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一日目
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これから始まる物話は異世界に飛ばされた父親が男手一人で慣れない土地にて子育てに奮闘する話である。
俺の名前は前川和弘。歳は二十八。元の世界の国、日本では何処にでもいるしがないサラリーマンをしていた。
一応結婚の経験はあるのだが、妻は一年前に交通事故で亡くなっており、現在は一人娘となる一歳三か月の利菜と二人で暮らしている。
異世界に来てもう五日。慣れたと言えば嘘になるが、この世界に来た当初に比べれば、気持ち的にも少しは落ち着くこと出来た。
この世界の事について教えてもらった時にメモ代わりに使ってくれと一冊の日記帳をもらったので、この機会にこれまでの経過について書いておこうと思う。
一日目
確かその時が来たのは休日の午前のことだった。いつものように利菜の声で目を覚ました俺は利菜の朝食の準備の為、レトルトパウチのおかずを温めながら、子供番組に首ったけになっている利菜の姿を眺めていた。
最近では「チータ」という言葉にはまっているらしく、その時もテレビを見ながら「チータ」という言葉を連呼していたのを良く覚えている。
パウチが温まったことを確認した俺は利菜を食事用の椅子に座らせ、一緒に朝食を食べた。最近ではこぼしながらも自分でご飯を食べるようになってきた利菜の姿にほっこりしたのもつかの間、食後には恒例ともいえる利菜と俺の戦いが始まった。
その戦いとはオムツ交換である。利菜はこのオムツ交換が大嫌いで、俺が新しいオムツを取り出すと、利菜は私に捕まってなるものかと部屋中を走り回りながら逃走を図る。
もちろん大人の俺から逃げられるはずもなくあえなく捕まってしまうのだが、本当の戦いはここからである。
私に捕まり横にされた利菜はウナギや蛇のようにくねくねと青いおしりをくねらせながら必死の抵抗を図ってくるのだ。
正直おしっこなら別におしりをいくらくねらせても良いのだが、これがうんちの時は本当に大変だ。一瞬でも油断すれば床や服にうんちが付着してしまう。
その日は朝からたくさんのうんちをしていた利菜。当然抵抗は激しく「イヤァ!」「ナイナイ!」とおしりを浮かし、両足をばたつかせていた。
負けてなるものかいと俺も両足を左手で固定し、おしりを持ち上げるようにしてうんち塗れのおしりを拭いていた。
毎日の日課である俺と利菜の戦い。そんな日常的な光景であるはずだった父と娘のやり取りはこの日を境に大きく変わっていくことになった。
依然泣きわめきながら抵抗をする利菜のおしりを何とか綺麗に拭き、後は新しいオムツを穿かせれば終わりというところまでいった時、俺と利菜を包むように眩い光が発生した。
そこで私は一度意識を失ったのだが、目を覚ました時には床に見たことのない文様のかかれた見知らぬ場所で大の字になって寝ていた。
私は咄嗟に利菜が心配になり姿を探したのだが、当の本人は私から離れた場所で楽しそうに「タッチ」と言いながら床をぺシぺシと叩いていた。親の心子知らずとはこのことである。
オムツを穿かしている途中に謎の光が発生したからだろう。よく見ると利菜は半ケツ状態だった。ひとまず半ケツ状態の利菜のオムツを直し、手にもっていたズボンを穿かせた俺は利菜を抱っこしながら辺りを見渡した。
正方形の部屋には見たことのない文字がお経のように部屋全体に書かれていた。利菜はそれが気になったのだろう。壁を指さし「アッチ!」と何度も催促してくる。
もちろん娘にそんな得体の知れない物を触らせるわけにもいかず、早くこの部屋から出ようと出入り口と思われる扉の前まで向かった。
恐る恐る扉を開けると、目の前には甲冑を身に纏った女性が扉の前で片膝を着き、頭を下げて待っていた。
あの時の受けた衝撃は一生忘れることは出来ないだろうな。なんせその女性は俺の事を勇者なんて呼ぶんだから。
「お待ちしておりました勇者様」
俺が見知らぬ場所に娘と共にきて言われた始めての言葉。その時はもう笑うしかなかったよね。あぁ一般人に仕掛けるタイプのドッキリかぁ! なんて思ってたぐらいだから。
まぁ実際はドッキリでも何でもなく現実の話だったみたいで、今ではこうやってこの世界の事について必死にメモをとっているわけだが、その当時はいつネタばらしがあるのだろうとか、隠しカメラは何処にあるのだろうって年甲斐もなくワクワクしていた訳なのですよ。あの当時の俺はかなり滑稽に映っていただろうな。今更ながら恥ずかしい。
この世界に来て初めて会った女性の名前はエインファルトと言う名前だった。ボーイッシュな金髪のショートヘア―のエインは「ついて来てください」と当時ドッキリだと疑っていなかった俺を必要性があるのか疑問に感じるほど大きな扉の前まで案内してくれた。
この部屋でとうとうネタばらしか・・・・なんて思っていた俺のワクワク感が利菜にも伝わったのかは知らないが、利菜も案内の道中、やたらと「チータチータ」「アノネー、チータネー」と俺には理解不能な言語を連呼しながら俺の顔で粘土遊びをしていた。
エインの言葉で扉を開かれると、目の前に一直線に敷かれている深紅のカーペットが目に入った。そしてその奥には黄金に輝く玉座に座っている女性の姿があった。
いやぁーテレビってすげぇな。一般人相手にここまで凝ったことをするのかね。
これが当時、その光景を見た時に俺が最初に思ったことだ。多分だがその時の俺はかなり目を輝かせていたと思う。
そろそろネタばらしかと思い、その時を楽しみにしながらエインの促すままに王女役と思われる女性の前まで行ったのだが、ネタバレなどある訳もなく、王女は自己紹介を始めた。
王女は名前をマリーノ=カレンと名乗ったマリーナ王国という国の王女をしているらしい。王女は自己紹介の後、深々と頭を下げて事の経緯について説明をしてくれた。
王女の説明を聞く限り、どうやらこの国は現在魔族の襲来によって未曽有の危機に瀕しているとのことだった。このままでは魔族によって国を滅ぼされてしまうと思ったカレン達は古来より伝わる勇者召喚というものをしたらしい。
そしてその勇者召喚で召喚されたのが俺と利菜だったという訳だ。
もしこの世界が本当に異世界であり、魔王という存在が実在する世界であると知っていれば俺はこの申し出を即座に断っていただろう。
しかしその時の俺は何処かのテレビ番組がやっているドッキリだと思い込んでいた。そんな俺は何様のつもりなのかテレビの進行を妨げないように二つ返事で答えてしまった。
俺の返事を聞いたカレンは喜びや安堵等を混ぜ合わせたような顔を見せた後に、煌びやかな装飾の施された真っ白な鞘を持つ剣を目の前に渡してきた。
話を聞く限りその剣は代々勇者と呼ばれる者達が使っていた聖剣らしく、これまでの勇者の力が蓄積されており、新たな勇者はその剣を手に持つだけでこれまでの勇者の力を手にすることが出来るチートアイテムらしい。
手の込んだ設定を作っているなとしか思っていなかった俺は臆することなく剣を受け取ると鞘から剣を抜いてみた。
どんなギミックをこの剣に仕込んでいるのだろう、なんて思っていた俺であったが、鞘から剣を抜いても何も起きず、ひたすら静かな時が流れていく。
音や光など何かしらのギミックが仕込まれていると思っていた俺が何も起きないことに少々落胆した時。
「そんなはずは・・・・伝承では勇者様が聖剣を携えることで力の譲渡が行われるはずなのに」とカレンが声を震わせながら焦りを見せた。
演技が凄い上手い子だなと緊張感なく感心していた時、これまでお気楽に物事を考えていた俺の度肝を抜く事態が起きてしまった。
あまりに鬼気迫る演技を見せるカレンに見入ってしまった俺は抱っこしている利菜が剣に興味を持ち始めていたことに気付いていなかった。
もちろんカレンのは演技ではなく、本当に焦っていたのだと後に気付くことになったのだが。
気付いた時には利菜が既に剣の刃に触れてしまった状況であった。
もちろん慌てて利菜の手を剣から離そうとしたのだが、利菜が触れた瞬間、聖剣から神々しい光が辺りに放たれた。
その時に俺は初めて自分の置かれている状況がドッキリなどではなく現実として起こっていることなのだと理解した。
何故なら光を放っているのは聖剣だけでなく我が腕の中にいる娘、利菜の身体からも眩いほどの光が放たれていたのだから。
俺の名前は前川和弘。歳は二十八。元の世界の国、日本では何処にでもいるしがないサラリーマンをしていた。
一応結婚の経験はあるのだが、妻は一年前に交通事故で亡くなっており、現在は一人娘となる一歳三か月の利菜と二人で暮らしている。
異世界に来てもう五日。慣れたと言えば嘘になるが、この世界に来た当初に比べれば、気持ち的にも少しは落ち着くこと出来た。
この世界の事について教えてもらった時にメモ代わりに使ってくれと一冊の日記帳をもらったので、この機会にこれまでの経過について書いておこうと思う。
一日目
確かその時が来たのは休日の午前のことだった。いつものように利菜の声で目を覚ました俺は利菜の朝食の準備の為、レトルトパウチのおかずを温めながら、子供番組に首ったけになっている利菜の姿を眺めていた。
最近では「チータ」という言葉にはまっているらしく、その時もテレビを見ながら「チータ」という言葉を連呼していたのを良く覚えている。
パウチが温まったことを確認した俺は利菜を食事用の椅子に座らせ、一緒に朝食を食べた。最近ではこぼしながらも自分でご飯を食べるようになってきた利菜の姿にほっこりしたのもつかの間、食後には恒例ともいえる利菜と俺の戦いが始まった。
その戦いとはオムツ交換である。利菜はこのオムツ交換が大嫌いで、俺が新しいオムツを取り出すと、利菜は私に捕まってなるものかと部屋中を走り回りながら逃走を図る。
もちろん大人の俺から逃げられるはずもなくあえなく捕まってしまうのだが、本当の戦いはここからである。
私に捕まり横にされた利菜はウナギや蛇のようにくねくねと青いおしりをくねらせながら必死の抵抗を図ってくるのだ。
正直おしっこなら別におしりをいくらくねらせても良いのだが、これがうんちの時は本当に大変だ。一瞬でも油断すれば床や服にうんちが付着してしまう。
その日は朝からたくさんのうんちをしていた利菜。当然抵抗は激しく「イヤァ!」「ナイナイ!」とおしりを浮かし、両足をばたつかせていた。
負けてなるものかいと俺も両足を左手で固定し、おしりを持ち上げるようにしてうんち塗れのおしりを拭いていた。
毎日の日課である俺と利菜の戦い。そんな日常的な光景であるはずだった父と娘のやり取りはこの日を境に大きく変わっていくことになった。
依然泣きわめきながら抵抗をする利菜のおしりを何とか綺麗に拭き、後は新しいオムツを穿かせれば終わりというところまでいった時、俺と利菜を包むように眩い光が発生した。
そこで私は一度意識を失ったのだが、目を覚ました時には床に見たことのない文様のかかれた見知らぬ場所で大の字になって寝ていた。
私は咄嗟に利菜が心配になり姿を探したのだが、当の本人は私から離れた場所で楽しそうに「タッチ」と言いながら床をぺシぺシと叩いていた。親の心子知らずとはこのことである。
オムツを穿かしている途中に謎の光が発生したからだろう。よく見ると利菜は半ケツ状態だった。ひとまず半ケツ状態の利菜のオムツを直し、手にもっていたズボンを穿かせた俺は利菜を抱っこしながら辺りを見渡した。
正方形の部屋には見たことのない文字がお経のように部屋全体に書かれていた。利菜はそれが気になったのだろう。壁を指さし「アッチ!」と何度も催促してくる。
もちろん娘にそんな得体の知れない物を触らせるわけにもいかず、早くこの部屋から出ようと出入り口と思われる扉の前まで向かった。
恐る恐る扉を開けると、目の前には甲冑を身に纏った女性が扉の前で片膝を着き、頭を下げて待っていた。
あの時の受けた衝撃は一生忘れることは出来ないだろうな。なんせその女性は俺の事を勇者なんて呼ぶんだから。
「お待ちしておりました勇者様」
俺が見知らぬ場所に娘と共にきて言われた始めての言葉。その時はもう笑うしかなかったよね。あぁ一般人に仕掛けるタイプのドッキリかぁ! なんて思ってたぐらいだから。
まぁ実際はドッキリでも何でもなく現実の話だったみたいで、今ではこうやってこの世界の事について必死にメモをとっているわけだが、その当時はいつネタばらしがあるのだろうとか、隠しカメラは何処にあるのだろうって年甲斐もなくワクワクしていた訳なのですよ。あの当時の俺はかなり滑稽に映っていただろうな。今更ながら恥ずかしい。
この世界に来て初めて会った女性の名前はエインファルトと言う名前だった。ボーイッシュな金髪のショートヘア―のエインは「ついて来てください」と当時ドッキリだと疑っていなかった俺を必要性があるのか疑問に感じるほど大きな扉の前まで案内してくれた。
この部屋でとうとうネタばらしか・・・・なんて思っていた俺のワクワク感が利菜にも伝わったのかは知らないが、利菜も案内の道中、やたらと「チータチータ」「アノネー、チータネー」と俺には理解不能な言語を連呼しながら俺の顔で粘土遊びをしていた。
エインの言葉で扉を開かれると、目の前に一直線に敷かれている深紅のカーペットが目に入った。そしてその奥には黄金に輝く玉座に座っている女性の姿があった。
いやぁーテレビってすげぇな。一般人相手にここまで凝ったことをするのかね。
これが当時、その光景を見た時に俺が最初に思ったことだ。多分だがその時の俺はかなり目を輝かせていたと思う。
そろそろネタばらしかと思い、その時を楽しみにしながらエインの促すままに王女役と思われる女性の前まで行ったのだが、ネタバレなどある訳もなく、王女は自己紹介を始めた。
王女は名前をマリーノ=カレンと名乗ったマリーナ王国という国の王女をしているらしい。王女は自己紹介の後、深々と頭を下げて事の経緯について説明をしてくれた。
王女の説明を聞く限り、どうやらこの国は現在魔族の襲来によって未曽有の危機に瀕しているとのことだった。このままでは魔族によって国を滅ぼされてしまうと思ったカレン達は古来より伝わる勇者召喚というものをしたらしい。
そしてその勇者召喚で召喚されたのが俺と利菜だったという訳だ。
もしこの世界が本当に異世界であり、魔王という存在が実在する世界であると知っていれば俺はこの申し出を即座に断っていただろう。
しかしその時の俺は何処かのテレビ番組がやっているドッキリだと思い込んでいた。そんな俺は何様のつもりなのかテレビの進行を妨げないように二つ返事で答えてしまった。
俺の返事を聞いたカレンは喜びや安堵等を混ぜ合わせたような顔を見せた後に、煌びやかな装飾の施された真っ白な鞘を持つ剣を目の前に渡してきた。
話を聞く限りその剣は代々勇者と呼ばれる者達が使っていた聖剣らしく、これまでの勇者の力が蓄積されており、新たな勇者はその剣を手に持つだけでこれまでの勇者の力を手にすることが出来るチートアイテムらしい。
手の込んだ設定を作っているなとしか思っていなかった俺は臆することなく剣を受け取ると鞘から剣を抜いてみた。
どんなギミックをこの剣に仕込んでいるのだろう、なんて思っていた俺であったが、鞘から剣を抜いても何も起きず、ひたすら静かな時が流れていく。
音や光など何かしらのギミックが仕込まれていると思っていた俺が何も起きないことに少々落胆した時。
「そんなはずは・・・・伝承では勇者様が聖剣を携えることで力の譲渡が行われるはずなのに」とカレンが声を震わせながら焦りを見せた。
演技が凄い上手い子だなと緊張感なく感心していた時、これまでお気楽に物事を考えていた俺の度肝を抜く事態が起きてしまった。
あまりに鬼気迫る演技を見せるカレンに見入ってしまった俺は抱っこしている利菜が剣に興味を持ち始めていたことに気付いていなかった。
もちろんカレンのは演技ではなく、本当に焦っていたのだと後に気付くことになったのだが。
気付いた時には利菜が既に剣の刃に触れてしまった状況であった。
もちろん慌てて利菜の手を剣から離そうとしたのだが、利菜が触れた瞬間、聖剣から神々しい光が辺りに放たれた。
その時に俺は初めて自分の置かれている状況がドッキリなどではなく現実として起こっていることなのだと理解した。
何故なら光を放っているのは聖剣だけでなく我が腕の中にいる娘、利菜の身体からも眩いほどの光が放たれていたのだから。
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