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八塚さんちと神緒さんち

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 「それじゃ、俺は八塚さんと本庄先生のところへ行ってくる!!」
 「ごめんね、修君、真理愛。一緒に行きたいけど、部活を作るために頑張るから!」
 「ああ、うん、無理しなくていいからな?」
 「またねー!」

 今日も無事に一日が終わり放課後がやってきたが、霧夜と八塚が揃ってそんなことを言い出し俺達とは教室で別れた。霧夜だけなら言うだけで実行されることはそうそうない。が、お嬢様である八塚が加わると話が変わる。
 PTAというアレにも力があり、寄付もしている親の生徒が多少の我儘を言えばどうなるのか? ……もちろんそれは通ってしまうだろう……
 不安なので明日にしないかと聞いたが善は急げとばかりに『私がやっておくから!』と聞きゃしなかった。

 ……まあ、本庄先生なら霧夜を見て突っぱねてくれるであろうということでそこに期待したいと思う。

 というわけで俺と真理愛が廃ビルへと行くことになり、学校を後にすると真っすぐ向かいことになった。

 「楽しみだねー」
 「いや、危険だからあまり色々やらないで欲しいんだけどな……」
 「ダメだよ、修ちゃんだって危ないんだから。誰か他にも知っている人が居れば、もしなにかあっても気づいて助けを呼べるじゃない」
 「……」

 真理愛の言うことは一理ある。
 学校に認識があれば、もし俺が行方不明になった場合、警察にもすんなり話が通る可能性は高い。八塚の話ばかりで悪いけど、彼女が関わるならあらに活動しやすくなるだろう。
 それでも向こうの世界に関わって欲しくないと思うのは、過保護なのだろうか?

 そんな感じで真理愛と他愛ない話をしながら廃屋に到着すると、先に入り口で若杉さんが待っていたので声をかける俺。

 「若杉さん!」
 「お、来たか神緒君に興津さん。……二人は?」
 「こんにちは! あれ? まだ二人が来ていない?」
 「まあ、家からはそこそこ距離があるからまだじゃないかな。あいつらが逃げるってことはないだろうから安心してくれよ」
 「ま、そこはどっちでもいいよくなったんだけどな」
 「? どういうことだい?」

 疲れたように笑う若杉さんの言葉が気になり尋ねてみると、タバコに火をつけようとして路上喫煙ができないと気づいてポケットにしまいながら若杉さんが言う。

 「……まあ、僕としては予想通りなんだけど異世界とか魔族とかは信じてもらえなかったってことさ。かと言って報告しないわけにもいかないから報告書には真面目に本当のことを書いておいたけど、未解決事件にされそうだ」
 「それって大丈夫なんですか?」
 「うーん、まああの事件自体、重症者は居たけど死者は居なかったから、同じ時期にあったホステス殺人の方が主立っちゃってるし、犯人が捕まっていないんだ。だから誘拐事件はこのまま被疑者不在でうやむやになるんじゃないかと思う」
 「ホステス殺人……」
 「殺された人には悪いけど、インパクトが強い……」

 真理愛がぶるりと体を震わせて俺の腕に絡みついてきたので、背中を軽く撫でてやる。

 「ま、どっちにしても君が犯人を倒したならこの事件はもう起きないと考えていい。だろ?」
 「……一応は。また向こうから来る可能性があることを考えると、油断はしない方がいいけどな。そのホステス殺人も考慮すべきかもしれないし」
 「あれは多分違うな。僕の勘がそう言っている……おっと、来たようだ……ぞ?」
 「ん?」

 俺の後ろを見て怪訝な顔をする若杉さんが気になり、フィオ達が来たんじゃないのかと振り返ると――

 「遅くなったわね! 連れてきたわよ!」
 「……」
 「……」
 
 ――何故か母ちゃんが一緒に居た。

 「母ちゃん!? なんでまた……」
 「馬鹿ね、子供達だけでこんな話しをさせるわけには行かないでしょうが。近所のおばさんと話していたんだけど最近隣町のホステスが殺されたって話を聞いたし、特にこの時間は怖いでしょ? だから着いて来たのよ。そうそう、あの事件はキャバクラのソファで亡くなっていたらしいんだけど、密室になっていて指紋は残っていなかったそうよ。おばさんと私が考えるに、今、行方が分からないサラリーマンが怪しいって睨んでいるんだけど――」
 「詳しい!? 通っていたサラリーマンの情報は出回ってないはずですけどね!?」
 「まあ母ちゃんだしな……まあ心配してくれたのはありがたいよ。って、どうした二人とも?」
 「い、いや、なんでもねえ……」
 「シュウ兄ちゃんも大変だな、って……」

 母ちゃんを見ながら冷や汗をかく二人に、多分世間話をされまくったのだろうと推測しため息を吐く。
 
 「それはともかく、それじゃ若杉さん、どうなったか聞いていいかな?」

 俺が口火を切ると、若杉さんはゆっくり頷き俺達に告げる。
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