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国始動編
第105話 復調
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スパイごっこを切り上げ、再び大空へと飛びたった大地達。
大地はすぐさま帰ろうとするメリアを無理やり引き止め、今後も必要になるかもしれないからという理由で飛行の練習に付き合ってもらっていた。
『せっかくだから街の様子を見ながら飛行練習してもいいか?』
『まぁ別にいいけど。』
大地はメリアに飛行方法について教えてもらいながら聖騎士団の訓練場へと向かった。
『なんか少しずつではあるがコツがわかってきたぞ。』
大地は野鳥姿での飛行に慣れてくると、調子に乗って宙返りやUターン等をメリアの前で披露する。
『あんた何やってのよ。慣れてきたならもう大丈夫でしょ? じゃあ私は帰るわよ。』
『いやちょっと待ってくれ。調子に乗り過ぎて疲れてきた。少し木の上で休んでからでいいか?』
『勝手に休めばいいでしょ! もうそれだけ飛べれば一人で帰れるじゃない。』
『いやさすがに一人では不安がある。少し休めば帰るから、それぐらい付き合ってくれよ。』
『はぁ~仕方ないわね。わかったわよ。』
メリアはこれ以上言っても意味がないことを悟り、仕方なく大地に付き合うことにした。
二人は訓練場の休憩場の近くに休むのに手頃な木を見つけると、そこにとまって休憩を始めた。
そして三十分後・・・・
『もういいでしょ? 早く帰りましょうよ。』
『いや。もう少し休ませてくれ。』
『どんだけ休めばいいのよ!』
もう体力も回復して帰れるはずなのに、いまだに休憩している大地にジト目を向けるメリア。
その後も二人で「帰る」「休む」とやり取りを繰り返していると、休憩場に獣人と人間が入り混じった騎士団員達とガランが来る。
「お前達は最近特に訓練に励んでいるな。帝国との戦争時に比べ剣技も随分上達している。」
「本当ですか!? ありがとうございます。」
騎士団員達はガランからの称賛の言葉に嬉しそうな声を挙げる。
この人達って・・・・
騎士団員の姿を見たメリアが慌てて王宮へと帰ろうとした時、大地が念話にてメリアを制止する。
『どうしたメリア?』
『いや何でもないわよ。急用を思い出したから帰ろうと思っただけよ。』
『部屋に閉じこもってばっかのお前に急用なんてあるわけないだろうが。お前が王宮に帰ろうとしたのは、あの騎士団員達がお前の部隊にい奴らだからだろ?』
『あんたもしかして・・・』
『まぁとりあえずもう少し休んでいこうぜ。』
メリアは即座に大地が計算してこの場所で休もうと言い出したのだと気づいた。
メリアが自分をはめた大地に文句を言おうとした時、獣人の騎士団員がガランにある事を訪ねだした。
「そういえばメリアさんは元気なんでしょうか?」
「メリアはいまだに部屋に閉じこもっていると聞いている。俺達獣人と同じように魔族も常に白い目で見られてきたからな。それに獣人と違ってこの国に魔族は一人しかいない。そんな状況で正体が俺達にばれてしまったんだ。閉じこもりたくなる気持ちもわからんでもない。」
「そうですか。確かに私達も最初に魔族の姿のメリアさんを見た時、恐怖の感情を覚えたことは事実です。しかしあの時メリアさんが魔族になって敵の将を倒してくれなかったら私達は全員死んでいてもおかしくない状況でした。あの戦いを見ていた私達が命の恩人であるメリアさんを魔族だからといって侮蔑の目でみることはありえません。」
周りを見ると獣人の騎士団員だけでなく、人間の騎士団員達も首を縦に振っていた。
「実際にメリアさんが居なければ俺達は死んでいたしな。」
「他の奴らはともかく、俺達はメリアさんが魔族だろうと関係ないんだけどな。」
「メリアさん元気になんねぇかな。」
口々にメリアの心配を口にする騎士団員達。
どうやら先の戦いで聖騎士団員達の間に種族による差別意識というのは無いと言っても良いぐらいの状態になっているようだった。
『どうだメリア? これほど騎士団の奴らが慕ってくれているのにまだお前は引きこもり生活を続けるのか?』
『あんたスパイごっことか言ってたけど、本当はここに連れてくるのが目的だったわけね。』
メリアは長い時間大地にジト目を向けていたが、ふと憑き物が落ちたような様子を見せると黙ったまま王宮へと飛び立った。
『どうだった大地?』
『忙しい中ありがとうなガラン。多分だがもう大丈夫なんじゃねえかな。』
『礼はいいよ。実際こいつらはずっとメリアの心配をしていたからな。』
『そうか。ガランは優しいねぇ~』
『おいまた茶化してるだろ?』
『じゃあ俺も帰るわ! 残りの訓練も頑張れよ!』
「あっおい! ちょっと待て!」
大地はガランに一言お礼を告げると、ガランの静止も聞かずにそのまま空へと飛び立ち、王宮へと帰っていった。
翌日。メリアの部屋の前にはルルの姿があった。
ルルはメリアが部屋へと閉じこもってから毎日のようにメリアの部屋に食事を運んでいた。
コンコンッ
「メリアちゃん? 朝ごはん持ってきたから入るね。」
メリアからの返事はなかったが、ルルは気にした様子もなく、物音を立てないようにゆっくりとメリアの部屋へと入る。
メリアは閉じこもって以来これまでノックに返事をしたことはなかった。
ルルはそのまま食事をテーブルの上に置き、ベッドで寝ていると思われるメリアに目を向ける。
「あれ・・・・メリアちゃんがいない?」
いつもならいるベッドの上にメリアの姿がないことに気付いたルルは慌てた様子で部屋の中を見渡し始める。
「メリアちゃん! 何処にいるの!」
しかし部屋中いくら探しても、どれだけ名前を呼んでも、メリアが姿を現さない。
焦ったルルがメリアがアースから出て行ったのではないかと思った時、部屋の入口からルルの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ルル! やっぱり私の部屋にいたのね。丁度入れ違いになったのかしら。」
「メリアちゃん・・・」
そこにはいつもと変わらない様子に戻っていたメリアの姿があった。
ルルはメリアの元へと走っていくとそのまま激しくメリアに抱きつく。
「良かったぁ! メリアちゃんが元気になったよぉ!」
「ルル。今までごめんなさいね。少しナイーブになり過ぎていたみたい。」
「全然いいよ! こうしてメリアちゃんが元気になってくれただけで充分だよ!」
ルルが嬉々とした様子でメリアの胸に頭を擦りつけていると、大地が眠たそうな顔をしながら二人の前に現れた。
「おっメリア。」
「あっ大地・・・」
大地はメリアの様子を見て大きなにやけ顔を見せる。
メリアは大地の表情に気づくと、少し顔を赤くしながらも怪訝そうな顔を大地に向ける。
「どうしたのメリアちゃん?」
「いや何でもないわ。それよりもわざわざ朝食持ってきてくれたところ申し訳ないのだけど、せっかくだし外で朝食を食べない?」
「えっ! 全然気にしなくていいよ! 今アースにはメリアちゃんが知らない美味しい料理いっぱいあるんだよ! 私が案内してあげる!」
「じゃあ俺も一緒に――――」
「あんたは私の部屋にある朝食あげるからそれを食べなさい。」
メリアは冷たく大地に言い放つとルルの手を引っ張って王宮の出口へと走っていく。
やれやれ世話の焼けるおばあちゃんだな。
大地は面倒くさそうな顔をしながらも、見慣れた二人の後ろ姿を見て小さい笑みを浮かべた。
大地はすぐさま帰ろうとするメリアを無理やり引き止め、今後も必要になるかもしれないからという理由で飛行の練習に付き合ってもらっていた。
『せっかくだから街の様子を見ながら飛行練習してもいいか?』
『まぁ別にいいけど。』
大地はメリアに飛行方法について教えてもらいながら聖騎士団の訓練場へと向かった。
『なんか少しずつではあるがコツがわかってきたぞ。』
大地は野鳥姿での飛行に慣れてくると、調子に乗って宙返りやUターン等をメリアの前で披露する。
『あんた何やってのよ。慣れてきたならもう大丈夫でしょ? じゃあ私は帰るわよ。』
『いやちょっと待ってくれ。調子に乗り過ぎて疲れてきた。少し木の上で休んでからでいいか?』
『勝手に休めばいいでしょ! もうそれだけ飛べれば一人で帰れるじゃない。』
『いやさすがに一人では不安がある。少し休めば帰るから、それぐらい付き合ってくれよ。』
『はぁ~仕方ないわね。わかったわよ。』
メリアはこれ以上言っても意味がないことを悟り、仕方なく大地に付き合うことにした。
二人は訓練場の休憩場の近くに休むのに手頃な木を見つけると、そこにとまって休憩を始めた。
そして三十分後・・・・
『もういいでしょ? 早く帰りましょうよ。』
『いや。もう少し休ませてくれ。』
『どんだけ休めばいいのよ!』
もう体力も回復して帰れるはずなのに、いまだに休憩している大地にジト目を向けるメリア。
その後も二人で「帰る」「休む」とやり取りを繰り返していると、休憩場に獣人と人間が入り混じった騎士団員達とガランが来る。
「お前達は最近特に訓練に励んでいるな。帝国との戦争時に比べ剣技も随分上達している。」
「本当ですか!? ありがとうございます。」
騎士団員達はガランからの称賛の言葉に嬉しそうな声を挙げる。
この人達って・・・・
騎士団員の姿を見たメリアが慌てて王宮へと帰ろうとした時、大地が念話にてメリアを制止する。
『どうしたメリア?』
『いや何でもないわよ。急用を思い出したから帰ろうと思っただけよ。』
『部屋に閉じこもってばっかのお前に急用なんてあるわけないだろうが。お前が王宮に帰ろうとしたのは、あの騎士団員達がお前の部隊にい奴らだからだろ?』
『あんたもしかして・・・』
『まぁとりあえずもう少し休んでいこうぜ。』
メリアは即座に大地が計算してこの場所で休もうと言い出したのだと気づいた。
メリアが自分をはめた大地に文句を言おうとした時、獣人の騎士団員がガランにある事を訪ねだした。
「そういえばメリアさんは元気なんでしょうか?」
「メリアはいまだに部屋に閉じこもっていると聞いている。俺達獣人と同じように魔族も常に白い目で見られてきたからな。それに獣人と違ってこの国に魔族は一人しかいない。そんな状況で正体が俺達にばれてしまったんだ。閉じこもりたくなる気持ちもわからんでもない。」
「そうですか。確かに私達も最初に魔族の姿のメリアさんを見た時、恐怖の感情を覚えたことは事実です。しかしあの時メリアさんが魔族になって敵の将を倒してくれなかったら私達は全員死んでいてもおかしくない状況でした。あの戦いを見ていた私達が命の恩人であるメリアさんを魔族だからといって侮蔑の目でみることはありえません。」
周りを見ると獣人の騎士団員だけでなく、人間の騎士団員達も首を縦に振っていた。
「実際にメリアさんが居なければ俺達は死んでいたしな。」
「他の奴らはともかく、俺達はメリアさんが魔族だろうと関係ないんだけどな。」
「メリアさん元気になんねぇかな。」
口々にメリアの心配を口にする騎士団員達。
どうやら先の戦いで聖騎士団員達の間に種族による差別意識というのは無いと言っても良いぐらいの状態になっているようだった。
『どうだメリア? これほど騎士団の奴らが慕ってくれているのにまだお前は引きこもり生活を続けるのか?』
『あんたスパイごっことか言ってたけど、本当はここに連れてくるのが目的だったわけね。』
メリアは長い時間大地にジト目を向けていたが、ふと憑き物が落ちたような様子を見せると黙ったまま王宮へと飛び立った。
『どうだった大地?』
『忙しい中ありがとうなガラン。多分だがもう大丈夫なんじゃねえかな。』
『礼はいいよ。実際こいつらはずっとメリアの心配をしていたからな。』
『そうか。ガランは優しいねぇ~』
『おいまた茶化してるだろ?』
『じゃあ俺も帰るわ! 残りの訓練も頑張れよ!』
「あっおい! ちょっと待て!」
大地はガランに一言お礼を告げると、ガランの静止も聞かずにそのまま空へと飛び立ち、王宮へと帰っていった。
翌日。メリアの部屋の前にはルルの姿があった。
ルルはメリアが部屋へと閉じこもってから毎日のようにメリアの部屋に食事を運んでいた。
コンコンッ
「メリアちゃん? 朝ごはん持ってきたから入るね。」
メリアからの返事はなかったが、ルルは気にした様子もなく、物音を立てないようにゆっくりとメリアの部屋へと入る。
メリアは閉じこもって以来これまでノックに返事をしたことはなかった。
ルルはそのまま食事をテーブルの上に置き、ベッドで寝ていると思われるメリアに目を向ける。
「あれ・・・・メリアちゃんがいない?」
いつもならいるベッドの上にメリアの姿がないことに気付いたルルは慌てた様子で部屋の中を見渡し始める。
「メリアちゃん! 何処にいるの!」
しかし部屋中いくら探しても、どれだけ名前を呼んでも、メリアが姿を現さない。
焦ったルルがメリアがアースから出て行ったのではないかと思った時、部屋の入口からルルの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ルル! やっぱり私の部屋にいたのね。丁度入れ違いになったのかしら。」
「メリアちゃん・・・」
そこにはいつもと変わらない様子に戻っていたメリアの姿があった。
ルルはメリアの元へと走っていくとそのまま激しくメリアに抱きつく。
「良かったぁ! メリアちゃんが元気になったよぉ!」
「ルル。今までごめんなさいね。少しナイーブになり過ぎていたみたい。」
「全然いいよ! こうしてメリアちゃんが元気になってくれただけで充分だよ!」
ルルが嬉々とした様子でメリアの胸に頭を擦りつけていると、大地が眠たそうな顔をしながら二人の前に現れた。
「おっメリア。」
「あっ大地・・・」
大地はメリアの様子を見て大きなにやけ顔を見せる。
メリアは大地の表情に気づくと、少し顔を赤くしながらも怪訝そうな顔を大地に向ける。
「どうしたのメリアちゃん?」
「いや何でもないわ。それよりもわざわざ朝食持ってきてくれたところ申し訳ないのだけど、せっかくだし外で朝食を食べない?」
「えっ! 全然気にしなくていいよ! 今アースにはメリアちゃんが知らない美味しい料理いっぱいあるんだよ! 私が案内してあげる!」
「じゃあ俺も一緒に――――」
「あんたは私の部屋にある朝食あげるからそれを食べなさい。」
メリアは冷たく大地に言い放つとルルの手を引っ張って王宮の出口へと走っていく。
やれやれ世話の焼けるおばあちゃんだな。
大地は面倒くさそうな顔をしながらも、見慣れた二人の後ろ姿を見て小さい笑みを浮かべた。
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