70 / 140
第八章:魔族との会談
181.交渉するのも大事な仕事だ
しおりを挟む「静粛に」
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
260
お気に入りに追加
8,752
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん
夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。
のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。