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第14話 あなたはなにしにこの村へ?
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「お嬢様、お客様がいらっしゃったとのことですね! そちらが?」
「え、ええ、サーナも同席してください」
「かしこまりました。……ふうん、背が高いし、なかなかカッコイイですね。わたしはサーナと申します」
「……」
『……』
俺とフリンクに関する記憶を消されたサーナが完全に初対面の形であいさつをしてきた。困惑するカイ様。
やったのは俺なので、苦笑いをしながら握手をする。あれだけ罵られた後なのでこれは演技なのではないかと疑ってしまいそうになる。
「それと……この大きなのはなんですか? ぬいぐるみ?」
『僕はフリンクだよ! 精霊に近い存在なんだ、よろしくねサーナ!』
「ぬあ!? 喋ったですって……!?」
「レン様とフリンク様は――」
そこでカイ様が事情を説明してくれた。さっきの剣幕はなりを潜めて、サーナさんはふんふんと大人しく聞いてくれた。
カイ様を守るという意味ではあれが正解で、すぐに行動に移せるから傍に置いているのかもな?
「それは……驚きですね……」
「私もびっくりしたわ。それで、私の体質……ううん、呪いと言ってもいいアレを見抜いたの」
「『魔力の放出』ですか。結界が破れたことで気づかれたのだと思うのですが、それでも凄いですね。彼女はいるんですか?」
「サーナ! ……こほん! というわけで、今からこの症状についてお話を聞いてもらうのです」
「あだだだ!? お嬢様痛いです!?」
頬を膨らませたカイ様がサーナさんの頬を摘まんで引っ張っていた。余計なことを言う奴、ということを覚えておこう。
『仲がいいんだねー』
「ええ、フリンク様。彼女とは同い年で、ウチのメイドだった方の娘なのです。一緒に過ごして来たから姉妹みたいにも感じます」
「恐れ多いことです。では、お茶を用意しますので、ソファにおかけください」
サーナはニコッと笑った後、部屋にあるティーセットをカチャカチャと用意し始めた。俺達はカイ様が座ってから対面に腰かける。
「その症状はいつから?」
「二年ほど前でしょうか……学院を卒業し、屋敷でお父様の仕事を手伝っている時に、眩暈がしました。気づいた時にはベッドの上で、そこからしばらく寝込むことに」
『どうやってそれが魔力を放出するってわかったの?』
今は元気だが、当時は大変だったことを物語る。表情は少し冴えない感じになったからだ。そこでフリンクが切っ掛けを尋ねていた。
「体が怠く、時折、身体や頭に痛みがあったので、お医者様が来た際に痛みを和らげる魔法を使ってもらおうとお母様が呼んでくれたのです」
『あー、それで効かなかったってことか』
「はい」
その後は大騒ぎになり、色々な医者を呼んだり、薬を飲む、書物を調べるなどが行われた。
そして最終的にお城の宮廷魔法使いを呼んで症例が無いかまで調べてもらったそうだ。
「なにか分かったことは?」
「特に解決することは……ありませんでした……」
「むう……それでも今は元気に見えるけど、その辺りはどうなんです?」
「その、いらしてくれた宮廷魔法使いの方が作った指輪で魔力の消費はかなり抑えることができまたんですよ」
「サーナさん」
「サーナと呼んでください! こちらをどうぞ」
話の途中でサーナが戻ってきてティーカップを置いてくれた。呼び捨てで構わないと言うのでそうさせてもらおうと思う。
こうしてみると、小柄で茶色の髪を後ろ頭でお団子にし、眼鏡が良く似合う容姿をしていると思う。似ていない姉妹としてなら通ると思う。
「その右手の指輪がそうなのですね」
「はい。ご存知かと思いますが、私達は水や空気、食事といった色々なところから魔力を身体に取り込んでいます」
「……」
この世界は前の地球と違い『魔力』という力が存在する。物凄く雑な言い方をすればインフラ関係を賄っている便利な力だ。
火を熾せて灯りにすることも料理に使うこともでき、水の魔法で浄化された飲み水が手に入る。
電気の代わりといってはなんだけど、魔力を使って動かせる『魔動器』というものも存在する。
コンロっぽいものやルームライト、水洗トイレといったものを『魔石』という道具を組み込んで色々できるようにすることができるというわけだ。
先ほどサーナがお茶を入れてくれたけど、あれも『プロクス』というコンロに似た魔動器で湯を沸かしていた。
話が逸れた。
まあそれくらいこの世界の人間には魔力というのはポピュラーなものだということ。
……逆に言えばこれが無くなると命の危険があり、『第二の血液』ともいうべき枷でもある。
例えば大きく魔力を消費する魔法を使ったりすると一気に枯渇したり、魔動器へ常に魔力を供給しているともちろん減っていく。
だけど人間、自分の能力は判断できるからこれ以上は無理だという魔法は使わないし、無意識に意識を失うなどで放出を抑えられる。
だけどカイ様はそれができないのだ。
無意識にずっと魔力を放出し続けてしまう。だから最初に気絶したのだろう。
恐らく、放出と供給のバランスが崩れて普通に生活しているだけでどんどん減っていくのだと思う。
指輪とやらの力で抑制できるようになってそのバランスがある程度均等になったと推測される。
「……すみません、それで私の魔力が結界に干渉して破壊してしまうのでしょう」
「いえ、原因が分かって良かったです。治る見込みはあるんですか?」
「今のところはなにも無いそうです。色々な方が研究してくれていますけど、あまりにも珍しい症状らしいので」
『でも、良くも悪くもならないなら村に療養ってなにか変わるかな?』
フリンクがヒレを動かしながらそう言う。するとカイ様は顔を伏せて口を開く。
「……町に居るとレン様の結界のように色々と破壊してしまうことがあるのです。魔動器の不具合を引き起こしたり。それと町よりこういった自然の方が魔力を取り込みやすいので移住を決めました」
『なるほどね』
フリンクが納得したように言うが、俺と共に納得はしていない。
なぜか?
魔力放出で魔動器の不具合はありそうだけど、俺達の結界を壊すほどではないはずだからだ。
他になにかカラクリがあるか?
俺はサーナと話すカイ様を見ながら訝しむのだった。
「え、ええ、サーナも同席してください」
「かしこまりました。……ふうん、背が高いし、なかなかカッコイイですね。わたしはサーナと申します」
「……」
『……』
俺とフリンクに関する記憶を消されたサーナが完全に初対面の形であいさつをしてきた。困惑するカイ様。
やったのは俺なので、苦笑いをしながら握手をする。あれだけ罵られた後なのでこれは演技なのではないかと疑ってしまいそうになる。
「それと……この大きなのはなんですか? ぬいぐるみ?」
『僕はフリンクだよ! 精霊に近い存在なんだ、よろしくねサーナ!』
「ぬあ!? 喋ったですって……!?」
「レン様とフリンク様は――」
そこでカイ様が事情を説明してくれた。さっきの剣幕はなりを潜めて、サーナさんはふんふんと大人しく聞いてくれた。
カイ様を守るという意味ではあれが正解で、すぐに行動に移せるから傍に置いているのかもな?
「それは……驚きですね……」
「私もびっくりしたわ。それで、私の体質……ううん、呪いと言ってもいいアレを見抜いたの」
「『魔力の放出』ですか。結界が破れたことで気づかれたのだと思うのですが、それでも凄いですね。彼女はいるんですか?」
「サーナ! ……こほん! というわけで、今からこの症状についてお話を聞いてもらうのです」
「あだだだ!? お嬢様痛いです!?」
頬を膨らませたカイ様がサーナさんの頬を摘まんで引っ張っていた。余計なことを言う奴、ということを覚えておこう。
『仲がいいんだねー』
「ええ、フリンク様。彼女とは同い年で、ウチのメイドだった方の娘なのです。一緒に過ごして来たから姉妹みたいにも感じます」
「恐れ多いことです。では、お茶を用意しますので、ソファにおかけください」
サーナはニコッと笑った後、部屋にあるティーセットをカチャカチャと用意し始めた。俺達はカイ様が座ってから対面に腰かける。
「その症状はいつから?」
「二年ほど前でしょうか……学院を卒業し、屋敷でお父様の仕事を手伝っている時に、眩暈がしました。気づいた時にはベッドの上で、そこからしばらく寝込むことに」
『どうやってそれが魔力を放出するってわかったの?』
今は元気だが、当時は大変だったことを物語る。表情は少し冴えない感じになったからだ。そこでフリンクが切っ掛けを尋ねていた。
「体が怠く、時折、身体や頭に痛みがあったので、お医者様が来た際に痛みを和らげる魔法を使ってもらおうとお母様が呼んでくれたのです」
『あー、それで効かなかったってことか』
「はい」
その後は大騒ぎになり、色々な医者を呼んだり、薬を飲む、書物を調べるなどが行われた。
そして最終的にお城の宮廷魔法使いを呼んで症例が無いかまで調べてもらったそうだ。
「なにか分かったことは?」
「特に解決することは……ありませんでした……」
「むう……それでも今は元気に見えるけど、その辺りはどうなんです?」
「その、いらしてくれた宮廷魔法使いの方が作った指輪で魔力の消費はかなり抑えることができまたんですよ」
「サーナさん」
「サーナと呼んでください! こちらをどうぞ」
話の途中でサーナが戻ってきてティーカップを置いてくれた。呼び捨てで構わないと言うのでそうさせてもらおうと思う。
こうしてみると、小柄で茶色の髪を後ろ頭でお団子にし、眼鏡が良く似合う容姿をしていると思う。似ていない姉妹としてなら通ると思う。
「その右手の指輪がそうなのですね」
「はい。ご存知かと思いますが、私達は水や空気、食事といった色々なところから魔力を身体に取り込んでいます」
「……」
この世界は前の地球と違い『魔力』という力が存在する。物凄く雑な言い方をすればインフラ関係を賄っている便利な力だ。
火を熾せて灯りにすることも料理に使うこともでき、水の魔法で浄化された飲み水が手に入る。
電気の代わりといってはなんだけど、魔力を使って動かせる『魔動器』というものも存在する。
コンロっぽいものやルームライト、水洗トイレといったものを『魔石』という道具を組み込んで色々できるようにすることができるというわけだ。
先ほどサーナがお茶を入れてくれたけど、あれも『プロクス』というコンロに似た魔動器で湯を沸かしていた。
話が逸れた。
まあそれくらいこの世界の人間には魔力というのはポピュラーなものだということ。
……逆に言えばこれが無くなると命の危険があり、『第二の血液』ともいうべき枷でもある。
例えば大きく魔力を消費する魔法を使ったりすると一気に枯渇したり、魔動器へ常に魔力を供給しているともちろん減っていく。
だけど人間、自分の能力は判断できるからこれ以上は無理だという魔法は使わないし、無意識に意識を失うなどで放出を抑えられる。
だけどカイ様はそれができないのだ。
無意識にずっと魔力を放出し続けてしまう。だから最初に気絶したのだろう。
恐らく、放出と供給のバランスが崩れて普通に生活しているだけでどんどん減っていくのだと思う。
指輪とやらの力で抑制できるようになってそのバランスがある程度均等になったと推測される。
「……すみません、それで私の魔力が結界に干渉して破壊してしまうのでしょう」
「いえ、原因が分かって良かったです。治る見込みはあるんですか?」
「今のところはなにも無いそうです。色々な方が研究してくれていますけど、あまりにも珍しい症状らしいので」
『でも、良くも悪くもならないなら村に療養ってなにか変わるかな?』
フリンクがヒレを動かしながらそう言う。するとカイ様は顔を伏せて口を開く。
「……町に居るとレン様の結界のように色々と破壊してしまうことがあるのです。魔動器の不具合を引き起こしたり。それと町よりこういった自然の方が魔力を取り込みやすいので移住を決めました」
『なるほどね』
フリンクが納得したように言うが、俺と共に納得はしていない。
なぜか?
魔力放出で魔動器の不具合はありそうだけど、俺達の結界を壊すほどではないはずだからだ。
他になにかカラクリがあるか?
俺はサーナと話すカイ様を見ながら訝しむのだった。
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