上 下
37 / 48
ケース3: 結婚

11. クリス、怒りの沸点を越える

しおりを挟む


 グシャ! バキ! ドカ! シャキン……!

 「ば、ばかな……二十人のゴロツキを……さ、三分も立たずに……ば、化け物か……!?」

 マーチェスが剣を納め、シャルロッテが最後の相手を蹴り飛ばした後、残された男が冷や汗をかきながら呟く。それを聞いたシャルロッテが男に近づき胸ぐらを掴んで睨みつける。

 「あなたはメッセンジャーボーイとして生かしておいたわ。帰ったらあなたの主に伝えなさい『次はお前が死ぬ番だと』ね」

 「ひ、ひぃ!? ……い、息をしていない……こ、こいつも……う、うわああああ!?」

 放り投げられた男が倒れているゴロツキが息をしていないことに気づき、恐怖の雄叫びを上げながら宿を飛び出し逃げ去って行った。

 「しょーもない男ね……ふん!」

 床を足で叩きつけると、衝撃波が床に伝わりゴロツキ達の体が一瞬浮いた。そして直後、咳き込む声や呻き声が次々と聞こえてくる。

 「ひっく……お見事、腕……足は衰えていないようだね」

 「まさか! 寝起きとはいえパパと二人でこんなのに、こんな時間かけちゃったのよ? ダメダメよ。宿屋で人死にも嫌だから手加減はしたけど」

 「ふふ、子供が出来てからめっきり戦わなくなったもんね、ママは」

 「あなたの剣はデュークが継いだけど、私の技は継いでほしくない……というか、折角貴族に産まれたんだから、やっぱりいい学校に行ってもっといい仕事について欲しいからね」

 「そうかい? 武王の技なら継承に値すると思うけどね?」

 「嫌よ……でも、みんなその素質はあるのよね……」

 「ま、今はその話は無しにしよう。あー、親父さん、申し訳ないが警備団、呼んでもらえますかな?」

 「は、はいぃ! ぐあ!?」

 机の下で様子を伺っていた親父さんがガタンと慌てて立ち上がり頭を打ち、そのまま外へと走って行った。

 「さて、その間に縛っておこうか……ロープ……ロープ……と」

 「あーあ、寝間着が破れちゃったわ……こんなところアモルやウェイクにはみせられないわね……」

 いそいそとゴロツキを縛って行く二人。そんな光景を階段の上から見ていた影があった。

 
 「み、見てしまいましたわ……」

 「み、みちゃった……母上、あんなに強かったの……?」

 「ううう……」

 「アモル?」

 「素晴らしいですわ! あの技……あれさえあればお兄様に近づく女を一蹴できる……!」

 「ちょ!? 何言ってるのさ!?」

 「うふ、うふふ……」

 トリップしたアモルにウェイクの言葉は届かなかった。

 さて、その頃セルナを助けに行ったクリスは……


 ◆ ◇ ◆


 「一階だったな!」

 俺はホテルに駆けこむと、ロビーを抜けて奥を目指す。そこに、受付嬢が俺を止めるため声をかけてきた。

 「あの、お客様……お外に出る際には鍵を預けているはずですが……」

 「俺は宿泊客じゃない、あんたのとこの支配人を探している」

 「支配人を……? それでしたら少々お待ちを……」

 「待っている暇はない! 場所は分かっている、行かせてもらうぞ! クロミア行くぞ」

 「合点じゃ!」

 「あ、待ちなさい! 誰か! 誰かー!」

 受付嬢が叫ぶと同時に警報のようなものが鳴り響く。チッ、割と冷静な人間を雇ってんな! だが、セルナさんを助ければ後は何とでもなる!

 「くそ、見た目通りとはいえ広いな……」

 「む、待てクリス」

 きゃぁぁぁ!

 「セルナさんの声だ! 近いぞ!」

 声のする方へ走っていくと、声がどんどん大きくなっていく。怒声と悲鳴が入り混じった声がする部屋を俺は開け放った!

 が、ダメ! 当然だが鍵がかかっていた!

 「ぬおおお!?」

 「(な、なんだ!?)」

 中からあのハゲの焦る声が聞こえる。しかし……扉が……あか、ない……。

 「クリス、わらわがやるのじゃ!」

 「た、頼む……」

 クロミアが扉に手をかけて一気に引っ張るといともたやすく扉が引きはがされただの板切れと化した。ううむ、流石はドラゴン……人型でもその脅威は変わらない……。

 「無事かセルナさ……」

 「ク、クリスさん……!」

 そこには上半身が露わになり、ベッドに組み伏せられたセルナさんが泣きながらこちらを見て呟いた。驚いた顔でこちらをみるハゲことヨード。その光景を見て俺は……。

 ぷちん

 俺の中で何かがキレた。

 もちろんセルナさんは覚悟の上でここまで来た。だが、それはこの男に騙されたことが原因だ、セルナさんがこんな目にあっていいはずがない!

 「なななな、何だお前は……ハッ!? あの時の貴族! ええい、サイゴは、ゴロツキどもは何をしている!?」

 「ゴロツキ? 他にも何か企んでいたのか? セルナさんを離せ、借金の金貨二百枚はここにある」

 金貨の入った皮袋を床に投げつけると、ヨードはすぐに皮袋に飛びついた。

 「……た、確かに二百枚……ふ、ククク……こうも簡単に渡すとは、甘い……貴族というのは本当にアホですねぇ!」

 「まったくだ。頭が茹で上がっているのは分かるが、早計すぎるぜ坊ちゃん」

 俺の首筋にナイフを押しあて、男がぼそりと呟いた。いつの間に……! 俺が暴れて振りほどこうとしたところで、ヨードに動きがあった。

 「お、おお、サイゴ! いい所にこの男と幼女を始末しろ! 幼女は殺さなくても構わん、奴隷にでも売ればいい金になる! お前はこっちに来るんだ……!」

 「いや!? クリスさん! クリスさんー!」

 「隠し扉!? くそ!」

 「おっと……ナイフを見てもびびらねぇのか、肝は強いな坊ちゃん」

 「やかましい! 邪魔するなら叩きのめすぞ、クロミアが!」

 「わらわ!?」

 「ふ、はっは! はははは! 坊ちゃんおもしれぇな! ……行きな、まだ間に合うだろ」

 「……? どういうつもりだ?」

 「どうもこうもねぇ、そのままだ。あの嬢ちゃんがこのままだと忍びない……それだけだ。俺は理不尽なことが嫌いでね。こんな商売をしちゃいるが、スジは通さないといけないと思っている」

 「……仕事がなくなるかもしれないぞ」

 「俺の心配している場合か、早くいけ!」

 「チッ、礼は言わないぞ!」

 「急ぐのじゃ!」

 俺は隠し扉をくぐって後を追う。すぐに屋外へ通じる扉があり、外へ出ると、未完成の建物が目に入る。明かりが点いている所を見ると、禿はここに逃げ込んだに違いない。
 今度は逃がすまいと、入り口からそっと様子を伺うと、やはり、居た。

 「くっく……あなたが手に入り、金貨もGET! 笑いが止まりませんね!」

 「最低ですね……! 関係の無い人を巻き込んで……!」

 「何とでも言いなさい……あなたも飽きたら奴隷商人にでも売りますかね、証拠はできるだけ始末しておいた方がいいですし……今頃あなたの宿もめちゃくちゃ……手を下したゴロツキも始末する予定ですし」

 「……このクズ……!」

 「あの貴族の男もサイゴに殺されるでしょう、あなたと関わったばかりに可哀相に。さ、これで邪魔者は居なくなりました。お楽しみと行きましょう」

 なるほど、ゴロツキ達も社会的にではなく、確実にこの世から消すつもりだったのか。まあそんなヤツはどうでもいいがこの男は俺を怒らせた。
 
 「行くか、クリス」

 「当然だ」

 クロミアの言葉に俺は手近にあった角材を拾い、肩に担いだ。


 ---------------------------------------------------


 ヨードの手からセルナを取り戻す為、建設中の建物で最後の決戦に挑むクリス。

 また、母の真の姿を見たアモルが目指すものは?

 そして、ヨードは生き残る事ができるか?

 次回『撲殺』

 ご期待ください。

 ※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。

karashima_s
ファンタジー
 地球にダンジョンが出来て10年。 その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。  ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。 ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。  当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。  運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。  新田 蓮(あらた れん)もその一人である。  高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。 そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。 ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。 必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。 落ちた。 落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。 落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。 「XXXサバイバルセットが使用されました…。」 そして落ちた所が…。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

処理中です...