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3巻
3-3
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◆ ◇ ◆
ほどなくして門に近づくと険しい顔をした門番が声をかけてくる。
「止まれ。四人とも冒険者か?」
「ああ、一応な。すぐに町へ入れるか? グランシア神聖国から来たんだが、馬も俺達もクタクタでな」
「ああ、見たところ怪しいところはなさそうだし、持ち物検査が済めば別に構わないぜ。ギルドカードがあると話が早いぞ?」
「いや、持ってないな」
「冒険者なのに、か?」
俺の返答に、門番は怪訝そうな表情を浮かべる。
「ギルドで依頼を受けるタイプの冒険者じゃなくてな。どうすればいい?」
俺がそう尋ねると、門番は不思議そうにしながらも、金を払えばいいと説明してくれた。
「別に商人とか旅行者を通すこともあるから構わんが、冒険者ならギルドカードを持っていたほうが楽だぞ」
「そうだな」
そう言って門番は持ち物検査をした後、快く通してくれた。魔族との戦いが激しいと聞いていたからもう少し渋ると思ったがそこは助かった。
ボルタニア王国ではロカリスからの書状があったし、グランシア神聖国では婆さんの予知で中に入れたから、ギルドカードを使う場面がなかったなと俺は思い返す。
普通の冒険者を装うならやっぱり必要かねえ?
そんなことを考えていると、門番が尋ねてきた。
「この町は初めてか?」
「だな。魔族が攻めてきていると聞いているが、様子はどうだ?」
「さすがに冒険者なら知っているか。魔族との戦いは可もなく不可もなくってところだ。それを知っていてここへ来るってことは仕事目当てだな」
「そこはご想像にお任せするよ。終わったなら行くぜ」
「ごゆっくり」
そして、俺達はいよいよ帝都へと足を踏み入れる。
注意深く周囲を確認しながら馬車を進ませていると、夏那が町の壁を指さしながら口を開く。
「あれ、なんだっけ? クロスボウ?」
「よく見えるな。似たようなものだがあれはバリスタだな」
「え、コーヒーですか?」
水樹ちゃんが首を傾げながらそんなことを言い、俺と風太がずっこける。
「弩弓って言ってな。機械仕掛けとまではいかないが、ギミックを駆使して重い矢とか石、火炎瓶みたいなものを飛ばして攻撃する兵器だな」
「ゲームなら矢を飛ばすものが多いですけど、火炎瓶も飛ばすんですね」
風太がそんな感想を述べる。
「ああ、そうやって色んな飛び道具を臨機応変に使えるのが利点だな。攻撃にも守りにも使える優秀な兵器だ。特に魔法が苦手な人間には必要だと思う」
前の世界だとグラシア王子に作り方を教えて使えるようにしたことがある。それが懐かしいなと思いつつ説明をしながら、俺は街並みを観察する。
雰囲気は他の町と同じ感じだが、人通りはグランシア神聖国やボルタニア国に比べると多いと感じる。
ここより以前に行った国の街と比較しても全体の広さが段違いというのもある。
そして俺の視線がとある場所を捉えた時、水樹ちゃんが誰にともなく呟いた。
「あれがお城ですね。門から一番遠い場所にあるのは防衛のためですよね」
水樹ちゃんの鋭い読みに俺は付け加える。
「ああ、もちろん防衛だ。しかも城の後ろは山になっているだろ? 大部隊で攻めにくい構造になっているのが軍事国家っぽいよな」
「挟み撃ちは受けないってところか。魔族は空を飛べるから警戒が必要だけど」
風太が難しい顔をしながら分析をする。
魔族との戦いは五十年続いているらしいからもう少し魔族対策をしていそうなものだが、バリスタ以外に対空兵器がある様子はない。
そして見る限り、城に結界も張っていないようだ。魔法より武器による戦闘技術が高いのか?
逆に言えば、魔法が弱いから他国に攻め込むためのあと一歩が届かないとも言えるか。
俺がそんな風に思っていると、夏那が聞いてきた。
「今回、お城には行かないのよね?」
「ああ、冒険者として魔族討伐に参加するつもりだ。さて、ギルドがどこにあるか聞いてみるか」
「あたしが聞いてみるわ。……すみませーん、ギルドってどこにありますか!」
訓練や町の散策を解禁したおかげで、夏那はさらに明るくなった気がする。持ち前の積極性で町人に話しかける姿は吹っ切れているようにも見えるな。
そして、夏那に呼び止められた気さくそうなおばさんが話を聞いてくれた。
すぐ回答が得られて、夏那は頭を下げたあと、手を振っておばさんを見送る。
「――ありがとうございまーす! ……えっと、二つ向こうに大通りがあって、その並びの真ん中あたりにあるらしいわよ」
『二つ向こう……本当に広いわね、帝都……だっけ?』
「帝国は向こうの世界にはなかったから、リーチェは聞き慣れないか。まあ、でかけりゃいいってもんじゃないが……それは後で説明してやるよ」
「ハリソン、ソアラそこを左にね」
水樹ちゃんの言葉に二頭は『分かっています』と言わんばかりに小さく鳴き、ほどなくしてギルドへ到着した。
少し離れた厩舎へ馬車を預けに行った風太を待ちながら、俺達はギルドの建物を眺めつつ談笑していた。
「ここもでっかいわねー。リーチェ、あたしのポケットに入っとく?」
『そうするー』
夏那が建物を見上げながらそう言い、リーチェが夏那の胸ポケットに入り込む。
「ふふ、仲いいわね二人とも。……風太君は……あ、来た」
水樹ちゃんが二人のやりとりを微笑ましげに見ていると、風太が戻ってきた。
「いやあ、厩舎も大きいですね。馬車用の番号札をくれましたよ、たくさんあって管理しきれないんだとか」
「魔族と戦うために冒険者を集めているみたいだから、それくらいはするだろうな」
風太にそんな返答をしながら、俺を先頭にしてギルドに入る。全員万が一に備えて武器を持っている。
「もしかしていい国なのかしら?」
夏那が俺の後ろについてそんなことを口にするが、俺は逆だと考えている。
冒険者を盾にして戦闘をすることで、自国の兵士の犠牲を減らそうとしているのだろう。
待遇をよくすれば冒険者への心証はいいし、次の戦いも気分よく戦えるというものだ。嘘も方便ってやつだな。
それと人間同士ではなく『得体の知れない相手に戦う』という条件もいい方向に働いていると思う。
自分達と違うモノを排除したがるのは人間の習性だ。魔族相手に人間同士が団結することを国が利用していてもおかしくない。
「……ってのは、いくらなんでも戦いに毒されすぎているかねえ」
「どうしたんです?」
「いや、なんでもない。受付に行こう」
俺のぼやきに反応した風太の肩に手を置いて、いくつかある受付の内一番近いものに真っすぐ向かう。すると隣でなにか説明を受けていた女の子が俺に気づいて声をかけてきた。
「あっれー! リクさんにミズキちゃんじゃん! やっぱこっちに来たんだー!」
「お前達か。ええっと、ミーアだっけ?」
声の主はひとつ前の町で出会ったパーティのミーアだった。俺が名前を口にすると、口笛を吹いてこちらに来た。
「おお、ちゃんと覚えてくれていたんだ。ありがと♪」
「……うっす」
「その節はどうも」
悪酔いして絡んできたタスクは少し気まずそうだ。眼鏡をくいっと上げながら口を開く水樹ちゃんの態度も心なしか冷たい。
他のメンバーはそういったわだかまりがないので、ミーアは笑顔で俺とハイタッチし、向こうに居るヒュウスは俺と目が合うと軽く会釈をしてきた。もう一人のメンバーであるグルガンは、なにか書いているところだった。
「えっと……」
「……誰?」
そういや風太と夏那は初顔合わせだったか。詳細まで話していなかったので俺は二人へ説明することにした。
「ああ、ほら、水樹ちゃんがバーで寝る前に絡んできた奴らが居たって言ったろ? それがこいつらだ。とは言っても実際に絡んできたのは、そこでしょんぼりしているタスクって奴だけだが」
「あー、その時の。……というかリク、随分とその子と仲がいいわね」
夏那は怪訝そうな目線をミーアに向ける。するとミーアは不敵に笑って口を開く。
「ふっふっふ……すでにリクさんとは親友だからね!」
「なんですって……!」
「嘘つくなミーア。夏那も本気にするなっての」
「むう」
なんかよく分からないが、夏那がむくれてそっぽを向く。
とりあえず受付の前にヒュウス達がなにをしているのか聞いてみることにした。
「依頼かい?」
「いえ、魔族討伐の参加をするために書類を提出しているところですよ。リクさん達は?」
今、契約をしているということは、どうやらほとんど同じタイミングでここに来たようだ。様子見をしてもよかったが、知り合いが居るとなると合わせておいてもいいかもしれない。
「なるほど例のか。俺達もそのつもりで来た」
すると別の受付の女が手を振って大声を上げてきた。
「そうなんですね! こっち、こっちでやってますよ! 是非! この受付で!!」
物凄い勢いで勧誘してくるな。そんな受付の子を見て水樹ちゃんが眉を顰めて言う。
「なんか必死ですね……?」
「怪しいから向こう行かない?」
夏那も引き気味にそう提案する。
「受付に怪しいもなにもありませんからね!?」
ガターンとテーブルに手を打ち付けながら抗議の声を上げる受付の子。なかなかツッコミが鋭い子だなと俺は苦笑する。
「ま、冗談はこれくらいにして話を聞くか」
「そうですね、ふふ」
水樹ちゃんが口に手を当てて笑う。俺達はヒュウス達に手を振り、騒がしい受付へ集合する。
さて、冒険者の待遇や命令系統はどうなっているのかね。俺は周囲に注意を向けながら受付嬢へ声をかけた。
第二章 魔族遊撃隊の条件
「はい、いらっしゃいませー! いやあ、お客さん運がいい! 釣り船に乗ったつもりでわたし、ペルレにお任せください!」
紫髪をショートボブにした妙に元気な受付嬢が、丸めた紙で机を叩きながら怪しい口上を述べる。
高校生組はテンションについていけず訝しんだ顔で口を開く。
「また微妙な間違いをするなあ……というかそういう言葉、あるんですね」
「泥船じゃないだけマシなのかしら?」
風太の感想に対して夏那が的外れなことを述べる。
「そういうことじゃないと思うけど……そういえばグランシア神聖国のキャルさんも元気な方でしたよね」
「ほう、ライバル発生の予感……!」
ニヤリと笑みを浮かべるペルレと名乗った受付嬢。
このノリで毎度脱線されてはかなわないので、俺はさっさと話を進めることにした。
「そういうのはいい。聞きたいことがある。魔族討伐へ参加するにはどうすればいいんだ?」
俺が片腕をテーブルに預けてペルレに詰め寄る。すると彼女は咳払いをした後、四枚の書類を俺達の前に出してきた。俺達は顔を見合わせてからそれぞれ一枚を手に取り、内容を確認する。
契約書類であればきちんと目を通さないといけない。これは異世界だろうが日本だろうが同じだ。
とはいえペラ紙一枚程度なのでそれほどかからないだろうと視線を動かす。
「ダイコン、ニンジン、パプリカを帰りに買う……?」
「明日の勤務を誰かに代わってもらう? なによ、これ」
随分と庶民的な内容を水樹ちゃんが口にし、夏那が語気を強めた。するとペルレはサッと紙を奪い取り、視線を逸らして言う。
「おっと失礼、それはわたしのやることリストでした」
「なんでそんなものが出てくるんだ……」
風太が呆れた顔でツッコミを入れると、ペルレは別の紙を手渡してきた。
俺達が再度顔を見合わせた後に紙へ目を向けると――
・魔族襲来時は冒険者が先頭に立って戦うこと。
・基本的に遊撃はポジション内であれば自由に行っていいがなんらかの作戦がある際は帝国兵の指示に従うこと。
・帝都の外での哨戒をローテーションで行ってもらう必要がある。
・また、交代で昼夜の町の中も哨戒してもらう。
――そういった決まりごとが箇条書きで書かれていた。
ここまでは任務のことが書かれていたが、続きはいわゆる福利厚生のようなものが記載されているようだ。
「この哨戒ってなに?」
俺は夏那の質問に答える。
「ああ、簡単に言えばパトロールだよ。見回りって感じで考えていい」
「あー、なんか聞いたことあるかも? えっと、まだあるわね」
俺達は続きの待遇についての記載に目を通す。
・戦闘で負傷した怪我の治療費は全て帝国が持つ。
・装備の修繕費は発行した証明書を鍛冶師に持って行けば無償とする。
・魔族戦で減った消費アイテムは申告することで補充対象となる。ただし元の数を最初に報告しておくこと。
・討伐依頼を行っている間は通常の依頼を受けることはできない。その代わり、月に一人金貨五枚を支払う。
・死者が出てしまった場合はパーティ、もしくは家族に見舞金を支払うこととする。
一通り読み終わると、風太が口を開いた。
「……結構いい条件だと思いますけど、リクさんはどう思います?」
「そうだな――」
前の世界での経験がある俺に言わせれば、『破格』といっていい条件だ。
特に給与が一人ずつ出るのが驚きだ。さらに修理と道具の補充ができるとかな。
「――本当にこの条件なのか?」
俺が訝しげに聞くと、ペルレは大仰に頷いた。
「ええ、間違いなく。あなた方のように噂を聞きつけて他国からやってくる人がいるくらいにはいい条件ですよ」
「それじゃあ結構な数が集まっているんじゃない? お金って大丈夫なの?」
夏那が俺の聞きたいことを尋ねてくれる。実際、いつからこの施策をやっているか分からないが、十年程度でもかなりきついと思う。
「いやあ、負傷して戦線離脱する人や大怪我で引退する人なども居ますからねえ。そもそも魔族に歯が立たないという人もたくさんいます。だから国庫を圧迫するほど冒険者がいないんですよ」
さらにペルレが言うには、魔族との戦いになった時に実力は見るそうだ。
騎士も随伴してある程度助けに入るみたいだな。上限も決めているそうなので、いくらでも契約するわけではないと言う。
「思ったより魔族は強いんだな……。ボル……あ、いや、僕達がこうして無事なのは、リクさんが強いからだってよく分かるよ」
ボルタニアと言いかけて止めた風太は、あの国で俺が倒したドーナガリィのことを思い返しているようだ。
ただの冒険者や騎士が奴と戦うとなれば、あの追尾する黒い矢に苦戦すること必至だからな。
レムニティに至っては風太も手合わせしているから分かるだろうがさらなる強敵だ。だから帝国も何十年と戦い続けていて、こういった施策を出さざるをえないのだろう。
そしてペルレがこの話をする時に真面目な顔になったのを、俺は見逃さなかった。
恐らく、冒険者との契約が財政を圧迫してないとは言っても、戦況はそれほどよくないのだろう。ゆえに彼女は無理して明るく振る舞って、契約に結びつけようとしている気さえする。
「さあさあ、というわけで条件は以上です。契約は簡単! 福利は充実! そして契約できればわたしの懐も潤うという好循環! やりますか? 『イエス』か『はい』でお答えくださ……たたたたたた!?」
「リクさん!?」
気がつくと俺はペルレの頬をつねっていた。慌てた風太が口を開く。
「おっと、いかん。つい手が出た」
「リクが感情で動くとか珍しいわね」
夏那がそんな感想を口にする。
「俺も人間だ、イラっとしたらこうもなるぞ。まあ、契約はさせてもらう。そのために来たからな、サインだけでいいのか?」
俺が紙に指を置いてペルレに尋ねると、彼女はつねられた頬をさすりながら答えてくれる。
「あいたた……では、ギルドカードの提示をお願いします」
「持ってないぞ」
「そうですか持ってないんですね! じゃあしょうがないか……持ってないんですか!?」
「おお、見事なノリツッコミね」
夏那がパチパチと手を叩いていると、ペルレが口を開く。
「言葉の意味は分かりませんが、馬鹿にしましたね……?」
「まあ……」
「後で覚えていなさい。まあ、それはともかくギルドカードがないのは困りましたねえ。リスト作成に必要なんですよ。誰が居なくなったかは名前だけだと把握しにくいので」
ペルレの言うことももっともだ。人数が多ければ顔と名前が一致しにくくなる。
だからギルドカードを元にしたリストで点呼をすれば、逃げた奴や死んだ人間の把握が楽になるといった感じか。
「後はランクでふるいにかけるんですよ」
三人にギルドカードを持たせてこなかったが、ここでは必要らしい。説明通り、実力不足で簡単に死にそうな人間はここで落としているのだそうだ。
「ランクか。どうやって決まるんだ?」
「主に現状の戦闘力が加味されますね。プレートを作るときに魔法で身体情報を調査すると初期ランクが浮かび上がるんです」
「分かった。ダメそうなら契約は諦めるよ」
「結構です。それでは作成に移りましょうか。……えっと、おじさんからで?」
おっさんの俺がリーダーだと認識したペルレが声をかけてきた。
「ぷふ……おじさん……」
「うるさいぞ、夏那。俺はリクという」
とりあえず俺が最初に作るほうが後の三人は楽になるだろう。
「では、おじリクさんから作成しましょう! この金属のカードに手を触れてください。その下にある石板が魔力とかそういうのを読み取ってランクを出します」
ペルレはそう言って上部にカードがはめこまれた石板を取り出した。
ふざけた呼び名は置いておき、俺は前の世界と似ているが細部が異なるなと思いながら、手を乗せる。すると石板が鈍い光を放ち始めた。
「おお……!」
「こんな感じなんだ」
背後から覗き込んでいる夏那と風太が色めき立つ。しばらく待つと、光が強くなってきた。
「ん!? なんですかこの色! ちょっと強い気が……」
焦るペルレだが、工程自体は問題ないようでそのまま見守っていた。
「お。終了か?」
「ですね」
光が消えたので聞いてみると、ペルレは頷いた。カードから手をどけるとなにも書かれていなかった金属カードに、名前などが記載されていた。
「えっと、リクさんのランクはどうですかねえ? いい歳ですし、Eランクくらい……え、なんですこれ!?」
驚愕するペルレの声に俺は視線を逸らす。こういうのがあるから作りたくなかったわけなんだがな。そう思っていると、夏那が覗き込んでいた。
「えっとランクは……Aランク? これっていいの?」
Aか。カードに載る能力を解放しないようにしたんだが、それでも高ランクが出たもんだな。
「かなり高いです……この上だとSとダブルSがありますけどね。でも十分な強さですよ」
「ま、リクなら余裕よね! Sランクでもおかしくな……ふぐ!?」
俺は夏那の脇腹を小突く。
「んじゃ次行こうぜ。風太、やってみたらどうだ?」
「あ、はい!」
夏那には『余計なことを言うな』と小声で耳打ちしておいた。ただでさえランクが高いことでペルレが驚いているのに、これ以上面倒を増やされては困る。
「フウタさんですね。ではこちらへ――」
「こうですか?」
風太が俺と同じ工程をやると、ここでもペルレが驚くことになった。
「B……!? さっきの方達と同じ……冒険者始めたての人は最低のFが普通なのに……」
どうやらヒュウス達と同じランクらしい。今、いきなりカードを作ることにしたいわば素人冒険者が妙に強いのは目立つか。
そしてここもランクはFからスタートするようだ。前の世界でも一人前として扱われるのはCランクからだったのでBランクスタートというのはやはり驚きに値するのだろう。
続いて水樹ちゃんが行う。
ほどなくして門に近づくと険しい顔をした門番が声をかけてくる。
「止まれ。四人とも冒険者か?」
「ああ、一応な。すぐに町へ入れるか? グランシア神聖国から来たんだが、馬も俺達もクタクタでな」
「ああ、見たところ怪しいところはなさそうだし、持ち物検査が済めば別に構わないぜ。ギルドカードがあると話が早いぞ?」
「いや、持ってないな」
「冒険者なのに、か?」
俺の返答に、門番は怪訝そうな表情を浮かべる。
「ギルドで依頼を受けるタイプの冒険者じゃなくてな。どうすればいい?」
俺がそう尋ねると、門番は不思議そうにしながらも、金を払えばいいと説明してくれた。
「別に商人とか旅行者を通すこともあるから構わんが、冒険者ならギルドカードを持っていたほうが楽だぞ」
「そうだな」
そう言って門番は持ち物検査をした後、快く通してくれた。魔族との戦いが激しいと聞いていたからもう少し渋ると思ったがそこは助かった。
ボルタニア王国ではロカリスからの書状があったし、グランシア神聖国では婆さんの予知で中に入れたから、ギルドカードを使う場面がなかったなと俺は思い返す。
普通の冒険者を装うならやっぱり必要かねえ?
そんなことを考えていると、門番が尋ねてきた。
「この町は初めてか?」
「だな。魔族が攻めてきていると聞いているが、様子はどうだ?」
「さすがに冒険者なら知っているか。魔族との戦いは可もなく不可もなくってところだ。それを知っていてここへ来るってことは仕事目当てだな」
「そこはご想像にお任せするよ。終わったなら行くぜ」
「ごゆっくり」
そして、俺達はいよいよ帝都へと足を踏み入れる。
注意深く周囲を確認しながら馬車を進ませていると、夏那が町の壁を指さしながら口を開く。
「あれ、なんだっけ? クロスボウ?」
「よく見えるな。似たようなものだがあれはバリスタだな」
「え、コーヒーですか?」
水樹ちゃんが首を傾げながらそんなことを言い、俺と風太がずっこける。
「弩弓って言ってな。機械仕掛けとまではいかないが、ギミックを駆使して重い矢とか石、火炎瓶みたいなものを飛ばして攻撃する兵器だな」
「ゲームなら矢を飛ばすものが多いですけど、火炎瓶も飛ばすんですね」
風太がそんな感想を述べる。
「ああ、そうやって色んな飛び道具を臨機応変に使えるのが利点だな。攻撃にも守りにも使える優秀な兵器だ。特に魔法が苦手な人間には必要だと思う」
前の世界だとグラシア王子に作り方を教えて使えるようにしたことがある。それが懐かしいなと思いつつ説明をしながら、俺は街並みを観察する。
雰囲気は他の町と同じ感じだが、人通りはグランシア神聖国やボルタニア国に比べると多いと感じる。
ここより以前に行った国の街と比較しても全体の広さが段違いというのもある。
そして俺の視線がとある場所を捉えた時、水樹ちゃんが誰にともなく呟いた。
「あれがお城ですね。門から一番遠い場所にあるのは防衛のためですよね」
水樹ちゃんの鋭い読みに俺は付け加える。
「ああ、もちろん防衛だ。しかも城の後ろは山になっているだろ? 大部隊で攻めにくい構造になっているのが軍事国家っぽいよな」
「挟み撃ちは受けないってところか。魔族は空を飛べるから警戒が必要だけど」
風太が難しい顔をしながら分析をする。
魔族との戦いは五十年続いているらしいからもう少し魔族対策をしていそうなものだが、バリスタ以外に対空兵器がある様子はない。
そして見る限り、城に結界も張っていないようだ。魔法より武器による戦闘技術が高いのか?
逆に言えば、魔法が弱いから他国に攻め込むためのあと一歩が届かないとも言えるか。
俺がそんな風に思っていると、夏那が聞いてきた。
「今回、お城には行かないのよね?」
「ああ、冒険者として魔族討伐に参加するつもりだ。さて、ギルドがどこにあるか聞いてみるか」
「あたしが聞いてみるわ。……すみませーん、ギルドってどこにありますか!」
訓練や町の散策を解禁したおかげで、夏那はさらに明るくなった気がする。持ち前の積極性で町人に話しかける姿は吹っ切れているようにも見えるな。
そして、夏那に呼び止められた気さくそうなおばさんが話を聞いてくれた。
すぐ回答が得られて、夏那は頭を下げたあと、手を振っておばさんを見送る。
「――ありがとうございまーす! ……えっと、二つ向こうに大通りがあって、その並びの真ん中あたりにあるらしいわよ」
『二つ向こう……本当に広いわね、帝都……だっけ?』
「帝国は向こうの世界にはなかったから、リーチェは聞き慣れないか。まあ、でかけりゃいいってもんじゃないが……それは後で説明してやるよ」
「ハリソン、ソアラそこを左にね」
水樹ちゃんの言葉に二頭は『分かっています』と言わんばかりに小さく鳴き、ほどなくしてギルドへ到着した。
少し離れた厩舎へ馬車を預けに行った風太を待ちながら、俺達はギルドの建物を眺めつつ談笑していた。
「ここもでっかいわねー。リーチェ、あたしのポケットに入っとく?」
『そうするー』
夏那が建物を見上げながらそう言い、リーチェが夏那の胸ポケットに入り込む。
「ふふ、仲いいわね二人とも。……風太君は……あ、来た」
水樹ちゃんが二人のやりとりを微笑ましげに見ていると、風太が戻ってきた。
「いやあ、厩舎も大きいですね。馬車用の番号札をくれましたよ、たくさんあって管理しきれないんだとか」
「魔族と戦うために冒険者を集めているみたいだから、それくらいはするだろうな」
風太にそんな返答をしながら、俺を先頭にしてギルドに入る。全員万が一に備えて武器を持っている。
「もしかしていい国なのかしら?」
夏那が俺の後ろについてそんなことを口にするが、俺は逆だと考えている。
冒険者を盾にして戦闘をすることで、自国の兵士の犠牲を減らそうとしているのだろう。
待遇をよくすれば冒険者への心証はいいし、次の戦いも気分よく戦えるというものだ。嘘も方便ってやつだな。
それと人間同士ではなく『得体の知れない相手に戦う』という条件もいい方向に働いていると思う。
自分達と違うモノを排除したがるのは人間の習性だ。魔族相手に人間同士が団結することを国が利用していてもおかしくない。
「……ってのは、いくらなんでも戦いに毒されすぎているかねえ」
「どうしたんです?」
「いや、なんでもない。受付に行こう」
俺のぼやきに反応した風太の肩に手を置いて、いくつかある受付の内一番近いものに真っすぐ向かう。すると隣でなにか説明を受けていた女の子が俺に気づいて声をかけてきた。
「あっれー! リクさんにミズキちゃんじゃん! やっぱこっちに来たんだー!」
「お前達か。ええっと、ミーアだっけ?」
声の主はひとつ前の町で出会ったパーティのミーアだった。俺が名前を口にすると、口笛を吹いてこちらに来た。
「おお、ちゃんと覚えてくれていたんだ。ありがと♪」
「……うっす」
「その節はどうも」
悪酔いして絡んできたタスクは少し気まずそうだ。眼鏡をくいっと上げながら口を開く水樹ちゃんの態度も心なしか冷たい。
他のメンバーはそういったわだかまりがないので、ミーアは笑顔で俺とハイタッチし、向こうに居るヒュウスは俺と目が合うと軽く会釈をしてきた。もう一人のメンバーであるグルガンは、なにか書いているところだった。
「えっと……」
「……誰?」
そういや風太と夏那は初顔合わせだったか。詳細まで話していなかったので俺は二人へ説明することにした。
「ああ、ほら、水樹ちゃんがバーで寝る前に絡んできた奴らが居たって言ったろ? それがこいつらだ。とは言っても実際に絡んできたのは、そこでしょんぼりしているタスクって奴だけだが」
「あー、その時の。……というかリク、随分とその子と仲がいいわね」
夏那は怪訝そうな目線をミーアに向ける。するとミーアは不敵に笑って口を開く。
「ふっふっふ……すでにリクさんとは親友だからね!」
「なんですって……!」
「嘘つくなミーア。夏那も本気にするなっての」
「むう」
なんかよく分からないが、夏那がむくれてそっぽを向く。
とりあえず受付の前にヒュウス達がなにをしているのか聞いてみることにした。
「依頼かい?」
「いえ、魔族討伐の参加をするために書類を提出しているところですよ。リクさん達は?」
今、契約をしているということは、どうやらほとんど同じタイミングでここに来たようだ。様子見をしてもよかったが、知り合いが居るとなると合わせておいてもいいかもしれない。
「なるほど例のか。俺達もそのつもりで来た」
すると別の受付の女が手を振って大声を上げてきた。
「そうなんですね! こっち、こっちでやってますよ! 是非! この受付で!!」
物凄い勢いで勧誘してくるな。そんな受付の子を見て水樹ちゃんが眉を顰めて言う。
「なんか必死ですね……?」
「怪しいから向こう行かない?」
夏那も引き気味にそう提案する。
「受付に怪しいもなにもありませんからね!?」
ガターンとテーブルに手を打ち付けながら抗議の声を上げる受付の子。なかなかツッコミが鋭い子だなと俺は苦笑する。
「ま、冗談はこれくらいにして話を聞くか」
「そうですね、ふふ」
水樹ちゃんが口に手を当てて笑う。俺達はヒュウス達に手を振り、騒がしい受付へ集合する。
さて、冒険者の待遇や命令系統はどうなっているのかね。俺は周囲に注意を向けながら受付嬢へ声をかけた。
第二章 魔族遊撃隊の条件
「はい、いらっしゃいませー! いやあ、お客さん運がいい! 釣り船に乗ったつもりでわたし、ペルレにお任せください!」
紫髪をショートボブにした妙に元気な受付嬢が、丸めた紙で机を叩きながら怪しい口上を述べる。
高校生組はテンションについていけず訝しんだ顔で口を開く。
「また微妙な間違いをするなあ……というかそういう言葉、あるんですね」
「泥船じゃないだけマシなのかしら?」
風太の感想に対して夏那が的外れなことを述べる。
「そういうことじゃないと思うけど……そういえばグランシア神聖国のキャルさんも元気な方でしたよね」
「ほう、ライバル発生の予感……!」
ニヤリと笑みを浮かべるペルレと名乗った受付嬢。
このノリで毎度脱線されてはかなわないので、俺はさっさと話を進めることにした。
「そういうのはいい。聞きたいことがある。魔族討伐へ参加するにはどうすればいいんだ?」
俺が片腕をテーブルに預けてペルレに詰め寄る。すると彼女は咳払いをした後、四枚の書類を俺達の前に出してきた。俺達は顔を見合わせてからそれぞれ一枚を手に取り、内容を確認する。
契約書類であればきちんと目を通さないといけない。これは異世界だろうが日本だろうが同じだ。
とはいえペラ紙一枚程度なのでそれほどかからないだろうと視線を動かす。
「ダイコン、ニンジン、パプリカを帰りに買う……?」
「明日の勤務を誰かに代わってもらう? なによ、これ」
随分と庶民的な内容を水樹ちゃんが口にし、夏那が語気を強めた。するとペルレはサッと紙を奪い取り、視線を逸らして言う。
「おっと失礼、それはわたしのやることリストでした」
「なんでそんなものが出てくるんだ……」
風太が呆れた顔でツッコミを入れると、ペルレは別の紙を手渡してきた。
俺達が再度顔を見合わせた後に紙へ目を向けると――
・魔族襲来時は冒険者が先頭に立って戦うこと。
・基本的に遊撃はポジション内であれば自由に行っていいがなんらかの作戦がある際は帝国兵の指示に従うこと。
・帝都の外での哨戒をローテーションで行ってもらう必要がある。
・また、交代で昼夜の町の中も哨戒してもらう。
――そういった決まりごとが箇条書きで書かれていた。
ここまでは任務のことが書かれていたが、続きはいわゆる福利厚生のようなものが記載されているようだ。
「この哨戒ってなに?」
俺は夏那の質問に答える。
「ああ、簡単に言えばパトロールだよ。見回りって感じで考えていい」
「あー、なんか聞いたことあるかも? えっと、まだあるわね」
俺達は続きの待遇についての記載に目を通す。
・戦闘で負傷した怪我の治療費は全て帝国が持つ。
・装備の修繕費は発行した証明書を鍛冶師に持って行けば無償とする。
・魔族戦で減った消費アイテムは申告することで補充対象となる。ただし元の数を最初に報告しておくこと。
・討伐依頼を行っている間は通常の依頼を受けることはできない。その代わり、月に一人金貨五枚を支払う。
・死者が出てしまった場合はパーティ、もしくは家族に見舞金を支払うこととする。
一通り読み終わると、風太が口を開いた。
「……結構いい条件だと思いますけど、リクさんはどう思います?」
「そうだな――」
前の世界での経験がある俺に言わせれば、『破格』といっていい条件だ。
特に給与が一人ずつ出るのが驚きだ。さらに修理と道具の補充ができるとかな。
「――本当にこの条件なのか?」
俺が訝しげに聞くと、ペルレは大仰に頷いた。
「ええ、間違いなく。あなた方のように噂を聞きつけて他国からやってくる人がいるくらいにはいい条件ですよ」
「それじゃあ結構な数が集まっているんじゃない? お金って大丈夫なの?」
夏那が俺の聞きたいことを尋ねてくれる。実際、いつからこの施策をやっているか分からないが、十年程度でもかなりきついと思う。
「いやあ、負傷して戦線離脱する人や大怪我で引退する人なども居ますからねえ。そもそも魔族に歯が立たないという人もたくさんいます。だから国庫を圧迫するほど冒険者がいないんですよ」
さらにペルレが言うには、魔族との戦いになった時に実力は見るそうだ。
騎士も随伴してある程度助けに入るみたいだな。上限も決めているそうなので、いくらでも契約するわけではないと言う。
「思ったより魔族は強いんだな……。ボル……あ、いや、僕達がこうして無事なのは、リクさんが強いからだってよく分かるよ」
ボルタニアと言いかけて止めた風太は、あの国で俺が倒したドーナガリィのことを思い返しているようだ。
ただの冒険者や騎士が奴と戦うとなれば、あの追尾する黒い矢に苦戦すること必至だからな。
レムニティに至っては風太も手合わせしているから分かるだろうがさらなる強敵だ。だから帝国も何十年と戦い続けていて、こういった施策を出さざるをえないのだろう。
そしてペルレがこの話をする時に真面目な顔になったのを、俺は見逃さなかった。
恐らく、冒険者との契約が財政を圧迫してないとは言っても、戦況はそれほどよくないのだろう。ゆえに彼女は無理して明るく振る舞って、契約に結びつけようとしている気さえする。
「さあさあ、というわけで条件は以上です。契約は簡単! 福利は充実! そして契約できればわたしの懐も潤うという好循環! やりますか? 『イエス』か『はい』でお答えくださ……たたたたたた!?」
「リクさん!?」
気がつくと俺はペルレの頬をつねっていた。慌てた風太が口を開く。
「おっと、いかん。つい手が出た」
「リクが感情で動くとか珍しいわね」
夏那がそんな感想を口にする。
「俺も人間だ、イラっとしたらこうもなるぞ。まあ、契約はさせてもらう。そのために来たからな、サインだけでいいのか?」
俺が紙に指を置いてペルレに尋ねると、彼女はつねられた頬をさすりながら答えてくれる。
「あいたた……では、ギルドカードの提示をお願いします」
「持ってないぞ」
「そうですか持ってないんですね! じゃあしょうがないか……持ってないんですか!?」
「おお、見事なノリツッコミね」
夏那がパチパチと手を叩いていると、ペルレが口を開く。
「言葉の意味は分かりませんが、馬鹿にしましたね……?」
「まあ……」
「後で覚えていなさい。まあ、それはともかくギルドカードがないのは困りましたねえ。リスト作成に必要なんですよ。誰が居なくなったかは名前だけだと把握しにくいので」
ペルレの言うことももっともだ。人数が多ければ顔と名前が一致しにくくなる。
だからギルドカードを元にしたリストで点呼をすれば、逃げた奴や死んだ人間の把握が楽になるといった感じか。
「後はランクでふるいにかけるんですよ」
三人にギルドカードを持たせてこなかったが、ここでは必要らしい。説明通り、実力不足で簡単に死にそうな人間はここで落としているのだそうだ。
「ランクか。どうやって決まるんだ?」
「主に現状の戦闘力が加味されますね。プレートを作るときに魔法で身体情報を調査すると初期ランクが浮かび上がるんです」
「分かった。ダメそうなら契約は諦めるよ」
「結構です。それでは作成に移りましょうか。……えっと、おじさんからで?」
おっさんの俺がリーダーだと認識したペルレが声をかけてきた。
「ぷふ……おじさん……」
「うるさいぞ、夏那。俺はリクという」
とりあえず俺が最初に作るほうが後の三人は楽になるだろう。
「では、おじリクさんから作成しましょう! この金属のカードに手を触れてください。その下にある石板が魔力とかそういうのを読み取ってランクを出します」
ペルレはそう言って上部にカードがはめこまれた石板を取り出した。
ふざけた呼び名は置いておき、俺は前の世界と似ているが細部が異なるなと思いながら、手を乗せる。すると石板が鈍い光を放ち始めた。
「おお……!」
「こんな感じなんだ」
背後から覗き込んでいる夏那と風太が色めき立つ。しばらく待つと、光が強くなってきた。
「ん!? なんですかこの色! ちょっと強い気が……」
焦るペルレだが、工程自体は問題ないようでそのまま見守っていた。
「お。終了か?」
「ですね」
光が消えたので聞いてみると、ペルレは頷いた。カードから手をどけるとなにも書かれていなかった金属カードに、名前などが記載されていた。
「えっと、リクさんのランクはどうですかねえ? いい歳ですし、Eランクくらい……え、なんですこれ!?」
驚愕するペルレの声に俺は視線を逸らす。こういうのがあるから作りたくなかったわけなんだがな。そう思っていると、夏那が覗き込んでいた。
「えっとランクは……Aランク? これっていいの?」
Aか。カードに載る能力を解放しないようにしたんだが、それでも高ランクが出たもんだな。
「かなり高いです……この上だとSとダブルSがありますけどね。でも十分な強さですよ」
「ま、リクなら余裕よね! Sランクでもおかしくな……ふぐ!?」
俺は夏那の脇腹を小突く。
「んじゃ次行こうぜ。風太、やってみたらどうだ?」
「あ、はい!」
夏那には『余計なことを言うな』と小声で耳打ちしておいた。ただでさえランクが高いことでペルレが驚いているのに、これ以上面倒を増やされては困る。
「フウタさんですね。ではこちらへ――」
「こうですか?」
風太が俺と同じ工程をやると、ここでもペルレが驚くことになった。
「B……!? さっきの方達と同じ……冒険者始めたての人は最低のFが普通なのに……」
どうやらヒュウス達と同じランクらしい。今、いきなりカードを作ることにしたいわば素人冒険者が妙に強いのは目立つか。
そしてここもランクはFからスタートするようだ。前の世界でも一人前として扱われるのはCランクからだったのでBランクスタートというのはやはり驚きに値するのだろう。
続いて水樹ちゃんが行う。
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