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トーム攻略編
第30話 第三の日本人?
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『そうかわかった。こっちもすぐに終わる。』
大地は犬斗から念話による報告を聞くと、目の前で風の監獄に閉じ込められているジョゼに視線を向ける。
「帝国に歯向かってただで済むと思っているのですか! 今頃ワーレンがトームに潜んでいる密偵に報告している頃です。
今なら何もなかった事にしてあげましょう!すぐにここから出しなさい!」
「おい。お前に悲報だ。そのワーレンって奴は跡形もなく灰になったそうだぞ。ついでにモイヤーってのも死んだとよ。」
「なっ何を馬鹿なことを・・・」
「まぁ信じなくても良いよ。あの世に行けばわかることだ。」
そう言って大地はジョゼを囲む風の監獄をジョゼに向かって狭めていく。
出会った頃の余裕すら感じる横柄な態度とは百八十度変わってしまったジョゼの狼狽えている様子は、なんだか見ていてかわいそうになるレベルだ。
「待て! 私は帝国の暗部部隊だぞ!? 帝国の情報ならいくらでも持っている! 捕虜としての価値は十分あると思うがね!」
ジョゼは風の監獄が迫り、自分を殺しにかかっていることに気付くと、遂には命乞いを始めた。
大地はジョゼのなんとしてでも自分だけは助かろうとする様子を見て、ジョゼの部下であるモイヤーとワーレンに心底同情していた。
メリアと犬斗の話を聞く限り、二人は能力値ではメリア達に劣りながらも自身の特性を活かし、創意工夫を凝らしながら戦っていたらしい。
しかも最後は自身の命すら賭けての特攻。敵ながらその忠誠心と行動力には頭が下がる。
それに比べ、目の前のこれは自称風魔法奥義を破られてからは、冷静な判断が出来ておらず、考えなしに魔法を放つことしかしてこなかった。
正直狼狽したジョゼ程度ならルル達でも勝てただろう。
「情報次第だな。俺達にとって有益な情報なら、考えてやってもいい。」
「ほっ本当か!?」
「とりあえず話せ。」
「わっわかった! これは私も全てを聞いた話ではないのだが、実はこのトームに帝国がスパイを潜り込ませているらしい。なんでも近い内にそのスパイを使ってトーム全域を乗っ取るつもりだそうだ。」
「それで?」
「それでって・・・かなり貴重な情報を提供したんだが?」
「それだけしか情報がないならもう終わらせるぞ?」
「待て待て! 少し時間をくれ! 今私は混乱しているんだ! 少し時間をくれればもっと重要な情報を思い出せる!」
大地は必死に自分の有益性を示そうとするジョゼに「あっそ。」と興味無さ気に返事をすると、ロマを呼び寄せる。
ジョゼが不思議そうな顔を浮かべる中、大地はロマの毛並みの手入れを始める。
「こいつの毛並みの手入れが終わるまでに思い出せ。チャンスはこの一回のみだ。わかったな。」
「わかった!」
そして大地がロマの手入れという名の命へのカウントダウンを始めると、ジョゼは自身の頭からほじくり返すように記憶を遡っていく。
ロマの手入れが半分程終わった頃、白虎に乗ったメリアと犬斗が大地の元に戻って来た。
「大地さん、まだ終わらせて無かったんですか?」
「こいつが情報提供の代わりに助けてくれって言うから、今チャンスを与えているところだ。」
「幹部でもないやつが、帝国が知られて困る情報を持っているとは思えないんだけど。
てかそれよりあんた! 犬斗と念和出来るようにしてたなら、前もって教えなさいよ!最初から知っていれば、雪の中無駄に歩かず済んだのに!」
「あれ? 教えなくてもわかるもんかと思ってたわ。」
「あんたね・・・・」
ロマの手入れをしながら適当に返事を返す大地に怪訝そうな表情を浮かべるメリア。
しかし帝国に疑われていた自分を助けてくれたことに変わりはなかった為、それ以上文句を言おうとはせず大地に自己紹介を行う。
「改めて、メリア=アルバートよ。よろしくね。」
「あぁよろしく。俺は石田大地だ。大地と呼んでくれ。」
ロマの手入れを終えた大地は、メリアに返事を返すとジョゼの元に歩み寄る。
「それで何か思い出したか?」
「・・・あぁ! 命令文書だ! 宮廷魔法師第一位のミキ元帥が三通の文書をトームに出していた! つまり三人のスパイがトームに紛れ込んでいるということだ!」
「ほう。それで宛先は誰だ?」
「それは・・・私はただ文書を部下に届けさせろと渡されただけだ。私が届けるわけではなかったため、宛先は確認していない。」
「それじゃあ意味ないじゃないか。」
「いや待て! 今思い出す!」
ジョゼは頭を抱えながら必死におぼろげな記憶を絞り出そうとする。
「大地。本当にジョゼの言ってることを信じるわけ? 助かりたいばかりに嘘を言ってる可能性もあるわよ? 直接記憶を覗き見るぐらいじゃないと私は信用出来ないわ。」
「うーん・・確かにな。じゃあ直接覗くか?」
「え?・・・嘘でしょ。そんな事出来るわけ・・・」
メリアの発言から、インプットの対象が人であった場合は対象の記憶、知識の閲覧、読み込みも可能だった事を思い出した大地は、ポカンと口を開け、信じられないといった顔をしているメリアを尻目にジョゼの記憶のインプットを始めた。
大地の視界にスマホのアルバム機能のような画面が広がり、ジョゼの記憶が種類によってフォルダ分けされていた。
大地はジョゼの多量の記憶の中から、文書を受け取った時の記憶を探し出す。
記憶フォルダの中に【仕事】という名前のフォルダを見つけそれを開く。
仕事フォルダを開くと多量の記憶データが目の前に並べられた。
多量の記憶データの中から目的の記憶を選別していると【獣人の町】という名前の記憶データが目に留まる。
気になった大地はその記憶を開いた。
「これは・・・・!」
開かれた記憶データは動画の様に当時の状況を再生し始めた。
再生された記憶の映像は一人称目線になっており、どうやら当時のジョゼの目線になっているようだ。
映像は燃えている町を眺めているところから始まっており、町からは人の悲鳴と思われる声が木霊している。
少しの間燃えている町を眺める映像が続くと、部下の兵士が声をかけてきた。
「ジョゼ様。町人全員捕獲しました。」
「そうですか。お疲れさまです。では向かいましょうか。」
兵士から声をかけられると映像が動き出し、帝国が張っていたと思われる自陣のテントへと向かっていく。
テントを潜ると、そこには二十人程度の縄で縛られた獣人達が地面に座らされていた。
「なんで俺達の町を燃やした! 俺達はお前らの言う通り税も納めていたじゃねえか!」
映像が獣人を映すと若いサイのような獣人がこちらを睨みながら吠えていた。
「此度の陛下の命令により、人間以外の種族の身分を奴隷とすることになりました。
あなた達は帝国の奴隷として、鉱山にて魔晶石の発掘に行くことになりましたから、町は不要かと思い処分させてもらいました。」
「ふざけるな! これまで法外な税の要求にも応えてきただろう!」
「むしろこれまであなた達獣人に町まで提供してきたことを感謝してもらいたいものですね。では連行しなさい!」
「くそ! 離せ!」
映像は再びテント越しの燃える町に変わる。
後ろで獣人の悲鳴や抵抗の声が響きわたっており、そこで映像が終わった。
大地はジョゼに対して直ぐにでも殺してしまいそうな衝動を我慢すると、再び目的の記憶を再び探しだす。
仕事フォルダの中の記憶を探していると【トーム】と書かれたフォルダを発見する。
日付を確認すると一番古い日付で今より約半年前の記憶からとなっていた。
一番古い記憶から確認しようと記憶データを開くと先程と同じように映像が現れた。
「日本人?・・・」
開かれた映像にはセミロングの黒髪を持った女性が映っていた。
高そうな革張りの椅子に座るその女性は白い封筒を差し出すと、おもむろに話し出す。
「ジョゼ。お前の部下にこの文書をトームにある宛先まで届けさせろ。」
「承知致しました。」
ジョゼが封筒を受け取ると映像が文書の方へ向く。一番上にある封筒の宛先にはデュセオ領地・マルタの酒場と書かれていた。
その後も映像は続き、残りの二つの文書の宛先まで探ろうとしたが、腕にタトゥーの入った部下に渡すまで封筒は重ねられた状態のままで確認することは出来ず、残り二つの宛先まではわからなかった。
大地は映像に映っていた女性の存在が気になったが、一旦記憶の隅に追いやると、残りのトームに関する記憶を確認する。
しかしその後の記憶はメリアの監視に関するものばかりで、特に気になる情報はなかった。
必要な情報を自身に定着させると、大地はインプットを解き、ジョゼに目を向ける。
ジョゼは大地がインプットを行っている間、必死に記憶を探り思い出そうとしたが、正確な宛先までは思い出すことが出来ていなかった。
「ちょっと待て!・・そうだ! ミッテだ! 宛先はミッテだった!」
ジョゼは死にたくない一心で嘘を着き始める。しかし記憶を覗き見た大地に通用するわけはなかった。
「あぁもういいや。欲しい情報は集めたから。」
「何をいって・・・」
ジョゼの顔が恐怖で凍り付く。目の前にいる大地からはジョゼに対する濃密な殺気が漂っていた。
「最後に一つ聞いていいか? お前が燃やした獣人の町は覚えているか?」
「え!?・・ああ・・覚えている! それに関する情報が欲しいのか! それだったら何でも知っているぞ! あの時獣人の町を燃やす指示を出したのは私だからな!」
「捕らえた獣人はその後どうなった?」
「その後の獣人・・・?多分全員死んでるのではないか。鉱山での労働は一か月持てば良い方の部類に入るからな。」
「そうか。・・・・」
大地は一言返事を返すと、ジョゼを囲っていた風の監獄を狭めていく。
狭められた風の監獄はジョゼの皮膚を切り裂いていく。
「何故!? お前の言う通り知っていることは全て話した! なのに何故だ!」
「お前もこれまで獣人や他の種族に対して同じことをしてきたんだろ? 自分はそんな目に合う訳ないとでも思っていたか? これはお前がこれまでやってきた事への報いだよ。ありがたくもらっとけ!」
「頼む! 何でもするから助けてくれぇ!」
徐々に狭まっていた風の監獄は、その速度をあげると一気にジョゼを巻き込んだ。
「痛い痛い痛い! ぎゃあぁぁぁぁああ!」
全身を風に切り刻まれながら上空へと巻き上がっていくジョゼ。
剣山にはジョゼの断末魔が響き渡る。
断末魔と竜巻が治まるころにはジョゼは物言わぬ風の塵となっていた。
デュセオ領地にいるスパイ、ジョゼの記憶に現れた日本人と思われる女性、そして帝国が既にトームとの戦争に向け動いていたこと、大地は考えないといけない事の多さにうんざりした表情を浮かべながら犬斗達とクーポラへと戻っていった。
大地は犬斗から念話による報告を聞くと、目の前で風の監獄に閉じ込められているジョゼに視線を向ける。
「帝国に歯向かってただで済むと思っているのですか! 今頃ワーレンがトームに潜んでいる密偵に報告している頃です。
今なら何もなかった事にしてあげましょう!すぐにここから出しなさい!」
「おい。お前に悲報だ。そのワーレンって奴は跡形もなく灰になったそうだぞ。ついでにモイヤーってのも死んだとよ。」
「なっ何を馬鹿なことを・・・」
「まぁ信じなくても良いよ。あの世に行けばわかることだ。」
そう言って大地はジョゼを囲む風の監獄をジョゼに向かって狭めていく。
出会った頃の余裕すら感じる横柄な態度とは百八十度変わってしまったジョゼの狼狽えている様子は、なんだか見ていてかわいそうになるレベルだ。
「待て! 私は帝国の暗部部隊だぞ!? 帝国の情報ならいくらでも持っている! 捕虜としての価値は十分あると思うがね!」
ジョゼは風の監獄が迫り、自分を殺しにかかっていることに気付くと、遂には命乞いを始めた。
大地はジョゼのなんとしてでも自分だけは助かろうとする様子を見て、ジョゼの部下であるモイヤーとワーレンに心底同情していた。
メリアと犬斗の話を聞く限り、二人は能力値ではメリア達に劣りながらも自身の特性を活かし、創意工夫を凝らしながら戦っていたらしい。
しかも最後は自身の命すら賭けての特攻。敵ながらその忠誠心と行動力には頭が下がる。
それに比べ、目の前のこれは自称風魔法奥義を破られてからは、冷静な判断が出来ておらず、考えなしに魔法を放つことしかしてこなかった。
正直狼狽したジョゼ程度ならルル達でも勝てただろう。
「情報次第だな。俺達にとって有益な情報なら、考えてやってもいい。」
「ほっ本当か!?」
「とりあえず話せ。」
「わっわかった! これは私も全てを聞いた話ではないのだが、実はこのトームに帝国がスパイを潜り込ませているらしい。なんでも近い内にそのスパイを使ってトーム全域を乗っ取るつもりだそうだ。」
「それで?」
「それでって・・・かなり貴重な情報を提供したんだが?」
「それだけしか情報がないならもう終わらせるぞ?」
「待て待て! 少し時間をくれ! 今私は混乱しているんだ! 少し時間をくれればもっと重要な情報を思い出せる!」
大地は必死に自分の有益性を示そうとするジョゼに「あっそ。」と興味無さ気に返事をすると、ロマを呼び寄せる。
ジョゼが不思議そうな顔を浮かべる中、大地はロマの毛並みの手入れを始める。
「こいつの毛並みの手入れが終わるまでに思い出せ。チャンスはこの一回のみだ。わかったな。」
「わかった!」
そして大地がロマの手入れという名の命へのカウントダウンを始めると、ジョゼは自身の頭からほじくり返すように記憶を遡っていく。
ロマの手入れが半分程終わった頃、白虎に乗ったメリアと犬斗が大地の元に戻って来た。
「大地さん、まだ終わらせて無かったんですか?」
「こいつが情報提供の代わりに助けてくれって言うから、今チャンスを与えているところだ。」
「幹部でもないやつが、帝国が知られて困る情報を持っているとは思えないんだけど。
てかそれよりあんた! 犬斗と念和出来るようにしてたなら、前もって教えなさいよ!最初から知っていれば、雪の中無駄に歩かず済んだのに!」
「あれ? 教えなくてもわかるもんかと思ってたわ。」
「あんたね・・・・」
ロマの手入れをしながら適当に返事を返す大地に怪訝そうな表情を浮かべるメリア。
しかし帝国に疑われていた自分を助けてくれたことに変わりはなかった為、それ以上文句を言おうとはせず大地に自己紹介を行う。
「改めて、メリア=アルバートよ。よろしくね。」
「あぁよろしく。俺は石田大地だ。大地と呼んでくれ。」
ロマの手入れを終えた大地は、メリアに返事を返すとジョゼの元に歩み寄る。
「それで何か思い出したか?」
「・・・あぁ! 命令文書だ! 宮廷魔法師第一位のミキ元帥が三通の文書をトームに出していた! つまり三人のスパイがトームに紛れ込んでいるということだ!」
「ほう。それで宛先は誰だ?」
「それは・・・私はただ文書を部下に届けさせろと渡されただけだ。私が届けるわけではなかったため、宛先は確認していない。」
「それじゃあ意味ないじゃないか。」
「いや待て! 今思い出す!」
ジョゼは頭を抱えながら必死におぼろげな記憶を絞り出そうとする。
「大地。本当にジョゼの言ってることを信じるわけ? 助かりたいばかりに嘘を言ってる可能性もあるわよ? 直接記憶を覗き見るぐらいじゃないと私は信用出来ないわ。」
「うーん・・確かにな。じゃあ直接覗くか?」
「え?・・・嘘でしょ。そんな事出来るわけ・・・」
メリアの発言から、インプットの対象が人であった場合は対象の記憶、知識の閲覧、読み込みも可能だった事を思い出した大地は、ポカンと口を開け、信じられないといった顔をしているメリアを尻目にジョゼの記憶のインプットを始めた。
大地の視界にスマホのアルバム機能のような画面が広がり、ジョゼの記憶が種類によってフォルダ分けされていた。
大地はジョゼの多量の記憶の中から、文書を受け取った時の記憶を探し出す。
記憶フォルダの中に【仕事】という名前のフォルダを見つけそれを開く。
仕事フォルダを開くと多量の記憶データが目の前に並べられた。
多量の記憶データの中から目的の記憶を選別していると【獣人の町】という名前の記憶データが目に留まる。
気になった大地はその記憶を開いた。
「これは・・・・!」
開かれた記憶データは動画の様に当時の状況を再生し始めた。
再生された記憶の映像は一人称目線になっており、どうやら当時のジョゼの目線になっているようだ。
映像は燃えている町を眺めているところから始まっており、町からは人の悲鳴と思われる声が木霊している。
少しの間燃えている町を眺める映像が続くと、部下の兵士が声をかけてきた。
「ジョゼ様。町人全員捕獲しました。」
「そうですか。お疲れさまです。では向かいましょうか。」
兵士から声をかけられると映像が動き出し、帝国が張っていたと思われる自陣のテントへと向かっていく。
テントを潜ると、そこには二十人程度の縄で縛られた獣人達が地面に座らされていた。
「なんで俺達の町を燃やした! 俺達はお前らの言う通り税も納めていたじゃねえか!」
映像が獣人を映すと若いサイのような獣人がこちらを睨みながら吠えていた。
「此度の陛下の命令により、人間以外の種族の身分を奴隷とすることになりました。
あなた達は帝国の奴隷として、鉱山にて魔晶石の発掘に行くことになりましたから、町は不要かと思い処分させてもらいました。」
「ふざけるな! これまで法外な税の要求にも応えてきただろう!」
「むしろこれまであなた達獣人に町まで提供してきたことを感謝してもらいたいものですね。では連行しなさい!」
「くそ! 離せ!」
映像は再びテント越しの燃える町に変わる。
後ろで獣人の悲鳴や抵抗の声が響きわたっており、そこで映像が終わった。
大地はジョゼに対して直ぐにでも殺してしまいそうな衝動を我慢すると、再び目的の記憶を再び探しだす。
仕事フォルダの中の記憶を探していると【トーム】と書かれたフォルダを発見する。
日付を確認すると一番古い日付で今より約半年前の記憶からとなっていた。
一番古い記憶から確認しようと記憶データを開くと先程と同じように映像が現れた。
「日本人?・・・」
開かれた映像にはセミロングの黒髪を持った女性が映っていた。
高そうな革張りの椅子に座るその女性は白い封筒を差し出すと、おもむろに話し出す。
「ジョゼ。お前の部下にこの文書をトームにある宛先まで届けさせろ。」
「承知致しました。」
ジョゼが封筒を受け取ると映像が文書の方へ向く。一番上にある封筒の宛先にはデュセオ領地・マルタの酒場と書かれていた。
その後も映像は続き、残りの二つの文書の宛先まで探ろうとしたが、腕にタトゥーの入った部下に渡すまで封筒は重ねられた状態のままで確認することは出来ず、残り二つの宛先まではわからなかった。
大地は映像に映っていた女性の存在が気になったが、一旦記憶の隅に追いやると、残りのトームに関する記憶を確認する。
しかしその後の記憶はメリアの監視に関するものばかりで、特に気になる情報はなかった。
必要な情報を自身に定着させると、大地はインプットを解き、ジョゼに目を向ける。
ジョゼは大地がインプットを行っている間、必死に記憶を探り思い出そうとしたが、正確な宛先までは思い出すことが出来ていなかった。
「ちょっと待て!・・そうだ! ミッテだ! 宛先はミッテだった!」
ジョゼは死にたくない一心で嘘を着き始める。しかし記憶を覗き見た大地に通用するわけはなかった。
「あぁもういいや。欲しい情報は集めたから。」
「何をいって・・・」
ジョゼの顔が恐怖で凍り付く。目の前にいる大地からはジョゼに対する濃密な殺気が漂っていた。
「最後に一つ聞いていいか? お前が燃やした獣人の町は覚えているか?」
「え!?・・ああ・・覚えている! それに関する情報が欲しいのか! それだったら何でも知っているぞ! あの時獣人の町を燃やす指示を出したのは私だからな!」
「捕らえた獣人はその後どうなった?」
「その後の獣人・・・?多分全員死んでるのではないか。鉱山での労働は一か月持てば良い方の部類に入るからな。」
「そうか。・・・・」
大地は一言返事を返すと、ジョゼを囲っていた風の監獄を狭めていく。
狭められた風の監獄はジョゼの皮膚を切り裂いていく。
「何故!? お前の言う通り知っていることは全て話した! なのに何故だ!」
「お前もこれまで獣人や他の種族に対して同じことをしてきたんだろ? 自分はそんな目に合う訳ないとでも思っていたか? これはお前がこれまでやってきた事への報いだよ。ありがたくもらっとけ!」
「頼む! 何でもするから助けてくれぇ!」
徐々に狭まっていた風の監獄は、その速度をあげると一気にジョゼを巻き込んだ。
「痛い痛い痛い! ぎゃあぁぁぁぁああ!」
全身を風に切り刻まれながら上空へと巻き上がっていくジョゼ。
剣山にはジョゼの断末魔が響き渡る。
断末魔と竜巻が治まるころにはジョゼは物言わぬ風の塵となっていた。
デュセオ領地にいるスパイ、ジョゼの記憶に現れた日本人と思われる女性、そして帝国が既にトームとの戦争に向け動いていたこと、大地は考えないといけない事の多さにうんざりした表情を浮かべながら犬斗達とクーポラへと戻っていった。
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