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第21話 町は通過点
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「これはローク様ではありませんか! もうお戻りで?」
「ああ、ここも食事を採るために寄っただけだ」
「ハッ!」
程なくして町に到着し、町を守る自警団の人とローク様が少し話をしてから町の中へ。
「町に来るのは初めてだな」
「そうなんですか?」
「ああ、村から出ることが無かったからなあ。というか出る必要性を感じなかったんだよ」
サーナが不思議そうに俺に尋ねて来たのでそんな返しをする。
実際、夜中に海へ行ったりできるし、村にも施設は色々あるからそこまで興味は無かった。
「村出身の人は王都とかの都に憧れるものだと思ってましたけどねえ」
「人それぞれだと思うぞ? 友人連中は仕事が無い日に町へ遊びに行ったりするし。まあクレアみたいに仕事で行ったりする奴もいるな」
「「……!」」
何ともなしにそういうと二人が俺の方を同時に向いた。あまりに速く、同時だったのでちょっとびっくりしてしまった。
「あの――」
『おおー、これが町かあ』
「あ、こらフリンク顔を出すなって」
なにか俺に聞きたそうにしていたが、フリンクが窓の外をに顔を出したので慌てて声をかける。この世界に居ない生物なんだから自重して欲しい。
『僕はぬいぐるみだし、大丈夫なんでしょ』
するとフリンクがふふんと鼻を鳴らして、皮肉を口にした。着ぐるみが嫌だったのだろう。
「ママー! なんか変なぬいぐるみが顔出してる! あれ欲しい!」
「あ、ダメよ! 貴族様の馬車だからね」
『変なのじゃないよー! イルカだよ!』
「喋った!」
「やめんか!? <イルカアロー>!」
「「ひゃう!?」」
あっという間に知覚され、俺はフリンクを引っ込めると親子の記憶を消した。こんなところで能力を発揮したくなかった。
「それがイルカ魔法……わたしもそれでヤられちゃったんですね」
「言い方ぁ……まあ、この協力体制が終わったら全員記憶を消すけどな」
「え!? そ、それは私もですか!?」
「え? 多分、病気が治れば結界を壊すことも無いし、そもそも村に住まないだろ?
だから記憶は消すつもりだぞ」
「や、やめてください!?」
「ああああああ!? 首を絞めないでカイさん!?」
何故かカイさんが俺の首を絞めてガクガクと揺らし始めた。記憶を消すのは黙っていた方が良かったか。
「いつもあんな感じなんですか?」
『そうだねー。レンは鈍感なんだよね』
「ですねえ。あれじゃ女の子は苦労しますよ」
「なに、どういうことだ!? いいから止めてくれ!?」
サーナがフリンクと何やら通じ合っているのが聴こえ、助けを求めた。しかし、二人は肩を竦めるだけで助けてはくれなかった。
◆ ◇ ◆
「……どうした?」
ローク様がカイさんを降ろすためにこちらの馬車の扉を開けた第一声である。
疲れた俺の顔を見てのことだろう。
「い、いえ……」
「むう」
あなたの娘さんに詰め寄られましたとは言えない。当の本人はむくれていた。
「まあ、詳しくは聞かんが……それよりいいのか? 食事は一緒で構わないぞ」
「ありがとうございます。ですが、フリンクが目立つのでここで待たせてもらいます」
『僕は行きたいのにー』
どこで誰が見ているか分からないし、先ほど親子に見られたばかりだしな。
「ではわたしも残りますよ」
「サーナはダメです! すぐそうやって……」
よっこいしょと俺の隣に座ろうとしたサーナをカイさんが引っ張って外に連れ出された。そのままローク様達と一緒に高そうなレストランへと行き、俺とフリンクが取り残された。
『折角、町に来たのに勿体ないな。美味い飯がありそうなんだが』
「お、久しぶりにその声だな」
『最近、誰かが必ずいるからな。肩が凝ってしかたない』
「どこにあるんだよ」
首をうねうねと動かすフリンクを見て思わずツッコんでしまった。
「なんか買ってくるかな?」
『俺も行っていいのか?』
「それはダメだって。万が一、見られた時にぬいぐるみだと言い張るための措置だ。お前だって記憶を消すのは面倒だろうし、消し忘れが居たら困るだろ」
『確かにな』
「実験のため追われるかもしれないぞ。精霊に近い存在なんて珍しいし」
『……実験か。向こうの世界のことを思い出すな』
「お前はなんなんだっての!? イルカを実験した覚えは無いぞ!?」
ハードボイルドなイルカ生では無かったと思うが中身は本当にフリンクなんだろうな?
『あれは水族館に移動する前、シャチのヤツがな――』
「その話長くなるなら今度にしてくれ」
『残念だ。で、現状、カイのお嬢さんはどうだ?』
「今のところ問題は無い……と、言いたいところだがやっぱり影響はあるんだなとさっきの首絞めで分かった」
『ほう?』
食事をしていないからか、あまり力が無かったように思う。さらに言うと、馬車を降りる時に若干ふらついていたから食事ないし、なんとか魔力の供給をしないといけないらしい。
空気中のは取り込めないんじゃないかと思う。
『食事も食べる量に限りがあるし、難しい問題だ』
「そういうこと。後は屋敷に行ってから――」
「じー」
「なんか不細工なぬいぐるみと喋ってる。変な兄ちゃんだ」
そんな話をしているといつの間にか子供が寄ってきて窓を覗きこんでいた。こういうのがあるから町は怖いんだよな……
『わっ!』
「うわああ!? くちでけえ!?」
「食べられる!? 逃げろ!」
そんなことを考えていると、フリンクが大きな口を開けて威嚇した。別に牙とかないけどめいっぱい開けると結構怖い。
子供たちは一目散に逃げて行った。
『とりあえず記憶を消しておくか』
「やっぱ俺達も怖いな」
客観的に見ると記憶消去は恐ろしい。
やはり出るべきじゃないんだよなあと改めて思うのであった。
なにか起こってからじゃ遅いしな。
「ああ、ここも食事を採るために寄っただけだ」
「ハッ!」
程なくして町に到着し、町を守る自警団の人とローク様が少し話をしてから町の中へ。
「町に来るのは初めてだな」
「そうなんですか?」
「ああ、村から出ることが無かったからなあ。というか出る必要性を感じなかったんだよ」
サーナが不思議そうに俺に尋ねて来たのでそんな返しをする。
実際、夜中に海へ行ったりできるし、村にも施設は色々あるからそこまで興味は無かった。
「村出身の人は王都とかの都に憧れるものだと思ってましたけどねえ」
「人それぞれだと思うぞ? 友人連中は仕事が無い日に町へ遊びに行ったりするし。まあクレアみたいに仕事で行ったりする奴もいるな」
「「……!」」
何ともなしにそういうと二人が俺の方を同時に向いた。あまりに速く、同時だったのでちょっとびっくりしてしまった。
「あの――」
『おおー、これが町かあ』
「あ、こらフリンク顔を出すなって」
なにか俺に聞きたそうにしていたが、フリンクが窓の外をに顔を出したので慌てて声をかける。この世界に居ない生物なんだから自重して欲しい。
『僕はぬいぐるみだし、大丈夫なんでしょ』
するとフリンクがふふんと鼻を鳴らして、皮肉を口にした。着ぐるみが嫌だったのだろう。
「ママー! なんか変なぬいぐるみが顔出してる! あれ欲しい!」
「あ、ダメよ! 貴族様の馬車だからね」
『変なのじゃないよー! イルカだよ!』
「喋った!」
「やめんか!? <イルカアロー>!」
「「ひゃう!?」」
あっという間に知覚され、俺はフリンクを引っ込めると親子の記憶を消した。こんなところで能力を発揮したくなかった。
「それがイルカ魔法……わたしもそれでヤられちゃったんですね」
「言い方ぁ……まあ、この協力体制が終わったら全員記憶を消すけどな」
「え!? そ、それは私もですか!?」
「え? 多分、病気が治れば結界を壊すことも無いし、そもそも村に住まないだろ?
だから記憶は消すつもりだぞ」
「や、やめてください!?」
「ああああああ!? 首を絞めないでカイさん!?」
何故かカイさんが俺の首を絞めてガクガクと揺らし始めた。記憶を消すのは黙っていた方が良かったか。
「いつもあんな感じなんですか?」
『そうだねー。レンは鈍感なんだよね』
「ですねえ。あれじゃ女の子は苦労しますよ」
「なに、どういうことだ!? いいから止めてくれ!?」
サーナがフリンクと何やら通じ合っているのが聴こえ、助けを求めた。しかし、二人は肩を竦めるだけで助けてはくれなかった。
◆ ◇ ◆
「……どうした?」
ローク様がカイさんを降ろすためにこちらの馬車の扉を開けた第一声である。
疲れた俺の顔を見てのことだろう。
「い、いえ……」
「むう」
あなたの娘さんに詰め寄られましたとは言えない。当の本人はむくれていた。
「まあ、詳しくは聞かんが……それよりいいのか? 食事は一緒で構わないぞ」
「ありがとうございます。ですが、フリンクが目立つのでここで待たせてもらいます」
『僕は行きたいのにー』
どこで誰が見ているか分からないし、先ほど親子に見られたばかりだしな。
「ではわたしも残りますよ」
「サーナはダメです! すぐそうやって……」
よっこいしょと俺の隣に座ろうとしたサーナをカイさんが引っ張って外に連れ出された。そのままローク様達と一緒に高そうなレストランへと行き、俺とフリンクが取り残された。
『折角、町に来たのに勿体ないな。美味い飯がありそうなんだが』
「お、久しぶりにその声だな」
『最近、誰かが必ずいるからな。肩が凝ってしかたない』
「どこにあるんだよ」
首をうねうねと動かすフリンクを見て思わずツッコんでしまった。
「なんか買ってくるかな?」
『俺も行っていいのか?』
「それはダメだって。万が一、見られた時にぬいぐるみだと言い張るための措置だ。お前だって記憶を消すのは面倒だろうし、消し忘れが居たら困るだろ」
『確かにな』
「実験のため追われるかもしれないぞ。精霊に近い存在なんて珍しいし」
『……実験か。向こうの世界のことを思い出すな』
「お前はなんなんだっての!? イルカを実験した覚えは無いぞ!?」
ハードボイルドなイルカ生では無かったと思うが中身は本当にフリンクなんだろうな?
『あれは水族館に移動する前、シャチのヤツがな――』
「その話長くなるなら今度にしてくれ」
『残念だ。で、現状、カイのお嬢さんはどうだ?』
「今のところ問題は無い……と、言いたいところだがやっぱり影響はあるんだなとさっきの首絞めで分かった」
『ほう?』
食事をしていないからか、あまり力が無かったように思う。さらに言うと、馬車を降りる時に若干ふらついていたから食事ないし、なんとか魔力の供給をしないといけないらしい。
空気中のは取り込めないんじゃないかと思う。
『食事も食べる量に限りがあるし、難しい問題だ』
「そういうこと。後は屋敷に行ってから――」
「じー」
「なんか不細工なぬいぐるみと喋ってる。変な兄ちゃんだ」
そんな話をしているといつの間にか子供が寄ってきて窓を覗きこんでいた。こういうのがあるから町は怖いんだよな……
『わっ!』
「うわああ!? くちでけえ!?」
「食べられる!? 逃げろ!」
そんなことを考えていると、フリンクが大きな口を開けて威嚇した。別に牙とかないけどめいっぱい開けると結構怖い。
子供たちは一目散に逃げて行った。
『とりあえず記憶を消しておくか』
「やっぱ俺達も怖いな」
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