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第24話 合格!
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「えっと、これで大丈夫でしょうか?」
びっくりしているバートリィ家の方々に声をかけた。しばらく沈黙していたけど、最初に言い出しっぺのアリシャ様がハッと我に返った。
「ご……」
「ご?」
「合格ですわ……! まだ、他にも見るべきところはありますがひとまず合格ということにしておきます!」
「良かったですね!」
「良かった、のか?」
なにかに合格したらしいが、よく分からない……ただ、カイさんが喜んでいるのでこれ以上ツッコむのは野暮というものだろう。
「これは凄いですな。金属を加工することもできそうですぞ」
「村で一生を終えさせるには惜しい才能ですわね。まずは陛下に謁見を……」
「それが嫌だから記憶を消してるんだって!? 流石にツッコミが追い付かねえよ!」
「おお、レンさんが吠えた……」
サーナがパチパチと手を打っていた。そこで抱きかかえられているフリンクが口を開いた。
『まあ、外の世界はちょっと怖いからそういうのは止めて欲しいかな? 一応、僕もやっとくね』
そう言ってフリンクがふわりと浮いて、半分になって転がった大岩へ向かって口からイルカビームを発射。着弾と同時に破裂した。貫通力ではなく、範囲を広げて炸裂させたようだ。
俺と同じで後ろにまで貫通しないようにしていた。
ちなみにこれで威力は2割程度だったりする。全力を出すと山が吹き飛ぶ可能性があるので試したことはない……
「なるほど……精霊様だけあって、やりますわね」
『ふふん、もっと褒めていいよ!』
「調子に乗るなって」
俺はフリンクに近づいて吻をデコピンをする。その時、アリシャ様が微笑みながら口を開いた。
「では、セバス。お二人を部屋へ案内してあげなさい」
「かしこまりました。レン様、フリンク様どうぞこちらへ」
紳士な声だなと思いつつ、セバスさんにお礼を言う。
「ありがとうございます」
『やっと落ち着けるね』
フリンクがやれやれとため息をついて俺のところへ移動しようとしてきた。
しかし、その瞬間、アリシャ様に尻尾を掴まれて引き寄せられた。
『わああ!?』
「フリンクさんはわたくしが連れて行きます」
「お母様、フリンク様を独占するのはダメですよ?」
「この手ざわりがわたくしを狂わせるのです……」
答えになっていないが、まあ仲良くしてくれるなら構わないか。
『構うよ!?』
「お部屋まで我慢ですねえ」
「重ねてすまないな」
ローク様に謝ってもらい、フリンクも仕方ないと為すがままになっていた。
そういえばセキト様も同じような立場じゃなかったっけ?
「セキト様もセバス様と同じ、執事なんですか?」
「……様はいらん。『さん』でいい。そうだな、私はローク様専属の執事と思ってくれ。外に出る時や折衝の役割もする。セバスさんは奥様専属で、屋敷内の使用人ナンバー1のベテランだ」
「セキトさんも優秀ですよね。それでもセバスさんには頭が上がらないんです?」
サーナが意地悪く言うと、セキトさんは口をへの字にして言う。
「……さっきの大岩の用意もそうだが、どこかしらに謎のコネがある。そして昔は剣で食っていたこともあると聞いたことがあるぞ。馬車の御者、勉学、魔法といったあらゆる知識を持っていて、私では歯が立たんよ」
ロボットの操縦もできそうなくらいセバスさんは凄い人らしい。まあ、バートリィ家の人達も悪い人は居ないので仕えているのだろうけど。
「ではこちらのお部屋にお願い致します。客室なので、お風呂も中に備え付けられております。この魔法石にタッチをすると、わたしめか他のメイドなどを呼び出せますのでご活用ください」
「へえ、便利だな」
「今は私が触ると壊れるんですよね……」
魔力を放出しすぎているからか、カイさんが呼び出し魔法石に触ると砕け散るらしい。
それ以外でも魔動器は不具合を起こすなどあるそうな。結界が壊れるくらいだから影響はあると思ったが結構深刻だ。
『だから村に来たんだ』
「はい。自然が多いので魔力を取り込みやすく、魔動器も遠いところにあれば迷惑をかけないと思ったのです」
「結果的に結界を壊すことになってしまったが……」
「ぷふー」
「なんだ?」
「い、いえ、なんでも……」
ただの村にそんなものがあるとは思わないだろうし、そこは言及しない。
ひとまず、カイさんが町の人に迷惑をかけた上で、体調にも影響を及ぼすというのが分かった。結界以外でも村に謎影響を及ぼしたかもしれないと考えれば
「それではなにかありましたら声をかけてくださいね」
『部屋に入るから離してよー』
「残念ですわ……」
「不細工って言ってたのに……」
名残惜しそうなアリシャ様をカイさんが引っ張っていき、部屋の扉が静かに閉じた。
「……」
『なぜ、周囲を確認しているのだ?』
「あの眼鏡メイドが入り込んでいるかもしれんだろ」
『大丈夫ださりげなく尻尾でブロックしておいた』
「やるな」
サーナはなにをしでかすか分からないので警戒をして然るべきである。
なにもないことを確認し、部屋の鍵をかけたあと、長旅の疲れを癒すべくベッドへダイブする。
『ほおう、フカフカだぞフカフカ』
「家の硬いベッドとは大違いだな」
フリンクが柔らかいベッドにご満悦だった。まるでイルカショーの時のように飛び跳ねている。
「壊すなよ? さて、とりあえず明日から仕事だな」
『とはいっても話を聞くところからだろう?』
「それはそうなんだけど、カイさんの件で少し試したいことができたんだ」
そんな感じで疲労はあったが、まずはバートリィ家に入ることができた。
さて、俺の策とカイさんの話で原因が掴めるといいが――
ちなみに夕食時に聞いた話によると、合格できなかった場合は馬小屋だったとのこと。まあ馬小屋で寝るのも悪くはないんだけどな?
びっくりしているバートリィ家の方々に声をかけた。しばらく沈黙していたけど、最初に言い出しっぺのアリシャ様がハッと我に返った。
「ご……」
「ご?」
「合格ですわ……! まだ、他にも見るべきところはありますがひとまず合格ということにしておきます!」
「良かったですね!」
「良かった、のか?」
なにかに合格したらしいが、よく分からない……ただ、カイさんが喜んでいるのでこれ以上ツッコむのは野暮というものだろう。
「これは凄いですな。金属を加工することもできそうですぞ」
「村で一生を終えさせるには惜しい才能ですわね。まずは陛下に謁見を……」
「それが嫌だから記憶を消してるんだって!? 流石にツッコミが追い付かねえよ!」
「おお、レンさんが吠えた……」
サーナがパチパチと手を打っていた。そこで抱きかかえられているフリンクが口を開いた。
『まあ、外の世界はちょっと怖いからそういうのは止めて欲しいかな? 一応、僕もやっとくね』
そう言ってフリンクがふわりと浮いて、半分になって転がった大岩へ向かって口からイルカビームを発射。着弾と同時に破裂した。貫通力ではなく、範囲を広げて炸裂させたようだ。
俺と同じで後ろにまで貫通しないようにしていた。
ちなみにこれで威力は2割程度だったりする。全力を出すと山が吹き飛ぶ可能性があるので試したことはない……
「なるほど……精霊様だけあって、やりますわね」
『ふふん、もっと褒めていいよ!』
「調子に乗るなって」
俺はフリンクに近づいて吻をデコピンをする。その時、アリシャ様が微笑みながら口を開いた。
「では、セバス。お二人を部屋へ案内してあげなさい」
「かしこまりました。レン様、フリンク様どうぞこちらへ」
紳士な声だなと思いつつ、セバスさんにお礼を言う。
「ありがとうございます」
『やっと落ち着けるね』
フリンクがやれやれとため息をついて俺のところへ移動しようとしてきた。
しかし、その瞬間、アリシャ様に尻尾を掴まれて引き寄せられた。
『わああ!?』
「フリンクさんはわたくしが連れて行きます」
「お母様、フリンク様を独占するのはダメですよ?」
「この手ざわりがわたくしを狂わせるのです……」
答えになっていないが、まあ仲良くしてくれるなら構わないか。
『構うよ!?』
「お部屋まで我慢ですねえ」
「重ねてすまないな」
ローク様に謝ってもらい、フリンクも仕方ないと為すがままになっていた。
そういえばセキト様も同じような立場じゃなかったっけ?
「セキト様もセバス様と同じ、執事なんですか?」
「……様はいらん。『さん』でいい。そうだな、私はローク様専属の執事と思ってくれ。外に出る時や折衝の役割もする。セバスさんは奥様専属で、屋敷内の使用人ナンバー1のベテランだ」
「セキトさんも優秀ですよね。それでもセバスさんには頭が上がらないんです?」
サーナが意地悪く言うと、セキトさんは口をへの字にして言う。
「……さっきの大岩の用意もそうだが、どこかしらに謎のコネがある。そして昔は剣で食っていたこともあると聞いたことがあるぞ。馬車の御者、勉学、魔法といったあらゆる知識を持っていて、私では歯が立たんよ」
ロボットの操縦もできそうなくらいセバスさんは凄い人らしい。まあ、バートリィ家の人達も悪い人は居ないので仕えているのだろうけど。
「ではこちらのお部屋にお願い致します。客室なので、お風呂も中に備え付けられております。この魔法石にタッチをすると、わたしめか他のメイドなどを呼び出せますのでご活用ください」
「へえ、便利だな」
「今は私が触ると壊れるんですよね……」
魔力を放出しすぎているからか、カイさんが呼び出し魔法石に触ると砕け散るらしい。
それ以外でも魔動器は不具合を起こすなどあるそうな。結界が壊れるくらいだから影響はあると思ったが結構深刻だ。
『だから村に来たんだ』
「はい。自然が多いので魔力を取り込みやすく、魔動器も遠いところにあれば迷惑をかけないと思ったのです」
「結果的に結界を壊すことになってしまったが……」
「ぷふー」
「なんだ?」
「い、いえ、なんでも……」
ただの村にそんなものがあるとは思わないだろうし、そこは言及しない。
ひとまず、カイさんが町の人に迷惑をかけた上で、体調にも影響を及ぼすというのが分かった。結界以外でも村に謎影響を及ぼしたかもしれないと考えれば
「それではなにかありましたら声をかけてくださいね」
『部屋に入るから離してよー』
「残念ですわ……」
「不細工って言ってたのに……」
名残惜しそうなアリシャ様をカイさんが引っ張っていき、部屋の扉が静かに閉じた。
「……」
『なぜ、周囲を確認しているのだ?』
「あの眼鏡メイドが入り込んでいるかもしれんだろ」
『大丈夫ださりげなく尻尾でブロックしておいた』
「やるな」
サーナはなにをしでかすか分からないので警戒をして然るべきである。
なにもないことを確認し、部屋の鍵をかけたあと、長旅の疲れを癒すべくベッドへダイブする。
『ほおう、フカフカだぞフカフカ』
「家の硬いベッドとは大違いだな」
フリンクが柔らかいベッドにご満悦だった。まるでイルカショーの時のように飛び跳ねている。
「壊すなよ? さて、とりあえず明日から仕事だな」
『とはいっても話を聞くところからだろう?』
「それはそうなんだけど、カイさんの件で少し試したいことができたんだ」
そんな感じで疲労はあったが、まずはバートリィ家に入ることができた。
さて、俺の策とカイさんの話で原因が掴めるといいが――
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