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第19話 交渉
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「さて、話とはなにかな?」
パーティはまだ続いているが、俺とローク様、カイ様とサーナ、村長さんに自警団長のバリアットさん、セキト様に警護の人が村長さんの家に集まっていた。
俺が話をしたいと言って集まってもらった形だ。
とはいえ、内容が内容なのでこの部屋にはローク様とカイ様、俺とフリンクのみ。
「がるる……」
ああ、そうだサーナも部屋の中に居た。
棘棍棒は相変わらず手にして俺を睨んでいる。いきなり襲い掛かってくることは無い……無いよな? 少し警戒しながら俺は口火を切る。
「えっと、カイ様には申し訳ないのですが、言わせてください。俺……私は彼女の症状を知っています。そのことについてですね」
「……! レンさん?」
そこで俺のことをかいつまんで話す。記憶を消すといったあたりで少し体が強張っていたが最後まで聞いてくれた。
「急にすみませんカイ様。あれから色々考えたのですが、やはり治療をして欲しいと思いました」
「ふむ、カイが話したのか? ……珍しいな」
「ええ、ここに来た当日にお話をしたの。ですよね?」
「はい」
珍しい? 気になったが話を続けよう。
というか、カイ様は微笑みながらウインクをし、話に乗ってくれたし助かる。
「アテは正直ありません。ですが、私達には神様の加護とこのフリンクが居ます。もしかしたらお役に立てるかもと思った次第です」
『そういうことー! できれば当時の様子と変わったこと、それとお家に行ってみたいかな?』
「実家にか?」
「ええ。もしかしたら手がかりがあるかも、と思いまして。もちろん当時のこととセットでお伺いできればと」
「なるほどな。承知した。それで望みはなんだ?」
「え?」
不意に『望みはなんだ』と言われて、変な声を出してしまった。俺が困っていると思ったのかローク様が話を続けた。
「金か? それともカイと結婚したいとか? そういう奴は多いからな」
「ああ、いえ、別に欲しいものとかありませんよ。恐れ多いですし、それに――」
「それに?」
「これは自分のためなので報酬は必要ありません」
『勿体ないけど、レンはこういう性格だから嘘じゃないよ』
欲望を漏らすなフリンク。
だけど言っていることはまあ、うん、間違っていないのでいいだろう。
「本当かね……? ううむ、こんな男は初めてだな……」
「旦那様、いいのではないでしょうか? 神様の加護を持っている方なら欲が無いのかもしれませんし」
「そうだな。これもお導きか。むしろこちらから頼むべきだな。レン君と言ったか、手を煩わせて申し訳ないがよろしくお願いするよ」
「いいかな、カイ?」
「……ええ、お願いします」
少し困った顔でカイ様が小さく頷いた。聞いてほしくないし、もしかしたら当時のことを掘り返したくないのかもしれない。だが、俺のエゴのためここは心を鬼にして追及するのみ。
「わかりました! とはいえ、宮廷魔法使い様が解決できないことみたいなので、あまり期待しないでもらえると……」
「なんだ、頼りないことを言うなあ?」
ローク様がそう言って眉を顰めて笑っていた。
「ということは、一度ご実家へ戻るのですね。レンさんはいいですけど、フリンクさんはどうしますか? 記憶を消せると言っても町では大騒ぎになりそうですし、記憶を消すのは大変でしょう」
そこでサーナが重要な話をしだす。確かにフリンクは目立つ。でかいし。
まあ、屋敷まで馬車に乗って移動するからそこまで気にすることもないかもしれないけど、外の調査はあり得る。
しかし、そこは俺。きちんと考えて用意をしている。
「フリンクにはこれを着てもらいます」
「それは……フリンクさんの形をした……なんでしょう?」
『レン、なんだいそれは?』
「これは着ぐるみだ。これを着ていればお前はぬいぐるみに見えるだろ?」
『な……!?』
裁縫が得意な女の子が友人に居るので作ってもらった代物である。これも準備のひとつである。
もちろん知らせていないのでフリンクはあんぐりと口を開けて固まっていた。
うん、健康状態は悪くない。イルカは口の中を見るとだいたいわかる。ゴミが無いか手を入れて調べておこう。
『止めて!? 僕、それを着るのー……?』
俺が口に手を入れるとフリンクが嫌がってその場でバレルロールをした。すぐ引っ込めたが危うく腕を持っていかれるところだった。
「俺達の平穏のためだ。これを、受け取ってくれるか?」
『むう』
俺が真剣な顔でフリンクの吻に手を置くと、不機嫌な声を上げてたが渋々受け取ってくれた。
そのまま一度試着してもらうと――
「あ、可愛い! ふわふわしてますね!」
『そう? ならいいかな?』
――カイ様がパッと顔を明るくしてフリンクに抱き着いた。
「これなら黙っていれば確かにぬいぐるみに見えますね」
「そうだな。まあ、そのままなら謎の生き物の剥製として運ぶ手もある」
『嫌だよ!?』
フリンクが抗議の声を上げ、それを見て俺達は笑う。
神様の加護を信じるのは難しいけどフリンクという存在がそれを後押ししてくれるので楽だな。
そう思っているとサーナが隅っこで手招きしているのが見えた。俺はフリンクを愛でているカイ様とそれを見て微笑んでいるローク様を置いてそちらへ行く。
「どうした?」
「本当になんとかなるんですか? お嬢様が悲しむことがあれば……」
「ま、さっきも言ったけど半々ってところだ。俺達専用の魔法もあるからな。それをしまえ」
「わかりました」
「あ、また! サーナ!」
「はいはい、お嬢様。わたしもフリンクさんをモフらせてくださいー」
『あああああああ……』
あまり着心地が良くないのかフリンクは浮いたままぐったりとして成すがままになっていた。
お膳立てはしたけど……村の外か……俺はちょっと不安を覚え、自分の頬を叩いて鼓舞するのだった。
パーティはまだ続いているが、俺とローク様、カイ様とサーナ、村長さんに自警団長のバリアットさん、セキト様に警護の人が村長さんの家に集まっていた。
俺が話をしたいと言って集まってもらった形だ。
とはいえ、内容が内容なのでこの部屋にはローク様とカイ様、俺とフリンクのみ。
「がるる……」
ああ、そうだサーナも部屋の中に居た。
棘棍棒は相変わらず手にして俺を睨んでいる。いきなり襲い掛かってくることは無い……無いよな? 少し警戒しながら俺は口火を切る。
「えっと、カイ様には申し訳ないのですが、言わせてください。俺……私は彼女の症状を知っています。そのことについてですね」
「……! レンさん?」
そこで俺のことをかいつまんで話す。記憶を消すといったあたりで少し体が強張っていたが最後まで聞いてくれた。
「急にすみませんカイ様。あれから色々考えたのですが、やはり治療をして欲しいと思いました」
「ふむ、カイが話したのか? ……珍しいな」
「ええ、ここに来た当日にお話をしたの。ですよね?」
「はい」
珍しい? 気になったが話を続けよう。
というか、カイ様は微笑みながらウインクをし、話に乗ってくれたし助かる。
「アテは正直ありません。ですが、私達には神様の加護とこのフリンクが居ます。もしかしたらお役に立てるかもと思った次第です」
『そういうことー! できれば当時の様子と変わったこと、それとお家に行ってみたいかな?』
「実家にか?」
「ええ。もしかしたら手がかりがあるかも、と思いまして。もちろん当時のこととセットでお伺いできればと」
「なるほどな。承知した。それで望みはなんだ?」
「え?」
不意に『望みはなんだ』と言われて、変な声を出してしまった。俺が困っていると思ったのかローク様が話を続けた。
「金か? それともカイと結婚したいとか? そういう奴は多いからな」
「ああ、いえ、別に欲しいものとかありませんよ。恐れ多いですし、それに――」
「それに?」
「これは自分のためなので報酬は必要ありません」
『勿体ないけど、レンはこういう性格だから嘘じゃないよ』
欲望を漏らすなフリンク。
だけど言っていることはまあ、うん、間違っていないのでいいだろう。
「本当かね……? ううむ、こんな男は初めてだな……」
「旦那様、いいのではないでしょうか? 神様の加護を持っている方なら欲が無いのかもしれませんし」
「そうだな。これもお導きか。むしろこちらから頼むべきだな。レン君と言ったか、手を煩わせて申し訳ないがよろしくお願いするよ」
「いいかな、カイ?」
「……ええ、お願いします」
少し困った顔でカイ様が小さく頷いた。聞いてほしくないし、もしかしたら当時のことを掘り返したくないのかもしれない。だが、俺のエゴのためここは心を鬼にして追及するのみ。
「わかりました! とはいえ、宮廷魔法使い様が解決できないことみたいなので、あまり期待しないでもらえると……」
「なんだ、頼りないことを言うなあ?」
ローク様がそう言って眉を顰めて笑っていた。
「ということは、一度ご実家へ戻るのですね。レンさんはいいですけど、フリンクさんはどうしますか? 記憶を消せると言っても町では大騒ぎになりそうですし、記憶を消すのは大変でしょう」
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まあ、屋敷まで馬車に乗って移動するからそこまで気にすることもないかもしれないけど、外の調査はあり得る。
しかし、そこは俺。きちんと考えて用意をしている。
「フリンクにはこれを着てもらいます」
「それは……フリンクさんの形をした……なんでしょう?」
『レン、なんだいそれは?』
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『な……!?』
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もちろん知らせていないのでフリンクはあんぐりと口を開けて固まっていた。
うん、健康状態は悪くない。イルカは口の中を見るとだいたいわかる。ゴミが無いか手を入れて調べておこう。
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俺が口に手を入れるとフリンクが嫌がってその場でバレルロールをした。すぐ引っ込めたが危うく腕を持っていかれるところだった。
「俺達の平穏のためだ。これを、受け取ってくれるか?」
『むう』
俺が真剣な顔でフリンクの吻に手を置くと、不機嫌な声を上げてたが渋々受け取ってくれた。
そのまま一度試着してもらうと――
「あ、可愛い! ふわふわしてますね!」
『そう? ならいいかな?』
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「これなら黙っていれば確かにぬいぐるみに見えますね」
「そうだな。まあ、そのままなら謎の生き物の剥製として運ぶ手もある」
『嫌だよ!?』
フリンクが抗議の声を上げ、それを見て俺達は笑う。
神様の加護を信じるのは難しいけどフリンクという存在がそれを後押ししてくれるので楽だな。
そう思っているとサーナが隅っこで手招きしているのが見えた。俺はフリンクを愛でているカイ様とそれを見て微笑んでいるローク様を置いてそちらへ行く。
「どうした?」
「本当になんとかなるんですか? お嬢様が悲しむことがあれば……」
「ま、さっきも言ったけど半々ってところだ。俺達専用の魔法もあるからな。それをしまえ」
「わかりました」
「あ、また! サーナ!」
「はいはい、お嬢様。わたしもフリンクさんをモフらせてくださいー」
『あああああああ……』
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