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犯人に通じる証拠
しおりを挟む「で?」
「ふぐ……折角来たのに……酷い……」
「ダメだよ修ちゃん、女の子には優しくしないと」
「ウソ泣きだろ、どうみても」
外に放り出したものの、羽須は真理愛に救出されて部室内へと入り込んできた。ショートカットに縁の大きな眼鏡と、やはり大きい胸が特徴だが、いい性格をしているようで、
「まあ、そうなんですけどね? 早速ですが、キャバ嬢殺人について知っていることをお話ししましょう」
「なんだよ!?」
霧夜がガクッとソファから崩れ落ちるが、だろうなと思っていたので俺は動じないのだ。それはともかく、知っていることとやらを聞いてみるか。
「サラリーマンという話は聞いているけど、犯人像とかどのキャバクラの従業員だったのかわかるのか?」
「サラリーマンということを知っている……!? ならわたしが知っていることはもうありませんね……」
「全然知らないじゃない!?」
「怜ちゃんがツッコミをしたー」
ついに八塚がツッコミをいれる事態になってしまい、場が騒然とする。
というかこれでは母ちゃんや山本さんの方が……そう思った瞬間、羽須が不敵に笑いながら口を開く。
「……と、言いたいところですがまだ続きがあります。サラリーマンというのはまず間違いありません、それと、恐らく会社はここです」
「これは名刺? ……五条商事……五条グループのひとつじゃない。どうしてこれを?」
「実は二人目のキャバ嬢が殺害された日、わたしは繁華街に居たんです。その時、物凄い勢いで走って来た男と曲がり角でぶつかりましてね」
「じゃあその男が……?」
八塚の言葉に羽須が頷き、手を広げて説明を始める。
「街灯の下で見たその男はスーツだったので恐らく。息が荒く目は血走っていて、正直漏らしそうになるくらい恐ろしい顔をしていました」
「怖い……」
「あ、ずるい」
真理愛が俺にしがみついてきて、身体を震わせると、八塚も開いた腕を取って絡んできたので動きにくくなる俺。役得な気もするがそれよりサラリーマンと名刺だ。
「名前も書いているな。これ、警察には届けなかったのか?」
「昨日の今日ですし、殺人があったのを知ったのはニュースを見てからですしね。それにここに来れば警察の人がいるのはホームルームで知っていましたから、放課後に来ようと思ってました」
「なるほどな。この会社に問い合わせて、会社に来ていないなら怪しいし、面通しすると牽制にもなりそうだ。……だけどちょうど、留守なんだよな」
「みたいですね、すぐ戻ってきますかね? 見たいテレビがあるんですけど……」
「欲望に正直だな……このサラリーマンが思い直して、顔を見られたとかでお前が狙われる可能性がある」
「なら私が連絡してみますね。練習させてください!」
フィオがスマホを取り出して操作をし、俺達はその様子を見守る。俺からすると異世界人のフィオが使っているというのは面白いと感じる。
「え? ラーメン? ち、違います私は若杉さんに、おススメはチャーシューって言われても……あああ、シュウお兄ちゃんこれどうすればいいの!?」
「……」
「合わせてチャーハン――」
俺が無言でフィオの電話を切っていると、八塚が喋り出した。
「あ、若杉さんですか? 例のキャバ嬢事件について情報が……はい、部室です、戻って来れますか? ……今から戻ってくるそうよ」
「ありがとう八塚。フィオはもうちょっと頑張ろうな」
「う、うん」
俺は電話帳の使い方を教えながら暖かい目でフィオを見る俺に、羽須が俺の肩に手を置いてからフッと笑う。
「この女たらし」
「繁華街に行くぞ。こいつを狙って犯人が現れるかもしれない」
「ああああああ!? すみません、嘘です! イケメンの神緒様ぁぁぁぁ!」
「うるせえなあ……」
「まったくだ……レンさんとマリアさんしか見てないからこういうのは新鮮だけど」
霧夜とエリクが呆れる中、刑事二人と本庄先生が部室へとやってきて――
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