26 / 48
ケース2:ドラゴン
13. 自体の収束、オルコスの計画
しおりを挟む「……やれ、クロミア!」
「任せておけ! ぬおおおおおお!」
「な、なんだ!?」
ベイトリーアルが捕まえていたクロミアを慌てて手放すと、クロミアはどんどん大きくなり建物をバリバリと壊しながら元の姿であるブラックドラゴンへと変貌を遂げた!
「な、何よあれ!? サーニャ! あ、あなたドラゴンと会っていたの!?」
「そうよ! ドラゴンの聖水も手に入れたわ! あなたの企みもこれまでよ!」
「くっ……ウェルトン! 逃げるわよ!」
『そうは行かぬぞ!』
逃げだそうとしたディアナをひょいと摘み上げ、あっさりと捕える。
「ああ!? ぶ、無礼な! 放せ、放しなさい!」
空中でジタバタするディアナ、それをポカーンと見ていたベイトリーアルが我に返った。
「なんてこった! 俺は消えさせてもらうぜ!」
「そうはいかんぞこの自警団の面汚しめが!」
ゼーニガッタは逃げ出そうとしたベイトリーアルを捕縛し、床に叩きつけていた。
「くそ! 俺はあいつに唆されただけなんだ!」
ダッと逃げ出すウェルトン。俺は近くに落ちていた角材を投げてその動きを封じ、一気に近づく!
「計画がめちゃくちゃだ! お前だけでも殺してやる!」
ウェルトンが懐から隠し持っていたナイフを俺の胸に向かって刺してきた。
むう、感覚がマヒしてるな……全然大丈夫なんだろうな(というフラグを立ててみる)
「ぐあ!? う、腕があ!?」
はい、フラグ役に立ちませんでした!
ナイフはぐにゃりと刃が曲がり、ウェルトンは手首を捻っていた。
「大人しくするんだな!」
投げた角材を再び拾ってウェルトンを殴って昏倒させ、鎮圧は成功した。
「サーニャ、親父さんの所へ!」
俺はカバンをサーニャへ投げると頷いて親父さんがいると思われる部屋へと向かった。
「クロミア、サンキュー!」
『お安いご用じゃ! ぎょにくそーせーじを頼むぞ!』
ちゃっかりしてやがる、が、今回は助かったからな。ま、いいか。
---------------------------------------------------
そして……
「ありがとう君達のおかげでサーニャと私自身を失わずに済んだよ」
ドラゴンの聖水を飲んだ親父さんはサクッと治り、すぐ歩けるくらいになるまで回復した。
ちなみにリビングの天井がパックリと壊れているのを見て「はふん……」と膝を崩した。
これは後日俺が業者を手配して修理すると言ったのだが、命の恩人にそんな事はさせられないと断られたのだった。
「これで僕も溜飲が下がりました、ありがとうございますクリス様」
ディアナはゼーニガッタ達に連れられて、即ルーベイン領に移送し、裁判にかけられる。
死刑にはならないだろうが、年老いるまで出てくることは叶わないだろう。
ポルタさんの事件はかなり前になるので、金銭の回収等はできない。だが、それでもポルタさんの顔は晴れやかだった。
尚、イスマット領サイドはウェルトンとベイトリーアル、そして協力者の自警団員が捕縛された。
こっちは真面目な副団長が責任を持って連れて行きますとゼーニガッタ達と共に連れて行った。
サーニャと親父さんの証言と、俺達もクロミアを人質に取られた事を説明してあるので二人も出てくるのはかなり後になりそうだ。
「それじゃ、そろそろ俺も帰ります。サーニャ、元気でな」
「うむ、改めてご挨拶をしにそちらへ向かいますよ」
親父さんが朗らかに笑い、サーニャが続けて言葉を出す。
「あ……あのね、あたしさ……」
「じゃあな」
「あ……」
サーニャは何か言いたそうだったが俺はあえて聞かず、サーニャの頭をひと撫でして玄関へと向かう。
俺は今後死ぬつもりの人間だ、何となく気持ちには気付いていたがそれに応える事はできない。
そして外に出て伸びをするとお腹がぐーと鳴った。
「何か気が緩んだら腹が減ったな……どっかで食っていくかな」
「わらわもいいのか?」
「ああ、その後は帰るなり遊ぶなり好きにしたらいい」
「帰りはわらわに乗っていくかや?」
「んー、そうだな。最後の思い出に乗せてもらうか!」
「了解したのじゃ! ふんふーん♪」
機嫌よく鼻歌を歌いながら店を物色するクロミア。
結局死ねなかったが、サーニャ達が助かったからいいかと、何となく晴れ晴れした気持ちで俺は町を歩くのだった。
---------------------------------------------------
【あの世】
<くっ……生意気にもあの娘の言葉を遮りましたね……命の恩人なら父親も手放しで喜ぶ……結婚待ったなしだというのに! あんなことやこんなこともし放題なのに……!>
<いや、アンタじゃないんだから……というか転生して記憶を持ってるから奥さんは一人しか取らないと思うわよ? 父親も一人としか結婚してないんでしょ?>
<……そうですね、あのクソ真面目な両親ですから第二夫人など間違ってもあり得ないでしょう……世間的には領主は何人娶っても構わないんですがね。他の豚のような領主もいますし>
<で、こっちは準備できたけどどうするの>
ハイジアがみかんを剥きながら面倒くさそうにオルコスへと言い放つ。昔はもう少しまともだとおもったんだけどな……などと呟きながら。
<(顔はいいけど性格が……ね?)>
<予定通り実行しますよ。まだまだ彼には稼いでもらわないと……>
そして物語は次の段階へ進む。
---------------------------------------------------
サーニャ達を救う事が出来たクリス。
クロミアと共に食事をして自分の家へと戻っていった。
しかし、出番の少なかったオルコスが復讐するかのように計画を発動する!
そして、「好きにしていいぞ」の意味を間違って捉えたクロミアの行動とは?
次回、新章第一話『猫なで声のオルコス』
ご期待ください。
※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。予めご了承ください。
0
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~
白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた!
もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する!
とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する!
ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか?
過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談
小説家になろうでも連載しています!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
エンジニア転生 ~転生先もブラックだったので現代知識を駆使して最強賢者に上り詰めて奴隷制度をぶっ潰します~
えいちだ
ファンタジー
ブラック企業でエンジニアをしていた主人公の青木錬は、ある日突然異世界で目覚めた。
転生した先は魔力至上主義がはびこる魔法の世界。
だが錬は魔力を持たず、力もなく、地位や財産どころか人権すらもない少年奴隷だった。
前世にも増して超絶ブラックな労働環境を現代知識で瞬く間に改善し、最強の賢者として異世界を無双する――!
※他の小説投稿サイトでも公開しています。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる