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第7話 村の変化
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フォレストウルフを撃退した翌日。
念のため俺とフリンクが森を徘徊してみたところ、あいつらは周辺5キール以内には存在しなかった。キールは日本で言うキロメートルだ。
代が変わったらまた忘れたころに襲撃に来るかもしれないが、向こう十年くらいは問題なさそうなので遠目で手を振るだけにとどめておく。
犬は好きだけど、あいつら懐かなさそうだもんな。
『殲滅してもいいのではないか?』
「やめてやれよ。あいつらだって群れがあるだろ。それに生態系が崩れる可能性も高い」
『そういうものか。まあ、レンが言うなら俺は従うまでだ』
「おう、そういうもんだ」
物騒だが物分かりはいいフリンクの頭を撫でながら俺は笑顔で答えてやる。
満更でもないようでフリンクは潮を吹いた。
声はダンディだが、飼育していた時のように無邪気な一面をのぞかせるので、やはり可愛いものだ。
そんな調子で森を一回りした後、村に戻る。
畑仕事を終えてから出かけたので昼前の帰還となった。
『ん? なんだか村が騒がしいな?』
「本当だ。なんかあったかな?」
とは言っても冒険者か商人が立ち寄ったとかくらいのものだろう。平穏なこの村にはその程度で刺激になるのだ。
「おう、レンにフリンクおかえり! なんかあった?」
「なにもないな。フォレストウルフはしばらく村に来ないだろうってくらいか」
「十分な情報だな! ありがとよ」
ケリィが歯を見せて笑い、 フリンクに乗った俺とハイタッチを交わす。
その彼に今度は俺が返すことにした。
「どちらかと言えば村になにかあったんじゃないか? 騒がしい気がする」
「お、よく分かるな。イルカイヤーってやつか? まあ、行ったら分かる。お前なら村長が紹介するかもしれないな」
「どういうことだ……?」
「お前は特別だってこった! 友人の俺も鼻が高いぜ? フリンクもな」
『よくわからないけど、村長さんの居場所は分かったから行ってみようか』
フリンクが可愛い声でそう言うと、ケリィが手を振って見送ってくれた。
嫌味のひとつも言わないいい奴である。
そしてフリンクが村長のところへ移動を始めると、村でも少し高い場所にある丘へ向かっていることがわかった。
「ありゃ、なんでこんなところに?」
『なんでだろうな。ふむ、現地には結構人が居るみたいだが?』
イルカアローで調べてみると、確かに複数人の反応が返って来た。
十人くらいいるなと思いつつフリンクが進んでみると――
「ん? なんだあれは?!」
「おや?」
――良い服を着た見慣れない人達と、鎧兜をまとった冒険者が現場にいた。
さらにその前には村長さんとログさん、バリアットさんなど重要な人物が集まっていた。
「おお、レンか。家に行ったら哨戒をしていると聞いたが、帰って来たのか」
「ええ、フォレストウルフは今後しばらくはここに来ないと思います。えっと、こちらの方々は?」
俺がそう言うと、良い服を着た人が咳ばらいをして俺を睨みながら口を開く。
「我々はバートリィ家の者だ! 今度、あの丘の上に屋敷を建てることになったので交渉に来たのだ」
「あ、貴族の方でしたか。大変失礼をしました」
「む……まあいいだろう」
気難しそうだが話は分かるタイプのようで、片目を瞑り問題ないと咳ばらいをしていた。
『どうしてこの村に作るのー?』
「おう!? な、なんだこいつは!? 魔物か!?」
『僕はフリンクだよ!』
「ああ、剣を納めてくださいセキト様。この村の守り神みたいな存在で、精霊や神獣という類です」
「「「はあ!?」」」
村長が微笑みながらあっさりと口にし、その場にいたセキト様含むバートリィ家の人達が声を揃えて驚いていた。
「このレンが神様の加護を受けておりましてな。神の使いであるフリンクと一緒にこの村で生まれました」
「う、むう……神……本当か……」
「セキト様、このような魔物は見たことがありません。これだけ人語を喋る個体も私は知りませんよ」
「ですな。でもそれなら猶の事いいかもしれません」
「そうだな……」
「どういうことですか?」
意外と受け入れられたな?
もうちょっと疑うと思ったんだけど、未知の存在であるフリンクが突っ込みようがないからかもしれないけど。
それはともかく、俺とフリンクがいることがちょうどいい理由を尋ねてみると――
「バートリィ家の使いだと言ったろう? その家の方が療養のために住む屋敷を建てる。この村を選んだ理由は、この村はギルドに魔物の討伐依頼が無いという噂を聞きつけたからなのだ」
「そういうことですか」
「この村は自警団が居るのはもちろんですが、レンとフリンクがかなり強いため冒険者の手を必要としないんですよ。私も常駐冒険者でしたが、形無しですね!」
「そこまでなのか? 普通の若者に見えるが」
ログさんがはっはっはと笑いながらそんな説明をしていた。そこはさすがに訝しむセキトさん。
「まあ、俺が強いかはともかき、この村で療養するならいいかもしれませんね。空気もいいし、水もキレイです。魔物は俺とフリンクが寄せないようにしますよ」
「ふむ、堂々としているな。それが本当かは追々わかるとして、実際に平和な村のようだ。すまないが、屋敷を立てさせてもらう。もちろん資金は提供するとおっしゃっている」
「承知しました」
村長さんが頷くと、セキトさんが握手をしてこれから契約書を作成するとのことで、村長さんの家へバートリィ家の人達は招かれていった。
『どんな人が来るのかなあ』
「さあな。でも、やることはいつもと変わらないって。貴族なんてそれこそ関わりになることはないだろうし」
『そうかな? そうかも! 平和が一番だよねー』
ふふんと目を細めて鼻を鳴らすフリンクと一緒に、村長さん達を見送る俺達。
それから数日後、屋敷を完成させるため工事の人が出入りするようになる。
まあ、フリンクの記憶が消えたり復活したりしているのを見て『脳は大丈夫かな』と心配になる俺であった――
念のため俺とフリンクが森を徘徊してみたところ、あいつらは周辺5キール以内には存在しなかった。キールは日本で言うキロメートルだ。
代が変わったらまた忘れたころに襲撃に来るかもしれないが、向こう十年くらいは問題なさそうなので遠目で手を振るだけにとどめておく。
犬は好きだけど、あいつら懐かなさそうだもんな。
『殲滅してもいいのではないか?』
「やめてやれよ。あいつらだって群れがあるだろ。それに生態系が崩れる可能性も高い」
『そういうものか。まあ、レンが言うなら俺は従うまでだ』
「おう、そういうもんだ」
物騒だが物分かりはいいフリンクの頭を撫でながら俺は笑顔で答えてやる。
満更でもないようでフリンクは潮を吹いた。
声はダンディだが、飼育していた時のように無邪気な一面をのぞかせるので、やはり可愛いものだ。
そんな調子で森を一回りした後、村に戻る。
畑仕事を終えてから出かけたので昼前の帰還となった。
『ん? なんだか村が騒がしいな?』
「本当だ。なんかあったかな?」
とは言っても冒険者か商人が立ち寄ったとかくらいのものだろう。平穏なこの村にはその程度で刺激になるのだ。
「おう、レンにフリンクおかえり! なんかあった?」
「なにもないな。フォレストウルフはしばらく村に来ないだろうってくらいか」
「十分な情報だな! ありがとよ」
ケリィが歯を見せて笑い、 フリンクに乗った俺とハイタッチを交わす。
その彼に今度は俺が返すことにした。
「どちらかと言えば村になにかあったんじゃないか? 騒がしい気がする」
「お、よく分かるな。イルカイヤーってやつか? まあ、行ったら分かる。お前なら村長が紹介するかもしれないな」
「どういうことだ……?」
「お前は特別だってこった! 友人の俺も鼻が高いぜ? フリンクもな」
『よくわからないけど、村長さんの居場所は分かったから行ってみようか』
フリンクが可愛い声でそう言うと、ケリィが手を振って見送ってくれた。
嫌味のひとつも言わないいい奴である。
そしてフリンクが村長のところへ移動を始めると、村でも少し高い場所にある丘へ向かっていることがわかった。
「ありゃ、なんでこんなところに?」
『なんでだろうな。ふむ、現地には結構人が居るみたいだが?』
イルカアローで調べてみると、確かに複数人の反応が返って来た。
十人くらいいるなと思いつつフリンクが進んでみると――
「ん? なんだあれは?!」
「おや?」
――良い服を着た見慣れない人達と、鎧兜をまとった冒険者が現場にいた。
さらにその前には村長さんとログさん、バリアットさんなど重要な人物が集まっていた。
「おお、レンか。家に行ったら哨戒をしていると聞いたが、帰って来たのか」
「ええ、フォレストウルフは今後しばらくはここに来ないと思います。えっと、こちらの方々は?」
俺がそう言うと、良い服を着た人が咳ばらいをして俺を睨みながら口を開く。
「我々はバートリィ家の者だ! 今度、あの丘の上に屋敷を建てることになったので交渉に来たのだ」
「あ、貴族の方でしたか。大変失礼をしました」
「む……まあいいだろう」
気難しそうだが話は分かるタイプのようで、片目を瞑り問題ないと咳ばらいをしていた。
『どうしてこの村に作るのー?』
「おう!? な、なんだこいつは!? 魔物か!?」
『僕はフリンクだよ!』
「ああ、剣を納めてくださいセキト様。この村の守り神みたいな存在で、精霊や神獣という類です」
「「「はあ!?」」」
村長が微笑みながらあっさりと口にし、その場にいたセキト様含むバートリィ家の人達が声を揃えて驚いていた。
「このレンが神様の加護を受けておりましてな。神の使いであるフリンクと一緒にこの村で生まれました」
「う、むう……神……本当か……」
「セキト様、このような魔物は見たことがありません。これだけ人語を喋る個体も私は知りませんよ」
「ですな。でもそれなら猶の事いいかもしれません」
「そうだな……」
「どういうことですか?」
意外と受け入れられたな?
もうちょっと疑うと思ったんだけど、未知の存在であるフリンクが突っ込みようがないからかもしれないけど。
それはともかく、俺とフリンクがいることがちょうどいい理由を尋ねてみると――
「バートリィ家の使いだと言ったろう? その家の方が療養のために住む屋敷を建てる。この村を選んだ理由は、この村はギルドに魔物の討伐依頼が無いという噂を聞きつけたからなのだ」
「そういうことですか」
「この村は自警団が居るのはもちろんですが、レンとフリンクがかなり強いため冒険者の手を必要としないんですよ。私も常駐冒険者でしたが、形無しですね!」
「そこまでなのか? 普通の若者に見えるが」
ログさんがはっはっはと笑いながらそんな説明をしていた。そこはさすがに訝しむセキトさん。
「まあ、俺が強いかはともかき、この村で療養するならいいかもしれませんね。空気もいいし、水もキレイです。魔物は俺とフリンクが寄せないようにしますよ」
「ふむ、堂々としているな。それが本当かは追々わかるとして、実際に平和な村のようだ。すまないが、屋敷を立てさせてもらう。もちろん資金は提供するとおっしゃっている」
「承知しました」
村長さんが頷くと、セキトさんが握手をしてこれから契約書を作成するとのことで、村長さんの家へバートリィ家の人達は招かれていった。
『どんな人が来るのかなあ』
「さあな。でも、やることはいつもと変わらないって。貴族なんてそれこそ関わりになることはないだろうし」
『そうかな? そうかも! 平和が一番だよねー』
ふふんと目を細めて鼻を鳴らすフリンクと一緒に、村長さん達を見送る俺達。
それから数日後、屋敷を完成させるため工事の人が出入りするようになる。
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