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43.平凡なる超えし者、天使捕獲計画に乗り出す……

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 天使を捕まえる。

 ここで問題となるのは、「天使とは何を指すのか」だ。

「まさかとは思うけど、神の使者を捕まえるって意味じゃないよね?」

 マジ天使狙いじゃないよね? 当然。
 カイランがどこまで事情を知っているかわからないので、私は事情を知らない体で話をしてみる。

 でも、まあ、愚問だよね。
 キルフェコルトが指示したなら、間違いなく、兄アクロが言っていた「天使プロジェクトの天使」のことだろう。
 あの王子、かなり気にしていたから。私も気になってはいたし。

 一応おさらいとして、大まかに思い出してみよう。

 「天使プロジェクト」とは、お兄ちゃんがアクロディリアの光魔法を使って始めた救済活動だ。
 夜中に天使を装って病人の治療に向かう、ってのが活動内容だ。

 つっこんだ実態まではわからないし、詳細仔細も知らないが、行為だけ見れば「天使プロジェクト」という名前には負けていない行動だと思う。

 無償の奉仕、見返りを求めない善意。

 神だって信仰心を求め、地獄だって金次第で顔色を変えるのに、本物の天使の面目を丸つぶしにするような尊いことだと思うよ。

「クローナから聞いている。おまえはあいつの傍にいるんだろう? だったらそれなりに知っているはずだ。あいつの傍にいれば、嫌でも王族の情報が耳に入るだろう」

 おっと。事情を知らない体は、やぶから蛇を誘い出してしまったか。
 この辺のやり取りを続けると私の素性を話さざるを得なくなる。とっとと話を進めた方がよさそうだ。

「カイランは……というか、多くの人は知らなくていいことばっかりだからね、あの辺の事情は。それは君もわかってるはずだけど」

 じゃなければ、耳を借りてまで声を潜める理由はないだろう。

 天使周りの情報が広まるのは、誰にとっても得はない。
 そのくせ情報自体はかなり貴重な部類に入る。
 少々頭の回る情報屋なら、小銭でも大金でも、値段を付けても付けなくても、扱いに困る難しいネタだとすぐわかるだろうし。

 情報が広まれば、天使は活動を控えるだろう。
 もしかしたら、活動自体をやめるかもしれない。

 そうなれば、自分のところに天使が来ないのは情報が広まったから、と考える病人が必ず出てくる。
 苦しい思いをしている人ほど、八つ当たりに近い恨みは募っていくだろう。

 回りまわって情報を売った奴にどんなツケが巡るのか、本当にわからない。まあ少なくとも良い方に転ばないことだけは確定だよね。

 だから、結局誰も得をしないってことになる。
 天使の正体がはっきりわかるならまだしも、足がかりとか痕跡などの情報だけでは、小銭で自分の命を売ることになりかねない。

「フン。まあいいだろう」

 カイランがどこまで知っているのか、どこまで事情を把握しているのか。
 さすがにそこまでは察することもできないが、どれだけデリケートな案件かを理解しているなら、それでいい。
 まあ、これでプロの悪党だからね。甘いけど。

「ちなみに聞くけど、私のことってキルフェコルトは知ってるの? 話した?」

「いや。クローナが伏せたから俺も話を合わせた」

 お、でかしたクローナ。カイランくんもファインプレーだわ。

「だがあの男は切れ者だ。おまえがどんな生活をしているかにも寄るが、案外シッポくらいは掴んでいるかもしれんぞ」

 うーん……ありえるなぁ。
 確かにあの王子様、筋肉がすごくて偉そうなだけの王子じゃないからなぁ。

 でもまあ、大丈夫だろう。
 いざとなったらいつでも逃げられるし。

「シッポを掴まれるくらいなら平気かな。実際掴まれたこともあるし」

「あ?」

「お、来た来た」

 妙齢のウエイトレスが気風よく「お待たせ!」と、料理を運んできた。

 今日のメインは、ビーフシチュー的な重めのスープだったようだ。あとパン、それと別に注文したなんかの肉のフライ……トンカツみたいなのがやってきた。うん、うまそうだ。

「とりあえず食おうよ。いただきまーす。うまー」

 腹の中で騒いでいる虫を黙らせるべく、私はスプーンを取った。




 食べながらポツリポツリと、カイランはこれからのことを話し出した。

 そして私は思った。

「つまり、要するに、勘? 勘で今日に賭けたの?」

 テストで言えば「ヤマを張った」とか、そういうこと?
 いや、そっちの方がまだ的中率は高いだろう。テストには大事な部分が出題されるんだから、予想くらいは充分立てられる。

 でも、こいつは、この場合は、かなりアレだ。

「今夜天使が現れるかもしれない、というカイランの勘で、私を呼び出したの?」

 兄アクロが始めた「天使プロジェクト」なので、天使の正体は兄アクロだと知っている。
 もちろんキルフェコルトも知っていることだ。

 だから、今回捕まえようとしているのは、いわゆる後追いの正体不明人物。
 便宜上「天使2号」とも呼ぶべき存在である。

 神出鬼没というか、二週間以上前に一回だけ現れたとか、そんな話だったはずだ。
 天使2号の活動が少ないおかげで、あまりにも手がかりがなさすぎて捜査しようがないとか、そういう話で続報がまったくなかった。

 これまた耳を疑うあてずっぽうに、しかしカイランは真面目な顔で言ってのけた。

「俺の勘は良く当たる。何度命を助けられたかわからないほどにな」

 でも勘だろ。

「はずしたこともあるでしょ?」

「ある」

 おい。堂々と言うな。

「だが最初に言ったぞ。失敗はできない。二度目はないんだ。向こうに警戒されたら二度と現れない可能性が高い」

 ……まあ、そうだろうねぇ。

 天使2号が「天使プロジェクト」になぞって活動しているなら、王都にこだわる理由はない。
 治す相手は誰でもいいし、赴く場所もどこでもいいのだ。
 営利目的じゃないなら本当に神出鬼没にどこにでも降り立つし、いつやめるかも本人次第だ。

 というか、「自分の正体を明かしたくない、でも病気に苦しむ人を治す力を無駄にせず使いたい」という犯人像が透けて見えている。
 バレたら大変なことになるってのもわかっているのだろう。
 仕組みを作ったお兄ちゃんは当然として、その後追いも。

 正体がバレるリスクを負うくらいなら、もう現れない。
 それくらいの慎重さは持っていてもおかしくない。というか持ってないと続けちゃダメ。そんなマヌケじゃバレるの時間の問題だから。

「で? そんなカイランの勘に付き合えっていうの?」

「そうだ」

 おい。まっすぐだな。自信満々だな。根拠のない勘のくせに。

「今日は暗い」

「ん?」

「見えない月が囁いている。それが俺の勘だ。これも人狼の血のせいかもしれん」

 月ねえ……
 確かに月は魔力を左右するとか、そういう説は聞いたことあるけどさぁ。

「月は見えない。星明りも届かない。今日は暗い夜だ。闇夜に乗じるには最適だろう? おまけに俺の勘も働いている。天使が現れるかどうか確証はないが、こんな夜は何かが起こるものだ」

 ……雨降りそうなだけじゃん。思わせぶりなこと言いやがって。

「カイラン、私の立ち位置ってわかる?」

「立ち位置? ……そうだな、国の者でもないし冒険者でもない、ましてやただの人間でもない。よくわからんな」

 そう。そうなのだ。それだけわかっていればいい。

「国の法も人の善悪もあんまり気にしてないんだ。だからどう答えてもここでどうこうはしない。
 天使を捕まえたらどうするつもりか、カイランの本音を教えてくれる?」

 改まって聞いた私に、カイランはまったく躊躇なく答えた。私のトンカツ的なものにフォークを刺しながら。一言くらい断れよ。……勝手に注文した身としては何も言えないか。

「王子と約束した。しばらく王都に留まり、天使を捕まえろと。それができれば俺の仲間の指名手配を取り消すと。俺自身のは変わらないらしいがな」

 ほう。いわゆる司法取引的なやつか。

「まるっきり信じているわけではない。しかし貸しを作ると思えば無駄でもあるまい。もちろん用済みになったら消される心配もしているが、俺一人ならどうとでも逃げられる。
 ――おまえが敵に回らなければな」

「あ、それは大丈夫。私カイランくん嫌いじゃないから。君は生きてた方がいいよ」

 イケメンだしね。貴重なイケメンが減るのは嫌だ。

「信じない」

 あ、そーですか。

「信じたいがな」

 どっちでもいいっつーの。

「天使については、俺は何もないぞ。話を鵜呑みにするなら、いてくれた方が嬉しい人は多いとは思うが。それくらいだな」

 そっか。

「私は天使の味方なんだよね。心情的に」

「ほう?」

「だから、カイランが天使に手荒な真似をするなら、それは断固阻止するね」

 無表情を貫いていたカイランが、笑った。フゥー。ニヒルでかっこいいー。

「ならば俺の傍で俺の動向を見張るしかないな」

「そうなっちゃうね」

 カイランの勘がどの程度の精度なのかわからないし、あんまり当てにするつもりもないけど、一晩くらいなら付き合ってもいいだろう。

「天使を捕まえた後は、王子に引き渡すことになるだろう。この国の王族に渡すのであれば、天使の処遇はそう悪い結果にはならないと思っている」

「そうね。私もそう思う」

 キルフェコルトが、天使を捕まえてどうするか。
 色々悪い想像もできるが、あいつ自身は「天使プロジェクト」に乗り気だったからね。

 あいつが天使と接触したい理由って、後押しや支援をしたいからだと思う。
 ならば確かに、引き合わせたところで悪い結果にはならないだろう。
 もしもの時は、私がどうにかしてもいいし。

 ……ま、私が本当に怖いのは、カイランが天使に手荒なことをするしないってところじゃないんだけどね。

 天使2号が女性だと仮定して、超イケメンのカイランに一目惚れして勢いでだーっと盗賊団落ちってパターンが一番怖いんだけどね。

 カイランの盗賊団のあり方とかやり方は、だいぶ行き過ぎちゃいるけど、それでも正義に近いからね。
 天使やってる動機とか思想とかと、意外と共通して共感しちゃう気がするんだよね。

 私の考えすぎならそれでいいんだけどね。
 というか、考えすぎであってほしいよね。




 まだ時間が早かったので、ゆっくりと食事してギルドを出た。
 その頃には利用者の喧騒も止み、酔い潰れてテーブルに突っ伏していたり、床に転がって寝ている有象無象たちが夢のあとのごとく残るだけだった。
 よくもまあここまで潰れるほど飲むよね。二日酔いとかつらいだけだろうに。

「で、具体的な作戦は?」

 ギルドを出た途端、夜の帳を感じる。
 しんと静まる暗い城下町には、人気はまったくない。暗躍するにはいい頃合いだね。

「罠を張ろうにも王都は広い。単純な作戦の方が動きやすいのは確かだが……」

「まあ手が足りないよね」

 二人で王都全域をカバーするのは、さすがに難しい。

「城と魔法学校、貴族の屋敷なんかは除外するとしても、それでも現実的とは言えないな。しかも俺は王都の道に詳しくない」

 私も詳しくはないなぁ。大陸や国の地図はあっても、町の地図は本になかったし。

「そこでおまえの出番だ」

 うわ……カイランくん、無茶振りするつもりでも呼んだのかよ。

「おまえの力でなんとかならないか?」

 やっぱりか。そうか、そりゃ呼ぶわな。
 まあ、色々考え付くけど。

「一番簡単なのは、糸を張ることかな」

「糸? この前、俺たちを吊るし上げたアレか」

 そう、それだ。

 天使の狙いは病人だ。……これは言い方が悪いな。

 天使の狙いは、病気だ。
 つまり出没する場所は自ずと限定されてくる。

「病院の周りに糸を張っておいて、それに触れたら私に伝わるって罠を設置するわけ。もちろんはずれ……標的以外が触れることもあるだろうけど、こんな夜中に病院の周りをうろつく奴なんてそうはいないでしょ。
 目が届かない広域を無理に見張るよりは現実的じゃない?」

「そうだな。原理がわからんが、おまえがそれができるなら、それがいい」

 うん、じゃあ、これでいいか。

「あと、わかってると思うけど、標的かどうかを見分ける方法がない」

 天使と言っても便宜上で、正体はきっと人間だ。マジ天使を捕まえようって話じゃないからね。
 普通の人間が天使やってるなら、どうにかして見分ける方法が必要だ。
 夜中に病院付近をうろついているだけの奴を捕まえるのでは、どうとでも言い逃れができてしまう。
 多少言い訳が嘘臭くても、別に罪を犯したわけじゃないしね。拘束する理由は弱い。

 まあ私は、やっちまった後で謝ればいいと思うけど。
 でも極力無関係の人は巻き込みたくないとも思う。

「確定とは言えんが方法はある」

 え、ほんとに?

「どうやるの?」

「近づけばわかる。相手がやっていることは光魔法の行使だ。人は多かれ少なかれ系統ごとの魔力を持っている。それを察知すればいい。
 光の属性持ちは極端に少ないから、ただの一晩で病院に近づく光属性持ちが二人も三人も出てくるわけがない」

 つまり、だ。

「魔力の属性を察知できるの?」

「できる。そういう技術があるんだ。人も人狼も関係なくな」

 マジで? すごいな。とんでもなく初耳だったわ。

「私は、魔力自体が強い人はなんとなくわかるんだけど」

「若干特殊なやり方だからな。精度が上がるとか性能が高まるとか、そういう話じゃない。新しい技術だ」

「へえ、すごいね。教えてよ」

「断る。……と言いたいところだが、おまえならいいか。悪用するなよ」

 悪用してるのはきっと君だぞ。盗賊が言うことか。

「難しい技術だが、おまえなら一晩あれば充分習得できるだろう。今晩、見張っている間に教えてやる」

 え、マジで? やったー。

「じゃあ急ごうか。当たりくらい付けてるでしょ?」

 準備を怠る悪党なんて、行き当たりばったりの小物だからね。
 甘いけどその道ではプロであるカイランだ、王都に潜伏している間にこの国にある病院を下見しているはずだ。

 繊維の罠を張るのは遠隔操作でもできるが、病院周辺の簡単な地形は私も頭に入れておきたい。
 追いかけっこになったら確実に差が出るからね。
 直接行って、周囲の様子を見ながら罠を張るのがベストだろう。

「多いぞ。全部回るか? 大きいところだけでもいいと思うが」

「チャンスは二度ないんでしょ? ここで手を抜く理由がないよ」

 やる以上、できる手は打っておくべきだ。
 出没情報が少ないせいで、天使2号の行動パターンもまったくわからないのだから、掛けられる保険があるなら掛けておくのがベターだろう。

「では行こう。遅れるなよ」

 足音もなく滑るように走り出したカイランを、私は追う。







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