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しおりを挟む知ってる? 今時の小学生には、日曜日の朝ってオアシスなんだよ。
アニメとか、ヒーロー物とか、人気があるのを、ドドッと放送する。男の子向けも女の子向けも、み~んな。
録画や配信より、リアタイの方が盛り上がるしさ。もっとバラけた方が良いよね。
でも、テレビ局はまとめてやっちゃう。
昔は夜の七時過ぎが子供のゴールデンタイムだったんだって、パパが教えてくれた。でも、今は塾とかあるから、ムリです。その時間、マジ見れね~。
子供は月曜から土曜までキッチリ勉強させ、日曜だけノンビリって、えらい人が決めてるのかも?
きっと、何処かのえらそうな人がえらそうな顔して、子供が知らない場所で決めてるんだ。
ずるいよね。
小学六年生になった今はそうでもないんだけど、四年生だった頃は、アニメこそ命のボクでした。
土曜の夜は気合入れたよ。できるだけ宿題とかサッサと終らせて、思いっきり日曜朝のオアシスを楽しむ為に。
でも時々、ついてない日があるんだ。
例えば、パパとママが何かの理由でケンカを初めて、ず~っとギクシャクしてる週末とかね。
たとえば、お休みの筈の土曜日に会社へ出かけたパパが、お酒を飲んでグデングデンに酔っ払い、夜遅く帰ったりするとさ……もう最悪です。
次の日の、ボクのオアシス、テレビの前ですごす大事な時間は、ムチャクチャになっちゃう。
寝るのが遅い割に、そんな時のパパって、けっこう早起きするのね。
で、ジョギングするんだ、ボクをつれて。
46才になってたパパは髪の毛はかなりイッてたけど、わりと痩せてて、5キロくらい走るの平気だった。
ボクがからかうと、「年を取るほど、男はお洒落になるべきだ」って言い返すのがいつものパターンでさ。
ま~、カッコつけちゃって。
その分、たしかに頑張ってたと思うよ。塩分とか、カロリーとか、食べる物にすごく気を使っていたし、運動だって欠かさなかった。
時々、仕事の付き合いで酔っ払いのは、好きでやってた訳じゃなさそうだし……
たった一つの例外が煙草。
ドコへ行ってもモクモクと……ヒンシュクもんだよ、ホント。時代遅れの趣味だって子供のボクでも知ってたけど、ど~しても止められないんだ。
ジョギングコースの真ん中、歩道橋をこえた先にあるコンビニの自動販売機で、セブンスターを買うのが決まりでさ。
煙草の販売機なんて、もうウチの近所にはソレ一台しかない。
で、その側に来ると、パパはいつもボクに競争しようって言う。もしボクが先に自動販売機の前まで行ったら、300円のご褒美をもらえるんだ。
小学四年の頃のボクには、300円はけっこうデカい。
自販機の近くに置いてあるガチャガチャのでっかいヤツで使っちゃうのが楽しみだったんだよ。
何か良いのが当るンだよね、そういう時に限って。
で、それなりにテンション上げて帰ると、シビアな現実が待ってる訳。
ボクん家は、よくある3LDKのマンションで、朝、玄関のドアを開けると、お味噌汁を温めるいい匂いがするの。
あと、温泉卵が朝ご飯の定番。トマトたっぷりのサラダがつくけど、意外に和風だったりする。
で、ボクとパパが一緒にシャワーを浴びた後、ダイニングキッチンのテーブルに家族三人が座る。
ケンカの次の日はね、そっから静かなんだよ、すごく。
ご飯の間はテレビをつけないし、パパもママも何も言わずモクモク食べてる。
ボクが時々、二人の顔を見ても、どちらも下向いてさ、目を合わせないようにしてるんだ。
なんか空気がピ~ンとはりつめた感じっちゅうか……モクモク、ボクも食べるんだけどさ、味なんてわかんない、全然。
ここでイチオ~、言っときますけど……
いつもはパパとママ、すげぇ仲良しだったんだよ。もう、仲が良すぎるくらいの感じでさ。
年が12才離れてて、昔、ママはパパの会社の部下だった。難しい仕事を、二人で力を合わせて、いくつもやり遂げたんだってさ。
お互いに好きになって、でも長い間、二人とも口に出せなかった。なぜって、その頃、パパ、他の人と結婚してたから。
その人とは子供ができず、理由は知らないけど、長い間、別居してた。で、ボクを妊娠したママがリャクダツしたとか。
色んなところで、ひどく責められたみたい。
ママは会社を辞めるしかなかったし、それ、当然の報いだと思ってた。どんな罰を受けても仕方ないってね。
他にも子供に判らない厄介事が、一杯あったらしいよ。
そのせいかな?
時々、外出する夜は、ボクの前で手をつなぐの。そんなセキララにホットな感じ、演出してたんだけどね。
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