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第八章:魔族との会談
213.聞き分けがいいのは怪しいけどな?
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「ここが……」
「ブラインドスモーク……」
俺達の船は特にトラブルもなく、魔王の居る島へとたどり着いた。
妨害があるとすれば魔王軍の幹部クラスだけだからその内二人が揃っている時点でこうなるのは間違いないんだけどな。
もしブライクが居なかったとしても、メルルーサはなんとかなると思っていたから計画通りではある。
ただあいつのおかげでメルルーサの居場所がすぐに見つかったのはでかい。一応、最終手段はあったが僥倖ってやつだな。
【いらっしゃいませいらっしゃいませ! お土産はそこら辺の土をどうぞ! ってなんでですか!?】
「いきなりノリツッコミしだしてどうしたのよ」
【冷静……!? わたしより焦るべきですよ!?】
「いや、さっき四人で覚悟を決めて来たからね」
【あれ!? わたしは!?】
「お前は魔族だしな。ここでの話によっては敵になる。その時の対応を話しているから外したんだ。悪いな」
【あ……】
俺が真顔でレスバの頭に手を置くと、少し寂しそうな顔で理解した。ブライクとビカライアは『そうだな』という感じで、メルルーサは肩を竦めて苦笑していた。
【まあ、私はリクの味方をすると思うわ】
「そうしてくれると助かる。セイヴァーとハイアラートを相手にするのは結構面倒くさいからな」
『わたしが居れば何とかなるんじゃない? 剣にしておいたら?』
リーチェの言うこともわかるが、俺はあえてそうしないことを告げる。
「敵意が無いことを知ってもらうならこのままがいい。前の世界ならいざ知らず、この世界じゃお互い異邦人だ。ケガもしているセイヴァーなら話し合いの余地もあるだろ」
「わふ」
そこで俺の足元にファングが来て一声鳴いた。慌てたミズキちゃんが近くに来ると、抱っこして顔を見ながら言う。
「ファングも行くの? 船で待っていてもらった方がいいかも……」
「いや、連れて行こう。もし俺達が元の世界に戻った場合、そいつは誰かに預けないといけないしな」
【わたしが育てますよ】
珍しく真顔でそんなことを口にしたのはレスバだった。こいつは三人と歳が近い感じだったし、もしかしたらこの旅は楽しかったのかもしれないな。
【そろそろ行くか。時間が惜しい】
「ここまで来たらどっちでも同じじゃないですか? もう時間はそれほど重要じゃありませんよ」
【ふむ】
【ブライク様に鍛えてもらったヤツが何を生意気なことを言うか】
「それとこれとはってやつだよビカライア」
ブライクが歩き出し、風太とビカライアがその後を追いながら気安い会話をしていた。ここに来るまで模擬戦を繰り返していて風太は随分と鍛えられた。
例の世界樹からもらった剣を使えばビカライアは恐らく単体で倒せると思う。それくらい目に見えて技量が上がっていた。
「……これで終わるといいわね」
「そうだな。そうあって欲しいぜ」
夏那も歩き出し、メルルーサと水樹ちゃんも頷いて歩き出す。俺はしんがりで状況を見ながらなにかあった時に動けるようにしていた。
そして――
【……本当に人間が来るとはな。それに我らが同胞も一緒とは】
『あ!』
――しばらく進んでいると、陰気な顔をした魔族が待っていた。あの顔にも見覚えがある。
「よう、久しぶりだなハイアラート。相変わらず性格が悪そうな顔だ」
【貴様は随分と老けたな】
「ほう……」
こいつは俺のことを覚えている、か。
最後の戦いの際、師匠と戦っていたはずだがトドメを刺していなかったか。それともその前に転移したのか……?
「ここで待っていたということは俺達の接近に気付いていたらしいな」
【……魔王様が報せてくれたのだ。勇者がここに来る、と】
「セイヴァーが?」
「ま、魔王はこっちの動向が分かっているってこと!?」
【ふむ……今回の仲間は随分と貧弱そうだな】
「なんですって!!」
ハイアラートが意外なことを口にし、夏那の言葉に冗談を言う。これも意外だが、奴からは殺気を感じられない。
とりあえず現状確認のため激高する夏那を後ろに下げてからハイアラートへ尋ねることにした。
「落ち着け夏那。それで、お前はどうするんだ? 見た感じ一人のようだが」
【……ついてこい。魔王様がお待ちだ】
すると奴は踵を返してそのまま歩き出した。完全に隙だらけで、後ろから斬れば確実に殺せるなと瞬時に判断できる。そこでブライクが足を前に出しながら言う。
【ハイアラート殿が戦いを仕掛けないだと……?】
【貴様は私をなんだと思っているのだブライク。というかメルルーサはともかく、勇者と一緒とはな。貴様も裏切ったか?】
【いや、俺はそうじゃない。だが、俺に『前の世界』とやらの記憶がないことの説明を魔王様から聞きたいと思ってな】
【……なるほど。どうせこの世界で暴れるなら必要ないと思っていたが、この男が居るならそうなるか】
「ではあなたは知っていた、ということですね」
ブライクとのやり取りで水樹ちゃんが質問を投げかけると、ハイアラートは振り返らずに答える。
【知っていたからどうだと言うのだ? さして重要ではない。いや、なかった、か。その男が居なければ特に問題にならない】
「それはそうだな」
【……ほう、お前が私の言葉に頷くとは……変わったな】
「歳を食えば色々あるもんだ。お前等はかわらねえな。結局、人間を食い物にしようとしている」
【人間より優れているからな】
「それと人間を食い物にするのは違うだろ? こいつとしばらく過ごしていたが、俺達の作る料理を美味いって食ってたぜ。人を支配しなくても腹は膨れるのがよくわかった」
【……】
【うおお!? 裏切りっていませんからね!?】
俺がレスバを引き寄せてそう言うと、ハイアラートは一瞬だけ視線をこちらに向けたがなにも言わずにさっさと歩き出した。
「自ら魔王の下に案内する……罠でしょうか?」
【どうかしら。流石に幹部である私と勇者を相手にそれができるとは思えないけどね。というかそもそも、普段の彼なら有無を言わさず飛び掛かってもおかしくないのよ】
「やっぱリクを恨んでるのかしら」
【そりゃあね。魔王様を倒した唯一の人間だもの】
何故かメルルーサが得意げに風太達に語っていた。ブライクとビカライアはそれには乗らず、ただ黙ってついていく。
【ここだ。いくら魔王様の頼みとはいえ、おかしな真似をしたらどなるかわからんからな】
「肝に銘じておくよ」
やがて森を抜けると、巨大な門へと到着した。どうやら本当に本拠地らしい。
セイヴァー……それにイリス……お前達はどうなっている?
「ブラインドスモーク……」
俺達の船は特にトラブルもなく、魔王の居る島へとたどり着いた。
妨害があるとすれば魔王軍の幹部クラスだけだからその内二人が揃っている時点でこうなるのは間違いないんだけどな。
もしブライクが居なかったとしても、メルルーサはなんとかなると思っていたから計画通りではある。
ただあいつのおかげでメルルーサの居場所がすぐに見つかったのはでかい。一応、最終手段はあったが僥倖ってやつだな。
【いらっしゃいませいらっしゃいませ! お土産はそこら辺の土をどうぞ! ってなんでですか!?】
「いきなりノリツッコミしだしてどうしたのよ」
【冷静……!? わたしより焦るべきですよ!?】
「いや、さっき四人で覚悟を決めて来たからね」
【あれ!? わたしは!?】
「お前は魔族だしな。ここでの話によっては敵になる。その時の対応を話しているから外したんだ。悪いな」
【あ……】
俺が真顔でレスバの頭に手を置くと、少し寂しそうな顔で理解した。ブライクとビカライアは『そうだな』という感じで、メルルーサは肩を竦めて苦笑していた。
【まあ、私はリクの味方をすると思うわ】
「そうしてくれると助かる。セイヴァーとハイアラートを相手にするのは結構面倒くさいからな」
『わたしが居れば何とかなるんじゃない? 剣にしておいたら?』
リーチェの言うこともわかるが、俺はあえてそうしないことを告げる。
「敵意が無いことを知ってもらうならこのままがいい。前の世界ならいざ知らず、この世界じゃお互い異邦人だ。ケガもしているセイヴァーなら話し合いの余地もあるだろ」
「わふ」
そこで俺の足元にファングが来て一声鳴いた。慌てたミズキちゃんが近くに来ると、抱っこして顔を見ながら言う。
「ファングも行くの? 船で待っていてもらった方がいいかも……」
「いや、連れて行こう。もし俺達が元の世界に戻った場合、そいつは誰かに預けないといけないしな」
【わたしが育てますよ】
珍しく真顔でそんなことを口にしたのはレスバだった。こいつは三人と歳が近い感じだったし、もしかしたらこの旅は楽しかったのかもしれないな。
【そろそろ行くか。時間が惜しい】
「ここまで来たらどっちでも同じじゃないですか? もう時間はそれほど重要じゃありませんよ」
【ふむ】
【ブライク様に鍛えてもらったヤツが何を生意気なことを言うか】
「それとこれとはってやつだよビカライア」
ブライクが歩き出し、風太とビカライアがその後を追いながら気安い会話をしていた。ここに来るまで模擬戦を繰り返していて風太は随分と鍛えられた。
例の世界樹からもらった剣を使えばビカライアは恐らく単体で倒せると思う。それくらい目に見えて技量が上がっていた。
「……これで終わるといいわね」
「そうだな。そうあって欲しいぜ」
夏那も歩き出し、メルルーサと水樹ちゃんも頷いて歩き出す。俺はしんがりで状況を見ながらなにかあった時に動けるようにしていた。
そして――
【……本当に人間が来るとはな。それに我らが同胞も一緒とは】
『あ!』
――しばらく進んでいると、陰気な顔をした魔族が待っていた。あの顔にも見覚えがある。
「よう、久しぶりだなハイアラート。相変わらず性格が悪そうな顔だ」
【貴様は随分と老けたな】
「ほう……」
こいつは俺のことを覚えている、か。
最後の戦いの際、師匠と戦っていたはずだがトドメを刺していなかったか。それともその前に転移したのか……?
「ここで待っていたということは俺達の接近に気付いていたらしいな」
【……魔王様が報せてくれたのだ。勇者がここに来る、と】
「セイヴァーが?」
「ま、魔王はこっちの動向が分かっているってこと!?」
【ふむ……今回の仲間は随分と貧弱そうだな】
「なんですって!!」
ハイアラートが意外なことを口にし、夏那の言葉に冗談を言う。これも意外だが、奴からは殺気を感じられない。
とりあえず現状確認のため激高する夏那を後ろに下げてからハイアラートへ尋ねることにした。
「落ち着け夏那。それで、お前はどうするんだ? 見た感じ一人のようだが」
【……ついてこい。魔王様がお待ちだ】
すると奴は踵を返してそのまま歩き出した。完全に隙だらけで、後ろから斬れば確実に殺せるなと瞬時に判断できる。そこでブライクが足を前に出しながら言う。
【ハイアラート殿が戦いを仕掛けないだと……?】
【貴様は私をなんだと思っているのだブライク。というかメルルーサはともかく、勇者と一緒とはな。貴様も裏切ったか?】
【いや、俺はそうじゃない。だが、俺に『前の世界』とやらの記憶がないことの説明を魔王様から聞きたいと思ってな】
【……なるほど。どうせこの世界で暴れるなら必要ないと思っていたが、この男が居るならそうなるか】
「ではあなたは知っていた、ということですね」
ブライクとのやり取りで水樹ちゃんが質問を投げかけると、ハイアラートは振り返らずに答える。
【知っていたからどうだと言うのだ? さして重要ではない。いや、なかった、か。その男が居なければ特に問題にならない】
「それはそうだな」
【……ほう、お前が私の言葉に頷くとは……変わったな】
「歳を食えば色々あるもんだ。お前等はかわらねえな。結局、人間を食い物にしようとしている」
【人間より優れているからな】
「それと人間を食い物にするのは違うだろ? こいつとしばらく過ごしていたが、俺達の作る料理を美味いって食ってたぜ。人を支配しなくても腹は膨れるのがよくわかった」
【……】
【うおお!? 裏切りっていませんからね!?】
俺がレスバを引き寄せてそう言うと、ハイアラートは一瞬だけ視線をこちらに向けたがなにも言わずにさっさと歩き出した。
「自ら魔王の下に案内する……罠でしょうか?」
【どうかしら。流石に幹部である私と勇者を相手にそれができるとは思えないけどね。というかそもそも、普段の彼なら有無を言わさず飛び掛かってもおかしくないのよ】
「やっぱリクを恨んでるのかしら」
【そりゃあね。魔王様を倒した唯一の人間だもの】
何故かメルルーサが得意げに風太達に語っていた。ブライクとビカライアはそれには乗らず、ただ黙ってついていく。
【ここだ。いくら魔王様の頼みとはいえ、おかしな真似をしたらどなるかわからんからな】
「肝に銘じておくよ」
やがて森を抜けると、巨大な門へと到着した。どうやら本当に本拠地らしい。
セイヴァー……それにイリス……お前達はどうなっている?
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