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第七章:荒れる王都
その129:壮絶な空中戦
しおりを挟む「……来ましたね。では行きましょうかメリーナさん」
「ですねぇ。良かったんですかぁ? まだ新参で、ファム様達もいないのに」
「ここまで来たら同じですよ。それに勝算のない戦いというのはしない主義でして。【王】が二人いて、逃げ出す人は居ませんよ」
「あら、ベル様から聞きました? ……それじゃあ、二人で頑張りましょうか」
「いやいやいや、メリーナさん!? 俺も居ますから」
「そうでしたねぇ♪」
と、いうわけでわたしことイスラは城の最上階にあるテラスから黒い粒が見え、一頭だけのワイバーンへ騎乗する。
……どうしてこんなことになったのか。
なし崩しにここまでやってきましたが、特に目的も無く旅をしていただけなのでいいっちゃいいんですがね?
師匠が逝ってしまい、魔法を極めるという、いつ始めていつ終わるかも分からないアバウトな旅を続けてきましたがあの荷物を買ったのが分岐点でしたね。
まさか、魔族のトップクラスとお友達になれるとは思いませんでした。
ぶっきらぼうで冗談が通じないですが、まあイケメンですし、お金もあって、さらに強いとなれば、まあ残らない理由もありません。
ファムとルーンベルさんもいい人です。
ただ、ルーンベルさんのおっぱいは許しがたい。
それはともかく、ヒズリーン帝国の強襲には呆れましたねえ。
元々、わたしはあの国出身ですが貴族志向が強すぎるんですよね国自体が。
だから家を飛び出して冒険者になったわけですが……
「まさか故郷とこうして対面するとは思いませんでしたね!! さあ、来なさい、この大魔法使いのイスラちゃんがフルボッコにしてあげましょう!」
「ん? おい、なんかでかくないか?」
「あらぁ、これは……」
「ぶっ!?」
黒い粒がどんどん近づいてくる。
遠いからそうなのだと思っていましたが、そうではなく――
「もしかしなくても黒竜じゃないですかアレ!?」
「クルォォォン……」
なんと、どうやって使役したのかわかりませんが少なくとも前衛に居る三頭はワイバーンの三倍はある黒竜。
これはちょっと話が違いますねえ……!?
「黒竜は魔法防御力が高いです、騎手を潰しましょう。スパイクさんでしたっけ? 任せますよ」
「おお!」
「さすが、知識豊富ですねぇ♪ ……では、行きましょうか」
「委縮している場合じゃありませんよワイバーン君、負けたら死ぬだけです。……そうですね、こうなっては一蓮托生。名前をつけてあげましょう、今日からお前はブレイブ君です!」
「……! グォォォォン!」
わたしの声に呼応し、急加速。
策は先手必勝。
まずは特大範囲魔法といきましょう!
◆ ◇ ◆
「ははは、見ろよフルス。こっちから奪ったワイバーン一頭で戦いを挑むつもりらしいぜ」
「そのようだなキリック。あんな戦力で俺達‟黒葬隊”に戦いを挑んできたことを後悔させてやろう」
「三位一体の攻撃を使うまでも無さそうだがな。下がってワイバーン部隊に任せてもいいんじゃねえ? 20頭連れて来たし」
「いや、何か策があるのかもしれんぞジョウイ。油断は――な!? 速いだと!?」
「遅いですね。強者の余裕、使いどころを間違えると死に繋がりますよ……! <ブリザードブラスト>!」
ブレイブ君の活躍により、一瞬で黒竜三体の間を抜け、敵の中枢へ。
直後、わたしのギガやメガ系と違う、師匠とわたしの独自で開発した極大魔法が広がっていく。
「ぶああああ!?」
「な、んだ!? 吹雪? いや、氷の嵐か! ぐあああああ!?」
「ピギャァァァァ!?」」
「気をつけろ、巻き込まれたら鋭い氷に貫かれる!」
「上だ、上昇するんだ!」
さて、横範囲に吹きすさぶブリザードブラストを嫌がって上空へにげるワイバーン部隊ですが、もちろんそれを予測していないはずはありません。
「くっくっく……逃げられるとは思わないことですねえ」
「貴様……!」
「時間もあまりありませんし、さようなら。<ウォーターフォール>」
「……!? 馬鹿、そんなことをしたら――」
水の滝を生み出し、昇ってくる彼らに降らせるわたし。
これだけならまあ、耐えられるんですけど、今、その下にはブリザードブラストが渦巻いています。
するとどうなるか? 後は見物してのお楽しみ――
「み、水が凍る……!? 重く――」
「お、落ちる。おい、ワイバーン、しっかりしろ!?」
「クルォォ……」
「ドラゴンと言えど寒さには弱いですからね、被った水の重みで地面へと沈みなさい」
「馬鹿な……!? こんなことで――」
眼下で数十匹のワイバーンと兵士が落下していくのが見え満足するわたし。
まあ、奇襲でこれだけ落とせたのは幸いですかね。
後は――
「やってくれたな!」
「残存戦力を潰していきましょうか! スパイクさん!」
運よく難を逃れた騎手が槍を片手に突っ込んで来たので、ここで伏兵としてスパイクさんの登場です!
「おうよ! 銀製の矢だ、速いぜ!」
「ぐぬ!?」
「ああ、さっきは寒かったですかね。<ギガファイア>」
「あああああああ!?」
「ピギャァァァ!?」
どっかに木に引っかかって助かったらいいですがね?
そこで、黙っていたメリーナさんが口を開く。
「ああ……いいですわぁイスラ様……」
「うっとりしてる!?」
「次、二頭で来るぞ!」
「ブレイブ君、高度を落としてください」
わたしが背中を叩くと、すぐに下降してやり過ごす。槍だけに。
攻撃するなら今ですね!
「潜り込まれたか……!」
「こういう場合、下からなら羽を狙えますからね! <ギガアイス>」
片方の羽でもぶち抜けば落下は必至。
氷を槍上にして真上に放てば――
「そう何度も上手くいくと思うな……!」
二頭は散開し、難なく回避される。
直後、兵士がワイバーンから飛び降りブレイブ君の背に乗ってきました!
「やりますねぇ、怖くないんですかぁ?」
「メイド……!? ふん、こうすりゃ落ちねえからな」
「ピギィ……!」
こいつ……腰のロープの先についた杭のようなものをブレイブ君の背中に刺し、振り落とされるのを阻止しましたね……。
「へへ、それじゃ一人ずつ――」
「できると思っているならおめでたいですねぇ」
「う、うおっと!? い、命綱も無しに突っ込んでくるかよ……!」
「安定感には自信がありますぅ♪」
そっちは任せましたよメリーナさん。
さて、ワイバーン部隊は残り七頭。
そして――
「よくも我が部隊を……!」
「三位一体の一撃で」
「消え去るがいい!!」
――これはまた勢いよく頭の悪そうな黒竜が襲い掛かってきましたね!
応援ありがとうございます!
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