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公園の幽霊、その結末

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 本庄先生のレアな悲鳴を聞いた俺達は即座に駆けつける。
 
 堀のある南側へは俺と霧夜が回り込み、本庄先生へは若杉さんとエリク、西側は宇田川さん、東側はフィオと真理愛と八塚。北はスメラギとスリートという頼りになるのか微妙な猫二匹という組み合わせで走る。

 「幽霊をこのカメラにばっちり収めてやるのよ!」
 「ぶにゃーん」
 
 カメラを片手に興奮状態で口走る八塚に俺達は呆れながら走っていく。八塚ってあんなキャラだったっけ……。誘拐事件からこっち、なにかに目覚めたようだな……

 それはさておき、現場に到着すると本庄先生が買い物袋を抱きしめた状態で尻もちをついていて、その前には――

 「お、おお、置いて行って……私の……ご飯……!」
 「うわあああ! 圭! 早く!!」
 「もう大丈夫だ!」
 「……!? な、なんでこんなに人が!? くっ……!」

 幽霊(?)は困惑した声で逃げようとする。スッと姿が消えそうになった瞬間、スメラギが飛びかかる!

 「ぶにゃ!!」
 「ふぎゃ!? ね、猫!」
 「にゃー!!」

 スメラギが意外にも跳躍して顔に張り付くと、スリートが足に絡みついて姿が再び現れた。あれは魔法か!
 俺も使っていた姿を消す魔法<屈折アンチ・サイン>だと分かり、この幽霊が『向こう側』の人間であることが確定した。

 「お前、向こうの世界の人間だな!」
 「マジか、シュウ兄ちゃん!?」
 「確かに今、姿を消そうとしたのは魔法だったわ」

 俺が近づきながらそう叫ぶと、幽霊はスメラギを引きはがしながら長い髪を揺らして俺達へ目を向ける。

 「え!? どうしてそれを……って、ああ! エリクにフィオちゃん!? よ、良かった無事だったのね!」
 「なんで俺達の名前を……」
 「だ、誰ですか……?」
 「わ、私よ! ブランダよ!!」
 「「あ!?」」

 へたり込んだまま髪を上げ、鼻水と涙をまき散らしながらエリクとフィオに顔を晒すと、二人は驚いた顔で指をさした。

 「ブランダさん!? そういえば怜さんを誘拐した後、ゴタゴタしてて忘れてた!」
 「知り合いかい……? この人も向こうの?」
 「ひ、人騒がせだなまったく!」
 「うん、先生も怖いなら辞めときゃよかったのに……」

 腰が抜けたのか、若杉さんの腰に張り付いて足を小鹿のように震わせる本庄先生に生暖かい目を向けるが、それよりも重要なことを口にしたので俺はそっちを追求する。

 「今、八塚を誘拐したって言ったな? お前が村田と八塚に魔法をかけた奴なのか?」
 「そ、そうですぅ……送られてきたメンバーで精神系の魔法を使えるのが私だけだったから……ジグさんとイルギットさんは居なくなるし、フィオちゃん達のところに行ったら魔族とドラゴンがやり合っていて、爆風に巻き込まれて海へ落とされたんですぅ……」
 「……ちょっと怒る気が失せたわね」
 「あはは……」

 誘拐された八塚がカメラ片手に眉を顰めて口を尖らせて、珍しく真理愛も愛想笑いだ。それくらいこのブランダという女性はついていない。

 「って、ああ!? あなた聖――」
 「おっと、質問するのはこっちが先だ。この公園で夜な夜な女性から食い物を巻き上げていたのはお前で間違いないな」
 「ぐす……は、はい……」
 「現行犯、か……」
 「残念だなあ、美人なのに」
 
 若杉さんと宇田川さんの言葉に、涙が引っ込みキョロキョロとあたりを見渡すブランダ。
 
 「え? え?」
 「とりあえず署に来てもらおうかな」
 「な、なんでですかぁぁぁぁ! ……う!?」
 「ん? なんだ? 今更逃げられないぜ?」
 「待ってくれ様子がおかしい……!」
 「ううううああああああ!? と、扉を開いた……!?」
 「フィオちゃん!?」

 ブランダが急に胸を抑えてうずくまり、宇田川さんが訝しむ。だが、この苦しみ方は普通じゃない……!   
 見ればフィオとエリクも片膝をついていた。

 「だ、いじょうぶです……これは、魔力をもっていかれる感覚は私達の力を使って『扉』を開いた……?」
 「可能性はある……向こうと繋がっているのは俺達だ、なにかしらの方法でつなげてきたか……ぐ、うううう……」
 「と、とりあえず病院に運ぼう、圭!」
 「あ、ああ」

 本庄先生に言われてすぐにスマホを取り出して電話をかける若杉さん。この異様な光景に霧夜がポツリと呟く。

 「……こいつは洒落にならねえな……」
 「びびったか?」
 「正直言ってびびった。だけど、それ以上に友達をこんなにされた怒りの方が強いけどな……!」
 「だな」

 ……霧夜の頼もしい言葉を聞きながら、フィオ達を介抱する真理愛と八塚を見て俺は思う。

 「(扉が開いたということは向こうから来る、か。人間か魔族か……それとも)」

 ――その両方か。俺はスメラギを抱き上げて、来るかもしれない脅威を思うのだった。
 
 <(お、おい、我をまた剣にするのか!?>

 スメラギの声は無視した。
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