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真の理を持つ愛

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 「よし! 一同整列!」
 <おう!>

 自宅の庭にて俺は猫達を並べて号令をかける。

 いよいよ明日、俺達は向こう側の『扉』を開くために現場へ向かう。
 なんだかんだとあれから二週間くらい経過していて、開く場所を探すのに意外と時間がかかったからだ。

 決めた場所は町を見下ろすようにそびえ立つ1000メートルほどの高さがある山で、そこの山頂にある社が霊的、もとい魔力の揺らぎがあるらしくそこへ全員が向かう。
 ちなみに猫達は我が妹によって名前が全員つけられたので呼ぶのにドラ猫と呼ばなくてよくなったのは大きい。……いや、出来事としては小さいが……

 サンダードラゴン:ウルフ
 フリーズドラゴン:スリート
 アクアドラゴン:フレーメン
 カイザードラゴン:スメラギ

 ここはもう決まっていたが、新参者はこうなった。

 アースドラゴン:ソル
 ウィンドドラゴン:ブリーズ
 ファイヤードラゴン:ヴァルカン
 
 いずれも名付け親は結愛。
 なぜかウィンドドラゴンのブリーズは母ちゃんに近づこうとしないが、母ちゃんは結愛に近づくブリーズを引きはがすという謎のムーブをかます。

 「おお、兄ちゃんがいっぱしの猫使いに!」
 「俺は勇者なんだけどな?」
 
 結愛が適当に魔法を使いながら感嘆の声を上げるが、猫なのはたまたまだ。
 猫達が揃っていることを確認していると、遊びに来ていた霧夜が不満げに口を開く。
 
 「いよいよ明日だな、俺も行きたかったな……」
 「戻って来れるかは微妙だから、連れて行くわけにはいかないんだ。若杉さん達も見送りだけだから我慢してくれ」
 「あー、宇田川さんがめちゃ暗かったな」

 ブランダは宇田川さんが説得したけど、俺達と一緒に向こうへ戻ると決めたらしい。
 お互い好き合っているけど、世界が違うとブランダから頭を下げられたとかなんとか。
 若杉さんが『使い物にならない』と冗談めかして苦笑していたけど、割とガチだ。

 結局のところ、『向こう側』には俺達一家とフィオとエリク、ブランダと猫だけで八塚も記憶がないためこちらに残ることになった。

 まあ、そこまではいいのだが――

 「おはよー修ちゃん、明日出発だね」
 「お、真理愛……ってお前大丈夫か?」
 「え?」

 ――気になるのは真理愛のことだ。
 ここ数日の間、なんだかやつれた気がする。
 今も声色は元気だけど、顔は白く、眼の下にクマがあるのだ。

 「ちゃんと寝ているのか?」
 「んー……ちょっと眠れてないかも。最近、怜ちゃんと夜電話してて、つい寝るのが遅くなるんだよー」
 「なんだよ!? 俺からも言っておくけど、眠くなったらちゃんと断れ――」
 「わーい! 猫がいっぱい!」
 「聞けよ!? ほら、ベッドを貸してやるから行くぞ」
 「兄ちゃん……ついに真理愛ちゃんを襲うの……?」

 結愛がよろけながら不穏なことを言うので、真理愛の首根っこを引きながら怒鳴ってやる。
 
 「違う! ……猫と霧夜は任せたぞ」
 「はーい! それじゃなにしようか」
 <……なんで俺達、庭に集められたんだ……?>
 <まあ、ノリと勢いね>
 「本当はなんかやるつもりだったんだろうけど言ってやるな。真理愛ちゃんは修とずっと一緒に過ごしてきたんだ。あんなに体調が悪そうならあっちを優先するよあいつは」
 
 霧夜が恥ずかしいことを言うのが聞こえる。
 真理愛は記憶を取り戻す前からずっと一緒だったのはその通りで、恐らく、八塚が記憶を取り戻しても正直な話、俺は真理愛を選ぶと思う。
 期待を持たせないようにあまり八塚と接していないのはそのせいだったりする。

 「ほら」
 「ひゃ! えへー、修ちゃんに抱っこされたー」
 「いいから寝てろ」
 「……寝るまで一緒に居てくれる?」
 
 布団に入るなり口元を隠してそんなことを言う真理愛に、ため息を吐いてからデコピンをする。

 「居るから寝ろって」
 「はーい!」

 元気よく返事をして目を瞑り、俺の手を握ってきた。
 そのまま黙って座っているとすぐに寝息が聞こえてきたので安堵する。
 ウチの幼馴染は重要なことを隠したがるから、察するか後をつけるかして真相を突き止めないといけないのだ。

 「いじめられていた時もそうだったな……ふあ……俺も眠くなってきた、な……」

 心配をかけまいと黙り込む強情さは、初めて会った時のカレンに似ているな、そう、いや……

 ◆ ◇ ◆

 「……さて、と。準備は整ったわねスメラギ」
 <うむ。我らドラゴンはどうするか分からんが、シュウ達はこちらに帰れるように尽力するつもりだ。聖剣さえなければ少なくとも我はドラゴンになれるからな>
 「……聖剣、ね」
 <お嬢?>
 「なんでもないわ。そうね、頼りにしているわスメラギ」
 
 そして一行は『向こう側』へ行くため集結する――
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