イルカと一緒に異世界で無双する ~空を飛ぶイルカは移動も戦闘も万能だって? スローライフには過剰じゃないか?~

八神 凪

文字の大きさ
上 下
14 / 105

第14話 あなたはなにしにこの村へ?

しおりを挟む
「お嬢様、お客様がいらっしゃったとのことですね! そちらが?」
「え、ええ、サーナも同席してください」
「かしこまりました。……ふうん、背が高いし、なかなかカッコイイですね。わたしはサーナと申します」
「……」
『……』

 俺とフリンクに関する記憶を消されたサーナが完全に初対面の形であいさつをしてきた。困惑するカイ様。
 やったのは俺なので、苦笑いをしながら握手をする。あれだけ罵られた後なのでこれは演技なのではないかと疑ってしまいそうになる。

「それと……この大きなのはなんですか? ぬいぐるみ?」
『僕はフリンクだよ! 精霊に近い存在なんだ、よろしくねサーナ!』
「ぬあ!? 喋ったですって……!?」
「レン様とフリンク様は――」
 
 そこでカイ様が事情を説明してくれた。さっきの剣幕はなりを潜めて、サーナさんはふんふんと大人しく聞いてくれた。
 カイ様を守るという意味ではあれが正解で、すぐに行動に移せるから傍に置いているのかもな?

「それは……驚きですね……」
「私もびっくりしたわ。それで、私の体質……ううん、呪いと言ってもいいアレを見抜いたの」
「『魔力の放出』ですか。結界が破れたことで気づかれたのだと思うのですが、それでも凄いですね。彼女はいるんですか?」
「サーナ! ……こほん! というわけで、今からこの症状についてお話を聞いてもらうのです」
「あだだだ!? お嬢様痛いです!?」

 頬を膨らませたカイ様がサーナさんの頬を摘まんで引っ張っていた。余計なことを言う奴、ということを覚えておこう。

『仲がいいんだねー』
「ええ、フリンク様。彼女とは同い年で、ウチのメイドだった方の娘なのです。一緒に過ごして来たから姉妹みたいにも感じます」
「恐れ多いことです。では、お茶を用意しますので、ソファにおかけください」
 
 サーナはニコッと笑った後、部屋にあるティーセットをカチャカチャと用意し始めた。俺達はカイ様が座ってから対面に腰かける。

「その症状はいつから?」
「二年ほど前でしょうか……学院を卒業し、屋敷でお父様の仕事を手伝っている時に、眩暈がしました。気づいた時にはベッドの上で、そこからしばらく寝込むことに」
『どうやってそれが魔力を放出するってわかったの?』

 今は元気だが、当時は大変だったことを物語る。表情は少し冴えない感じになったからだ。そこでフリンクが切っ掛けを尋ねていた。

「体が怠く、時折、身体や頭に痛みがあったので、お医者様が来た際に痛みを和らげる魔法を使ってもらおうとお母様が呼んでくれたのです」
『あー、それで効かなかったってことか』
「はい」

 その後は大騒ぎになり、色々な医者を呼んだり、薬を飲む、書物を調べるなどが行われた。
 そして最終的にお城の宮廷魔法使いを呼んで症例が無いかまで調べてもらったそうだ。

「なにか分かったことは?」
「特に解決することは……ありませんでした……」
「むう……それでも今は元気に見えるけど、その辺りはどうなんです?」
「その、いらしてくれた宮廷魔法使いの方が作った指輪で魔力の消費はかなり抑えることができまたんですよ」
「サーナさん」
「サーナと呼んでください! こちらをどうぞ」

 話の途中でサーナが戻ってきてティーカップを置いてくれた。呼び捨てで構わないと言うのでそうさせてもらおうと思う。
 こうしてみると、小柄で茶色の髪を後ろ頭でお団子にし、眼鏡が良く似合う容姿をしていると思う。似ていない姉妹としてなら通ると思う。

「その右手の指輪がそうなのですね」
「はい。ご存知かと思いますが、私達は水や空気、食事といった色々なところから魔力を身体に取り込んでいます」
「……」

 この世界は前の地球と違い『魔力』という力が存在する。物凄く雑な言い方をすればインフラ関係を賄っている便利な力だ。
 火を熾せて灯りにすることも料理に使うこともでき、水の魔法で浄化された飲み水が手に入る。
 電気の代わりといってはなんだけど、魔力を使って動かせる『魔動器』というものも存在する。
 コンロっぽいものやルームライト、水洗トイレといったものを『魔石』という道具を組み込んで色々できるようにすることができるというわけだ。
 先ほどサーナがお茶を入れてくれたけど、あれも『プロクス』というコンロに似た魔動器で湯を沸かしていた。

 話が逸れた。
 まあそれくらいこの世界の人間には魔力というのはポピュラーなものだということ。
 ……逆に言えばこれが無くなると命の危険があり、『第二の血液』ともいうべき枷でもある。

 例えば大きく魔力を消費する魔法を使ったりすると一気に枯渇したり、魔動器へ常に魔力を供給しているともちろん減っていく。
 
 だけど人間、自分の能力は判断できるからこれ以上は無理だという魔法は使わないし、無意識に意識を失うなどで放出を抑えられる。
 
 だけどカイ様はができないのだ。

 無意識にずっと魔力を放出し続けてしまう。だから最初に気絶したのだろう。
 恐らく、放出と供給のバランスが崩れて普通に生活しているだけでどんどん減っていくのだと思う。
 指輪とやらの力で抑制できるようになってそのバランスがある程度均等になったと推測される。

「……すみません、それで私の魔力が結界に干渉して破壊してしまうのでしょう」
「いえ、原因が分かって良かったです。治る見込みはあるんですか?」
「今のところはなにも無いそうです。色々な方が研究してくれていますけど、あまりにも珍しい症状らしいので」
『でも、良くも悪くもならないなら村に療養ってなにか変わるかな?』

 フリンクがヒレを動かしながらそう言う。するとカイ様は顔を伏せて口を開く。

「……町に居るとレン様の結界のように色々と破壊してしまうことがあるのです。魔動器の不具合を引き起こしたり。それと町よりこういった自然の方が魔力を取り込みやすいので移住を決めました」
『なるほどね』

 フリンクが納得したように言うが、俺と共に納得はしていない。

 なぜか?

 魔力放出で魔動器の不具合はありそうだけど、俺達の結界を壊すほどではないはずだからだ。

 他になにかカラクリがあるか?
 俺はサーナと話すカイ様を見ながら訝しむのだった。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...