上 下
61 / 115

犯人に通じる証拠

しおりを挟む

 「で?」
 「ふぐ……折角来たのに……酷い……」
 「ダメだよ修ちゃん、女の子には優しくしないと」
 「ウソ泣きだろ、どうみても」

 外に放り出したものの、羽須は真理愛に救出されて部室内へと入り込んできた。ショートカットに縁の大きな眼鏡と、やはり大きい胸が特徴だが、いい性格をしているようで、

 「まあ、そうなんですけどね? 早速ですが、キャバ嬢殺人について知っていることをお話ししましょう」
 「なんだよ!?」

 霧夜がガクッとソファから崩れ落ちるが、だろうなと思っていたので俺は動じないのだ。それはともかく、知っていることとやらを聞いてみるか。

 「サラリーマンという話は聞いているけど、犯人像とかどのキャバクラの従業員だったのかわかるのか?」
 「サラリーマンということを知っている……!? ならわたしが知っていることはもうありませんね……」
 「全然知らないじゃない!?」
 「怜ちゃんがツッコミをしたー」

 ついに八塚がツッコミをいれる事態になってしまい、場が騒然とする。
 というかこれでは母ちゃんや山本さんの方が……そう思った瞬間、羽須が不敵に笑いながら口を開く。

 「……と、言いたいところですがまだ続きがあります。サラリーマンというのはまず間違いありません、それと、恐らく会社はここです」
 「これは名刺? ……五条商事……五条グループのひとつじゃない。どうしてこれを?」
 「実は二人目のキャバ嬢が殺害された日、わたしは繁華街に居たんです。その時、物凄い勢いで走って来た男と曲がり角でぶつかりましてね」
 「じゃあその男が……?」

 八塚の言葉に羽須が頷き、手を広げて説明を始める。

 「街灯の下で見たその男はスーツだったので恐らく。息が荒く目は血走っていて、正直漏らしそうになるくらい恐ろしい顔をしていました」
 「怖い……」
 「あ、ずるい」

 真理愛が俺にしがみついてきて、身体を震わせると、八塚も開いた腕を取って絡んできたので動きにくくなる俺。役得な気もするがそれよりサラリーマンと名刺だ。

 「名前も書いているな。これ、警察には届けなかったのか?」
 「昨日の今日ですし、殺人があったのを知ったのはニュースを見てからですしね。それにここに来れば警察の人がいるのはホームルームで知っていましたから、放課後に来ようと思ってました」
 「なるほどな。この会社に問い合わせて、会社に来ていないなら怪しいし、面通しすると牽制にもなりそうだ。……だけどちょうど、留守なんだよな」
 「みたいですね、すぐ戻ってきますかね? 見たいテレビがあるんですけど……」
 「欲望に正直だな……このサラリーマンが思い直して、顔を見られたとかでお前が狙われる可能性がある」
 「なら私が連絡してみますね。練習させてください!」

 フィオがスマホを取り出して操作をし、俺達はその様子を見守る。俺からすると異世界人のフィオが使っているというのは面白いと感じる。

 「え? ラーメン? ち、違います私は若杉さんに、おススメはチャーシューって言われても……あああ、シュウお兄ちゃんこれどうすればいいの!?」
 「……」
 「合わせてチャーハン――」

 俺が無言でフィオの電話を切っていると、八塚が喋り出した。

 「あ、若杉さんですか? 例のキャバ嬢事件について情報が……はい、部室です、戻って来れますか? ……今から戻ってくるそうよ」
 「ありがとう八塚。フィオはもうちょっと頑張ろうな」
 「う、うん」

 俺は電話帳の使い方を教えながら暖かい目でフィオを見る俺に、羽須が俺の肩に手を置いてからフッと笑う。

 「この女たらし」
 「繁華街に行くぞ。こいつを狙って犯人が現れるかもしれない」
 「ああああああ!? すみません、嘘です! イケメンの神緒様ぁぁぁぁ!」
 「うるせえなあ……」
 「まったくだ……レンさんとマリアさんしか見てないからこういうのは新鮮だけど」

 霧夜とエリクが呆れる中、刑事二人と本庄先生が部室へとやってきて――
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
 剣の腕を見込まれ、復活した古の魔王を討伐する為に勇者として異世界に召喚された男、唐観武光(からみたけみつ)……  しかし、武光は勇者でも何でもない、斬られてばかりの時代劇俳優だった!!  とんだ勘違いで異世界に召喚された男は、果たして元の世界に帰る事が出来るのか!?  愛と!! 友情と!! 笑いで綴る!! 7000万パワーすっとこファンタジー、今ここに開幕ッッッ!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米
ファンタジー
異世界。そこは魔法が発展し、数々の王国、ファンタジーな魔物達が存在していた。 ギルドに務め、魔王軍の配下や魔物達と戦ったり、薬草や資源の回収をする仕事【冒険者】であるガイムは、この世界、 そしてこのただ魔物達と戦う仕事に飽き飽き していた。 いつも通り冒険者の仕事で薬草を取っていたとき、突然自身の体に彗星が衝突してしまい 化学や文明が発展している地球へと転生する。 何もかもが違う世界で困惑する中、やがてこの世界に転生したのは自分だけじゃないこと。 魔王もこの世界に転生していることを知る。 そして地球に転生した彼らは何をするのだろうか…

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗
ファンタジー
大学一年の冬に義妹が死んだと連絡を受けた兄がいた。 よく笑い、よく泣き、よく理不尽に怒り、そこにいるだけで存在感を示す義妹であった。その天真爛漫さは親からすると可愛らしく大量の愛情を受けて育った義妹であった。良く言えばノビノビ、悪く言えば増長して、俺に対して強く当たるようになった義妹であった。 そんな義妹が死んでから数か月後、「にーちゃん、ここに来て 愛しの妹より」と頭の悪いメールが届く。それは兄と妹、二人を待ち受けるのは奇々怪々な面々が起こす事件の数々。そして、妹が神に至る物語の幕開けを告げるものであった。 絶対に自ら認めようとしないブラコンとシスコンの二人が、互いを大切に思ったり、意地と意地がぶつかり合ったり、妹がバーチャルアイドルを始めたり、ドルオタの兄を軽蔑したりするファンタジーでオカルトで近未来でVRMMOな学生の物語。

処理中です...