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16 ウミガメからのイメージ
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権子(のりこ)の真紅の領巾(ひれ)が、まさにウミガメの鼻づらに届こうかというとき、急に眠気が襲ってきた。
「ま、まぶたが、重い… み、みんなは…」
視線をウミガメから離して、みんなの一人ひとりに転じてみる。
両手で両目をおおっている者、右手でまぶたをこすっている者、両腕をだらんとしてウトウトしている者など、みんな、眠そうだ。
「なんとかして、あのウミガメさんから、なにかを…」
権子が右手を、ウミガメに近づく領巾のほうに差し伸ばす。
その瞬間、あるイメージが脳内を駆けめぐった。
――
浅瀬の海面から、ぷくっと頭を上げてみれば、前方は、灰色の砂浜。その先は、岩だらけの世界。
遠方に、緩やかな円錐状の小高い山が望まれ、山頂に細くたなびく煙が見える。
左右の前ヒレで浅瀬を押しつけて、体全体を前に押し出す。
大きな音に首をすくめる。
すぐ右のほうの岸に、大きなクジラのような物体が乗り上げたようだ。
バシャバシャという音とともに、二本足の緑色のサルみたいな動物の群れが、岸辺にたくさん上がっているのが見えた。
群れが向かっていく先には、白化したサンゴ・テーブルを何段も重ねたような、白亜の構造物。
その構造物の最上部に、自然界では、考えられない、幾何学模様が見える。
「NEW ATLANTIS provisional government」
その左のはるか上空に、緑色のオニオコゼのような魚が、頭上の擬餌突起を猛烈な勢いで振り回しながら、何匹も飛び回っている。
――ここで、大切な卵を産むわけにはいかない!――
日本語ではない、英語でもない、いままで聞いたことのない言語で、メッセージが権子の脳内を貫いた。
……ニュー・アトランティスの暫定政府に、なにかが起きてる!…
ここで権子の意識は、途切れた。
「ま、まぶたが、重い… み、みんなは…」
視線をウミガメから離して、みんなの一人ひとりに転じてみる。
両手で両目をおおっている者、右手でまぶたをこすっている者、両腕をだらんとしてウトウトしている者など、みんな、眠そうだ。
「なんとかして、あのウミガメさんから、なにかを…」
権子が右手を、ウミガメに近づく領巾のほうに差し伸ばす。
その瞬間、あるイメージが脳内を駆けめぐった。
――
浅瀬の海面から、ぷくっと頭を上げてみれば、前方は、灰色の砂浜。その先は、岩だらけの世界。
遠方に、緩やかな円錐状の小高い山が望まれ、山頂に細くたなびく煙が見える。
左右の前ヒレで浅瀬を押しつけて、体全体を前に押し出す。
大きな音に首をすくめる。
すぐ右のほうの岸に、大きなクジラのような物体が乗り上げたようだ。
バシャバシャという音とともに、二本足の緑色のサルみたいな動物の群れが、岸辺にたくさん上がっているのが見えた。
群れが向かっていく先には、白化したサンゴ・テーブルを何段も重ねたような、白亜の構造物。
その構造物の最上部に、自然界では、考えられない、幾何学模様が見える。
「NEW ATLANTIS provisional government」
その左のはるか上空に、緑色のオニオコゼのような魚が、頭上の擬餌突起を猛烈な勢いで振り回しながら、何匹も飛び回っている。
――ここで、大切な卵を産むわけにはいかない!――
日本語ではない、英語でもない、いままで聞いたことのない言語で、メッセージが権子の脳内を貫いた。
……ニュー・アトランティスの暫定政府に、なにかが起きてる!…
ここで権子の意識は、途切れた。
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