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国始動編
第109話 模擬戦開始
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「いや手合わせって。そんな悠長なこと言っていていいのか?」
大地はジト目をマリカに向ける。
「いやいや手合わせは大事だぞ! これから一緒に戦おうというのだ。お互いの戦い方や戦術を知っておいて損はないはずだ。」
マリカは満面の笑みを見せながら、怪訝そうな顔を見せる大地達に手合わせの必要性について説いていく。
「すまない大地。マリカは少々戦闘狂みたいな一面があってな。少しでも強い奴とみればすぐに手合わせをしようとするのだ。」
オズマやジグルはまたかとばかりに呆れた顔を見せる。
「私をバセルダのような戦闘狂と一緒にするな!」
すかさずオズマ達に抗議を行うマリカ。
「バセルダっていえば確か宮廷魔法師第八位の奴だよな。知り合いなのか?」
聞いたことのある人名が出たことに大地が反応する。
「それは知っているさ。なんせ私とオズマは元宮廷魔法師の第三位と第四位だからな。後もう一人、現在前線で指揮をとっている元第五位のディークって奴もいる。」
どうりで唯者ではない覇気を纏っているわけだ。
インプットを使わずして一目でマリカが強者だと見抜いていた大地は、マリカが宮廷魔法師であったということを聞いて納得した表情を見せる。
「そういえばディランチ連邦は皇帝の人間至上主義宣言をきっかけに離反した兵によって作られた国家だったな。」
「そうだ。そして何を隠そうその離反を先導したのがこのマリカなのだよ!」
無い胸を必死には張って自慢げに答えるマリカ。
「そうか。」
自信満々に答えるマリカとは対照的にそっけない態度で返す大地。
「まぁそこら辺の話は手合わせ後でも遅くはないだろう。まずは親睦を深める意味も込めて模擬戦をしようではないか!」
マリカは両手を広げ、まるで演説でもしているかのように声を張り上げると、早足に部屋から出て行こうとする。
「これはもう手合わせをするしかないってことか?」
「申し訳ない。私達ではもう止められない。」
「はぁ・・・まさかこんなことになるとは予想していなかったな。」
オズマが深くため息をつく大地に頭を下げてマリカの暴走について謝罪していると、扉の奥で大地達の名前呼ぶマリカの声が響いてくる。
手合わせをするしかないと悟った大地は平謝りを繰り返すオズマをなだめ、模擬戦の場となる広場まで案内してもらった。
「よし。とりあえず大地の相手は私がするとして。後はこんな感じでどうだ。」
広場に着くとマリカが楽しそうに地面に木の枝を使って模擬戦の組み合わせを作っていく。
地面にはオズマVS猫耳娘(赤)、ジグルVS猫耳娘(黒)、ライゼンVS熊男、と書かれていた。
「猫耳娘(赤)って・・・私の名前はメリアよ。」
「私の名前はルルです! 断じて猫耳娘(黒)なんかじゃありません!」
メリアとルルは自分の指しているであろう名前を見て、マリカを激しく睨みつける。
「はっはっは! 熊男ってまんまじゃねえか!」
ドグマは相変わらずの通常運転のようで熊男という名前を見て大笑いしている。
「それで最初はその組み合わせで模擬戦をするんだ?」
「こちらとしてはまずは小手調べでライゼンに出てもらおうか。誰かライザンを呼んで来い!」
マリカはワクワク感を身体中から滲ませながら、部下にライゼンを呼ぶように指示を出す。
部下に指示を出してしばらくした頃、金髪の大柄の男が広場へとやってきた。
「マリカさん。訓練中に急に呼び出すのはやめて下さいって何回も言ってるじゃないですか。」
「おぉライゼンすまないな! 早速だが今から模擬戦を行うことになった。お前が先鋒だ。ディランチ連邦の兵の強さをあいつらに見せてやってくれ。」
ライゼンはうんざりした様子を見せながら渋々広場の真ん中へと向かっていく。
「大地の旦那。本気でやっていいのかい?」
大地はすかさずライゼンにインプットを行い、能力値や保持スキルについて見ていく。
能力値は腕力と体力がBで俊敏性と魔力がCか。保持スキルも土魔法にガランと同じ剣技昇華だし、まぁ油断しなければ負けはしないか。
「そうだな・・・うん。相手も中々の猛者らしいから本気でやっても死にはしないだろう。」
「そうかい! 最近鍛冶仕事しかしてこなかったからな。なまった身体を動かす運動には丁度いいってもんだ!」
いやドグマは鍛冶師だろ? 鍛冶仕事ばかりしていていいんだぞ。
肩を振りまわしながら意気揚々とライザンの待つ広場中央へと向かっていくドグマの背中を見つめながら、やっぱりドグマは兵士をすればいいんじゃね、と改めて思う大地。
広場の前に両者が並ぶとマリカが待ちきれないといった顔をしながら模擬戦のルールについて説明を始める。
「これから行う模擬戦のルールを説明するぞ! とりあえず相手を殺す気でやれ! 以上だ。」
ちょちょっと待て! そんなのもはやルールではないだろ!
「マリカ! そんなのもはやルールではなかろう!」
大地が心の中で激しくツッコミをいれていると、オズマが全く同じツッコミをマリカに入れていた。
そんなオズマに向かってマリカは「小さい事を気にするからお前は結婚出来ないんだ」と辛らつな言葉を浴びせる。
オズマは後ろで悪口を言っているマリカを尻目に改めて模擬戦のルールについて説明を行う。
「・・・・仕方ない。マリカに変わって俺がルールについての説明を行おう。まず武器、魔法の類は何を使っても良い。勝敗は片方が降参または戦闘不能の状態になった時点で決定する。また模擬戦中にどちらかの命に関わる状況なった時はこちらが介入を行わせてもらう。その場合は介入によって守られた側の敗北とする。お互い日頃の鍛錬を存分に発揮してくれ。」
つまり死にそうになったら俺達が守ってやるから、思う存分戦えってことか。
あくまで模擬戦なのだということを強調したかのようなオズマの説明を聞いてひとまず安心する大地。
広場に設けられた簡易な観戦席に座りながら、模擬戦の開戦を待っていると、いつの間にか隣にマリカが座っていた。
「大地どうだ! 帝国を退けたお前達の兵の強さ楽しみにしているぞ!」
最初に会った時の凛とした態度は何処にいってしまったのか。
今のマリカはまるで好きなスポーツを観戦しに来た少女のように、今か今かと開戦を待ち望んでいる様子を見せていた。
「そうだ! どうせならこの模擬戦で一つ賭けをしないか?」
マリカは急に何かに思いついたような素振りを見せると、笑顔を浮かべながら大地に賭け事を持ち出してきた。
「これはあくまで親睦を深める為なんだろ? なんで賭けをする話になるんだよ。」
「おっ? 大地は負けることを恐れているのかな? それでは仕方ないな。この話はなか――――」
「いいよ。その話乗ってやる。」
マリカのにやけ顔を見せながらの挑発に耐えられなかった大地は額に小さく青筋を浮かべながらマリカの提案に乗っかってしまう。
「いいね! 国の王たるものそれぐらいの気概がないとな。じゃあ私達が賭けるのは小人族の鍛冶技術でどうかな?」
大地が賭けに乗ってきたことで上機嫌になったマリカは、早速今回の模擬戦に賭ける物の提示をしてきた。
「じゃあ俺達はディシント鋼の加工方法についてでどうだ?」
「ディシント鋼の加工技術だと・・・? 大地の国にはそんな技術があるのか!? わかった。賭けの対象はお互いの鍛冶技術にしよう。」
大地からの提示に真剣な顔つきに戻ったマリカは、少し悩んだ様子を見せた後、大地からの提示を承諾する。
マリカから承諾をもらった大地は、広場中央でライゼンと向かい合っているドグマに、念話でこの模擬戦で勝ち越せば小人族の鍛冶技術を教えてもらえることを伝えた。
『おいおい。そりゃ是が非でも勝たないといけなくなっちまったじゃねえか。』
念話を聞いたドグマは遠目から見てもわかるぐらいやる気に満ち溢れた様子をのぞかせていた。
広場には何処からか模擬戦をやると聞いたディランチの兵達が集まってきていた。
そして開始の合図をするべく広場中央へと審判役の兵が歩いてくる。
マリカの提案によって始まったアースとディランチの模擬戦がいよいよ始まろうとしていた。
大地はジト目をマリカに向ける。
「いやいや手合わせは大事だぞ! これから一緒に戦おうというのだ。お互いの戦い方や戦術を知っておいて損はないはずだ。」
マリカは満面の笑みを見せながら、怪訝そうな顔を見せる大地達に手合わせの必要性について説いていく。
「すまない大地。マリカは少々戦闘狂みたいな一面があってな。少しでも強い奴とみればすぐに手合わせをしようとするのだ。」
オズマやジグルはまたかとばかりに呆れた顔を見せる。
「私をバセルダのような戦闘狂と一緒にするな!」
すかさずオズマ達に抗議を行うマリカ。
「バセルダっていえば確か宮廷魔法師第八位の奴だよな。知り合いなのか?」
聞いたことのある人名が出たことに大地が反応する。
「それは知っているさ。なんせ私とオズマは元宮廷魔法師の第三位と第四位だからな。後もう一人、現在前線で指揮をとっている元第五位のディークって奴もいる。」
どうりで唯者ではない覇気を纏っているわけだ。
インプットを使わずして一目でマリカが強者だと見抜いていた大地は、マリカが宮廷魔法師であったということを聞いて納得した表情を見せる。
「そういえばディランチ連邦は皇帝の人間至上主義宣言をきっかけに離反した兵によって作られた国家だったな。」
「そうだ。そして何を隠そうその離反を先導したのがこのマリカなのだよ!」
無い胸を必死には張って自慢げに答えるマリカ。
「そうか。」
自信満々に答えるマリカとは対照的にそっけない態度で返す大地。
「まぁそこら辺の話は手合わせ後でも遅くはないだろう。まずは親睦を深める意味も込めて模擬戦をしようではないか!」
マリカは両手を広げ、まるで演説でもしているかのように声を張り上げると、早足に部屋から出て行こうとする。
「これはもう手合わせをするしかないってことか?」
「申し訳ない。私達ではもう止められない。」
「はぁ・・・まさかこんなことになるとは予想していなかったな。」
オズマが深くため息をつく大地に頭を下げてマリカの暴走について謝罪していると、扉の奥で大地達の名前呼ぶマリカの声が響いてくる。
手合わせをするしかないと悟った大地は平謝りを繰り返すオズマをなだめ、模擬戦の場となる広場まで案内してもらった。
「よし。とりあえず大地の相手は私がするとして。後はこんな感じでどうだ。」
広場に着くとマリカが楽しそうに地面に木の枝を使って模擬戦の組み合わせを作っていく。
地面にはオズマVS猫耳娘(赤)、ジグルVS猫耳娘(黒)、ライゼンVS熊男、と書かれていた。
「猫耳娘(赤)って・・・私の名前はメリアよ。」
「私の名前はルルです! 断じて猫耳娘(黒)なんかじゃありません!」
メリアとルルは自分の指しているであろう名前を見て、マリカを激しく睨みつける。
「はっはっは! 熊男ってまんまじゃねえか!」
ドグマは相変わらずの通常運転のようで熊男という名前を見て大笑いしている。
「それで最初はその組み合わせで模擬戦をするんだ?」
「こちらとしてはまずは小手調べでライゼンに出てもらおうか。誰かライザンを呼んで来い!」
マリカはワクワク感を身体中から滲ませながら、部下にライゼンを呼ぶように指示を出す。
部下に指示を出してしばらくした頃、金髪の大柄の男が広場へとやってきた。
「マリカさん。訓練中に急に呼び出すのはやめて下さいって何回も言ってるじゃないですか。」
「おぉライゼンすまないな! 早速だが今から模擬戦を行うことになった。お前が先鋒だ。ディランチ連邦の兵の強さをあいつらに見せてやってくれ。」
ライゼンはうんざりした様子を見せながら渋々広場の真ん中へと向かっていく。
「大地の旦那。本気でやっていいのかい?」
大地はすかさずライゼンにインプットを行い、能力値や保持スキルについて見ていく。
能力値は腕力と体力がBで俊敏性と魔力がCか。保持スキルも土魔法にガランと同じ剣技昇華だし、まぁ油断しなければ負けはしないか。
「そうだな・・・うん。相手も中々の猛者らしいから本気でやっても死にはしないだろう。」
「そうかい! 最近鍛冶仕事しかしてこなかったからな。なまった身体を動かす運動には丁度いいってもんだ!」
いやドグマは鍛冶師だろ? 鍛冶仕事ばかりしていていいんだぞ。
肩を振りまわしながら意気揚々とライザンの待つ広場中央へと向かっていくドグマの背中を見つめながら、やっぱりドグマは兵士をすればいいんじゃね、と改めて思う大地。
広場の前に両者が並ぶとマリカが待ちきれないといった顔をしながら模擬戦のルールについて説明を始める。
「これから行う模擬戦のルールを説明するぞ! とりあえず相手を殺す気でやれ! 以上だ。」
ちょちょっと待て! そんなのもはやルールではないだろ!
「マリカ! そんなのもはやルールではなかろう!」
大地が心の中で激しくツッコミをいれていると、オズマが全く同じツッコミをマリカに入れていた。
そんなオズマに向かってマリカは「小さい事を気にするからお前は結婚出来ないんだ」と辛らつな言葉を浴びせる。
オズマは後ろで悪口を言っているマリカを尻目に改めて模擬戦のルールについて説明を行う。
「・・・・仕方ない。マリカに変わって俺がルールについての説明を行おう。まず武器、魔法の類は何を使っても良い。勝敗は片方が降参または戦闘不能の状態になった時点で決定する。また模擬戦中にどちらかの命に関わる状況なった時はこちらが介入を行わせてもらう。その場合は介入によって守られた側の敗北とする。お互い日頃の鍛錬を存分に発揮してくれ。」
つまり死にそうになったら俺達が守ってやるから、思う存分戦えってことか。
あくまで模擬戦なのだということを強調したかのようなオズマの説明を聞いてひとまず安心する大地。
広場に設けられた簡易な観戦席に座りながら、模擬戦の開戦を待っていると、いつの間にか隣にマリカが座っていた。
「大地どうだ! 帝国を退けたお前達の兵の強さ楽しみにしているぞ!」
最初に会った時の凛とした態度は何処にいってしまったのか。
今のマリカはまるで好きなスポーツを観戦しに来た少女のように、今か今かと開戦を待ち望んでいる様子を見せていた。
「そうだ! どうせならこの模擬戦で一つ賭けをしないか?」
マリカは急に何かに思いついたような素振りを見せると、笑顔を浮かべながら大地に賭け事を持ち出してきた。
「これはあくまで親睦を深める為なんだろ? なんで賭けをする話になるんだよ。」
「おっ? 大地は負けることを恐れているのかな? それでは仕方ないな。この話はなか――――」
「いいよ。その話乗ってやる。」
マリカのにやけ顔を見せながらの挑発に耐えられなかった大地は額に小さく青筋を浮かべながらマリカの提案に乗っかってしまう。
「いいね! 国の王たるものそれぐらいの気概がないとな。じゃあ私達が賭けるのは小人族の鍛冶技術でどうかな?」
大地が賭けに乗ってきたことで上機嫌になったマリカは、早速今回の模擬戦に賭ける物の提示をしてきた。
「じゃあ俺達はディシント鋼の加工方法についてでどうだ?」
「ディシント鋼の加工技術だと・・・? 大地の国にはそんな技術があるのか!? わかった。賭けの対象はお互いの鍛冶技術にしよう。」
大地からの提示に真剣な顔つきに戻ったマリカは、少し悩んだ様子を見せた後、大地からの提示を承諾する。
マリカから承諾をもらった大地は、広場中央でライゼンと向かい合っているドグマに、念話でこの模擬戦で勝ち越せば小人族の鍛冶技術を教えてもらえることを伝えた。
『おいおい。そりゃ是が非でも勝たないといけなくなっちまったじゃねえか。』
念話を聞いたドグマは遠目から見てもわかるぐらいやる気に満ち溢れた様子をのぞかせていた。
広場には何処からか模擬戦をやると聞いたディランチの兵達が集まってきていた。
そして開始の合図をするべく広場中央へと審判役の兵が歩いてくる。
マリカの提案によって始まったアースとディランチの模擬戦がいよいよ始まろうとしていた。
応援ありがとうございます!
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