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国始動編

第110話 ドグマVSライゼン

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「では準備はいいか?」

「おう! いつでもいいぜ!」

「俺も大丈夫だ。」

審判を務める兵士から準備が出来ているか問われたドグマとライゼンは指定された場所にて武器を構える。

「それではこれから模擬戦を開始する。始め!」

審判の声を合図にドグマは大楯を、ライゼンは大剣を構え、両者雄叫びを挙げながら相手へと向かっていく。

大男二人が広場中央へと走っていき、お互いの武器をぶつけ合う。

カキーン! ガキーン! と金属音が広場に木霊していく。

ライゼンは重そうな大剣を自由自在に扱い、ドグマへと放っていく。ドグマも負けじと熊樫を使ってライゼンの剣戟を捌いていく。


おいおい。マジかよ。こっちの武器は小人族の技術を集約させた作った大剣だぞ!? 


ライゼンはいくら切りかかってもヒビどころか傷すら満足につけることの出来ない熊樫に驚愕していた。

「はっはっは! ライゼンといったか! 剣戟の鋭さならガランに負けず劣らずの良い剣筋だ。それにその大剣も中々の業物。これはいよいよ小人族の鍛冶技術が楽しみになってきたぜぇ!」

無数に迫りくるライゼンの剣戟を熊樫で弾きながら、高笑いを上げるドグマ。

その後もライゼンとドグマの力と力のぶつかり合いが続いていく。





「ほう。ライゼンの力と同等、いや力だけで言えばあの熊男の方が上か。大地あの男は大地の国ではどれくらいの位置にいる猛者なのだ?」

マリカはライゼンの攻撃を軽々弾いているドグマを見て、興味深そうに大地に質問をしてくる。

「う~ん。正直ドグマはよくわかんないんだよな。あいつ戦士でも騎士でもなくて本職鍛冶師だし。」

「あの熊男は鍛冶師なのか!?」

ライゼンと戦っている相手が戦いを本職としていないと知り、思わず驚いたような大きな声を出してしまうマリカ。

「俺もなんでドグマがあんなに強いのかわからないんだよ。実際戦闘訓練を積んでいるわけではないし、いつも鍛冶仕事をしているだけだし。」

「もしかしてアースという国の鍛冶師はみんなあの熊男のように戦えるのか?」

「いやいや。それはない。ドグマが特別なんだよ。それより模擬戦に集中しなくていいのか? どうやら戦況が動きそうだぞ?」

マリカが大地から指摘され再び広場へと目線を移した時、大剣での攻撃が効かないと判断したライゼンが魔法を発動していた。

ライゼンが魔法を発動すると、ドグマの周囲を取り囲むように土塊で出来た人型のゴーレムが広場の地面から生えるように出現していく。

「俺の大剣ではその盾を壊せないのはわかった。なら盾で守れないように攻撃を行うだけだ。」

ライゼンの合図で周囲を取り囲んでいるゴーレムが全方位からドグマへと襲い掛かる。

「はっはっはっ! その程度で熊樫を攻略出来るわけがなかろうが!」

ドグマは高笑いを上げながら熊樫を構えながら独楽のように回転し始める。

ドグマへと迫ったゴーレム達はものすごい速さで回転しているドグマの熊樫によって、粉砕されていく。

「なぁ? もう一度聞くが本当に鍛冶師なのか。」

「あぁ・・・鍛冶師なはずだ。」

ゴーレムをいとも簡単に粉砕していくドグマの姿を見て、大地も本当にドグマが鍛冶師なのかわからなくなってくる。



ものの数秒という時間で全てのゴーレムを粉砕されたライゼンは、ドグマから一旦距離を取ると、自身の身長の三倍はある大きな土槍を頭上に展開させる。

「これならどうだぁ!」

ライゼンはその土槍をドグマ目掛けて発射する。

「はっはっは! この大楯は俺達の王が作ったこの世に一つしかない名品だぜ。そんな魔法じゃ壊すことは出来ないぜ!」

ドグマは迫ってくる土槍の方向に大楯を構えると、ひるむことなく突進していく。

ライゼンの土槍がドグマの熊樫に激突した時、土槍は先端部分から熊樫に削られていくようにその姿を霧散させていく。

「そんな馬鹿な!」

土槍を削りながら速度を緩めることなく迫ってくる熊樫を前にして思わず後ずさりしてしまうライゼン。

土槍を全て喰らい尽くした熊樫がライゼンの前まで迫った時、ライゼンは広場の隅にまで追い込まれていた。

自身の後ろを見て、初めて自分がドグマを恐れて後ずさりしていたことに気付いたライゼンは、小さく息を吐くと、武器を収め両手を上げた。

「俺の負けだ。もう何をやってもその盾を攻略出来る方法が思いつかない。」

ライゼンの降参を確認した審判が大きな声で決着を告げる。

「はっはっは! そりゃそうだろう! なんせこの熊樫は最強の盾なのだからな!」

ライゼンの降参を聞いたドグマは誇らしげに熊樫を天高く持ち上げると、いつもより大きな高笑いをあげた。

その後、互いの健闘を称えるように二人は握手を交わすと、マリカと大地の元へと向かってくる。

「お疲れさんドグマ。」

「はっはっは! 良い汗をかいたわ!」

いつも通りの高笑いを見せながら戻ってきたドグマに労いの言葉をかける大地。

「何をやっているライゼン! お前はまた鍛え直さなくてはいけないみたいだな。」

一方、マリカは不機嫌そうな顔を見せながらライゼンにしつこく説教を垂れていた。

「お前が戦っていたのは戦士でも騎士でもない鍛冶師だぞ!」

「えっ・・・俺は鍛冶師に負けたんですか。」

ライゼンは自分が負けた相手がまともな鍛錬を積んでいない鍛冶師であった事実を知り、呆然とした状態になってしまう。

「おい! 聞いているのかライゼン!」

「あっすみません。」

その後、ネチネチと罵倒にも似た説教を喰らっているライゼンの姿はあまりに不憫でかわいそうなものであった。

急に呼ばれて模擬戦をしろと命じられ、負ければ罵倒されてしまう。

最初、あれだけ凛々しいと思っていたマリカの姿も、今となっては新人看護師にパワハラを行うベテラン看護婦長のようにしか見えなかった。

ひとしきり説教を終えたマリカはライゼンを追い返すように本来の職務へと戻すと、涼しい顔をしながら戻ってくる。

「まだ一敗だ! 次は私達が勝つからな!」

ただの負けず嫌いとなってしまっているマリカは悔しそうに顔を歪ませながら、次の模擬戦を急かしてくる。

「次はどうするんだ?」

大地は一勝したことで若干余裕が出たのか、悔しがるマリカに軽い笑みを見せる。

「次は・・・ジグルとそこの猫耳娘(黒)よ!」

「だから私はルルですって!」

猫耳娘(黒)という言葉が気に食わないルルは威嚇をする野良猫のようにマリカを睨む。

マリカはそんなルルの様子には目も暮れず、ジグルにさっさと広場へ向かうように指示を出す。

大地は小さくため息を吐きながら広場に向かうジグルに視線を向けるとさっそくインプットを開始する。


名前 ジグル
種族 人間
年齢 19歳  
能力値
腕力C 体力B 敏捷性B 魔力A
保持スキル
 「風魔法」「風精霊魔法」
「水魔法」「水精霊魔法」
「火魔法」「火精霊魔法」


能力値のトータルはルルと同じか。それにしても自力で三種類の精霊魔法を使える奴なんて初めて見たな。こりゃ強いわ。

「ルル。お前の相手はライゼンってやつの比ではないから気を付けたほうが良いぞ。」

大地はジグルのステータスを見て、すかさずルルに注意して戦うように伝える。

「はい! ところで銃剣は使っても大丈夫なのでしょうか? 誤って殺してしまうことはないか心配で・・・・」

心配そうな顔をするルルの額に大地のデコピンが炸裂する。

「痛い! 何するんですか!」

「あのなぁ。そんな事心配する余裕なんて今のお前にあると思うか? 少なくともオズマやマリカにはお前の銃剣は間違いなく通用しないぞ。正直ジグルにも通用するかわからん。お前はどうしたらジグルに勝てるかそれだけを考えていればいい。」

そう告げると大地は行ってこいと軽くルル背中を叩く。

ルルは気合が入ったように大きく首を縦に振ると、ジグルの待つ広場へと向かっていった。

両者が指定の位置に着いたことを確認した審判が開始の合図を送る。

ルル対ジグルによる第二戦が始まった。
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