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創造神(破壊神)誕生編

第1話 転移

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「なんじゃこりゃぁぁぁあああ!!」

密林の中、現状を理解出来ず叫んでいる者の名前は石田大地。

現状を把握出来ない大地は自分がこんな状況になる前の平和な日常を思い浮かべていた。

約二日前

カチャカチャ、カチャカチャ。

「今日も帰れそうにはないな。」

お得意様の無茶な要望により昨日の10時より一睡もせずに急ピッチにて作業を行うも終わらず、日を既に跨いでしまっている。

「こんな膨大な量のシステムプログラミングが1日、2日で終わる訳がないだろ・・・」

石田大地は悪態をつきながらエナジー飲料を一気に飲み干しひたすらにパソコンを打ち続ける。風呂に入れていない為、髪が油でテカり、目の下には真っ黒なクマができ、頭には眠気覚ましの冷えピタを貼っている。

石田大地が勤めている会社は月の休みは休日出勤にてなく、サービス残業ウェルカムの素敵なIT企業だ。

大学を卒業後プログラマーとして入社。運が良いのか悪いのか、とある事情により学生の頃よりプログラミング作業をしていた大地は、入社後直ぐに頭角を現し、あっという間に社のエースになった。

そのせいでクライアントからの急な変更依頼や、面倒臭い要望等は全てこちらに回ってきてしまうようになってしまった。

現在入社8年目の29才。今年で30を迎える予定の大地。

顔は整っているが、彼女はいない。仕事が忙しすぎるのもあるのだが、同じ職場には女性も少ないながらもおり、社内で人気のある大地は何度か告白を受けていた。

しかし大地はそれを悩む様子もなくお断りしていた。社内で一番人気のあった事務の女の子からの告白を断った時は後に社内中から大きなため息が漏れたほどだ。

もちろん大地が彼女作らないのには理由があるのだが。







「ふぅ~~~やっと終わった」

プログラミングを始めて48時間が経とうとした時、ようやく一つの目処がついた。

これなら後は他の人に引き継いでも期日である今日の夕方には完成するだろう。

続々と出勤してくる同僚に「お疲れ様」と声をかけながら帰宅の準備に取りかかる。

とにかく早くシャワーを浴び、少しベッドで横になりたい。そして残りの時間を使いはやくあれがしたい!!

そのあれとは自分にとっての最高のケモミミAIの作成であった。幼少期に見た漫画の中のケモミミに魅せられて以来、大地はケモミミの出る漫画やアニメはもちろん、ケモミミキャラのグッズを収集していた。

しかしある日、既存のケモミミでは満足できなくなった大地はついに自分でケモミミAIを作り始めようとした。

最初は上手くいかず、諦めかけた事も何度かあったがその度に試行錯誤を重ね、申請すれば特許をとれるであろうシステムの構築を行い、日々ケモミミAI進化させていった。

その結果、プログラマーとしての腕は一流になり、各誌で取り上げられるほどのその界隈での有名人になっていたのだが、大地からしたらケモミミAI作成の過程で生まれた副次的な物であり、むしろ煩わしいものであった。

そんな有名人は急いでリュックに私物を入れて準備を終え、引き継ぎを済ませた後、駆け足気味に会社を出る。

現在住んでいるのは会社から徒歩10分の場所にある2階建てのアパートの201号室だ。こういう時は家か近くて心底良かったと思う。

そもそもインドア派で駅等の人ごみが好きではないし、何より2日も風呂に入らない状態で公共交通機関を使うのは精神的にくるものがある。

そんな事を考え、ふらつきながらも無事アパート前まで着いた。

やっと風呂と睡眠にありつけるとスキップ混じりで階段を昇っている時、眩暈の様な感覚に襲われ、階段を踏み外す。

「いてっ!!!!」

階段の最後の段差を踏み外し、足を挫いた大地は大きく身体を沿ってしまう。体勢を整えようとするが、2日も寝てない身体に態勢を整える力は無く、段々と体重が後ろに傾いていく。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って」

なんとか踏ん張ろうとするも身体はそのまま後方へ落ちていき落ちてしまう大地。頭から勢いよく落ちてしまった大地は意識を失った。






「うーん・・・」

顔に日差しがあたり、大地は顔をしかめ、頭をさすりながら起き上がった。

意識を失っていたようだが、出血もなく大事には至らなかったようだ。

しかし長いこと気絶していたせいか、日の光が眩しくなかなか目をあける事が出来ない。

「次からはスキップで階段は昇らないようにしないとな・・・」

反省をつぶやきながら立ち上がろうとした時、大地は妙な違和感を覚えた。

転げ落ちたアパートの階段下は駐車場になっており一面アスファルトになっていたはず。

けれど立ち上がろうと、手を置いた地面の感触はどう考えてもアスファルトではなく、粘土質の土だった。大地は眩しいのを我慢して目を開いた。

「え?」

思わず気の抜けた様な声が出る大地。しかしそんな声が出るのも仕方ないであろう。

大地の目の前に広がるのは例えるならアマゾンの密林の様な光景で眼前には大きな運河が流れていたのだから。

「なんじゃこりゃぁぁぁあああ!!」

少しの間、密林には大地の叫び声が木霊していた。

密林にいる事を知って1時間経とうとする頃。どれだけ記憶を遡っても理由がわからない大地は、ひとまず自身の持ち物の確認を始める。

持ち物の通勤用のリュックの中身はエナジー飲料が3本、10秒でチャージが出来る物が2つ、携帯電話にメモ用のノートが1冊に夜食で食べる予定だったおにぎりが2つだ。

大地はお腹が減っていた事を思い出し、おにぎりを2つ手に持とうとした時おにぎりからゲームのアイテム説明欄の様な物が出てきた。


名称 おにぎり(梅) 異世界の食べ物
名称 おにぎり(鮭) 異世界の食べ物


大地は急に出てきた説明欄に驚きながらも、内容を確認する。

「異世界?もしかしてここ日本じゃないって事か・・・」

急に今いる場所が異世界だと宣告され、一瞬フリーズする大地。

しかし腹の鳴る音でお腹が空いていることを思い出し、鮭のおにぎりを食べ始める。鮭のおにぎりを食べ終わり、梅のおにぎりに手を伸ばそうとするが。

「これそういえば、明太子と間違えて買っちゃったんだよな・・・よりにもよって嫌いな梅と間違うなんて。」

恨めしそうな顔をしながら、梅のおにぎりを見つめる大地。

おにぎりのメニュー画面を見ながら明太子なら良いのにと思った瞬間、梅のおにぎりの説明欄の一部に砂嵐の様なものがかかり、それが解けると説明欄の一部に変化が出ていた。

 
名称 おにぎり(明太子) 異世界の食べ物


「うわ!!本当に中身が明太子になってるな!!」

説明欄通り、中には明太子が入っていたおにぎり。

大地は戸惑いながらもおにぎりを食べ終わるとエナジー飲料を一気に飲み干す。

お腹が満たされたところで大地は辺りを眺め始める。

辺りは一面密林の囲まれており、目の前には大きな川が流れていた。大地は飲み水として飲めるか確認する為、川を覗き見る。川の水は見た目がかなり澄んでおり、飲んだとしても問題なさそうに見えた。

「まぁ生水だし腹を下すことはあるかもな。」

大地はボソッとつぶやきながら、水面に映る自分の姿を見る。そこには目のクマもないさわやかな二十代前半のイケメンの姿があった。

「えっ!!!俺若返ってる!!!」

大学生時代の自分の姿に驚く大地。マジマジと自分の姿を見ていると視界の左側にステータス画面が現れた。

 名前 石田大地
 種族 人間
 年齢 21歳  
 能力値
 腕力 D 体力E 敏捷性D 魔力D
 保持スキル
 「プログラマー」            


「プログラマー?」

大地は目を細めながら、保持スキルを見る。するとメニュー画面がスキルの説明欄へと変化する。


「アウトプット」「インプット」「プログラミング」の三種類からなる混合スキル


「アウトプット、インプット、プログラミング・・・・」

目線を三種類のスキルに向けるとそれぞれの説明欄が現れる。

 
スキル名 アウトプット
スキル保持者の記憶から情報を取り出し再現させるスキル
再現させるには一定の情報量が必要
生物の再現は不可                  
 
スキル名 インプット
対象の物体から情報を閲覧、読み込みを行いスキル保持者に定着させるスキル
対象が人であった場合は対象の記憶、知識の閲覧、読み込みも可能     

スキル名 プログラミング
対象となる物体の情報の消去、追加、書き換えを行い上書きするスキル
上書き出来る情報はスキル保持者の記憶、知識の則する
物体の存在価値に反する情報の消去、追加、書き換えは行えない   


目の前に出たスキルの説明を確認すると大地は試しにスキルを使用してみる。

大地は頭の中に水のペットボトルを思い浮かべる。すると大地の目の前に水のペットボトルが現れた。

「これがアウトプットってやつね。」

大地は目の前に出てきたペットボトルを掴むと納得した様子を見せる。次に密林に生える木々を視界に捕らえる。

名称 レイングローブ 
生命力が強く、痩せた土地によく見られる植物。
他の植物からも栄養を吸収してしまう特性を持つ。

「はいはい。これがインプットね。てことはおにぎりの情報が見えたのはこれのスキルか。」

インプットの能力を確認した後、水を飲みながら辺りを見渡す大地。

川の向こう側に洞穴の様なものが見える。大地は射程範囲を試しす為、その洞穴を見ながらインプットを行う。


ディシット鋼で出来た洞穴。内部はブルの巣窟となっている

名称 ディシット鋼 
鋼より硬度が高くその硬度に関わらず軽い。
鉱石熱耐性も同様に高い為加工が難しい。
ディシット密林にのみに存在する。    


「ほうほう・・・視界に入れば出来るのか。情報を見る限りここはディシント密林って場所なのか。」

三十メートル先の洞穴のインプットに成功した大地は飲み切ったペットボトルを見る。


名称 ペットボトル 
異世界で出来た水分を保管するもの。状態 空 


すると大地はプログラミングを開始する。『状態 空』の部分を『状態 水』に変更すると目の前のペットボトルが水で満たされた状態に変化した。

「さすが異世界。この様子なら食べ物、飲み物は困らないか。さてとりあえず動くか。」

三種類のスキルを確認すると大地は川沿いに行動することを決め、歩きはじめる。










「はぁ~歩けど歩けど何も出てこない。」

多分数時間は歩いただろう。どれだけ進んでも変わらない景色の悪態をつきながら歩き続ける大地。

さすがに疲れた大地は近くの木に腰を落とし空を見上げる。

オレンジ色に染まり段々と暗くなっていく様子を見つめながら、野宿を覚悟し、視線を戻すと川の向こう側で人影が見えた。人影は何かから逃げるように川沿いを走っていた。

大地は初めて見つけた人間を見失わないように目線で追いながら川沿いを走る。

すると人影が急に止まった為目を凝らして様子を窺うと川の向こう側の密林から犬のような姿をした獣が三匹出てきた。


名称 ヘルガー 狼型の魔獣。
集団での狩りを得意とし尾の瞳から炎を生成する。


大地はヘルガ―の情報を確認すると、目の前の人影が襲われているのだと知り、即座に救出の為の木製の橋を川へと出現させる。

人影は真後ろに出来た橋に一瞬驚いた様子を見せるが、躊躇することなく橋へと走りだす。

ヘルガ―は警戒しすぐにその人影を追う様子は見せなかったが、人影が橋の中央辺りまでたどり着いたところで人影を追いかけ始める。

大地は人影が半分を通りすぎたのを確認し、橋の真ん中にディシント鋼で出来た全長三メートル程度の有刺鉄線付きの柵を作りだす。

ヘルガ―達は目の前に出来た柵へ、尻尾から生成した炎の玉をぶつけていくが、ディシント鋼で出来た柵はびくともしない。

ヘルガ―の一匹がそのまま加速し柵にぶつかるが有刺鉄線により全身に傷を負ってしまう。

少しの間柵を見つめながら唸り声をあげていたが、柵を突破するのは不可能だとわかったヘルガ―達は名残惜しそうに密林の中へ去っていった。

ヘルガ―が去っていったのを遠目で確認して、安堵の表情をみせる大地。

「ふぅ~逃げてくれて助かった。念の為作ってみたけど使えるかわからなかったからな。」

手元のハンドガンを見ながらつぶやくと、目の前から走ってくる人影の方を向く。



「・・・・・・・・・・・え?」


思わず声が漏れ出す大地。


目の前から走ってきていたのは、なんと猫耳、猫尻尾の女の子だった。
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