創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん

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トーム攻略編

第15話 新スキル

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帝国との戦いを終え、戦いで亡くなった仲間の火葬を広場で行う大地達。

フィアやルルは人目もはばからず号泣し、ゼーレやマヒアも目頭に大粒の涙を浮かべ、ガランも後ろ向きのまま肩震わしていた。

この戦いでガランの部隊はガラン以外全滅。マヒアとフィアも半数以上。レイの部隊も三分の一に減り、村に残っていた非戦闘員も集団魔法天罰によりほぼ全滅していた。

生き残った三十人の獣人達は仲間との最後の別れを惜しんだ。

もちろんザレウス絶命後に大地は弔い合戦とばかりに伝令のみ生かし、後は全て全滅させてあた。

しかしどれだけ敵を討ったとしても、七十人近い人数が亡くなった悲しみは癒えないだろう。

また三十人という少人数となった事であらゆる面で人手が足りなくなってしまった。今後は密林での生活は難しいだろう。

火葬が終わった後、一番被害が少なかった会議場をプログラミングで改装し、全員が休める大きさの平屋のログハウスにする大地。

最初はそれぞれの家を再度作ろうとしたのだが、ルルやフィアから全員の顔が見える場所で休みたいと要望があった。

家族同然の仲間を多く失ったのだ、みんなと一緒に居たいと思うのも無理はない。

大きな戦いの後で、疲れたであろうルル達は既に他の獣人達と休んでいた。

大地はログハウスを作成後、旧住宅地を見ながら今後の事を思案していた。

「大地さんや。」

後ろから大地に声がかかる。振り向くとレイと、マヒアに肩を貸されているガランがいた。

大地はガランにニヤッとした表情を向けると、ガランは顔を赤くしながら顔を背ける。

「この度は本当にありがとうございますじゃ! 大地さんが居なければ今私達はこの地に立っていなかったじゃろう。」

「レイさん顔をあげてくれ。まぁ正直色々考えなきゃならないことがあるけど、その話は明日にでもしようと思うから、とりあえずは身体を休めて欲しい。」

頭を下げる三人に大地がそう告げると、三人とも頷いた後ログハウスに帰っていった。

大地は再び今後の事について思案しながら。自分のステータス画面を覗く。



名前 石田大地
種族 ―――
年齢 21歳
能力値
腕力S 体力S 敏捷性S 魔力S
保持スキル
「プログラマー」「セキュリティ」「グループウェア」
「コピー&ペースト」「デリート」     


『これ俺最強になったんじゃね?』

そんな事を考えながら、新しく保持したスキルの説明を確認する。


スキル名 セキュリティ
設定した範囲外からの干渉を防ぎ、干渉情報を解析するスキル
運動体への範囲指定も可能。設定後一週間は効果が続くが、その後は効果の更新が必要。
設定出来る箇所や範囲の総量は魔力に則する。


スキル名 グループウェア
スキル保持者が指定した人物間での連絡、情報共有を行うスキル。
共有できる情報の範囲に関してはスキル保持者が設定する。


スキル名 コピー&ペースト
物体のコピーを行い、任意の場所に出現させるスキル。
人物をコピーする場合はオリジナルの半分の能力値となる。
出現させる事の出来る場所はスキル保持者の記憶に則する。
スキル保持者はコピー体との感覚共有を行える。


スキル名 デリート
スキル保持者が作成、構築した物を除去するスキル。


確かにガランが横たわる姿を見て、絶対的な守りの結界があればとか、テレパシーが使えればもっと早く気付けたのにとか、俺が二人いれば一人を残せたのにとか、色々考えたが、そのままスキルになるとは・・・それにしてもとんでもないスキル達だ。

新たに備わったスキルを見ながら、改めて自分自身がチートであると知った大地は、苦笑いをしながらグループウェアを試してみることにした。

何故なら、セキュリティはザレウスの熱線を防いだ時に、コピー&ペーストは分身を作成した時に既に試していたからだ。

デリートはアウトプットで再現した物を破壊するものだというのは使わなくてもわかっていた。

えっ?その程度ならデリートは必要ないんじゃないかって?いやいやそんなことはない。

以前、プログラミングで存在価値に反する事を書き込めなかった事から判明した事なのだが、これまでアウトプットで作成したものは物理的に破壊することは出来ても、スキルで消すことは出来なかった。

しかし今後はスキルで作成したものはスキルで消せる様になる為、多少危険な物でも気にせず試作出来るようになる。実は俺自身が何気に一番欲していたスキルだ。

大地は唯一具体的な仕組みが分かっていないグループウェアを発動させると、とある人物を指定し、通信を開始した。











そのとある人物は帝国方面を爆走しながら向かう軍用車の中にいた。

とある人物は悪路を走り続ける軍用車の後部座席で車酔いを起こし、吐瀉物を社内にまき散らしながら愚痴をこぼしていた。

「うっ・・おぇ~~~気持ち悪い・・・・なんで俺がこんな目に・・」

とある人物とは大地が唯一生かした伝令兵の事であり、大地からは創造神は獣人側に着くと帝国側に伝えるように言われていた。

伝令兵が愚痴と一緒に吐瀉物を吐いていると頭の中に声が響いてきた。

『聞いているか帝国兵。』

「はい!!聞いています!!」

伝令兵は自身に絶望を与えた人物の声が頭に響くと、驚きのあまり思わず上擦った声をあげる。

『安心しろ。お前の近くにはいない。俺の力でお前の頭に直接話しかけているんだ。』

「あっはい・・・」

『追加で帝国の王に伝えてもらう事が出来た。一度しか言わないから良く聞け。創造神は逃げも隠れもしない。帝国兵一万の仇を取りたければ、村まで来い。わかったな?』

「承知致しました!!!!」

『安心しろ。やることをやればお前にかけた死の魔法も解ける。』

そう聞こえた直後、頭の中の声が消えた。伝令兵は死の恐怖に怯えながら、車に揺られ帝国へと向かっていった。

「よしこれで前段階の準備は終了っと。実際そんな魔法はないんだが、伝令兵が馬鹿で助かったな。じゃあ寝るか。」

大地はグループウェアを解除すると、フッと不気味な笑いを浮かべながら、ログハウスへと帰っていった。




翌日、大地達は今後どうするかについての話し合いを行う為に、ログハウスの一画に設けた会議室にいた。

「さて。みんな集まったところで今後について話をしたいと思う。まずみんなの中に意見がある人はいるか?」

会議室に集まったのはレイ、マヒア、ガラン、ゼーレ、フィア、ルルの六人。

大地から意見を求められた彼らは顔をしかめながら黙り込む。

帝国兵を追い返しはしたが、村の人口は三分の一に減ってしまい、目の前で家族同然だった者達を亡くした直後の彼らの中に、すぐさま現実を直視し冷静に今後の事を思案出来ていた者はいなかった。

一人を除いて。

「一つ。案というのには、いささか賭けの要素が強いかもしれんがいいかの?」

レイがゆっくり手をあげた。大地に話すように促されると自身の考えを話し出す。

「昔、私達がまだ密林に住んでいなかった時の話になるのじゃが、その時、私にも交流のある人間が何人かいてな。その一人がトーム連合共和国領主のヘクトルというやつでの。ヘクトルはトームの中でも力を持った領主じゃったが、息子のサイラス含めその家族は獣人達にも分け隔てなく接してくれとった。しかしその行いが他の領主は気に食わなかったのじゃろう。評議会で獣人を使ってトームを支配するつもりだと、実の覚えのない罪を擦り付けられてしまい、牢獄に入れらてしまっての。サイラスもその罪でトームとユーリス皇国の境にある辺境の地に飛ばされてしまった。もしそのサイラスがあの時と変わらない考えを持っておれば、私達を受け入れてくれるかもしれん。」

レイは神妙な顔つきで話を終えると、大地の方へ目線を移す。どうするかは大地に委ねようというのだろう。

大地はレイの話を聞き、笑みを見せると自信ありげに人里へ行った時に聞いた話を始める。

「レイさん。そのサイラスって人かは知らないが、トームに困っている獣人を招き入れ、その土地に住まわせている変人がいるそうだぞ。しかも場所はユーリス皇国との境だそうだ。」

「それはまことか!」

レイはさっきまでの神妙な顔から、期待に胸を膨らませたような顔に変わる。

「あぁ本当だよ。実際に行ってみないことにはわからないが、噂が立つぐらいだし、レイさんとの話の整合性もとれる。行ってみる価値はあるんじゃないか?」

さっきまで黙り込んでいたマヒア達の顔には希望の色が浮かび始める。

大地はレイの話を聞き、今後の行動について決めるとみんなに説明し始める。

「とりあえずだ。まずこの村を元の形に戻す。」

「え?何で何で?」

「ちょっと待て。最後まで話を聞け!!」

大地は村を戻す発言に食い気味に疑問を呈し始めたフィアを制しながら話を進める。

「帝国は一万の兵をたった百人に壊滅させられたんだぞ? はいそうですかで終わる訳がない。それに返した伝令兵には創造神は獣人側につく、悔しかったらこの村まで来いって伝えろって言ってるしな。」
「なんでそんな挑発しちゃうんですか! 私達は大地さんみたいに強くないんですよ!」

ゼーレとルルが顔を赤くしながら怒るが、大地は無視を決め込み話を続ける。

「だから間違いなく来るだろう。帝国は創造神が本当かどうかはわからなくても一万の兵を壊滅させられた事実がある。そんな危険な存在を放っておくことは出来ない。挑発しなかったとしても帝国はどっちみちこの村に兵を差し向けていただろうよ。」

「そんなぁ~~~!!だったら早く逃げましょうよ!!」

「だから話を最後まで聞け!!お前ら三人は本当にどうしようもないな。」

大地に叱られ肩をガックリと落とす二人。隣でフィアが「あたしも!?」って顔をしながら大地の顔を覗く。

大地はうんざりした様子でため息を着くと話を続ける。

「仮に逃げたとしても。人間至上主義を掲げる帝国がそんな簡単に諦めるとは考えられない。ありとあらゆる方法で俺達の行き先を探すはずだ。獣人が三十人以上でトームを移動してみろ。直ぐに噂が帝国の耳に入って追手を差し向けられるのがオチだ。」

「確かに大地の言う通りだな。後ろを追われながらってのは得策じゃねぇ。」

ガランが大地に賛同する。隣のマヒアも深く頷いている。

大地はこういう時に話の理解が早い二人がいてくれるのは助かるなと感じながら、対策案について説明を始める。

「だったら。帝国にちゃんと敵をとってもらえばいい。」

「え! 私達殺されるの! 嫌だ嫌だ!」

フィアが駄々っ子の様に声を張り上げ、ゼーレとルルも泣きそう顔で大地に文句を言っている。

大地はやれやれといった表情をした後、額に青筋を浮かべながら三人に怖い笑みを浮かべる。

三人は背筋に冷たい感覚を覚えると、瞬時に黙りこんだ。

「いっとくが、別に殺されろといってる訳じゃない。要は帝国側が勝手に敵を討ったと阿保みたいに勘違いさえしてくれたらいいんだ。そうすりゃ他国に逃げた俺達の情報なんて集めようとしない。」

「大地のしたい事はわかった。具体的にはどうするんだ?」

「方法は簡単だ。俺達のコピーを作ればいい。」

大地はニヤッと笑った後、隣に自身のコピーを作り出す。

「きゃあ! 大地さんが二人いるよ! 何で何で!」

「大地は本当に何でもありだな。」

フィアは興味津々にもう一人の大地をまじまじと見つめる。ガランも大地の人間外れの技に苦笑い見せた。

「まぁ大体わかっただろ? これでみんなのコピーを作って、直した村に配置する。そこに帝国が攻めて来て、全滅させる。馬鹿な帝国兵は馬鹿みたいに喜ぶ。って訳。」

「なんか大地さん帝国の事に対して、口悪くなってません?」

「・・・・まぁとにかく! 帝国が来る前に準備して、俺達は早々に密林を抜けるぞ。」

大地の一声でレイ達も動き出す。そんな中、ルルとゼーレとフィアは帝国への口の悪さの原因に気付き三人で顔を合わせ、笑みを浮かべていた。







一方、大地達の作戦など知らない帝国は伝令兵の報告を聞くと貴族を集め王宮にて議論を交わしていた。

「すぐに兵を出し獣人共を皆殺しにすべきだ!」

「しかし相手は見た事もない魔法を使っていたのだぞ! もう少し慎重になるべきだ! 」

「そんな弱腰でどうする! 他の国から見たら帝国は笑い者だぞ!」

「ザレウス大佐が負けたのだぞ! 宮廷魔導士第九位の実力者がだぞ!?」

帝国の貴族達は攻勢派と慎重派の間で激しい言い合いになる。

「静かにしろ。」

一人の男が声を発したその一瞬で王宮は静寂に包まれる。

静寂に包まれた空間にその男がまた声を発する。

「兵五万を密林に向かわせろ。」

「五万ですか!?しかし――――」

「黙れ。獣人如きに遅れをとるなどあってはならん。帝国の威光にかけ、塵一つ残すな。」

慎重派の貴族が進言しようとするが、その男からの威圧により何も言えなくなる。

王宮の一番奥の玉座に座る男の名はゼフィル=ベルン=ガドール。帝国の皇帝であった。

貴族達は素早く行動を開始し、兵五万の進軍準備を始める。

その様子を窺いながら、ゼフィルは側近である宮廷魔法師第一位のミキという人物に声をかける。

「ミキよ。指揮官は誰を推す?」

「宮廷魔法師第六位でありザレウスの兄であるシリウスはどうでしょうか?」

「確かにシリウスならザレウスと同じ轍は踏まんだろうな。シリウスを呼べ。」

「承知致しました。」

ミキは王宮を出るとすぐにシリウスを連れてゼフィルの元へ戻ってくる。

「シリウスただいま参りました。」

「うむ。ザレウスの事は聞き及んでいるな? お前に弟の汚名を晴らすチャンスをやる。」

「はっ! 必ずや獣人と創造神を語る愚物を滅ぼして参ります。」

シリウス勇ましく返事をすると王宮から足早に出ていく。

ミキと貴族達も準備の為ゼフィルに一礼して次々と出ていった。

王宮内にゼフィル一人になった時、ゼフィルの目は虚ろになっていき、その内機能を停止したように動かなくなる。

ゼフィルが動かなくなると同時に玉座の後ろで黒い影がうごめき始めていた。
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