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トーム攻略編

第50話 ペンタゴン

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マルタでの騒動から一日が経った頃、昨日の熱狂が嘘の様にペンタゴン内の住人は落ち着いた様子を見せていた。

いや落ち着いたというより、落ち着かされたというのが正しいだろう。

昨日ペンタゴンを出現させた大地はリリスの魔力回復ポーションをがぶ飲みしながら、内部の建造物の作成も行っていた。

二十万人は軽く収容出来る広さのペンタゴンに次々と獣人四万人とマルタの住人五万人分の住居を建てる大地の姿を見ていた住人達は、そのうちその視線を熱狂的な視線から神々しい物を崇めるような視線へと変化させていった。

本当に信じられない物を見た人間というのは静かになってしまうものなのかもしれない。

大地はペンタゴン内をクーポラの時と同じ様に居住区、鍛冶、研究区、農業、酪農区に獣士団用の訓練場の四つの区画に分け、それぞれ建造物や必要な物を作成していた。

居住区はクーポラで作成した知識を活かしながら、一つの階に八つの居室を用意した十階建てのマンションを作成し、一棟で八十世帯が住めるマンションを千棟建てた。

もちろん動晶石を活かしたエレベーターや水晶石と熱晶石を組み合わせたシャワーも完備だ。

また大地の試作品である風晶石に熱晶析と冷晶石を組み合わせて作ったエアコンもどきも各部屋に取り付けてある。

他の建造物も日本にある様な近代的な建物になっており、ペンタゴン内はまるで日本にいるのではと錯覚する程のものになっていた。

またペンタゴンの中央には大地達の私室や会議室等の役割を持つ国会議事堂を模して作成した建造物を作成している。

作成当初名前は付けていなかったのだが、それを見たルル達から王宮みたいだぁ~という声をもらったのでそのまま王宮という名前にしている。

現在大地はあらかたの建造物を作り終えた後、住民の居室の割り振り等をレイやゼーレに任せて、残りの主要メンバーを集めて王宮にある会議室へと向かった。

「ふぅ~~~~。」

「よっお疲れさん。創造神。」

「お疲れ様です創造神大地さん。」

「お疲れ様。創造神・・・っぷ、あっはははは! 駄目だわ我慢出来ない。」

「メリアちゃん大地さんを茶化したら駄目だよ!」

会議室ではガランと犬斗が生暖かい目を大地に向け、メリアに至っては我慢出来ずに大爆笑していた。

ルルは青筋を静かに浮かべる大地を見ながら必死にメリアに注意している。

現在、住人の誘導以外に、鍛冶、研究棟の確認をドグマとリリス、農業、酪農棟の確認をフィア、訓練場の確認をマヒアにお願いしており、会議場には大地を含めて五人しかいない。

大地は今後トームでの戦争が本格化する前にどうにかして他の領地の住民の保護をしたいと考えていた。

大地は疲れている身体に鞭を撃って犬斗達に話を始める。

「犬斗とメリアにお願いしたいことがあるんだがいいか?」

「何ですか? マルタでは何もしていませんでしたから元気は有り余ってますよ!」

「面倒くさいことじゃないならいいわよ。」

「多分だが、領主や衛兵がいなくなっっているマルタ以外の街でも同じような事が起きているはずだ。犬斗とメリアには俺が作ったバスと獣士団の一部を使って、ノルヴェス領地以外の他の領地を含む街の住民を保護しここへ連れてきて欲しい。」

「でも獣人に付いてこいって言われて素直についてくるかしら?」

「そこはお前の変換魔法があるだろう。半分程度を人間に化けた状態にすれば、人間がいるってことで言う事を聞いてくれる可能性が高いし、獣人に助けられたっていう印象も与えることが出来る。」

「あのね・・・結構この魔法魔力喰うのよ? まぁやってあげるけど・・・」

メリアは面倒くさそうな顔をしながらも大地の提案を渋々受け入れる。

「後犬斗に関しては道中魔物がいれば出来る限り従魔化しといて欲しい。」

「あぁ確かにアーヴの兵士に結構削られましたからね・・・」

実際犬斗の従魔はアーヴの兵士達の襲撃によりその数を急激に減らしていた。

現在では戦闘用と移動用で計一万程度の数しかいない。

現在残った魔獣達は訓練所の一画に荒野のようなもの設けておりそこで暮らしてもらっている。

犬斗は大地の提案に賛同すると、地図を広げてお互いが回る街や村の打ち合わせを始める。

他の住民の保護を二人任せた大地は今度はガランに戦力増強の為の提案を行う。

「ガランには今回保護した住民の中から獣士団に入る有志を募ってほしい。保護はしたがタダでこれからも住民を養っていくわけにはいかない。今後住民の適性を見ながら農業や鍛冶、研究とそれぞれ仕事をしてもらおうとは考えているが、今一番欲しいのは戦力だ。出来ればでいいから戦力の補強を図ってほしい。」

「獣士団は獣人しかいないからな。入ってくれるかどうか・・・」

「あれなら銃という武器のお披露目でもしてみたらどうだ? この世界で魔法以外に協力な武器があると知れば、魔力適性のない者達でも戦ってくれるかもしれん。あれなら・・・背に腹は代えられないし・・・俺の名前を使え。」

「いいのか? それならある程度集まりそうではあるが。」

ガランはニヤリと笑みを浮かべながら大地の顔を覗く。

大地はうっとうしそうにガランの顔を外に向けると、ガランを牽制するように小声で呟く。

「マヒアに言うぞ。」

若干怒気の籠った声にガランの先程までのにやけ顔が引きつっていく。

「大地それは卑怯じゃないか?」

「何がだ?」

今度は大地がにやけ顔をガランに見せる。

ガランはこれ以上引き下がっても大地にいじられる時間が長くなるだけだと理解すると、逃げるように居住区へと向かった。

大地は逃げるガランを見つめながら、そこで逃げるから進展が遅いんだよと呆れた顔をしていると、ルルが大地に話掛けてきた。

「あのぅ~私は何かありますか?」

「あっルルか? ルルはそうだなぁ~。レイとゼーレの手伝いでもしてやれ。」

「私だけやることないんですか?」

「いやそういう訳じゃないぞ! ・・・そうだ! 俺はこれから戦争が始まった時の布陣や軍の動かし方について考えるつもりなんだが、ぜひルルの意見も聞きたい!」

自分にだけ仕事がないことに頬を膨らませながら怒るルルを見て、焦って自身の仕事の手伝いをお願いする大地。

ルルは大地の焦った様子にジト目を向けながらも、一応仕事をもらえたことや大地と一緒にいれるということで機嫌を直す。

その後大地はルルと一緒に戦争に向けた作戦を練り始めたのだが、ルルの無茶苦茶な意見に振りまわされることになってしまった。

ルルを無理にでもレイ達のところへ送るべきだった・・・

大地は隣で楽しそうに訳の分からない作戦を話すルルを見ながら途方に暮れるのだった。
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