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ロスト・キング<傲慢な王の末路>
しおりを挟む国王ゴーデンが死んだ。
誰の目から見ても、明らかに。
俺と結愛が呆然と立ち尽くしていると、フィオが思い出したように周囲にいる大臣達へ声をかける。
「これは一体どういうことですか? 誰がこんなことを……魔族、ですか?」
「い、いえ、やってきたのは女性で、それもフィオ殿と同じくらいの歳のころ、でした……」
フィオの言葉にハッとして口を開く大臣。老けたけど確かこの人って、
「なあ、エキラーシュ、そいつはどんな奴だった? こう、俺とかこっちの子みたいな服じゃなかったか?」
「む? 何者だ君は? 確かに奇抜な格好だった気はするが……」
「まあこの姿じゃわからないか。俺だよ、シュウ。勇者シュウだ」
「……!? な、なんだと? ドラゴンと討ち死にしたはずでは……」
「ああ、あんたと国王の陰謀でな? あの時は世話になったな」
俺が不敵な笑みを見せながらセイクリッドセイバーを向けると、後ずさりをしながら冷や汗を噴きださせた。
「そ、それは聖剣……お前、本当に……」
「ってことだ。ま、とりあえずそれはいい。なにがあったか話してくれるか?」
「う、むう……」
エキラーシュが語った話はこうだ。
急に二人の少女が上空に現れ城へ攻撃を仕掛けてきたらしい。
一撃で城の上部は吹き飛び、そのまま城へ侵入された後は目が虚ろな少女による魔法の嵐で近づくことさえままならず、もう一人の少女が怯むゴーデン王の胸を貫いたのだと――
◆ ◇ ◆
「き、貴様等は一体なんなのだ……!? この魔力、ただ事ではないぞ……」
『ふふ、知っているはずだけどね? こちら、あなた達の策略で死んじゃった聖女様でーす♪』
「なんだと……? ふざけているの――」
『ふざけてなんていないわ? 異世界への扉を開くためにこの子達を犠牲にした。そしてそのせいで世界間が歪んでいるのよ』
ハーテュリアが目を細めてゴーデンの頬を掠めるように魔力の矢を放つ。
玉座の背が半壊したといっても過言ではないほど吹き飛び、ゴーデンは冷や汗を全身から噴き出し、喉を鳴らす。
「わ、私達をどうするつもりだ……」
『私の名前はハーテュリア。聖剣の女神と言われている存在よ。どうするつもり、なんて簡単なこと。あんたと家族は全員殺す。そのために帰って来たのだから』
「女神……!?」
『そう。あなたがやったことは禁忌と言って差し支えないもの。そして聖剣の勇者一行を騙して殺し、向こう側への切符を手に入れた』
ハーテュリアが近づきながら言葉を告げる。
するとゴーデンは玉座の手すりを拳で叩きつけながら怒声を上げた。
「できるものを何故やってはいけない! この国は帝国の手が伸びている、逃げ道を用意した、それが王である私の役目であろう!」
『……』
「そのために勇者たちを犠牲にしたことは心苦しい。だが、アレらでなければドラゴンを倒すのは困難。さらに私の目的が知られれば勇者たちは断罪するだろう、最悪、疲弊したところを始末する予定だった……」
『最悪ねえ』
「……」
直後、真理愛の目から涙が一筋流れ、ハーテュリアがそれを見てからため息を吐いた。
意識は奪っているはずだが、なにかを感じ取ったのか、と。
『ま、どちらにしても一応『神』として許すわけにはいかないわ。その始末をつける一つにあなたが入っているの』
「お、おのれ……! 皆のもの、女二人など殺せ、殺してしまえ! ……え?」
『馬鹿なの? 自分で戦えばいいだけじゃない。あ、もう遅いか。真理愛ちゃん、周りに居るやつらは殺さなくていいけど、重傷レベルにしておいて』
「……」
真理愛が片手を上げて薙ぎ払うように動かし、その直後、場に居た全員が爆炎で吹き飛んでいた。
大やけど、骨折、壁に叩きつけられた際の打撲。
ありとあらゆる外からの暴力が襲う。
それを見届けたハーテュリアが面白くも無さそうにゴーデンの胸から手刀を抜く。
『……さて、王妃と王子も始末しておかないとね。ごめんね真理愛ちゃん、汚れ仕事で。霧夜も多分冒険者か誰かに拾われているはずだから』
「……」
『ま、わかんないわよね。そのために洗脳しているわけだし。さて、次は魔族……魔王か――』
独り言を呟きながら真理愛を抱えて空中をゆっくりと昇っていき、そのまま王妃、王子を始末する。
その場に居たで動けるものはほぼおらず、動けたとしてもその所業に身動き一つ取ることなど、出来るはずも無かった――
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