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国始動編
第120話 睦月の能力
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「ってなわけさ。」
睦月はその当時の話を自身の武勇伝のように誇らしげに話し終えると、喉が乾いたようで大地に飲み物をせがんでくる。
アルバートって・・・・メリアの名前も確か・・・・
睦月の話に出てきたアルバートという名前に若干考え込む様子を見せた大地であったが、ひとまずは睦月の話を続けようと、話を要約していく。
「要は俺達は魔族のある目的の為にこの世界に呼び出され、尚且つもしかしたら日本に帰る方法もあるかもしれないってことだな。てかよく数十人もいる魔族がいる中逃げ切れたものだな。正直俺でもそんな中から逃げる自信ないぞ。」
大地は適当に清涼飲料水を作成しそれを睦月に渡しながら、魔族から無事逃げ切った睦月を素直に称賛する。
「それはうちのスキルのおかげだよ。大地っちにはアウトプットを使われて歳をばらされるのが嫌だから私の口から教えておこうかな。」
睦月はそういうと大地に実演を兼ねながらスキルの説明を始める。
睦月のスキルは「カメラマン」「プリンター」「インサイド」の三種類であった。
カメラマンは視界に捉えたものを写真に変換する能力で、念じることで望遠レンズのように遠くのものを大きく写すことが出来たり、逆にマクロレンズのように小さい物を大きく写したり出来るらしい。
プリンターは写真に写っている現象を呼び出す能力らしく、例えば落雷の写真を使ってその場に落雷を発生させたり、写真に写っている人物や動物を自身に張り付けることでその姿になることが可能だそうだ。
彼女が銀次郎さんと撮った時と姿が変わっていないのは鏡を使って自撮りした写真を使って定期的に姿を更新しているからであった。
そして最後のインサイドは写真の中に入り込むことが出来るスキルで、簡単に言えば写真の場所に一瞬で行けるワープ能力の様なものであった。
「うちは帝国の宿の写真を使って宿まで一気にワープしたから簡単に逃げることが出来たんだよ。けどうちはあんまりこのスキル好きじゃないんだよね。」
「なんでだ? 傍から見たらかなり使い勝手の良いスキルに見えるが。」
「あのねぇ~。うちはカメラマンなんだよ? 写真はカメラで撮るから良いんだよ! それにプリンターもインサイドも一度使えばその写真は消えちゃうんだよ・・・・せっかく撮った傑作が消えてしまうなんてこれほど嘆かわしいことはないよ!」
睦月は肩から下げている電池切れで動かない一眼レフカメラを見つめながら悲しそうにうつむく。
「それでその話と帝国の四人にどんな関係があるんだ。」
「これはうちの推測でしかないんだけどね。その子達や帝国はその魔族に利用されているのではないかと思っているの。霧崎以外の三人はここ一年の間に召喚された子達なんだよ。大地っちもここ一年以内にこの世界に来たって聞いたからこの一年で四人も召喚されたってことだよ? 今までこんなにたくさんの日本人がこの世界に来ることはなかった。これは何か良くないことの前触れのような気がしてね。それに関係無い日本人が魔族の都合で召喚されて死んでいくのを黙って見ていられないから。」
睦月は信念のこもった目を大地に向ける。
「確かに、味方に対しては温厚だった皇帝が霧崎によって豹変した事や、その霧崎が魔族によって召喚されたことを考えれば、帝国の裏に魔族がいるのは間違いないだろうが。そうだからといって帝国側に付いている日本人が利用されているとは限らないだろう。それにマリカは霧崎に兄を殺されているんだぞ? 俺が助けようと動いてもマリカがそれを許すはずがない。」
大地は睦月の推測を理解しながらも、帝国側に付いている日本人が魔族に利用されているという確信が無ければ、敵である日本人を助けることは出来ないと伝える。
大地にとって今一番大切な存在はルル達である。確かに出来れば同じ日本人である彼らを殺すような真似はしたくない。
しかしもし彼らがルルやガラン等、大地にとって大切な存在を害そうとするならば、大地は何の抵抗もなく彼らを殺すことが出来るだろう。
「そうだよね。大地っちにとってはアースの人々がまず最優先だもんね・・・急に変なことをお願いしてごめんね。この件に関してはうち一人で色々調べてみることにするよ。」
笑顔で返事をする睦月であったが、その笑顔は笑顔と呼ぶにはあまりにも不自然なものであった。
「まぁ俺だって出来れば同じ日本人を殺したくない。もしあいつらが利用されているってわかれば出来る限り殺さないようにするよ。」
睦月の苦笑いを見た大地は何とも言えない感情に苛まれ、出来る限り協力はすると睦月に約束する。
「大地っちって素直じゃないよね。でもありがとう。銀次郎さんが亡くなったって知ってからは異世界人はうち一人だったからなんだか心強いよ。」
睦月は先程の苦笑いから一転、満面の笑みを大地に見せると、一枚の写真をかざす。
写真をかざすといつの間にか兵士達が利用する食堂前についていた。
「ずっと喋ってばっかだったからさすがにお腹が空いたよ。じゃあ大地っち私はお寿司と味噌汁と茶碗蒸しでよろしく。」
「食堂なのに俺が用意するのかよ・・・・」
睦月は銀次郎さんが亡くなってからは長い間、ずっと一人だったんだよな。そんな経験があるからこそ異世界人の身を案じ、なおさら魔族が自分達の都合で日本人を召喚していることを許せないのかもしれないな。
大地は異世界に来てすぐに犬斗に出会えた。犬斗も何年間も一人で帰還方法を探していたが、睦月の異世界での滞在期間に比べたら微々たるものである。
軽い態度で勘違いされるかもしれないが、睦月も睦月でこの世界について様々なことを知り、考えているのだと思うと、同じ日本人として出来る限り助けてやりたいと思った。
「大地っち? 私の顔に何か付いているかな?」
食堂前でぼーっとしている大地の様子に気付いた睦月は大地の顔を覗き込むように間近まで自身の顔を近づけてきた。
「お前何してんだよ!」
もう少しでキスをしてしまいそうな距離まで顔を近づけてきたことに少し照れながら睦月の身体を押し出す大地。
「大地っちならうちのファーストキスをあげてもいいのに!」
「誰が婆のファーストキスをもらって喜ぶんだよ!」
「それは言わない約束だったよね・・・?」
睦月と大地が食堂前で言い合いをしていると、大地の背筋に冷たい何かが走った。
「大地さん? 何をしているんですかねぇ~」
大地が後ろを振り向くと、背後に白袴に大きな日本刀を持つ般若を従えたルルが居た。
「こっちは大地さんの期待に応えようと必死こいて練習をしているというのに、当の本人は食堂前で女性とイチャイチャタイムですか。あまつさえキスなど、どうしてくれましょうかね・・・・」
ルルはうつむきながら静かに大地の元へと近づいてくる。
「ルル? 何を勘違いしてるんだ・・・キスなんてしてないぞ! それにこいつは若く見えるかもしれないが実際は―――――」
「大地っち?」
大地が誤解を解こうと睦月の歳をばらそうとした瞬間、睦月が一枚の写真を大地に見せる。
睦月が見せた写真には大きな竜巻が家屋を破壊し尽している光景が収められていた。
「実際はそれ以上に若く見えるんだよ睦月は! あっはっはっは!」
こんな場所でハリケーンなんて発動されたらたまったものではないと、なんとか睦月の歳をごまかす大地。
「へぇ~大地さんは睦月さんみたいな人が好みなんですね。確かに日焼けもしていて健康美人って感じですもんねぇ~。だからこんな公衆の面前でキスなんてするんですねぇ~。」
睦月からのハリケーンは何とか回避した大地であったが、そのせいでルルの機嫌を更に損ねることになってしまう。
ルルの機嫌が悪くなっていることに気付いた大地があたふたと困惑していると、睦月が耳元で大地に助言を呟いてきた。
「キスしちゃいなよ! そうすれば機嫌直してくれるんじゃないかな。」
隣でにやけ顔を晒しながら冷やかしてくる睦月にジト目を向ける大地であったが、今にも新装備をぶっ放しそうなルルの姿を再度確認すると、意を決したようにルルへと近づくと、お姫様抱っこのようにルルを担ぎ上げる。
「なっなっ何をしているんですか!?」
急に大地に抱きかかえられたことで背後に出現させていた般若を消失させ、顔を真っ赤に染め上げるルル。
「やっとこっちを見たな。睦月とはキスなんてしていない。お前が一生懸命に練習している時に俺がそんなことするわけないだろうが。」
「そっそうですよね! 私ったらとんだ勘違いを・・・」
ルルは大地の腕の感触を楽しみながらも恥ずかしさから大地の顔を見ることが出来ず、顔を背けたまま大地に勘違いについて謝る。
「それでは私は・・・・練習してきますぅ!」
ルルの機嫌が戻ったことを確認した大地が抱えていたルルを地面にそっと降ろすと、顔を真っ赤にさせたルルは逃げるようにその場から立ち去る。
「本当に罪な男だねぇ大地っちは。もうあの子の気持ちには気付いているんだよね?」
「まぁそりゃあれだけわかりやすいと流石にな。」
「気付いてるなら早くその気持ちに答えてあげないと。」
「わかってるよ! でも今はそんな気分にはなれるわけがないだろ。帝国や魔族のことが片付いたら俺からルルに話をするつもりだ。」
大地の発言を聞いた睦月がヒュ~ヒュ~とわかりやすく大地を茶化してくる。
「睦月は寿司も味噌汁も食べたくないんだな。」
大地は睦月に冷たく言い放つと、一人で食堂へと入っていった。
「嘘だよ! 嘘嘘! ちょっと待っておくれよぉ!」
寿司も味噌汁も食べれないかもしれないと、涙目になりながら大地の後を追っていく睦月。
もちろん大地も本気でそんな嫌がらせをしようだなんて思ってはおらず、平謝りする睦月を席に座らせて、寿司や味噌汁を振る舞った。
しかし大地が怒っていないと気付き、調子に乗った睦月は多量の寿司を大地に再現させながら、ルルとのこれまでのいきさつについて根掘り葉掘り聞いてきた。
女子高生のように嬉々として他人の恋バナについて聞いてくる睦月にうんざりとした顔を浮かべていた。
睦月はその当時の話を自身の武勇伝のように誇らしげに話し終えると、喉が乾いたようで大地に飲み物をせがんでくる。
アルバートって・・・・メリアの名前も確か・・・・
睦月の話に出てきたアルバートという名前に若干考え込む様子を見せた大地であったが、ひとまずは睦月の話を続けようと、話を要約していく。
「要は俺達は魔族のある目的の為にこの世界に呼び出され、尚且つもしかしたら日本に帰る方法もあるかもしれないってことだな。てかよく数十人もいる魔族がいる中逃げ切れたものだな。正直俺でもそんな中から逃げる自信ないぞ。」
大地は適当に清涼飲料水を作成しそれを睦月に渡しながら、魔族から無事逃げ切った睦月を素直に称賛する。
「それはうちのスキルのおかげだよ。大地っちにはアウトプットを使われて歳をばらされるのが嫌だから私の口から教えておこうかな。」
睦月はそういうと大地に実演を兼ねながらスキルの説明を始める。
睦月のスキルは「カメラマン」「プリンター」「インサイド」の三種類であった。
カメラマンは視界に捉えたものを写真に変換する能力で、念じることで望遠レンズのように遠くのものを大きく写すことが出来たり、逆にマクロレンズのように小さい物を大きく写したり出来るらしい。
プリンターは写真に写っている現象を呼び出す能力らしく、例えば落雷の写真を使ってその場に落雷を発生させたり、写真に写っている人物や動物を自身に張り付けることでその姿になることが可能だそうだ。
彼女が銀次郎さんと撮った時と姿が変わっていないのは鏡を使って自撮りした写真を使って定期的に姿を更新しているからであった。
そして最後のインサイドは写真の中に入り込むことが出来るスキルで、簡単に言えば写真の場所に一瞬で行けるワープ能力の様なものであった。
「うちは帝国の宿の写真を使って宿まで一気にワープしたから簡単に逃げることが出来たんだよ。けどうちはあんまりこのスキル好きじゃないんだよね。」
「なんでだ? 傍から見たらかなり使い勝手の良いスキルに見えるが。」
「あのねぇ~。うちはカメラマンなんだよ? 写真はカメラで撮るから良いんだよ! それにプリンターもインサイドも一度使えばその写真は消えちゃうんだよ・・・・せっかく撮った傑作が消えてしまうなんてこれほど嘆かわしいことはないよ!」
睦月は肩から下げている電池切れで動かない一眼レフカメラを見つめながら悲しそうにうつむく。
「それでその話と帝国の四人にどんな関係があるんだ。」
「これはうちの推測でしかないんだけどね。その子達や帝国はその魔族に利用されているのではないかと思っているの。霧崎以外の三人はここ一年の間に召喚された子達なんだよ。大地っちもここ一年以内にこの世界に来たって聞いたからこの一年で四人も召喚されたってことだよ? 今までこんなにたくさんの日本人がこの世界に来ることはなかった。これは何か良くないことの前触れのような気がしてね。それに関係無い日本人が魔族の都合で召喚されて死んでいくのを黙って見ていられないから。」
睦月は信念のこもった目を大地に向ける。
「確かに、味方に対しては温厚だった皇帝が霧崎によって豹変した事や、その霧崎が魔族によって召喚されたことを考えれば、帝国の裏に魔族がいるのは間違いないだろうが。そうだからといって帝国側に付いている日本人が利用されているとは限らないだろう。それにマリカは霧崎に兄を殺されているんだぞ? 俺が助けようと動いてもマリカがそれを許すはずがない。」
大地は睦月の推測を理解しながらも、帝国側に付いている日本人が魔族に利用されているという確信が無ければ、敵である日本人を助けることは出来ないと伝える。
大地にとって今一番大切な存在はルル達である。確かに出来れば同じ日本人である彼らを殺すような真似はしたくない。
しかしもし彼らがルルやガラン等、大地にとって大切な存在を害そうとするならば、大地は何の抵抗もなく彼らを殺すことが出来るだろう。
「そうだよね。大地っちにとってはアースの人々がまず最優先だもんね・・・急に変なことをお願いしてごめんね。この件に関してはうち一人で色々調べてみることにするよ。」
笑顔で返事をする睦月であったが、その笑顔は笑顔と呼ぶにはあまりにも不自然なものであった。
「まぁ俺だって出来れば同じ日本人を殺したくない。もしあいつらが利用されているってわかれば出来る限り殺さないようにするよ。」
睦月の苦笑いを見た大地は何とも言えない感情に苛まれ、出来る限り協力はすると睦月に約束する。
「大地っちって素直じゃないよね。でもありがとう。銀次郎さんが亡くなったって知ってからは異世界人はうち一人だったからなんだか心強いよ。」
睦月は先程の苦笑いから一転、満面の笑みを大地に見せると、一枚の写真をかざす。
写真をかざすといつの間にか兵士達が利用する食堂前についていた。
「ずっと喋ってばっかだったからさすがにお腹が空いたよ。じゃあ大地っち私はお寿司と味噌汁と茶碗蒸しでよろしく。」
「食堂なのに俺が用意するのかよ・・・・」
睦月は銀次郎さんが亡くなってからは長い間、ずっと一人だったんだよな。そんな経験があるからこそ異世界人の身を案じ、なおさら魔族が自分達の都合で日本人を召喚していることを許せないのかもしれないな。
大地は異世界に来てすぐに犬斗に出会えた。犬斗も何年間も一人で帰還方法を探していたが、睦月の異世界での滞在期間に比べたら微々たるものである。
軽い態度で勘違いされるかもしれないが、睦月も睦月でこの世界について様々なことを知り、考えているのだと思うと、同じ日本人として出来る限り助けてやりたいと思った。
「大地っち? 私の顔に何か付いているかな?」
食堂前でぼーっとしている大地の様子に気付いた睦月は大地の顔を覗き込むように間近まで自身の顔を近づけてきた。
「お前何してんだよ!」
もう少しでキスをしてしまいそうな距離まで顔を近づけてきたことに少し照れながら睦月の身体を押し出す大地。
「大地っちならうちのファーストキスをあげてもいいのに!」
「誰が婆のファーストキスをもらって喜ぶんだよ!」
「それは言わない約束だったよね・・・?」
睦月と大地が食堂前で言い合いをしていると、大地の背筋に冷たい何かが走った。
「大地さん? 何をしているんですかねぇ~」
大地が後ろを振り向くと、背後に白袴に大きな日本刀を持つ般若を従えたルルが居た。
「こっちは大地さんの期待に応えようと必死こいて練習をしているというのに、当の本人は食堂前で女性とイチャイチャタイムですか。あまつさえキスなど、どうしてくれましょうかね・・・・」
ルルはうつむきながら静かに大地の元へと近づいてくる。
「ルル? 何を勘違いしてるんだ・・・キスなんてしてないぞ! それにこいつは若く見えるかもしれないが実際は―――――」
「大地っち?」
大地が誤解を解こうと睦月の歳をばらそうとした瞬間、睦月が一枚の写真を大地に見せる。
睦月が見せた写真には大きな竜巻が家屋を破壊し尽している光景が収められていた。
「実際はそれ以上に若く見えるんだよ睦月は! あっはっはっは!」
こんな場所でハリケーンなんて発動されたらたまったものではないと、なんとか睦月の歳をごまかす大地。
「へぇ~大地さんは睦月さんみたいな人が好みなんですね。確かに日焼けもしていて健康美人って感じですもんねぇ~。だからこんな公衆の面前でキスなんてするんですねぇ~。」
睦月からのハリケーンは何とか回避した大地であったが、そのせいでルルの機嫌を更に損ねることになってしまう。
ルルの機嫌が悪くなっていることに気付いた大地があたふたと困惑していると、睦月が耳元で大地に助言を呟いてきた。
「キスしちゃいなよ! そうすれば機嫌直してくれるんじゃないかな。」
隣でにやけ顔を晒しながら冷やかしてくる睦月にジト目を向ける大地であったが、今にも新装備をぶっ放しそうなルルの姿を再度確認すると、意を決したようにルルへと近づくと、お姫様抱っこのようにルルを担ぎ上げる。
「なっなっ何をしているんですか!?」
急に大地に抱きかかえられたことで背後に出現させていた般若を消失させ、顔を真っ赤に染め上げるルル。
「やっとこっちを見たな。睦月とはキスなんてしていない。お前が一生懸命に練習している時に俺がそんなことするわけないだろうが。」
「そっそうですよね! 私ったらとんだ勘違いを・・・」
ルルは大地の腕の感触を楽しみながらも恥ずかしさから大地の顔を見ることが出来ず、顔を背けたまま大地に勘違いについて謝る。
「それでは私は・・・・練習してきますぅ!」
ルルの機嫌が戻ったことを確認した大地が抱えていたルルを地面にそっと降ろすと、顔を真っ赤にさせたルルは逃げるようにその場から立ち去る。
「本当に罪な男だねぇ大地っちは。もうあの子の気持ちには気付いているんだよね?」
「まぁそりゃあれだけわかりやすいと流石にな。」
「気付いてるなら早くその気持ちに答えてあげないと。」
「わかってるよ! でも今はそんな気分にはなれるわけがないだろ。帝国や魔族のことが片付いたら俺からルルに話をするつもりだ。」
大地の発言を聞いた睦月がヒュ~ヒュ~とわかりやすく大地を茶化してくる。
「睦月は寿司も味噌汁も食べたくないんだな。」
大地は睦月に冷たく言い放つと、一人で食堂へと入っていった。
「嘘だよ! 嘘嘘! ちょっと待っておくれよぉ!」
寿司も味噌汁も食べれないかもしれないと、涙目になりながら大地の後を追っていく睦月。
もちろん大地も本気でそんな嫌がらせをしようだなんて思ってはおらず、平謝りする睦月を席に座らせて、寿司や味噌汁を振る舞った。
しかし大地が怒っていないと気付き、調子に乗った睦月は多量の寿司を大地に再現させながら、ルルとのこれまでのいきさつについて根掘り葉掘り聞いてきた。
女子高生のように嬉々として他人の恋バナについて聞いてくる睦月にうんざりとした顔を浮かべていた。
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