ファイナルアンサー、Mrガリレオ?

ちみあくた

文字の大きさ
上 下
3 / 6

しおりを挟む


 ガリレオはサグレドの胸を掴み、激しく全身を揺さぶる。
 
 真相を語るまで、したり顔のソバカス野郎を離さないつもりだったが、思惑通り事は運ばない。
 
 グッと呻き、サグレドが白目を剥いた。急に体を揺らした勢いで、リンゴが喉へ詰まったらしい。
 
「あ、オイ……君、大丈夫?」

 サグレドに答える余裕は無い。

 背筋をピ~ンと伸ばした直後、真後ろへ倒れて行く。
 
 ガシャン!
 
 童顔をした青年が広場の石畳の上に倒れると、金属的な音が響いた。間もなく両耳から白煙が漏れ、薄く開いた目の奥で稲妻に似た雷光が瞬く。
 
「……こいつ、人間じゃないのか!?」 
 
 抱き起そうとし、ガリレオは束ねた赤毛の合間に、小さなスイッチが隠されている事を知った。

「何だ、こりゃ? まるで機械仕掛けのカラクリ人形……カーニバルの見世物じゃあるまいし……」

 愕然とする内、サグレドの異常に周囲も気づいた。こちらを指し、人殺し、と叫ぶ奴までいる。

「違う、勘違いするな。僕は何も手荒な真似をしていない!」

 抗議も空しく、先程、聖堂で浴びた以上に冷たい視線が降り注ぐ。

 ガリレオは慌ててドゥオモ広場から逃げ出そうと試みるものの、時、既に遅し。
 
 裾の長い漆黒の衣を身にまとう男が、重武装の衛兵を引き連れ、素早くガリレオの前へ立ち塞がる。

「動くな、狼藉者!」

「……僕、ピサ大学の学生です。話を聞いてください。そこに倒れている男とは、先程、知りあったばかりで」

 鋭い槍の穂先が胸元へ突きつけられ、ガリレオは途中から何も言えなくなった。

「我が名はシンプリチオ。恐れ多くも、ローマ・カトリック教皇より直々に使命を賜る異端審問官だ」

 黒衣の男が教皇直属と聞いた途端、広場は一気に静まり返る。この時代の宗教的権威が携える威光は、まさに圧倒的と言えよう。

 強張った顔で直立不動のガリレオを冷笑し、シンプリチオは、ピクリとも動かないサグレドの身体を爪先で小突いた。
 
「我々は、この男をずっと探しておった」

「えっ?」

「目くらましを用い、戯言で人心を謀る危険な詐欺師である。如何なる幻を見せられても決して信じてはならぬ」

「つまり、お尋ね者なんですか?」

「いかにも」

「……彼、確かに奇妙な事を口走りましたが、僕には只の詐欺師と思えません」

「ほう、学生の分際で、私へ進言するに足る根拠があるか?」

「サグレドは深遠な知識の持ち主である上、体も、その……人間離れしていて」

 説明に困ったガリレオは倒れている男へ手を伸ばし、赤毛の合間に覗くスイッチを押した。

 サグレドの全身が震え出す。

 そして、その頭がいきなり二つに割れ、金属と思しき接合面から半透明なカプセルが覗いた時、広場全体を包む巨大な放電現象が発生した。
 
 ガリレオに避ける暇など無い。
 
 閃くアーク放電の電弧へ触れた途端、あっという間に失神してしまったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ロボット育児日記~俺とウサ子の成長記録~

鞍馬 榊音(くらま しおん)
SF
遠い未来のお話。環境破壊の進んだ世界で、純人間の桜木霞の前に現れた1人(1匹?)の幼女ウサ子。ひょんな事から、ウサ子を育てることになったのだが。ほんわかラブコメ。 ※再掲載となります。

クロノ・コード - 成長の螺旋 -

シマセイ
SF
2045年、東京。16歳になると国から「ホワイトチップ」が支給され、一度装着すると外せないそのチップで特別な能力が目覚める。 ハルトはFランクの「成長促進」という地味な能力を持つ高校生。 幼馴染でSランクの天才、サクラとは違い、平凡な日々を送るが、チップを新たに連結すれば能力が強くなるという噂を知る。 ハルトは仲間と共に、ダンジョンや大会に挑みながら、自分の能力とチップの秘密に迫っていく。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

kabuto

SF
モノづくりが得意な日本の独特な技術で世界の軍事常識を覆し、戦争のない世界を目指す。

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
 脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

レベルアップしたらステータスが無限になった

wow
ファンタジー
レベルが上がるのが遅すぎると追放された主人公にシステムメッセージが流れ驚愕の事実が通達される。

処理中です...