はそれがなんなのか、というのを調べないとね。手術とかになるのかな??』
「胸を切開するのはあまりいい気はしないけど……」
手術で治るかどうかも分からないしな。
だけどカイさんの身体に異変があるのがわかったのは僥倖だ……と言いたいところなんだが、そもそも体調を崩しているので異変があるのは当然である。
良かったことと言えばどの部位が悪いのかが特定できたくらいか……?
「こほっ……ごほっ……他にはなにかわかりそう、ですか?」
「もうちょっと見てみないことには……って、咳が酷くなってきましたね!?」
「ごほ……自室に来ると特に酷くなるんです。ちょっと外の空気を吸いましょうか」
そう言ってカイさんは窓の外に顔を出す。だけど、咳が止まる様子はない。
「部屋がダメならここを離れましょう。寝るときはどうしているんですか?」
「サーナの部屋は大丈夫なので、彼女と寝ていますよ。ごほごほ……」
『部屋を出よう。顔色が悪くなってきたよ』
「そうだな」
咳き込みが激しくなったのでカイさんをフリンクに乗せて部屋から出すと、俺だけ部屋に残って扉を閉めた。
「他にも少し調べさせてもらうか」
透視能力と一緒には使えないため、引き出しや机の棚などを開けさせてもらい確認をしていく。
しかし現場ではそれらしいものが見つけられなかった。
「こほ……どうでしたか?」
「原因があるとしたらここだと思うんですけど、今回は見つけられませんでしたね」「今回は?」
「イルカ・アイの能力自体、初挑戦のものだからもう少し精度を上げる必要があるかもしれません」
「わかりました」
「一応、時間もあるし他の部屋や厨房なども見せてもらっていいですか?」
次に怪しいとすれば食事だ。食堂に来た時点で誰のお皿か用意されていることも多いため毒物を入れるのは難しくない……
そのまま浴室や侯爵家が泊ったという客室など見て回ったけど特にそれらしい痕跡はなかった。
『まあ、二年前だしねえ。あ、そういえばカイの部屋にパンツはあった?』
「ま!」
「そういうのは止めろ! 追い出されるだろ!?」
と、そんな話をしながら屋敷内をウロウロしていると、サーナが俺達のところへやってきた。
「お嬢様、レンさん、フリンクさんお昼ですよー」
「サーナ、お掃除は終わったのですか?」
「も、もちろんですよ……! まったく、自分のアプローチすればいいのに……」
「なにか?」
「なんでもありましぇぇん!?」
『あはは、サーナは面白いなあ』
まあサーナは調子に乗って痛い目を見るタイプなのはここまでの行動でよく分かっている。今朝の件も俺が悪いヤツなら襲われてもおかしくない挑発だしな。
カイさんも本気で怒っているわけではなさそうだけどな。
食堂へ行き、俺達が席に着くとサーナが言う。
「それじゃ配膳をしますね」
「お前かい!」
「え!? なんです!?」
いやいや、思わずツッコミを入れてしまったが事件は厨房で起こっているのかも……?
と、その後に厨房も見せてもらったけど陽気なコックさん達がいるだけでそれらしいものはやはりなかった。精度をあげないとダメだろうか。
そして――
「ん? ああ、ちょっと特殊な魔法を使っているんだ。お試し能力をするつもりだからどうなるかは分からないけど」
『僕も僕も』
「あ、本当だわ」
イルカ・アイを使っている間は目の色が青に近い水色のようなカラーに変わる。あんまり使わないのでこれを見たことがある人間はそう多くない。
さて、このイルカ・アイという魔法は前にもあったが、ガキ共を助けるため千里眼のような役目があり、ちょっとチャンネルを変えれば透視能力にもなる。
この切り替え能力を他に切り替えられないだろうかという実験を兼ねてみようと思ったのだ。
「……」
「ど、どうですか? けほっ」
『うーん……』
今回、試してみようと提案したのは『色』である。
例えば、そうだな……なにか俺やフリンクが『危険』だと思うものがあればそれが赤に変わるといった感じだ。
『視える』ものを変えたらどうだろうという実験だな。
『こっちは見えないね』
「部屋の中にはないのか……?」
変わったのは観葉植物と侯爵家の御子息の訪問の二つ。観葉植物が一番怪しいと思ったけど特に赤く見えたりはしない。
「ふむ」
「どう……?」
『あ! カイを見てごらんよレン』
「ん?」
フリンクが空中で飛び跳ねながら俺を呼ぶ。言われた通りにそちらに視線を合わせると――
「む……!?」
「な、なんですか!?」
「胸の辺りが赤く光っている……?」
「ひゃ!?」
「あ、申し訳ない!?」
胸をまじまじと見ていたらそりゃおかしなやつだと思われてしまうよな!? 慌てて顔を背けると、カイさんは困惑しながら口を開く。
「い、いえ、大丈夫……です。赤い、というのは?」
「あ、そうだ! ええっとですね、今、俺の目で『危険』を見ることが出来るんですがカイさんの胸が危険だと知らせてくれていたんです」
「私の胸が、ですか? ごほっ……」
「はい」
『やっぱり病気なのかな? ……それにしてはピンポイントな気がするけど』
フリンクが言うようにあの辺りは恐らく肺。
肺炎のような病気だろうか? しかし、医療技術がまだまだ未発達と言っていいレベルなのでこれを確認するのは難しいかもしれない。
「このことを宮廷魔法使い様に教えればもしかしたら打開策を考えてくれるかもしれませんね」
「そうですね! 今までなにも分からなかったところでこの情報はとても貴重だと思います」
『後はそれがなんなのか、というのを調べないとね。手術とかになるのかな??』
「胸を切開するのはあまりいい気はしないけど……」
手術で治るかどうかも分からないしな。
だけどカイさんの身体に異変があるのがわかったのは僥倖だ……と言いたいところなんだが、そもそも体調を崩しているので異変があるのは当然である。
良かったことと言えばどの部位が悪いのかが特定できたくらいか……?
「こほっ……ごほっ……他にはなにかわかりそう、ですか?」
「もうちょっと見てみないことには……って、咳が酷くなってきましたね!?」
「ごほ……自室に来ると特に酷くなるんです。ちょっと外の空気を吸いましょうか」
そう言ってカイさんは窓の外に顔を出す。だけど、咳が止まる様子はない。
「部屋がダメならここを離れましょう。寝るときはどうしているんですか?」
「サーナの部屋は大丈夫なので、彼女と寝ていますよ。ごほごほ……」
『部屋を出よう。顔色が悪くなってきたよ』
「そうだな」
咳き込みが激しくなったのでカイさんをフリンクに乗せて部屋から出すと、俺だけ部屋に残って扉を閉めた。
「他にも少し調べさせてもらうか」
透視能力と一緒には使えないため、引き出しや机の棚などを開けさせてもらい確認をしていく。
しかし現場ではそれらしいものが見つけられなかった。
「こほ……どうでしたか?」
「原因があるとしたらここだと思うんですけど、今回は見つけられませんでしたね」「今回は?」
「イルカ・アイの能力自体、初挑戦のものだからもう少し精度を上げる必要があるかもしれません」
「わかりました」
「一応、時間もあるし他の部屋や厨房なども見せてもらっていいですか?」
次に怪しいとすれば食事だ。食堂に来た時点で誰のお皿か用意されていることも多いため毒物を入れるのは難しくない……
そのまま浴室や侯爵家が泊ったという客室など見て回ったけど特にそれらしい痕跡はなかった。
『まあ、二年前だしねえ。あ、そういえばカイの部屋にパンツはあった?』
「ま!」
「そういうのは止めろ! 追い出されるだろ!?」
と、そんな話をしながら屋敷内をウロウロしていると、サーナが俺達のところへやってきた。
「お嬢様、レンさん、フリンクさんお昼ですよー」
「サーナ、お掃除は終わったのですか?」
「も、もちろんですよ……! まったく、自分のアプローチすればいいのに……」
「なにか?」
「なんでもありましぇぇん!?」
『あはは、サーナは面白いなあ』
まあサーナは調子に乗って痛い目を見るタイプなのはここまでの行動でよく分かっている。今朝の件も俺が悪いヤツなら襲われてもおかしくない挑発だしな。
カイさんも本気で怒っているわけではなさそうだけどな。
食堂へ行き、俺達が席に着くとサーナが言う。
「それじゃ配膳をしますね」
「お前かい!」
「え!? なんです!?」
いやいや、思わずツッコミを入れてしまったが事件は厨房で起こっているのかも……?
と、その後に厨房も見せてもらったけど陽気なコックさん達がいるだけでそれらしいものはやはりなかった。精度をあげないとダメだろうか。
そして――
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