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突然の再会
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彼女――イリスがこの学院に通っているということ自体は、話に聞いて知っていた。
今年の新入生としてではなく、去年の新入生として、だ。
聖剣の乙女は、実際にはそう呼ばれているだけの騎士でもある。
だからその必要が実質的にはなくとも、学院に通い卒業する必要があるのだ。
そして騎士としての力は十分だと既に証明されているため、まだ十四であったにもかかわらず、去年特例として入学が認められたのである。
十四で学院に入学するということは世界的に見ても非常に珍しく、また何よりも聖剣の乙女が学院に通い始めたというのだ。
当然のようにそこかしこで噂となり、レオンの耳にも自然と届いたのであった。
で、そういうわけであるから、彼女がここにいることは知っていたし、そのうち見かけるようなこともあるかもしれないと、正直なところちょっと期待もしていた。
だが、さすがにこれは予想外にも程がある。
あまりにも想定外過ぎる事態に頭が完全にフリーズし――直後に、その蒼い瞳と目が合った。
彼女もまた、レオンの方へと顔を向けてきたのだ。
そんな彼女へと何かを言わなければと思い、しかし何を話せばいいのかと、開きかけた口が中途半端なところで止まる。
久しぶりとでも言えばいいのか、いやそもそも彼女は自分のことなど覚えているか、それ以上にこの状況の説明をすべきでは、というか何故彼女がここに自分は一人で部屋を使うのでは――と、ぐるぐると回っていた思考は、次の瞬間にピタリと止まった。
イリスが先に口を開くと、僅かに首を傾げながら、とある言葉を放ってきたからだ。
「……久しぶり?」
それは正しい言葉であった。
自分も口にしようか迷っていた言葉だ。
だがその言葉を、他の誰でもない彼女が言ってくれた……自分のことを覚えてくれていたのだという事実に、自分でも驚くほど一瞬で頭が冷えた。
物凄く嬉しいはずなのだが……いや、だからこそか。
口元に自然と笑みを浮かび、言葉が口から滑り出た。
「……うん、久しぶり。八年ぶりだね」
しかし冷静になったところで、一気に疑問が湧きあがってきた。
イリスが寮にいるということは自体は構わない。
先に述べたように、去年ここに入ったということは知っていたことであるし、全寮制である以上はむしろ当然のことでもある。
まあ、授業はどうしたのだろうかという疑問は湧くものの、特例で入学していることを考えれば、他にも色々と特別扱いされているのだろうことは容易に想像が付く。
だから、それはまだいい。
だがどうしてよりにもよって、ここにいるのか。
……なんか非常に嫌な予感がするものの、問わずにいられまい。
「えっと……それでちょっと聞きたい事があるんだけど、どうしてこの部屋に?」
「……? ここはわたしの部屋だから、どうしてって言われても、困る。……君こそ、どうしてここに?」
うん、これは確定かなぁ、と思ったものの、まだ分からない。
まだたとえば彼女が寝ぼけてここを自分の部屋だと思っている、という可能性だってあるのだ。
いやないだろうなどと冷静に囁く自分は叩きのめした。
「いやー、実はここが僕の部屋だって言われて来たんだけど……同居人が今日来るとかって話は……?」
「……そういえば。今までは一人で使ってたけど、部屋が足りなくなってきたから誰かが来るって聞いてたかも。それが君ってこと?」
「うん……どうやらそうみたいだねー……」
どういうことやねんと叫びたいところであったが、叫んだところで意味はない。
どうやら再会の余韻に浸るよりも先に色々と話し合わなければならないことがありそうだと、レオンは溜息を吐き出した。
とりあえず一通り話をしてみた結果、やはりレオンとイリスが相部屋となるのはほぼ間違いないようであった。
だがそれ自体も問題ではあるが、それ以上に問題と感じたのはイリスがそのことを何の異論もなく受け入れているようだからだ。
一組の男女が同じ部屋で共同生活。
実際には昼間は学院に行っているし、食事は食堂で摂るのでそれほど共同生活という感じにはならないだろうが、それでも同じ部屋で過ごすことになるのは確かだ。
しかも話を聞いてみると、部屋にあった扉の先はやはり寝室で、そこにはベッドが置かれているらしいのだが、何でもダブルベッドらしいのである。
つまりは、同じベッドで寝ることになるわけだ。
普通に考えれば問題しかあるまい。
しかしイリスがそんなことを受け入れたのは、レオンのことを受け入れたから、ということではないだろう。
警戒心が薄い、ということでもきっとない。
おそらく、イリスは単に警戒する必要性を感じていないだけなのだ。
男であろうと何であろうと、最強であるその身の前では警戒するに値しない、というわけである。
だからこそ、問題なのであった。
あるいは無意識なのかもしれないが、であるならば尚更問題だ。
未だその視界の中に、レオンは入れていないということなのだから。
まあ、当然のことではある。
八年ぶりの再会であり、そもそも再会とは言っても八年前に一度会っただけなのだ。
むしろ覚えられているだけで僥倖とすら言えるだろう。
だが、それはそれ、これはこれである。
どちらかと言えば、自分の今の立ち位置を突きつけられたと言ったほうが正確かもしれない。
要するにレオンは、同じ部屋で暮らすことになろうと、同じベッドで眠ろうと、意識すらされない存在なのだということである。
それを思えば、嬉しさも戸惑いも吹き飛んだ。
彼女に並び立ち、そして追い抜くには、こんなところで余計なことにうつつを抜かしている場合ではないのだと、思い出すことが出来たのである。
もしかすると、八年の月日がレオンを少々思い上がらせてしまっていたのかもしれない。
ここまで目指していた通りに進むことが出来、魔獣を倒し、かつて最強と呼ばれた女性とすら正面から打ち合うことが出来た。
そのことは喜ぶべきことではあるが、目の前の少女からすれば些事でしかないのだ。
そのことをしっかりと肝に銘じ、これから再び頑張らねば……と、ひっそり改めて決意していた時のことであった。
ふとイリスが何かに気付いたようにジッとレオンのことを見つめてくると、首を傾げたのだ。
「……そういえば、どうしてここに?」
「えっと……それはどういう意味で?」
今更過ぎる疑問に、レオンの方が困惑した。
だがイリスもイリスで、どうして伝わらないのかとでも言わんばかりに、さらに不思議そうに首を傾げる。
八年前からそうではないかと思ってはいたものの、やはりと言うべきかどうやら彼女は口下手であるらしい。
しばし考えるような間を開けた後で、さらに口を開いた。
「男の人が住むのは、こっちの寮じゃない」
「ああ……」
なるほどそこから説明する必要があるのかと納得する。
というか、確かに普通ならば当たり前に感じる疑問であった。
朝もそうだったように、通常ならばレオンが騎士科の施設にいることには疑問を感じるのが当然の反応なのである。
リーゼロッテ達はレオンのことを知っていたからそのまま受け入れられただけで、どちらかと言えば彼女達が例外なのだ。
てっきりイリスも例外側なのかと思っていたら、そうではなかったらしい。
つまりは、そんな当たり前の疑問を感じるまで時間がかかるほどに、レオンには興味がなく、眼中になかったということか。
これは、まずは何とかしてレオンという存在をしっかりと認識させるところから始める必要がありそうだ。
となれば、とりあえずは疑問にしっかり答えるところからか。
「まあ、確かに一般的には男はこっちじゃなくてあっちに行くものだけど、僕はこっちで合ってるよ。僕はちゃんと入学試験を合格した結果として騎士科に通うことになったからね」
そう答えると、今度はイリスは逆側へと首を傾げた。
どうやらまた別の疑問が生じたらしい。
「……どうして?」
まだそれほど言葉を交わしたわけではないが、それでもそろそろ相変わらずだと思ってしまうぐらいには、彼女の言葉は毎度足りていない。
だが不思議と、今回はその言葉の意味するところが理解出来た。
どうして。
どうして、意味もないのに騎士になろうとするのか。
多分彼女は、そう尋ねたいのだろう。
それは、男が騎士になったところで、とかいうことではなく、もっと根本的な話だ。
聖剣の乙女である彼女がいれば、騎士なんてものは必要ないのにという、そういう話である。
それは極論ではあるが、事実でもあった。
聖剣の乙女と呼ばれる者と普通の騎士との間には、それほどの差が存在しているのだ。
何せ聞いた話が確かならば、彼女の今のレベルは140だという。
かつて最強と呼ばれていたザーラですら60代であるらしいことを考えれば、ダブルスコア以上だ。
実際の力関係言えば倍どころでは済まず、文字通りの意味で桁が違う。
おそらく……いや間違いなく、現存する全ての騎士が力を合わせたところで、イリスは一人で圧倒することだろう。
それが聖剣の乙女というものであることを考えれば当たり前のことではあるのだが、彼女の力は、彼女はそれほどの存在だということだ。
無論どれだけ強くとも四六時中動き回ることは出来ないし、全ての場所を一人で担当出来るわけでもない。
そのため実際には他にも騎士は必要なのだが、それでも彼女はこう言いたいのだろう。
自分がいるのだから、騎士なんて危険なものにわざわざなろうとする必要はないのに、と。
そして、であるならば、レオンの言うことなど一つしかあるまい。
「そりゃ、もちろん……君を追ってきたのさ」
それ以外にないし、必要もない。
いつか追いつき追い越すために、その背を追ってやってきただけなのだ。
と、そこまで言ったところで、自分も自分で言葉が足りていないかもしれないと思った。
君を追ってきたとか言って、こうして寮の部屋にまでやってくる。
これではただのストーカーではないか。
「あー、えっと、さすがに一緒の部屋になるってのは僕も予想外だったからね? というか、ここに君が通ってなくとも僕はここに来てただろうし」
追って来たというのは、ただの比喩表現だ。
遥か先にいる彼女に少しでも近付くためには、素直に騎士になるのが最も近道だろうと思ったに過ぎない。
……まあ、そっちの意味でも少しでも近付けたら、と思っていたのも事実ではあるが。
と、そんなことを考えていると、イリスからの反応が特にないことに気付いた。
無表情にジッとレオンのことを見つめており……もしかして、ストーカーだという疑惑が晴れていない感じなのだろうか。
感情が表に出にくいタイプなのか、どうにも何を考えているのかいまいち読み取りづらいのだが……ここはもう少し言葉を重ねておいた方がいいのかもしれないと、そう思った時のことであった。
「――なんだ、もっと騒いでたり、混乱とかしてるかと思ったが、全然普通だったな。ちっ、つまらん」
部屋の扉が開く音と共に、聞き覚えのある声が耳に届いたのであった。
今年の新入生としてではなく、去年の新入生として、だ。
聖剣の乙女は、実際にはそう呼ばれているだけの騎士でもある。
だからその必要が実質的にはなくとも、学院に通い卒業する必要があるのだ。
そして騎士としての力は十分だと既に証明されているため、まだ十四であったにもかかわらず、去年特例として入学が認められたのである。
十四で学院に入学するということは世界的に見ても非常に珍しく、また何よりも聖剣の乙女が学院に通い始めたというのだ。
当然のようにそこかしこで噂となり、レオンの耳にも自然と届いたのであった。
で、そういうわけであるから、彼女がここにいることは知っていたし、そのうち見かけるようなこともあるかもしれないと、正直なところちょっと期待もしていた。
だが、さすがにこれは予想外にも程がある。
あまりにも想定外過ぎる事態に頭が完全にフリーズし――直後に、その蒼い瞳と目が合った。
彼女もまた、レオンの方へと顔を向けてきたのだ。
そんな彼女へと何かを言わなければと思い、しかし何を話せばいいのかと、開きかけた口が中途半端なところで止まる。
久しぶりとでも言えばいいのか、いやそもそも彼女は自分のことなど覚えているか、それ以上にこの状況の説明をすべきでは、というか何故彼女がここに自分は一人で部屋を使うのでは――と、ぐるぐると回っていた思考は、次の瞬間にピタリと止まった。
イリスが先に口を開くと、僅かに首を傾げながら、とある言葉を放ってきたからだ。
「……久しぶり?」
それは正しい言葉であった。
自分も口にしようか迷っていた言葉だ。
だがその言葉を、他の誰でもない彼女が言ってくれた……自分のことを覚えてくれていたのだという事実に、自分でも驚くほど一瞬で頭が冷えた。
物凄く嬉しいはずなのだが……いや、だからこそか。
口元に自然と笑みを浮かび、言葉が口から滑り出た。
「……うん、久しぶり。八年ぶりだね」
しかし冷静になったところで、一気に疑問が湧きあがってきた。
イリスが寮にいるということは自体は構わない。
先に述べたように、去年ここに入ったということは知っていたことであるし、全寮制である以上はむしろ当然のことでもある。
まあ、授業はどうしたのだろうかという疑問は湧くものの、特例で入学していることを考えれば、他にも色々と特別扱いされているのだろうことは容易に想像が付く。
だから、それはまだいい。
だがどうしてよりにもよって、ここにいるのか。
……なんか非常に嫌な予感がするものの、問わずにいられまい。
「えっと……それでちょっと聞きたい事があるんだけど、どうしてこの部屋に?」
「……? ここはわたしの部屋だから、どうしてって言われても、困る。……君こそ、どうしてここに?」
うん、これは確定かなぁ、と思ったものの、まだ分からない。
まだたとえば彼女が寝ぼけてここを自分の部屋だと思っている、という可能性だってあるのだ。
いやないだろうなどと冷静に囁く自分は叩きのめした。
「いやー、実はここが僕の部屋だって言われて来たんだけど……同居人が今日来るとかって話は……?」
「……そういえば。今までは一人で使ってたけど、部屋が足りなくなってきたから誰かが来るって聞いてたかも。それが君ってこと?」
「うん……どうやらそうみたいだねー……」
どういうことやねんと叫びたいところであったが、叫んだところで意味はない。
どうやら再会の余韻に浸るよりも先に色々と話し合わなければならないことがありそうだと、レオンは溜息を吐き出した。
とりあえず一通り話をしてみた結果、やはりレオンとイリスが相部屋となるのはほぼ間違いないようであった。
だがそれ自体も問題ではあるが、それ以上に問題と感じたのはイリスがそのことを何の異論もなく受け入れているようだからだ。
一組の男女が同じ部屋で共同生活。
実際には昼間は学院に行っているし、食事は食堂で摂るのでそれほど共同生活という感じにはならないだろうが、それでも同じ部屋で過ごすことになるのは確かだ。
しかも話を聞いてみると、部屋にあった扉の先はやはり寝室で、そこにはベッドが置かれているらしいのだが、何でもダブルベッドらしいのである。
つまりは、同じベッドで寝ることになるわけだ。
普通に考えれば問題しかあるまい。
しかしイリスがそんなことを受け入れたのは、レオンのことを受け入れたから、ということではないだろう。
警戒心が薄い、ということでもきっとない。
おそらく、イリスは単に警戒する必要性を感じていないだけなのだ。
男であろうと何であろうと、最強であるその身の前では警戒するに値しない、というわけである。
だからこそ、問題なのであった。
あるいは無意識なのかもしれないが、であるならば尚更問題だ。
未だその視界の中に、レオンは入れていないということなのだから。
まあ、当然のことではある。
八年ぶりの再会であり、そもそも再会とは言っても八年前に一度会っただけなのだ。
むしろ覚えられているだけで僥倖とすら言えるだろう。
だが、それはそれ、これはこれである。
どちらかと言えば、自分の今の立ち位置を突きつけられたと言ったほうが正確かもしれない。
要するにレオンは、同じ部屋で暮らすことになろうと、同じベッドで眠ろうと、意識すらされない存在なのだということである。
それを思えば、嬉しさも戸惑いも吹き飛んだ。
彼女に並び立ち、そして追い抜くには、こんなところで余計なことにうつつを抜かしている場合ではないのだと、思い出すことが出来たのである。
もしかすると、八年の月日がレオンを少々思い上がらせてしまっていたのかもしれない。
ここまで目指していた通りに進むことが出来、魔獣を倒し、かつて最強と呼ばれた女性とすら正面から打ち合うことが出来た。
そのことは喜ぶべきことではあるが、目の前の少女からすれば些事でしかないのだ。
そのことをしっかりと肝に銘じ、これから再び頑張らねば……と、ひっそり改めて決意していた時のことであった。
ふとイリスが何かに気付いたようにジッとレオンのことを見つめてくると、首を傾げたのだ。
「……そういえば、どうしてここに?」
「えっと……それはどういう意味で?」
今更過ぎる疑問に、レオンの方が困惑した。
だがイリスもイリスで、どうして伝わらないのかとでも言わんばかりに、さらに不思議そうに首を傾げる。
八年前からそうではないかと思ってはいたものの、やはりと言うべきかどうやら彼女は口下手であるらしい。
しばし考えるような間を開けた後で、さらに口を開いた。
「男の人が住むのは、こっちの寮じゃない」
「ああ……」
なるほどそこから説明する必要があるのかと納得する。
というか、確かに普通ならば当たり前に感じる疑問であった。
朝もそうだったように、通常ならばレオンが騎士科の施設にいることには疑問を感じるのが当然の反応なのである。
リーゼロッテ達はレオンのことを知っていたからそのまま受け入れられただけで、どちらかと言えば彼女達が例外なのだ。
てっきりイリスも例外側なのかと思っていたら、そうではなかったらしい。
つまりは、そんな当たり前の疑問を感じるまで時間がかかるほどに、レオンには興味がなく、眼中になかったということか。
これは、まずは何とかしてレオンという存在をしっかりと認識させるところから始める必要がありそうだ。
となれば、とりあえずは疑問にしっかり答えるところからか。
「まあ、確かに一般的には男はこっちじゃなくてあっちに行くものだけど、僕はこっちで合ってるよ。僕はちゃんと入学試験を合格した結果として騎士科に通うことになったからね」
そう答えると、今度はイリスは逆側へと首を傾げた。
どうやらまた別の疑問が生じたらしい。
「……どうして?」
まだそれほど言葉を交わしたわけではないが、それでもそろそろ相変わらずだと思ってしまうぐらいには、彼女の言葉は毎度足りていない。
だが不思議と、今回はその言葉の意味するところが理解出来た。
どうして。
どうして、意味もないのに騎士になろうとするのか。
多分彼女は、そう尋ねたいのだろう。
それは、男が騎士になったところで、とかいうことではなく、もっと根本的な話だ。
聖剣の乙女である彼女がいれば、騎士なんてものは必要ないのにという、そういう話である。
それは極論ではあるが、事実でもあった。
聖剣の乙女と呼ばれる者と普通の騎士との間には、それほどの差が存在しているのだ。
何せ聞いた話が確かならば、彼女の今のレベルは140だという。
かつて最強と呼ばれていたザーラですら60代であるらしいことを考えれば、ダブルスコア以上だ。
実際の力関係言えば倍どころでは済まず、文字通りの意味で桁が違う。
おそらく……いや間違いなく、現存する全ての騎士が力を合わせたところで、イリスは一人で圧倒することだろう。
それが聖剣の乙女というものであることを考えれば当たり前のことではあるのだが、彼女の力は、彼女はそれほどの存在だということだ。
無論どれだけ強くとも四六時中動き回ることは出来ないし、全ての場所を一人で担当出来るわけでもない。
そのため実際には他にも騎士は必要なのだが、それでも彼女はこう言いたいのだろう。
自分がいるのだから、騎士なんて危険なものにわざわざなろうとする必要はないのに、と。
そして、であるならば、レオンの言うことなど一つしかあるまい。
「そりゃ、もちろん……君を追ってきたのさ」
それ以外にないし、必要もない。
いつか追いつき追い越すために、その背を追ってやってきただけなのだ。
と、そこまで言ったところで、自分も自分で言葉が足りていないかもしれないと思った。
君を追ってきたとか言って、こうして寮の部屋にまでやってくる。
これではただのストーカーではないか。
「あー、えっと、さすがに一緒の部屋になるってのは僕も予想外だったからね? というか、ここに君が通ってなくとも僕はここに来てただろうし」
追って来たというのは、ただの比喩表現だ。
遥か先にいる彼女に少しでも近付くためには、素直に騎士になるのが最も近道だろうと思ったに過ぎない。
……まあ、そっちの意味でも少しでも近付けたら、と思っていたのも事実ではあるが。
と、そんなことを考えていると、イリスからの反応が特にないことに気付いた。
無表情にジッとレオンのことを見つめており……もしかして、ストーカーだという疑惑が晴れていない感じなのだろうか。
感情が表に出にくいタイプなのか、どうにも何を考えているのかいまいち読み取りづらいのだが……ここはもう少し言葉を重ねておいた方がいいのかもしれないと、そう思った時のことであった。
「――なんだ、もっと騒いでたり、混乱とかしてるかと思ったが、全然普通だったな。ちっ、つまらん」
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