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国始動編

第99話 国の在り方

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半日をかけてアースへと到着した大地は既に真っ暗となった空を眺めながら新たなペンタゴンの作成を行っていた。

道中犬斗とドグマからユークとミッテの民を連れてアースに向かっていると念話で報告を受けていた。時間的にそろそろつく頃だろう。

シャマールの民の誘導は現在ルルやレイ達が行ってくれている。

「とりあえず二つぐらい作っておくか。」

大地は手慣れた手つきで既に建てている二つのペンタゴンの両サイドに隣接する形で新たなペンタゴンを二つ作成していく。

「じゃあ後は中か。」

あっという間に二つのペンタゴンを作成した大地はペンタゴン内部に入り、必要な建造物を次々と建てる。

大地が二つのペンタゴン内部の建造物を作り終えた頃、ようやくミッテとユークの民を乗せた大型バスがアースに到着した。

「おぉ・・・更に凄みが増しましたね。」

犬斗は更に大きくなったペンタゴンに圧倒されながらも、護送してきた住民達をペンタゴン内に誘導していく。

「大地殿この建物は一体・・・?」

初めてペンタゴンを見たヘクトルはたまらず大地に説明を求めてきた。

「それは中に入って説明させてもらう。今はとりあえず住民の誘導を優先しよう。」

シャマール、ミッテ、ユークから連れてきた住民は合計で何十万人にもなっていた。

住み分けなどまた明日から行うことにしてとりあえず住居へと案内する大地達。

全員の誘導が終わった頃にはすでに朝日が昇り始めていた。





住民の誘導後、昼頃まで仮眠をとった大地はヘクトルが休んでいる客室を訪れていた。

「大地殿か。私に何か用か?」

「いやちょっとヘクトルさんに頼み事があってな。ヘクトルさんは銀次郎さんから聞いた日本についての話を全てノートに残していたんだよな?」

「あぁ聞いた話は全て書き記しているが。」

「そのノートは今でも持っているか?」

「あぁ私のノートは銀次郎さんのノートと同じ場所に隠していたから今は私の手元にある。」

「そうか。もし大丈夫であればその内容を音読してくれないか? この世界の文字はまだ読めなくてな。」

「それぐらいなら良いが。」

ヘクトルは大地にノートの音読を依頼されると、手持ちのカバンからノートを何冊か取り出し音読を始めた。

ヘクトルが十年以上に渡って書き留めた日本の情報量は膨大な量を誇っていた、日本の食文化やサブカル等の小さなことから、日本の成り立ちまでの歴史等といった部分まで幅広く書き留められていた。

特に日本の政治の在り方については特に細かく記入されており、日本における省庁の役割や議会の仕組みまでありとあらゆる情報が書き込まれていた。

ヘクトルが休憩を挟みながら全てのノートを音読し終えた時、大地がヘクトルにあるお願いをし始めた。

「ヘクトルさん。もしあなたさえ良ければこの国の政治をお願いしたいと思っているのだが。」

「大地殿!? 急に何を言っているのだ!」

大地の提案にさすがのヘクトルも慌てた様子を見せる。

「日本の政治について知っているヘクトルさんならわかると思うが、この国は現在民主主義を謳ってはいるものの王が存在するというなんとも不自然な状態にある。まぁ急に民主主義だから国の政治はお前らが決めろなんて言える環境ではなかったから仕方なく一時的に俺が王という立場をとっている訳ではあるが。だがいつまでもこんな状況を続けていくわけにはいかない。俺は出来れば日本の政治に精通しているヘクトルさんに先頭に立ってこの国の在り方を作っていってほしいと思っている。」

「いきなりそのような事を言われてもそう簡単に引き受けれる話ではなかろう。それに私はミッテで何度も失敗を繰り返しているのだぞ? とても私に務まる役ではなかろう。」

「もちろん出来る限り俺も協力する。それにここはミッテの時とは違って周囲に味方はいくらでもいる。銀次郎さんの意志を叶えるためだと思って引き受けてくれないか?」

「銀次郎さんをここで出してくるとは大地殿もなかなかの策士だな。そう言われてしまうと断われないではないか。」

「確かにさっきのは少し卑怯だったかもしれないな。それで答えは?」

「わかった。微力ながらこの国の為に頑張らせてもらうよ。」

「ありがとう。今後ともよろしく。」

二人は笑顔で硬く握手を交わし、微笑みあった。

ヘクトルから快く内政に関しての協力を得た大地はその後、主要メンバーに王宮の会議室へと集まるように声をかけていた。

「みんなお疲れ様。おかげで大方のトームの人々をペンタゴンに避難させることが出来た。これで仮に帝国がトームの地に侵略してきたとしてもある程度対応出来るだろう。」

大地はみんなに一言お礼を述べるとさっそく集まってもらった理由を話す。

「今回みんなに集まってもらったのは、アースの今後の方針について話しておこうと思ったからだ。」

「今後の方針ってその法律ってやつ以外にまだ何か決まり事でも作るのか?」

「また難しい話になるんですか・・・」

ガランとフィアはあからさまに嫌そうな顔を見せる。

「まぁ多少小難しい話にはなるがその点に関してはヘクトルやヘイデンにお願いしようと思っているからフィアは何となく理解してもらえたらいいよ。」

「ちょっと待て! 俺も何となくでいいんだよな?」

「ガランは法律を守れない者達を取り締まる組織の長だろうが。ちゃんと細部まで理解してもらわないと困る。」

「マジか・・・。」

途端にガランは両手で頭を抱え出す。それを見たマヒアとケンプフが賢明にガランを励ましている。

「まぁ細かい事は後で説明するとして、とりあえずは議会の設立と各種大臣の任命だな。」

「「「議会?」」」

ヘクトルや犬斗以外の全員が首をかしげる。

「まぁ簡単に言うと国の在り方やルールを決める場所だ。俺の世界の国では国民投票によって選ばれた人達が集まって新しい法律とか条令を決めたりしていたんだ。それをアースでも行おうと思う。」

その後大地は大臣の役割についても説明を行った。

現在大地がアースに必要だと考えている大臣は日本でいうところの内閣総理大臣、法務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、防衛大臣あたりであった。

外務大臣、環境大臣、国土交通大臣も必要になれば任命する予定ではあるが、基本的に外の国の者とのやり取りは大地も参加するであろうし、街の環境や道路関係に関しても現在は大地のアウトプットにて再現している。

そう考えた大地はこの三つの大臣を除去し残りの大臣の任命を行う予定であった。

「本当は民の投票によって議員を選抜したいのだが、急にそんなことを言ってもペンタゴンの住民は混乱するだけだろうからな。ひとまずは住民に議員を募る形になると思う。不公平がないように今ある四つのペンタゴンから同じ人数を募る形にする予定だ。それと同時に各大臣の元で働く官僚も必要になるな。それも議員と同じ形で募るとしよう。」

次々と聞いたことのない単語を語り始める大地にとうとう頭を抱えるフィアやルル。

ガランに至っては頭を抱えたまま固まってしまっている。

「大地殿。流石に初めて聞くもの達からしたらあまりに難しすぎる話ではないですかな?」

その様子を見たヘクトルがすかさず大地を制止する。

ヘクトルに指摘された大地はふと周りに目線を配る。

こりゃみんな理解出来ていないな・・・

みんなの表情から自身の構想がみんなに伝わっていないことに気付いた大地。

「う~ん。まぁやっていくうちに理解してくれればいい。それにあくまで俺のいた世界の国の制度を参考にするというだけで、後々はみんながやりやすいようにしていってくれたらいいよ。というわけでこれからその大臣を任命していきたいと思う。」

大地は口で説明するより実際にやっていきながらの方が理解しやすいと判断し、まずは大臣の任命を行った。


内閣総理大臣 ヘクトル
法務大臣   レイ
財務大臣   ヘイデン
文部科学大臣 リリス
厚生労働大臣 犬斗
農林水産大臣 ゼーレ
経済産業大臣 後々公募
防衛大臣   ガラン


大地により大臣に任命された者達はヘクトルやレイを除いて一様に悲鳴に似た声を挙げる。

「各大臣の仕事に関してはまた個別で説明するからとりあえずは自分達が国の一翼を担っているという自覚だけは持っておいてくれ。」

そういって大地が会議を終わらせ席を立った時、全員が疑問を感じていたであろうことについてガランが大地に指摘した。

「大地は?」

すると大地はニヤリと笑みを浮かべ、勝ち誇ったような顔を見せた。

「俺はこの国の王なんだろ? 民主主義を謳う国で王が政治に介入しては本末転倒だろうが。君臨すれども統治はせずってな。だから俺は王なんてしたくないって言ったのにお前らが言うから仕方なく王様なんて柄にもない役やってるんだぞ。だったら内政ぐらいはお前達でやってもらわないとな。精々頑張ってくれよ大臣達よ。」

大地はそう告げると満面の笑みを浮かべながら会議室を後にした。

大地が出て行った後の会議室にはガランやゼーレの悲鳴にも似た叫び声が響いていた
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