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国始動編

第114話 大地VSマリカ

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オズマとメリアの模擬戦は審判のにより引き分けとなったことが告げらた。

大地達はひとまず動けない二人を観戦席付近にある治療用テントへと運ぶことにして、ドグマに二人の運搬をお願いする。

ドグマは快く返事をすると、軽々と両肩に二人を担ぎ、走ってテントへと向かっていった。

「本当にあの熊男はただの鍛冶師なんだな?」

いまだにドグマがただの鍛冶師だと信じていないマリカは、ドグマの後ろ姿を見つめながら大地に再度同じ質問をしてくる。

「だからドグマを俺達の国の鍛冶師だよ。多分な・・・」

大地もこれまでドグマの行動を思い出し、自信無さそうに返事をすると、メリアの治療の為にドグマの後を追うようにテントへと向かった。

テントに入ると、簡易型のベッド横たわる二人の姿があった。

オズマは辛うじて意識のあるものの、メリアはいまだ意識を失っているようだった。

「ドグマありがとうな。助かったよ。」

「この程度、鍛冶師をしていれば誰でも出来ることだ。」

「あぁ・・・そうか。それより魔力回復ポーションを一つもらっていいか?」

大地はドグマから魔力回復ポーションを一つ受け取ると、オズマの口元にそれを持っていき飲ませる。

「・・・・ごほごほ! 急に何をするんだ!」

ポーションが気管に入り、大きく咳き込んだオズマは、ベッドから飛び起きる。

「もう大丈夫だな。」

オズマが自身で飛び起きれるほど回復したことを確認した大地は、驚いているオズマを尻目にメリアの元へと向かう。


やっぱり機雷でのダメージが響いていたか。しかし気絶しながらも魔力吸収を発動させるお前は大した奴だよ。


大地は優しく微笑むとプログラミングでメリアのダメージを全て消し去る。

「ん・・・あれここは?」

「気分はどうだ?」

「大地・・・? そういえば模擬戦は!?」

「一応引き分けってことになった。お前が気絶しながらもオズマに魔力吸収を発動させたことで、オズマも魔力枯渇を起こして戦闘不能になってな。」

大地から結果が引き分けだと聞いたメリアは悔しそうな表情を浮かべていた。

オズマよりも高い能力値を誇りながら、負けに等しい形での引き分け。

メリアは身体を小刻みに震わせながら、悔しさを滲ませていた。

「大地。その能力は一体何だ?」

メリアにプログラミングをかけていた大地の姿を後ろでみていたマリカが驚いた顔を見せる。

「あぁこれか。これが俺の持っているスキルだよ。」

大地は細かい能力の説明は行わずに自分の持っているスキルによるものだということだけマリカに伝える。

「今から戦う相手に力の詳細を教えるわけはないか。まぁいいさ。どうせこれから知ることになるのだからな。準備が出来次第広場まで出てこい。私は先に待っている。出来る限り早くしてくれよ。」

マリカは笑顔で大地に早く広場へ来るように告げると足早にテントから出ていく。

「うちの大将がすまないな。」

マリカがテントから出て行ったのを確認したオズマが勝手なことばかりするマリカの代わりに謝罪を行う。

「いや別に気にしなくて良い。それよりオズマも調子はどうだ。」

「おかげ様で身体を動かす程度までなら回復した。それにしても魔力回復ポーションのような高価なものを使わせてしまい申し訳ない。」

「それは俺達の国で量産している物だ。うちにはポーションにかけては飛び抜けた天才が一人いるもんでな。」

「魔力回復ポーションを量産・・・・」

オズマは魔力ポーションを量産しているという大地の言葉を聞いて唖然としたまま固まってしまう。

それもそのはず、オズマが宮廷魔法師をしていた時ですら、魔力ポーションは数える程しか見た事がなかった代物である。

帝国ですら中々作成することの出来ないほど貴重な物を量産出来ると言った大地の発言にオズマが驚くのも無理はない。

「二人とも大丈夫そうだしそろそろマリカの所へ向かいますかね。」

大地は唖然としたまま動かないオズマを少し気にかけながらも、先に行ったマリカを待たせまいとテントから出て行った。



広場には既に装備を整え、準備運動をしているマリカがいた。

マリカは大地がテントから姿を現すと、嬉しそうに大きな動作で手招きを行う。

大地は手招きを行うマリカを見て、どんだけ楽しみにしているんだよ、と小さく呟くとゆっくりと広場の所定の位置へと向かう。

「一勝一敗一分。いやぁなかなか興のをそそる展開になったではないか。」

大地が広場の中央へと来ると、マリカがストレッチを行いながら大地に楽しそうに話しかけてきた。

「正直俺は模擬戦なんて面倒くさくてしたくないってのが本音なのだが。」

マリカとは対照的に面倒くさそうに大きなため息をつく大地。

「本当にお前はノリが悪いやつだな。お前もオズマと同じで良い相手を見つけることが出来なくなるぞ?」

「そういうあんたは良い相手がいるのか?」

「うぐ!・・・まだ模擬戦は始まっていないのに強烈なカウンターを放ってくるではないか。」

マリカは腹部を両手で押さえながら、攻撃を喰らったような芝居を見せる。

「あの・・・マリカさん。始めてもいいですか?」

三文芝居を続けるマリカを見て、開始の合図を出すタイミングを失った審判役の兵士が、マリカに模擬戦を開始しても良いのか尋ねる。

「ん? 私はいつでも大丈夫だぞ。審判はお前なのだからお前が判断して合図を出せばよいだけだろう。」

腹部を押さえたまま、審判が何故そのようなことを聞いてくるのかわからないといった顔を見せるマリカ。


本当にディランチ連邦の兵士達はよくマリカに付いていけてるよな。


大地は模擬戦が始まってからのマリカの言動を振り返り、ディランチ連邦の兵士達に尊敬にも似た感情を抱く。

「それでは模擬戦を開始します。始め!」


とりあえずはお手並み拝見と行きますかね。


大地は審判の開始の合図に合わせたようなタイミングで熱線を放とうとする。

「ん? どういうことだ?」

しかしいくらアウトプットで再現しようとしても熱線が発動しない。

「魔法が発動しないことに驚いているようだな。」

怪訝そうな表情を浮かべる大地を見たマリカが得意そうな顔をしながらない胸を張っている。

大地はマリカが余裕を見せている隙にインプットでマリカのステータスを見る。


名前 マリカ
種族 人間
年齢 27歳
能力値
腕力S 体力S 敏捷性S 魔力B
「中和魔法」「腕力昇華」「体力昇華」
「敏捷性昇華」「剣圧増加」


中和魔法って何だ?

マリカの持つ中和魔法が原因で自身の魔法が発動しないと察した大地は、中和魔法の説明欄を表示する。


中和魔法
魔法保持者の周囲の領域内での魔法を全て無効化する魔法。


どうりで魔法が発動出来ないわけだ・・・・


大地は中和魔法がアンチ魔法の効果を持つ魔法であると知り、それが原因でアウトプットによる魔法の再現が出来なかったのだと知る。

「あまり慌てないのだな?」

「中和魔法ってやつだろ? アーヴといい、オズマといい、宮廷魔法師はみんな等しく厄介な固有魔法を持ってやがるな。」

「どういった方法かは知らないが、こんなに早く中和魔法について理解を示した者は初めてだ。しかし原理がわかっただけでは私は止められないぞ!」

マリカは腕力昇華、体力昇華、敏捷性昇華を使って自身を強化すると、武器である薙刀を構えて大地へと突進してくる。

大地はホルスターから二丁の銃剣を取り出すと、マリカに向けて銃弾を放つ。

「甘い甘い! そんな攻撃止まって見える!」

マリカは楽しそうに銃弾を薙刀で弾くと大地に向けて薙刀を振り落とす。

大地は銃剣を盾にして薙刀を受け止めるが、剣圧増加のかかった薙刀は非常に重たく大地にのしかかる。

真正面から受けるのは分が悪いと判断した大地が薙刀をいなすように左へと身体をひねると、その動きに合わせたようにマリカが薙ぎ払いを放ってきた。

大地は銃剣で薙刀を受け止めながら後方に飛び退くことで威力を散らそうと試みるが、腕力昇華に剣圧増加のかかった薙ぎ払いの威力は高く、広場中央から観客席の方まで飛ばされてしまう。

大地は空中で体勢を整えると、そのまま観客席へと着地する。

「どうした大地! 魔法が使えなければ戦えないか!?」

マリカは受け身に徹している大地に対して、挑発するように手招きを行う。

「マリカの奴、舐めやがって。」

大地は広場の中央で小さな子供を呼ぶように手招きをしてくるマリカを見て、少し苛立った様子を見せると、おもむろにインプットを開始した。

大地の身体が一瞬眩いほどの光に包まれると、大地の全身の装備が白い軽装へと変化していく。

「せっかくの模擬戦だ。新装備の具合を確かめるとしますかね。」

大地は挑発を続けるマリカに小さい笑みを向けると、ゆっくりとマリカの待つ広場へと歩き出した。
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