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トーム攻略編
第77話 初めての友達
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ルルにはゼルターの魔法を喰らった様子はなく、むしろメリアから生命力をもらったことで自分で立つ程度までに回復していた。
「無傷だと・・・?」
「あんたの土魔法程度で私の張った黒霧が破れるわけないでしょ?」
無傷のルルの姿に驚愕しているゼルターを見て、鼻で笑う仕草を見せるメリア。
「そんな馬鹿な。私の魔法が纏った程度のあんな霧に防がれただと!?」
ゼルターは自分の攻撃が薄く纏っただけの障壁と呼ぶにはあまりにお粗末に見える黒霧に防がれたことに焦りの声を挙げる。
ルルの周囲にメリアが張った黒霧はモイヤー戦の時と同じで腐蝕効果を含んだものであった。
しかしモイヤー戦の時と決定的に違う点が一つだけある。
それは魔法を行使した者の保持魔力量の差だ。
人間や獣人の姿に自由自在その姿を変えられるメリアの変換魔法。
変換魔法のスキル説明欄では以下のような説明がなされている。
スキル名 変換魔法
物体の性質を変換させることが出来るスキル。
性質を変換させる物体の種類や変換させる範囲の広さについてはその使用者の知識に則する。
またこの魔法は一つの物事の事情にのみ作用させることが出来る。
つまり変換魔法で獣人に化けていた時のメリアは見た目等の表層的な部分のみを変換させていたのではなく、身体能力や行使できる魔力量等の能力そのものまで獣人のレベルにまで落としていたことになる。
魔族というのは本来この世界に存在する種族の中でトップレベルの身体能力、魔力量を誇る種族である。
魔族本来の姿で放った黒霧はモイヤー戦で放ったものとは比にならない腐蝕速度を誇り、ゼルターの放った迷彩ゴーレムや土弾はその黒霧に触れた途端に塵の様にその姿を腐敗させていた。
「さぁそろそろ終わらせましょうか。」
メリアは背中から鮮やかな深紅の羽を生やすと上空へと飛び上がった。
上空へと飛び上がったメリアは全身に魔力を練りはじめる。
するとメリアの深紅の羽が段々と黒く染まっていく。
メリアが攻撃魔法の準備を始めたのだと気づいたゼルターはその魔法に備えて周辺に何重にも強固な結界魔法を張っていく。
「私の魔法ではあなたを倒せないことは認めましょう。しかしこの結界魔法がある限り、あなたに私を倒すことは出来ない!」
これまで以上に層を成していく結界魔法。
結界魔法の防御性能に絶対的な自信を持っているゼルターは結界を張り終えると、自身の真後ろに逃走用の地下通路を作成していく。
自身の攻撃が通用しない以上、この戦いに勝ち目がないことを冷静に判断していたゼルターは、この戦場を一時離脱し西側の魔族の姿となっているアーヴに協力を依頼するつもりであった。
ゼルターが姿を隠すための地下通路を作成し終えた頃、メリアの深紅の羽は漆黒へと変化していた。
「これで終わりよ。さようならゼルター。」
ゆっくりと右手をゼルターに向けるメリア。
その瞬間メリアの前方に黒霧を纏った大きな赤い蛇が現れた。
黒霧を纏った赤い蛇は凄まじい速さでゼルターに迫っていく。
「私は陛下の為にもこんなところで死ぬわけにはいかないのです!」
ゼルターはメリアが魔法を発動させた瞬間、ア作成した西側の城門に続く地下通路に逃げ込む。
ゼルターの張った結界魔法にメリアの放った赤い蛇がぶつかっていく。
赤い蛇は何重にも張られた結界魔法を腐蝕させて破っていく。
結界魔法に大きな穴を開けながらゼルターへと接近していく赤い蛇。
しかし結界魔法に阻まれ続けた赤い蛇は徐々に勢いを削がれていく。
「やっぱり結界魔法というのはやっかいな代物ね。」
ゼルターが逃走していることに気付いているメリアは焦った様子で赤い蛇に魔力を注ぎ込んでいく。
メリアが結界魔法に苦慮していた時、結界魔法が赤い蛇を防いでいる間に地下通路を抜ける必要があると感じていたゼルターは全速力で地下通路を駆け抜けていた。
「魔族に寄生しているアーヴならメリアを倒せるはず。早く伝えなければ。」
ゼルターは地下通路の床を土魔法により移動式にすることで素早い速度でアーヴの元へと向かっていた。
また自身の張った結界が破られた時のことを考え、背後に新たな結界魔法を張りながら移動するという徹底ぶりでメリアの魔法に備えていた。
念には念を入れて逃走していたゼルターだったが、とうとう地上に張っていた結界魔法が破られ、赤い蛇が地下通路に侵入してきた。
背後に大きな魔力を持った蛇が現れたのを見て、焦った様子で移動式の床の速度を上げるゼルター。
「私の結界魔法がこんな短時間で破られるとは。敵を甘く見過ぎましたか。」
ゼルターは背後に何重もの結界は張り続けながら赤い蛇から逃げていく。
しかしメリアから魔力を再度込められた赤い蛇は速度を緩めることなく、いとも簡単に結界魔法を食い荒らしていく。
「このままでは追いつかれる。ならば!」
距離を徐々に詰めてくる赤い蛇に逃げ切るのは不可能だと判断したゼルターは、自身の周囲に結界魔法に土魔法の強度を練り込んだ強化結界を張った。
ゼルターが強化結界を張り終えたのと同時に赤い蛇がゼルターを飲み込む。
「うぐぐぐぐ・・・」
強化結界に魔力を注ぎこみ赤い蛇の腐蝕作用に耐えるゼルター。
しかし魔族であるメリアに魔力量で叶うはずもなく、徐々に強化結界が破られていく。
「私はまだ・・・死ねないんだぁぁあ!」
ゼルターは赤い蛇の腐蝕作用により欠けていく強化結界に魔力を注ぐことで結界を再生していく。
赤い蛇とゼルターが腐蝕と再生を繰り返していると、徐々に赤い蛇の腐蝕作用が薄れてきた。
「後少しですかね・・・」
ゼルターも魔力の消費が激しく呼吸に乱れが見られている。
しかし命懸けで結界を張り続けたゼルターは遂に赤い蛇からその身を守ることに成功した。
「はぁはぁ・・・」
全ての魔力を消費したことでその場で崩れるように倒れ込むゼルター。
しかしメリアをこのまま放っておくわけにはいかない。
ゼルターは魔力が尽きている身体に鞭を打ち、アーヴのいる西側の城門に向け歩き出した。
「仕留めきれなかった?」
メリアは自身の放った赤い蛇の魔力が消えたのを感じ、ゼルターを仕留めきれなかったことを理解していた。
追撃しようとも考えたが、地下に入り遠くまで逃げているゼルターに追い付くのは至難の技だ。
それにあの赤い蛇を凌ぐ為にゼルターが多くの魔力を消費したことは容易に想像出来る。
今のゼルターには戦闘を行える程の魔力は残っていないだろう。
そう考えたメリアはまずは優先すべきはルルの治療だと考え、ルルの元に向かった。
「ルル大丈夫!?」
「うん。メリアちゃんのおかげで何とかね。」
「ルルごめんなさい。ゼルターには逃げられてしまったわ。」
「メリアちゃんが謝ることじゃないよ! それにしてもメリアちゃんの魔法凄かったね!」
メリアは今までと変わらない屈託のない笑顔を向けてくるルルを見て、ルルは魔族の姿を見てなお、本当に友達でいてくれるのだと強く実感する。
「メリアちゃん? どうしたの顔が少し赤いよ?」
「えっ!? 赤いのは元からよ!」
本当の意味での初めての友達が出来たメリアは照れくさそうな様子を見せる。
「とにかく! まずはあなたの治療が先よ!」
メリアは照れて赤くなっている顔を隠すと、ルルを軽々と抱きかかえ、リリスのいる西の城門へと飛びたった。
「無傷だと・・・?」
「あんたの土魔法程度で私の張った黒霧が破れるわけないでしょ?」
無傷のルルの姿に驚愕しているゼルターを見て、鼻で笑う仕草を見せるメリア。
「そんな馬鹿な。私の魔法が纏った程度のあんな霧に防がれただと!?」
ゼルターは自分の攻撃が薄く纏っただけの障壁と呼ぶにはあまりにお粗末に見える黒霧に防がれたことに焦りの声を挙げる。
ルルの周囲にメリアが張った黒霧はモイヤー戦の時と同じで腐蝕効果を含んだものであった。
しかしモイヤー戦の時と決定的に違う点が一つだけある。
それは魔法を行使した者の保持魔力量の差だ。
人間や獣人の姿に自由自在その姿を変えられるメリアの変換魔法。
変換魔法のスキル説明欄では以下のような説明がなされている。
スキル名 変換魔法
物体の性質を変換させることが出来るスキル。
性質を変換させる物体の種類や変換させる範囲の広さについてはその使用者の知識に則する。
またこの魔法は一つの物事の事情にのみ作用させることが出来る。
つまり変換魔法で獣人に化けていた時のメリアは見た目等の表層的な部分のみを変換させていたのではなく、身体能力や行使できる魔力量等の能力そのものまで獣人のレベルにまで落としていたことになる。
魔族というのは本来この世界に存在する種族の中でトップレベルの身体能力、魔力量を誇る種族である。
魔族本来の姿で放った黒霧はモイヤー戦で放ったものとは比にならない腐蝕速度を誇り、ゼルターの放った迷彩ゴーレムや土弾はその黒霧に触れた途端に塵の様にその姿を腐敗させていた。
「さぁそろそろ終わらせましょうか。」
メリアは背中から鮮やかな深紅の羽を生やすと上空へと飛び上がった。
上空へと飛び上がったメリアは全身に魔力を練りはじめる。
するとメリアの深紅の羽が段々と黒く染まっていく。
メリアが攻撃魔法の準備を始めたのだと気づいたゼルターはその魔法に備えて周辺に何重にも強固な結界魔法を張っていく。
「私の魔法ではあなたを倒せないことは認めましょう。しかしこの結界魔法がある限り、あなたに私を倒すことは出来ない!」
これまで以上に層を成していく結界魔法。
結界魔法の防御性能に絶対的な自信を持っているゼルターは結界を張り終えると、自身の真後ろに逃走用の地下通路を作成していく。
自身の攻撃が通用しない以上、この戦いに勝ち目がないことを冷静に判断していたゼルターは、この戦場を一時離脱し西側の魔族の姿となっているアーヴに協力を依頼するつもりであった。
ゼルターが姿を隠すための地下通路を作成し終えた頃、メリアの深紅の羽は漆黒へと変化していた。
「これで終わりよ。さようならゼルター。」
ゆっくりと右手をゼルターに向けるメリア。
その瞬間メリアの前方に黒霧を纏った大きな赤い蛇が現れた。
黒霧を纏った赤い蛇は凄まじい速さでゼルターに迫っていく。
「私は陛下の為にもこんなところで死ぬわけにはいかないのです!」
ゼルターはメリアが魔法を発動させた瞬間、ア作成した西側の城門に続く地下通路に逃げ込む。
ゼルターの張った結界魔法にメリアの放った赤い蛇がぶつかっていく。
赤い蛇は何重にも張られた結界魔法を腐蝕させて破っていく。
結界魔法に大きな穴を開けながらゼルターへと接近していく赤い蛇。
しかし結界魔法に阻まれ続けた赤い蛇は徐々に勢いを削がれていく。
「やっぱり結界魔法というのはやっかいな代物ね。」
ゼルターが逃走していることに気付いているメリアは焦った様子で赤い蛇に魔力を注ぎ込んでいく。
メリアが結界魔法に苦慮していた時、結界魔法が赤い蛇を防いでいる間に地下通路を抜ける必要があると感じていたゼルターは全速力で地下通路を駆け抜けていた。
「魔族に寄生しているアーヴならメリアを倒せるはず。早く伝えなければ。」
ゼルターは地下通路の床を土魔法により移動式にすることで素早い速度でアーヴの元へと向かっていた。
また自身の張った結界が破られた時のことを考え、背後に新たな結界魔法を張りながら移動するという徹底ぶりでメリアの魔法に備えていた。
念には念を入れて逃走していたゼルターだったが、とうとう地上に張っていた結界魔法が破られ、赤い蛇が地下通路に侵入してきた。
背後に大きな魔力を持った蛇が現れたのを見て、焦った様子で移動式の床の速度を上げるゼルター。
「私の結界魔法がこんな短時間で破られるとは。敵を甘く見過ぎましたか。」
ゼルターは背後に何重もの結界は張り続けながら赤い蛇から逃げていく。
しかしメリアから魔力を再度込められた赤い蛇は速度を緩めることなく、いとも簡単に結界魔法を食い荒らしていく。
「このままでは追いつかれる。ならば!」
距離を徐々に詰めてくる赤い蛇に逃げ切るのは不可能だと判断したゼルターは、自身の周囲に結界魔法に土魔法の強度を練り込んだ強化結界を張った。
ゼルターが強化結界を張り終えたのと同時に赤い蛇がゼルターを飲み込む。
「うぐぐぐぐ・・・」
強化結界に魔力を注ぎこみ赤い蛇の腐蝕作用に耐えるゼルター。
しかし魔族であるメリアに魔力量で叶うはずもなく、徐々に強化結界が破られていく。
「私はまだ・・・死ねないんだぁぁあ!」
ゼルターは赤い蛇の腐蝕作用により欠けていく強化結界に魔力を注ぐことで結界を再生していく。
赤い蛇とゼルターが腐蝕と再生を繰り返していると、徐々に赤い蛇の腐蝕作用が薄れてきた。
「後少しですかね・・・」
ゼルターも魔力の消費が激しく呼吸に乱れが見られている。
しかし命懸けで結界を張り続けたゼルターは遂に赤い蛇からその身を守ることに成功した。
「はぁはぁ・・・」
全ての魔力を消費したことでその場で崩れるように倒れ込むゼルター。
しかしメリアをこのまま放っておくわけにはいかない。
ゼルターは魔力が尽きている身体に鞭を打ち、アーヴのいる西側の城門に向け歩き出した。
「仕留めきれなかった?」
メリアは自身の放った赤い蛇の魔力が消えたのを感じ、ゼルターを仕留めきれなかったことを理解していた。
追撃しようとも考えたが、地下に入り遠くまで逃げているゼルターに追い付くのは至難の技だ。
それにあの赤い蛇を凌ぐ為にゼルターが多くの魔力を消費したことは容易に想像出来る。
今のゼルターには戦闘を行える程の魔力は残っていないだろう。
そう考えたメリアはまずは優先すべきはルルの治療だと考え、ルルの元に向かった。
「ルル大丈夫!?」
「うん。メリアちゃんのおかげで何とかね。」
「ルルごめんなさい。ゼルターには逃げられてしまったわ。」
「メリアちゃんが謝ることじゃないよ! それにしてもメリアちゃんの魔法凄かったね!」
メリアは今までと変わらない屈託のない笑顔を向けてくるルルを見て、ルルは魔族の姿を見てなお、本当に友達でいてくれるのだと強く実感する。
「メリアちゃん? どうしたの顔が少し赤いよ?」
「えっ!? 赤いのは元からよ!」
本当の意味での初めての友達が出来たメリアは照れくさそうな様子を見せる。
「とにかく! まずはあなたの治療が先よ!」
メリアは照れて赤くなっている顔を隠すと、ルルを軽々と抱きかかえ、リリスのいる西の城門へと飛びたった。
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