イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

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第17話 村長の信頼度

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『さて、俺のスローライフが脅かされてから早三日。事態は特に変わっていない』
「人の心を代弁するなと言ってるだろ!?」

 ま、その通りではあるだが……
 フリンクの言う通り屋敷から戻って通常の仕事をしているのだけど、特に進展はない。
 念のためにフリンクには自宅待機をしてもらっているが、それは正解だった。
 というのも、護衛の人達やメイドさんもずっと屋敷に居るわけではなく、非番がある。するとどうなるか? 当然、村に来て暇を潰すことになるのだ。

「そりゃそうだよなあ……」

 家の屋根に登ってイルカ・アイを使い様子を見ていた。
 気づいたのは昨日で、屋敷の近くに偵察に出た時に目撃したからである。
 護衛の人達の記憶を消してはいるし、フリンクも姿を見せなければ村の人達も話題に出さないだろう。

『どうする? 手紙も来ていない』
「うーん、やっぱり相談するのは迷惑だと思うタイプかな?」
『かもしれんな。そもそもの話として『治療ができない』から相談しても意味がないと捉えたかもしれん』
「あり得るな」

 神様の加護アリを伝えたので、頼ってくるかと思ったけど、内にため込むタイプかも?

「屋敷の近くに行ったけど、流石に護衛の人に睨まれた」
『まあ、記憶は消しているし当然だな。お嬢さんに会いに行くか?』
「そうだな……」

 まだ三日と考えるか、もう三日と考えるべきか。
 だけど、フリンクの記憶だけを何度も消していくのも申し訳ない。

「やはりあの手で行こう」
『やるのか? 単独潜入を? 相手は貴族の屋敷だ、見つかったら拷問――』
「違うわ!? まあいい、村長さんを呼ぶぞ」

 ということで、俺の計画を使うことにした。
 ひとまず俺だけ村長さんの家へ行き、ウチに来てもらう。その上で話をするのだ。

「村長ー」
「お、レンか? ウチを尋ねてくるとは珍しいな。緊急事態か?」
「んー、まあそれに近いかな? ちょっとウチまで来てくれるかい」
「ワシを招くとは……わかった。ちょっと出てくるぞ!」

 村長が家の奥に声をかけると、奥さんが『どうせ暇なんだから散歩がてら行ってきな』との返事を返して来た。

「相変わらずだねえ」
「まったく、娘夫婦も町へ行ってからなかなか帰って来んし、みんな白状じゃわい」
「子供が出来たばかりだと難しいよ」
「知った風な口をことを言うな。お前は恋人もおらんのに」

 藪蛇だった。
 尻を叩かれながら、俺は村長を家まで案内する。道中、神の加護を受けたお前は早く結婚すべきとか、バートリィ家の人達からの支援はありがたいといった話を聞いた。

「あら、村長さん。レン、どうしたの?」
「ようわからんが呼ばれた。お邪魔させてもらうぞ」
「この前の話の続きだよ」

 ちょうど庭で洗濯物を干していた母さんに出くわし、先日の続きだと答えておく。
 リビングへ通してお茶を出すと、フリンクが部屋から出てきた。

『こんにちはー!』
「おお、フリンク。最近、広場に来ないと子供たちが口にしていたぞ?」
『今から話すことがそれに繋がるんだよね』
「ふむ?」
「実は――」

 席に着いたので俺は村長にこれまでのことや、結界のことを話す。
 驚いてはいたが――

「まあ、お前達じゃしのう……」

 納得してもらえた。こういう時、下手に隠していないから話が早い。

「それにしても村から出る者の記憶をのう。通りでフリンクやお前の話を聞きつけて来たという者が居ないと思った」
「いやあ、外の世界に知られると面倒だと思ったんだよ」
「まあ、体調に弊害が無ければ構わないが……観光名所になると思っていたのに……」

 多分、俺とフリンクが城とかに連れていかれて、居なくなるから儲け話にはならないと思うことを告げる。

「た、確かに……それなら村を守ってもらった方がいいな」
「だろ? 俺達は平穏に生きたいからな」
「ふむ、それはそれで勿体ない気はするがな? それで、要件を聞かせてくれ」

 本題に入ってくれと村長がお茶を飲む。勿体ないとはどういうことだと思ったが、今回の話には関係ないので

「えっと、バートリィ家の人、カイ様の父親に連絡を取って欲しい。話がしたいんだ」
「なに!? どういうことだ?」
「カイ様が療養に来ているだろ? その原因を取り除かないと村の結界はいつまた消えるか分からない。その前にできることがないかと思って、当時の話を聞きたいんだ」
「しかし、村人の話を聞こうと思うじゃろうか……?」
「俺が直接だったらさすがに無理だと思う。だから次に親父さんが訪問してきたら歓迎会を開いて、その場に俺を招いて欲しい」
「なるほどのう」

 村長が感心するかのような声を上げて頷いていた。
 フリンクも同席してもらい、話をすれば信じてくれると思う。カイ様には嫌われるかもしれないけど。

「それくらいなら構わん。お前達には随分と助けられているしな」
「ありがとう」
「治療できれば報酬もあるだろう。村が町になるかもしれんしのう」
「それは大げさじゃないか?」
『大丈夫かなあ』

 フリンクがやれやれとヒレを広げる中、村長はまた一口飲んでから言う。

「アテはあるのか?」
「今のところはない。だけど、病気になる前後になにかあったはずなんだ。絶対に無理だと判断するのはそれを聞いてからだな」
「わかった。確か7テム後にまた来ると言っていた。その時に開くとしようか」

 7テム……ということは4日後か。
 それまでカイ様には触らずでいいか。

 後は――

 
 
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