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第23話 アリシャ様
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「そうですか、娘を助けるために」
「はい。なにか手がかりがあればと思い、お邪魔させていただきました」
「いいのよ、カイが療養に行っていつ帰ってくるかわからなかったし、ちょっと嬉しかったわ」
『ちょっと……?』
「ええ♪」
そんなこんなで関係者のみで応接室に入った後、カイさんの母親であるアリシャ様に事情を説明すると、納得してくれた。
娘が帰ってきたので嬉しい方が勝っているであろうというのは、カイさんに抱きついているアリシャ様を見たフリンクの反応で察して欲しい。
「もう、お母様。レンさんが驚いているじゃない。一旦離れて」
「ええ……」
「そんなに落ち込まなくても……」
「そうですわね。それで、その喋るぬいぐるみのフリンクと神の加護があるというレンさんのことは分かりました」
『僕はぬいぐるみじゃないからね! とりあえず屋敷を探索したいんだけどどうかなあ』
「そうですね……」
フリンクはヒレで俺の肩を叩きながら早速お仕事の話を口にした。とりあえずこいつが居るおかげで話が早いのは助かる。すると、アリシャ様が俺を見て口を開く。
「……地味ね。本当に神様の加護を持っているのかしら?」
「え? ええ、まあ……」
「そのぬいぐるみは喋るし、見た目以外は精霊っぽいけど、あなたはどんな力を持っているのかしら?」
「えっと……」
「なにかその力を見せることが出来るかと言っているのよ」
「お母様それは今、必要ないじゃない」
カイさんの言葉に俺も賛同だ。ローク様を見ると困った顔になっていた。よくあることなのかもしれない。
「すまない、妻は一度決めたらなかなか曲げなくてね」
「うーん、あまり目立ちたくないんですが……」
「なら記憶を消せばいいじゃないですか、何も知らないわたしにやったように……!」
「言い方。というかやむを得ない場合以外はやりたくないんだけどな?」
とはいえ鼻息を荒くしているアリシャ様を止めるのは難しいか。
「どちらにせよティータイムの時間も過ぎている。屋敷の散策は明日にしてもらおうと思っていたところだ。なにかできることがあれば見せてやってくれないか?」
「うーん、見た目通り地味なんですよね、俺……いや、私は」
『魔法でも見せて置けばいいじゃない? イルカ魔法』
「……あれでいくか」
「なにかあるのですね?」
カイさんの言葉に頷いてから、俺はそのための準備を要求する。
「大きな岩などがあるといいんですが、ご用意することは可能でしょうか?」
「岩とな?」
「はい。なるべく硬い方がいいですね」
「わかりました。少し待っていてください。セバス!」
「かしこまりました奥様」
指を鳴らすとスーツを着た初老の男性が頭を下げて応接室を出て行く。
〇ャリソン〇田みたいな声をしているな……
「もう、お母様ったら……恥ずかしいわ」
「母として連れて来た男性は見定めないといけません。あなたも親になればわかりますよ」
『娘を抱きしめながら真顔で言われてもねー』
「なんですかこの魚モドキ!」
『なんだって……! 子離れできないおばさん!』
売り言葉に買い言葉となり、お互い興奮状態で罵りあう。俺とカイさんは慌てて止めた。
「お母様!」
「アリシャ、やめなさい」
「フリンク、貴族の方に失礼だぞ」
ローク様も流石に黙って見てはおらず、窘めていた。そんなやり取りをしていると、セバスさんが帰って来た。
「奥様、準備ができました。庭へお越しください」
「ありがとうセバス。では参りましょうか」
「フリンク様は私が持って行きますね」
『おねがいー』
「……」
そしてぞろぞろと通路へ出ると、カイさんが抱えていたフリンクをアリシャ様が奪った。
『な!?』
「お母様、なにを!?」
どうするつもりだ……? すると険しい顔でフリンクを撫で始め、
「……!」
『……!』
その後、頬で感触を確かめ始めた。するとフリンクも目をカッと開き、なすがままになった。
「……なるほど、先ほどは無礼なことを言ってしまいごめんなさい」
『僕も言いすぎたよ、ごめんなさい』
そして二人はフッと笑い、握手を交わす。
「なんか仲直りしている……」
「ま、まあ、よく分からないが喧嘩しないならいいだろう」
「さあ、行きますわよ」
『おー』
「あ、ま、待て、お前喋るな!?」
よく考えたらぬいぐるみのフリをしてもらっているのに喋ったら意味ない!?
だが、止める間もなくアリシャ様はフリンクを抱えてスタスタと歩いて行ってしまった。
「なんだよ!?」
「ごめんなさい、レンさん。お母様は気に入った人や物をすぐ可愛がる癖があるの」
「そ、そうなんだ……」
「フリンク様を気にいったみたいですねえ」
サーナが難しい顔でそう呟きながら横をついてくる。まあ、喧嘩しないでいてくれるならいいかとカイさんとローク様に連れられて庭へと出た。
「あの短時間でこれを用意したのか……」
「セバスならこれくらいはする。優秀な執事だ」
庭につくと、来た時には無かった俺の身長くらいある岩が置かれていた。
「知り合いの石材店に急いでもらいました」
「さすがね、セバス。では、そのイルカ魔法とやらを見せてもらいましょう!」
「あ、はい」
さっさと終わらせた方が早そうだ。
俺はみんなを後ろに下がらせ、手に魔力を集中する。威力は自分で調整するので、実は他の魔法よりも万能だ。
だけど撃った魔法がそのまま遠くへ行ってしまうのも防がなければならないため、コントロールは慎重にしないといけない。
「……よし。<イルカカッター>」
『あ、そっちにしたんだ』
小声でフリンクが呟くのが聴こえた。
イルカビームでも貫けるけど、こっちは切り裂く方である。
一瞬で大岩に到達すると、左右にごとりと倒れた。
「という感じで威力の高い独自魔法を使えます」
「「「……!!??」」」
「イ、イルカカッターは岩砕く……」
するとその場に居た全員が口を開けてポカンとしていた。サーナが危ないことを口にしていたけどスルーしておこう。
さて、これでどうだろうか? 他にもあるといえばあるが……?
「はい。なにか手がかりがあればと思い、お邪魔させていただきました」
「いいのよ、カイが療養に行っていつ帰ってくるかわからなかったし、ちょっと嬉しかったわ」
『ちょっと……?』
「ええ♪」
そんなこんなで関係者のみで応接室に入った後、カイさんの母親であるアリシャ様に事情を説明すると、納得してくれた。
娘が帰ってきたので嬉しい方が勝っているであろうというのは、カイさんに抱きついているアリシャ様を見たフリンクの反応で察して欲しい。
「もう、お母様。レンさんが驚いているじゃない。一旦離れて」
「ええ……」
「そんなに落ち込まなくても……」
「そうですわね。それで、その喋るぬいぐるみのフリンクと神の加護があるというレンさんのことは分かりました」
『僕はぬいぐるみじゃないからね! とりあえず屋敷を探索したいんだけどどうかなあ』
「そうですね……」
フリンクはヒレで俺の肩を叩きながら早速お仕事の話を口にした。とりあえずこいつが居るおかげで話が早いのは助かる。すると、アリシャ様が俺を見て口を開く。
「……地味ね。本当に神様の加護を持っているのかしら?」
「え? ええ、まあ……」
「そのぬいぐるみは喋るし、見た目以外は精霊っぽいけど、あなたはどんな力を持っているのかしら?」
「えっと……」
「なにかその力を見せることが出来るかと言っているのよ」
「お母様それは今、必要ないじゃない」
カイさんの言葉に俺も賛同だ。ローク様を見ると困った顔になっていた。よくあることなのかもしれない。
「すまない、妻は一度決めたらなかなか曲げなくてね」
「うーん、あまり目立ちたくないんですが……」
「なら記憶を消せばいいじゃないですか、何も知らないわたしにやったように……!」
「言い方。というかやむを得ない場合以外はやりたくないんだけどな?」
とはいえ鼻息を荒くしているアリシャ様を止めるのは難しいか。
「どちらにせよティータイムの時間も過ぎている。屋敷の散策は明日にしてもらおうと思っていたところだ。なにかできることがあれば見せてやってくれないか?」
「うーん、見た目通り地味なんですよね、俺……いや、私は」
『魔法でも見せて置けばいいじゃない? イルカ魔法』
「……あれでいくか」
「なにかあるのですね?」
カイさんの言葉に頷いてから、俺はそのための準備を要求する。
「大きな岩などがあるといいんですが、ご用意することは可能でしょうか?」
「岩とな?」
「はい。なるべく硬い方がいいですね」
「わかりました。少し待っていてください。セバス!」
「かしこまりました奥様」
指を鳴らすとスーツを着た初老の男性が頭を下げて応接室を出て行く。
〇ャリソン〇田みたいな声をしているな……
「もう、お母様ったら……恥ずかしいわ」
「母として連れて来た男性は見定めないといけません。あなたも親になればわかりますよ」
『娘を抱きしめながら真顔で言われてもねー』
「なんですかこの魚モドキ!」
『なんだって……! 子離れできないおばさん!』
売り言葉に買い言葉となり、お互い興奮状態で罵りあう。俺とカイさんは慌てて止めた。
「お母様!」
「アリシャ、やめなさい」
「フリンク、貴族の方に失礼だぞ」
ローク様も流石に黙って見てはおらず、窘めていた。そんなやり取りをしていると、セバスさんが帰って来た。
「奥様、準備ができました。庭へお越しください」
「ありがとうセバス。では参りましょうか」
「フリンク様は私が持って行きますね」
『おねがいー』
「……」
そしてぞろぞろと通路へ出ると、カイさんが抱えていたフリンクをアリシャ様が奪った。
『な!?』
「お母様、なにを!?」
どうするつもりだ……? すると険しい顔でフリンクを撫で始め、
「……!」
『……!』
その後、頬で感触を確かめ始めた。するとフリンクも目をカッと開き、なすがままになった。
「……なるほど、先ほどは無礼なことを言ってしまいごめんなさい」
『僕も言いすぎたよ、ごめんなさい』
そして二人はフッと笑い、握手を交わす。
「なんか仲直りしている……」
「ま、まあ、よく分からないが喧嘩しないならいいだろう」
「さあ、行きますわよ」
『おー』
「あ、ま、待て、お前喋るな!?」
よく考えたらぬいぐるみのフリをしてもらっているのに喋ったら意味ない!?
だが、止める間もなくアリシャ様はフリンクを抱えてスタスタと歩いて行ってしまった。
「なんだよ!?」
「ごめんなさい、レンさん。お母様は気に入った人や物をすぐ可愛がる癖があるの」
「そ、そうなんだ……」
「フリンク様を気にいったみたいですねえ」
サーナが難しい顔でそう呟きながら横をついてくる。まあ、喧嘩しないでいてくれるならいいかとカイさんとローク様に連れられて庭へと出た。
「あの短時間でこれを用意したのか……」
「セバスならこれくらいはする。優秀な執事だ」
庭につくと、来た時には無かった俺の身長くらいある岩が置かれていた。
「知り合いの石材店に急いでもらいました」
「さすがね、セバス。では、そのイルカ魔法とやらを見せてもらいましょう!」
「あ、はい」
さっさと終わらせた方が早そうだ。
俺はみんなを後ろに下がらせ、手に魔力を集中する。威力は自分で調整するので、実は他の魔法よりも万能だ。
だけど撃った魔法がそのまま遠くへ行ってしまうのも防がなければならないため、コントロールは慎重にしないといけない。
「……よし。<イルカカッター>」
『あ、そっちにしたんだ』
小声でフリンクが呟くのが聴こえた。
イルカビームでも貫けるけど、こっちは切り裂く方である。
一瞬で大岩に到達すると、左右にごとりと倒れた。
「という感じで威力の高い独自魔法を使えます」
「「「……!!??」」」
「イ、イルカカッターは岩砕く……」
するとその場に居た全員が口を開けてポカンとしていた。サーナが危ないことを口にしていたけどスルーしておこう。
さて、これでどうだろうか? 他にもあるといえばあるが……?
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