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猫狩り

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 <さっぱりした、礼を言う>
 「尻尾以外エジプトの猫みたいになったなあ……」
 「あなた、結愛は?」
 「大丈夫、結構前に寝ているから、話は聞かれなくて済む。……これで四匹か、やっぱりドラゴンは猫に転生しているってことでいいのか?」
 
 八塚達と別れて自宅に戻った俺と母ちゃんは庭でファイヤードラ猫のガムがついた毛をバリカンで刈り取ったんだけど、思いのほかバランスが悪くなったので思い切って全身の毛を短くした。
 家の中だとバリカンの音で結愛が起きてしまうからという配慮である。

 <ファイヤーか、久しぶりだな>
 <お、サンダーか?>
 <そうだ。今はウルフという名をもらっている>
 <へえ、いいなあ……お前ももらっているんだろ、コールド>
 <スリートって名がありやすぜ!>

 円を囲んで猫達(ウルフはまだ猫ベッドの上)が和気あいあいといった調子で話をしているのを横目に、俺達は話を続ける。

 「で、日付が変わって今日は土曜だけど、今日もアレをやるのか?」
 「一応ね。ただ、私の魔力消費が激しいから一時間くらいにとどめるけど。あんたはあんまり疲れていなさそうね?」
 「ん? そうだな、特にいつも通りかな。ちょっと眠いけど、単純に夜中だからだろうし」
 「やっぱり修は勇者だけあってちょっと特殊なのかもしれないな」
 
 親父は腕組みをして俺の顔を見るが、聖剣と魔法が扱える以外は特に変わったところは無いと思う。まあそこは考えても仕方がないと思っていると、母ちゃんが口を開く。

 「まあ、疲労が無いならいいわ。とりあえず今から休んで、昼から修はお父さんと一緒に待ちを散策してもらえる? できれば殺処分待ちの施設とかに行って欲しいわね」
 「……なるほど。もしかしたらその中に、ってことか」
 「絶対じゃないけど、半数が猫なら残りも猫の確率が高いじゃない? だから念のためにね。……怜ちゃんが聖女である限りこの町に絞ってあいつらは来るけど、それに合わせて私達の有利になる人間やドラゴンもこの町に集まっているわ。聖剣の女神のお導きかしら?」
 「ま、出来ることをやっていくしかないって。それじゃ親父と真理愛、それと猫達と一緒に行くとするか」
 「そうするか、結愛はどうするよ?」
 「事件が解決したからって、あの子は友達とカラオケに行くらしいから大丈夫よ」
 「……そうか」
 「親父?」
 
 親父が寂し気な顔で微笑んだことに違和感を覚えたので声をかけるが、

 「どうした?」
 「い、いや、なんでもない」

 すぐにいつも通りになったので、俺は誤魔化した。するといつの間にか足元にファイヤードラ猫がすり寄ってきていることに気づく。

 <なあ、勇者よ。俺にも名前をつけてくれ、ファイヤードラ猫など嫌だぞ。カイザードラゴンですら貰っているというのに>
 「あー、結愛か真理愛につけてもらえ、あいつらの方がセンスがいいしな。そういやスメラギと喧嘩してたけど、仲間なんだからやめとけよ」
 <ああ、そうしよう。あれはあいつが面白すぎたのがいけないんだ>
 
 ファイヤードラ猫はくっくと笑い顔を洗う。実は帰宅直前、二匹は争っていたのだ。

 ◆ ◇ ◆

 「それじゃ帰りましょうか! 修君、聖剣をスメラギに」
 「オッケー」
 <ぐぬう……>

 こいつは小さくなったりできないので、この世界においてドラゴン形態で過ごすことは不可能。苦悶の表情を浮かべてもその状況は覆らないと、俺は聖剣をスメラギの腹に当てる。

 「不思議よね、吸い込まれるように剣が消えるなんて」
 「スリートに試してみても良かったな」
 <やめてくだせえ、死んでしまいます>
 「にゃーにゃ……」

 そんな冗談を言いながら聖剣が吸い込み終わり、猫に戻ったスメラギは哀愁を漂わせながら前足をじっと見ていた。そこで、ファイヤードラ猫が声を上げた。

 <ぶはっ! 猫……カイザーが猫に! ぶははははははは! い、威厳もクソもないな!>
 <なんだと? ふん、貴様などドラゴンに戻れもしない癖にうるさい奴だ>
 <あ?>
 <なんだ、背中にガムをくっつけたダサ猫が怒ったか?>
 「おい、スメラギ挑発すんなって。ガムは帰ったらとってやるから」

 しかし俺が止める間もなく、ファイヤードラ猫の前足がスメラギの顔にヒットした。

 <貴様……!!>
 <やんのか……!!>

 ◆ ◇ ◆


 そして二匹は戦いを始めてしまったのだった――

 まあ、本気で急所を狙ったりしていなかったので、ドラゴンから戻ったスメラギと、ファイヤードラ猫の野良猫ストレスを発散させる意味ではちょうど良かったのかもしれない。

 それにしても次は保護施設か……向こう側の状況も知りたいし、捕まえた二人とブランダにもう少し詳しい話を聞きたいんだけどなあ。
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