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国始動編

第129話 盗っ人作戦

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明朝、正門前にはリュックサックを背負ったパーキ達と大地、マリカ、メリアの三人が輸送機前で出発の準備をしていた。

「マーレ大人の言うことを良く聞いて、怪我だけはないようにね?」

「は~い!」

見送りにはマーレを心配して来ていたゼーレに加え、ヘクトル、ルル、犬斗、ガランの姿があった。

大地はルル、犬斗、ガランが正門前に来ると三人を呼び、もし自分のいない間に帝国兵がアースへと到着した場合についての防備について最終確認を行う。



教会から帰った後、大地はガラン、マヒア、ケンプフと今後帝国が来た時の対応について朝まで意見を交わしていた。

相手は未知の能力を持つ相手である異世界の人間。それが四人もいるという話を聞いた時、三人はとても険しい顔を受かべていた。

三人からしたら大地や犬斗と同程度の力を持つ者が帝国に四人いるというのは出来れば聞きたくなかった情報であろう。

三人との話し合いの中で、ディランチに行くのは大地とメリアに抑えて、残りはアースの防衛にあたることになった。

そして、軍備強化の為にディランチ連邦で大地が作成した超遠距離での狙撃が可能なレーザースナイパーを部隊単位で実用化させようと、マヒアとルルの指導の元、早急に狙撃スキルの高い者達に練習させることが決まった。

その為大地はその後、一睡もすることもなく部隊全員分のレーザースナイパーを作成せざる負えなくなり、目の下にはうっすらとクマが出来ていた。

「大地。墜落だけはすんなよ?」

「そうですよ大地さん。パーキ達も乗っているんですからね? くれぐれも安全運転でお願いします」

ガランとルルは眠たそうに目をこする大地を見て、無事にディランチまで運転できるか不安そうな様子を見せる。

「大丈夫だ。とりま俺とメリアがいない間は頼むわ。特に犬斗。俺とメリアがいない間はお前がアースの砦だということを忘れるな」

「わかってますよ・・・でももし帝国が攻めてきたら、間髪入れずに帰って来てくださいよ。僕が相手出来るのは一人までです。二人以上が攻めてきたら無理ですから」

「わかってるよ。メリアはともかく俺のコピペを使えば一瞬でここに帰って来れる。けど何かしらのトラブルがあってこれない場合もあるかもしれないだろ? そうなった時は頼むぞって話だよ」

「心の底からそうならないことを祈っていますよ」

全身から不安オーラを漂わせる犬斗。昨日の凛々しい決意表明は一体何だったのだろうか。

大地は犬斗を懸命に励ました後、輸送機内で追いかけっこをしているパーキ達を席に座らせ、シートベルトの着用を行う。

「これから俺達飛ぶらしいぞ!」

「楽しみだけど、少し怖いかも・・・」

「ゼーレ姉怖いよぉ~!」

三者三様の反応を見せていると、隣に座っているマリカが目をキラキラさせながら輸送機の素晴らしさについてパーキ達に熱弁し始めた。

「お前達は知らないのだな! この輸送機とやらは凄いぞ! なんせ人がこんな小さくなるまで空高く飛ぶのだからな!」

親指と人差し指を使いながら人が米粒のようになる有様を説明するマリカ。

「本当かよ! すげぇ!」

「大地兄ちゃんはやっぱりすごいなぁ~」

「楽しみだけど怖いよぉ~!」

マリカの話を聞いてテンションを上げていくパーキ達。マリカはその後も輸送機の凄さについてパーキ達に話していく。

マリカのおかげで若干緊張気味だったパーキ達もいつも通りの調子に戻っていた。

パーキ達の緊張がほぐれたことを確認した大地はガランやヘクトル達にアースの事をお願いすると、輸送機を出発させた。






翌日の昼、大地は客室のベッドで大きく背伸びをしていた。大地のベッドには大地を囲うようにパーキ達が大の字になって寝ている。

昨日、安全運転や寝不足が原因で夜遅くにディランチに着いた大地達は、オズマ達に同盟の事について報告した後、ひとまずその日は休むことにした。

しかし輸送機での飛行の経験があまりに刺激的だったのか、パーキ達はディランチに着いてからも興奮状態が続き、結局パーキ達三人が寝静まったのは日を大きく跨いでからであった。

「時間が無いってのに呑気な事ね」

大地がベッドで身体を伸ばしていると、メリアが客室のソファに座ったまま、呆れた顔を見せていた。

「仕方ないだろうが。いくら寝かせようとしてもこいつら全然寝ようとしないんだからな。特にパーキは何であんなに元気なのかわからんぐらいはしゃいでたな・・・・」

大地は気持ちよさそうに寝るパーキ達を見ながら、三人の頭を静かに撫でると、布団を剥いでいる三人に再度布団をかけ直す。

「よし。じゃあ早速始めますかな」

「はぁ~本当に気乗りしないのだけど仕方ないわよね・・・・」

大地の掛け声を合図に二人は変成魔法を自身に使い、小さな子供へと姿を変える。

大地は目立つ黒髪を茶髪に変化させており、メリアも日ごろの赤髪の猫人族の姿から茶髪の人間の子供の姿になっていた。

「流石に鳥の時と違って身体の仕組みがわかっている分、スムーズに動かせるな」

「小さくなっただけなんだから当然と言えば当然だけどね」

二人はパーキ達と同じぐらいの大きさに姿を変えると、準備運動しながら身体の具合を確かめる。

大地達は一昨日のハンバーガー屋で、小人族から技術を得る為の作戦を立てていた。

それは変成魔法の使える大地とメリアが子供の姿に化けて小人族の集落に侵入し、こっそり技術を盗んでしまおうという何ともシンプルな作戦であった。

もちろんマリカからも帝国との戦いに向けて必要な事だと許可をもらっている。しかしマリカからはこの作戦を行う上で一つ条件を出されていた。

その条件とは絶対に小人族にそのことがバレないようにすること。

大地達がやろうとしていることは盗人がやっていることと何ら変わりない。

小人族にもしこの事がバレてしまった場合、命より大事な技術を盗もうとしたと、小人族そのものがこちらの敵にまわってしまう可能性があり、最悪の場合、帝国へと小人族が流れてしまうことも考えれるらしい。

かなりリスキーな作戦であり、失敗した時のダメージは大きなものになる作戦ではあるが、大地の強い要望によってこの作戦を決行することになった。

ちなみにパーキ達を連れてきたのは、常に教会内にいるパーキ達の気分転換という意味もあるが、大地とメリアだけでは子供らしく振る舞えないという理由でカモフラージュの意味合いもあって連れてきていた。


「でも本当に良かったの? 小人族みたいな変態の所にこの子達を連れていくなんて」

身体の具合を確認しながらも、パーキ達を巻き込むことに懸念を見せるメリア。

「仕方ないだろ? いくら身なりを変えても子供らしく振る舞うなんて俺達には無理だ。正直やっていることはスパイみたいなものだしな。もしバレでもしたらそれこそ大問題だぞ」

「ならこんなに急いでその技術を得ようなんてしなくても良かったんじゃないの? 変態共にこの子達がどうかされたら大地の責任よ?」

「もし小人族がパーキやライラ達に手を出そうものならマリカには悪いが小人族は絶滅することになるだろうな」

「大地なら本当にやりかねないわね・・・・」

パーキ達が小人族にもし変な事をされたらどうするの、というメリアの問いかけを聞いた大地は子供では決して浮かべることのないニヒルな笑みを見せる。

二人が身支度を完了させた頃、マリカが扉をそっと静かに開けながら客室へと入って来た。

「大地とメリアだよな・・・?」

変成魔法について聞いていたマリカであったが、全く面影のない二人の子供の姿に思わず大地達なのか確認を取ってしまう。

「あぁそうだよ。こっちはもう準備は出来ている。後はパーキ達が目を覚ますのを待つだけだ」

「そうかわかった。では後の事は手筈通り行うことにしよう。拠点入口でオズマ達が待っている。大地達は一足先に向かっておいてくれ」

「パーキ達をよろしく頼むよ。じゃあメリア行くか」

大地はパーキ達をマリカに任せると、オズマの待つ拠点入口に向かった。

拠点入口では顔色を悪くしながら胃の辺りを抑えるオズマの姿があった。

オズマは子供の姿になった大地達を見つけると、少し不機嫌そうに大地の元に歩み寄る。

「大地。まさかお前までマリカのような無茶をするとは思わなったぞ。おかげでこっちは昨日から胃のキリキリが収まらん」

オズマは胃の辺りのさすりながら、怪訝そうな顔を大地に向ける。

「いやぁ・・・今回ばかりは俺の独断でオズマには迷惑をかける。お詫びといっては何だが、会議室に俺の国のデザートとオズマ専用の超強力胃薬を置いてるから、それで勘弁してくれ」

大地は流石にオズマには迷惑をかけていると、両手を顔の前で合わせて頭を下げる。

「まぁ大地には前回の件で世話になったしな。それに大地がそこまで無茶するほど、その技術とやらはこれからの戦いを左右するものなのだろうからな」

オズマは相変わらず胃の辺りを抑えながらも、バックアップは任せろと全面的にな協力を大地に約束する。

そしてオズマと大地が細かい打ち合わせを行いながら待つこと三十分後。マリカと一緒に身支度を済ませたパーキ達が拠点入口までやってきた。

こうして大地とメリアのスパイ作戦が始まった。
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