うまのほね

 文久三年の夏、浦賀港付近を縄張りとするチンピラ博徒・野槌の亥吉は、ある廃寺で巨大な馬の姿を目にする。
 マレンゴと言う、その野生馬をつれた武士・多田省吾に話を聞くと、南蛮渡来で極めて高価である、との事。
 売れば一儲けできると企んだ亥吉は、得意の博打でマレンゴを勝取る。
 貴重な宝を奪われた筈なのに、何故か秘かな笑みを浮かべる多田。
 
 間も無く、秘められた陰謀と狡猾な多田の企てが明らかになり、亥吉はマレンゴを殺して逃走しようかと考え始める。
 でも彼の幼少時、亡父が可愛がっていた愛馬の記憶が蘇り、無抵抗な野生馬を殺す気になれない。
 ある小屋に追い詰められ、逃避行は終焉を迎えるが、そこで一人と一頭の心は何時しか触合い、奇妙な友情が育まれていく。
 それは亥吉にとって、孤独な生涯に嘗て無い安らぎの一時であった。


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