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World 2

2-1 間髪入れずに次の世界?

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 「どあああ!?」

 「きゃ!」

 「いたた……」

 どさどさと俺達は白い空間へと放り出された。どうやら目的を終えたため、神様のいる場所へと強制送還されたらしい。

 「くそ……まだパーティの途中だってのにこんなことするかね?」

 『いや、悪かったわね。ちょっと嬉しかったもんだからお礼を言いたくてすぐ戻しちゃったわ!』

 俺が毒づいていると、第一世界〝テンタシオ〟を管理していた女神、メントル様が俺達の前に姿を現した。
 
 「いや、飯食ってる途中だわ、パーティ会場から消えるわでシルトとか相当困ると思うんだ……」
 
 しかし自分の世界が救われたからか、上機嫌で女神らしいことを言い始めた。

 『んーコホン。よくやってくれた 異世界の勇者達よ! まずは一つ目の世界の解放、おめでとう』 

 「あ、フィリアいい肉持ってるな、野菜ばっかりで食ってないんだ。ちょっとくれよ」

 「いいですよ、そのサラダ少しください! はい、あーん!」

 「フィリア……どうやらここで退場したいらしいわね……? 魚も食べないとダメよ陽?」
 
 「ふ、ふふ……凄んでもダメですよ! こっちには女神様がついてますからね! 今日こそ女神見習いとしての凄さを教えてあげます!」

 『話を聞けー!!』

 ぴしゃーん!!

 「「「ぎゃああああ!?」」」

 俺達の自由さに業を煮やしたメントル様が俺達に雷を食らわせてきた!

 「な、なんで俺まで……」

 『二人を放置した時点で同罪よ! ……こほん、よくやってくれた異世界の勇者達よ!』

 あ、まだそれやるんですね……メントル様はそのままサラダを頭に被ったり、肉を咥えたままの俺達に語りかける。

 「あー、まあ言われてやっただけですからそう畏まらなくても……いきなり消えてびっくりしたと思いますよシルトたち」

 『大丈夫よ。あなた達をこっちに戻した時点で記憶は消えるから』

 あはははと笑いながら嫌なことを言うクソ女神。語り継がれたりとかしねぇのかよ!

 『まあ、せっかく救ったのに記憶に残らない、ということに不満はあると思うけど、あいつらを追い払ってあなた達がこっちに戻った時点で『リセット』されたと思えばいいわ。残念だけどね』

 そういう表情は少し寂しそうに見えた。自分の作った世界で色々あったのに無かったことになるのは思う所があるのかもしれない。

 『とりあえず私の世界はこれで問題ナッシング。地球の防衛に尽力するわ! もうあいつらが入って来れないから心配ナッシング!』

 いちいち古いな……とりあえず俺は気になっていたことを聞いた。

 「『あいつら』って別世界の神様なんですよね? 何か綾香が目をつけられたんですけどもうちょっと詳しい話を聞かせてもらえませんか? 弱点とか」

 「私は陽がきっと守ってくれると信じているから大丈夫だけど?」

 「でも、敵の情報は知っておいた方がいいと思いますよ?」

 もぐもぐとフィリアと一緒にサラダを食べながら横槍をしてくる綾香。仲いいね君ら……。すると、メントル様が眉を顰めて口を開く。

 『あいつと話したのか?』

 「ええ、領主の館で中ボスを倒した時に水晶から話しかけてきたんですよ。めっちゃナイトキャップと被ってたけど」

 『そうか、顔が割れてしまったのか……綾香君も狙われた、か。そうなると今後執拗に追ってくるだろう。危険な旅になりそうだが頑張ってほしい。君達の愛の力なら切り抜けられるはずだ!』

 「気休めの言葉だけ!?」

 「そんな……愛だなんて……」

 「はあ……まあそのことは後でいいか……で、あの神は?」

 『うむ、ヤツの名は「ユーベル」9つ目の世界を創った男だ。前にも話したが、発端は私達がヤツの世界を馬鹿にしたからに他ならない』

 やっぱりあいつが悪いとも思えないんだが……と、考えていたら続きがあった。

 『まあ馬鹿にした理由はいくつかあるが……アイツの世界はある意味完璧なんだ。完璧すぎて気持ち悪い。いつか行くことになるだろうが、その意味はきっと分かるはずだ。そしてこの騒動自体、元々仕組んでいた節がある、ということだ』

 「仕組んでいた……?」

 『まず第一に手際が良すぎる。刺客を送り込むタイミングに、私達が干渉できにくい状況を作ったんだ。そして地球への侵攻だな』

 メントル様が言うには、世界を馬鹿にしたのはきっかけに過ぎないという。腹立たしい気持ちもあったろうが、そうなると一つ疑問が出てくる。

 「しかし他の世界を壊してどうするんだろうな……」

 『メリットは私達が世界を創りなおしている間、自分の世界の人口を増やせるのはあるかな。私達は一応、最高神だからまた作り直すことはできるけど、今生きている人は作り直せないからねえ』

 「なるほど、どちらにせよユーベルに聞かないと本心は分からないってことか」

 「とりあえず休んでいいんですよねメントル様?」

 俺が頭を掻きながら立ち上がると、フィリアがそんなことを言う。そういやそうか、俺達は激戦を潜り抜けたばかりなのだ、それくらいの権利はあるはず!

 「一回家に帰ったりは……?」

 『それは面倒だからダメ』
 
 「面倒って何だよ!? じゃあどこで休めばいいんだよ!」

 『はいはい、向こうに用意してあげるからこっちへ……』

 と、苦笑しながらメントル様が案内してくれようとした矢先のことだった。向こうから慌てて走ってくる赤い髪の女神と、武人みたいな神が走ってくる!? 押しのけあいながら突っ込んでくるだと!?

 『おっかえりーー! 次は私! 私の世界にー!!』

 『次は俺だぞ! お前んとこは異世界人とニワトリが主人公なんだからいいじゃねぇか! こっちはもうやられる寸前なんだよ!』

 『両方割とポンチ……もといピンチなのよ!』

 『ならば勝負……!』

 『受けて立とう! ……最初はグー!』

 『じゃんけんポン! あっち向いてホイ!』

 『負けた……』

 ガクリと膝をつくのは赤い髪の女神……ルアだった。歓喜に喜ぶ武人神ゼアトは大人げないと思った。

 「じゃあ次はゼアトのおっさんの世界に行くのか? どういう世界なんだ?」

 するとゼアトは真顔でこう答えた。

 『すまん、説明している暇は無い! もう割とギリギリなんだ!』

 「は!? いや、今帰ったばっかりなんだから休ませて……」

 『我が世へ送るのは異世界からの客人……ああ、面倒くさい! いってらっしゃい!』

 「雑!? ……うわ……」

 「陽!」

 「ハルさん!」

 俺の足元に魔方陣ができ、光に包まれる。それを見た綾香とフィリアが慌てて飛び込んでくる。

 「ぐわ!? お前等手加減し――」

 全てを言い終わる前に俺達は浮遊感と共に消えた。

 ピッ

 <騒がしいですね、もう出発ですか>

 最後に聞いたのは久々に出てきたローラの声だった……
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