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階段

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駅のホームへ続く階段。
私はそこを降りる時、最後の一段を、いつも踏まないようにしている。

駅のホームへ長く続いた規則的な一段一段。それを、ただひたすらに無心で足を重力に任せて素早く、駆け下りる。
そのために私はまず、体を前のめりに、左足を地面から離した。

ローファーと階段が急いでぶつかり、カカカカカカカカ…と、音が続く。
太ももにヌッとまとわりつくスカート、背中で揺れる鞄。教科書の一冊一冊がゴスゴスとカバンの中を擦れながら上下する。1つに上でまとめあげている髪の毛が、頭の上をパサパサ叩く。ハイソックスとスカートの間はチクチク風が刺すのに、首元はお気に入りの赤いマフラーでジーンとあたたかい。首の周りだけ時が止まっているようなのに、首の中の血管の中、脈は徐々にドクドクと速く速く速く。

グワーンと視界に、階段の一段一段が後ろへ吸い込まれていき、ホームの面積が階段の面積より広くなる。
ついに階段の二段目にきた左足に、グッと力を入れ、パッと膝を伸ばす。右足がホームの地面を捉えた時、冷たく冷たく冷えきったつま先に、ジンッときた衝撃。それが、頭のてっぺんまで届くのに、そう時間はかからなかった。



誰もいない静かなホーム。
今日も一日お疲れ様でした。

私は夕焼け空にホォって、白い息を吐く。
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