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船 2

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「いやぁっ!」
 突然のことに思わずあげた悲鳴が、男爵の加虐心を煽った。
 縛られたまま、大事な部分を隠そうと腰をくねらせたのも、彼の欲情を刺激する。
「もっと嫌がれ。ここでやめて欲しいなら取引は中止。もちろん荷は返さん。私はどちらでも構わんがね」
 チャップマン男爵のいやらしい笑みで、自分がなぜここへ来ているのか思い出したカペラは、ぎゅっと目を閉じ、唇を強く噛んだ。
「少しは利口になったようだな」
 男爵は大人しくなった彼女の両腿を開き、股間に顔を埋める。
 後ろ手に縛られたままのカペラは、床に横たえられ、上体を反らすことになる。男爵が何をしているのか見えない。
 生暖かい息がかかり、ぬめった舌が露わになった茂みの奥を探った。
 カペラは、声を漏らさないよう唇をさらに強く噛む。
 男爵は指で茂みの奥から溢れた蜜をすくい取ると、それを彼女の目の前に突き出した。
「オーウェンに色々と教え込まれたのか、身体はもうすでに準備万端だな」
 指に絡んだ蜜を男爵はカペラに見せつけるように舌で舐めとる。
 あの舌に、先ほど舐められたのだと思うと、気持ちが悪い。
 カペラの気持ちなど全く無視をして、男爵の指が茂みの奥の穴に突き立てられる。
「――んっ」
 背が弓なりに反り、胸を突き出す格好になった。
 指を入れたまま、男爵が今度は突き出た胸の突起に吸い付く。
 同時に彼の太く短い指に容赦無く膣の中を掻き回され、肌が粟立った。エリックに同じことをされたなら、受ける感覚は全くの別物なのに。
 ぞくりと身を震わせたとき彼が嗤ったような気がして、カペラはどんな反応も返さないように感覚を鈍らせ、胡乱な瞳で宙を見上げた。
 そうして別のことでも考えていれば、いつの間にか全て終わっているはずだ。

 侯爵は初夜以来カペラには手を出そうともしないし、この先エリックと結ばれるのも絶望的だ。
 もともとグレン侯爵の申し出がなかったら、この男に一生抱かれ続けるはずだったのだし、それを考えればこの一度くらい、サーシスのために我慢すればいいだけのこと。
 ギラギラとした目つきのチャップマン男爵が自分のブリーチの腰紐に手をかける。
 男爵は手早く脱ぎ捨て、すでに勃起した性器をカペラの目の前に突き出した。
 覚悟を決めていたカペラだったが、さすがに赤黒く屹立する男根からは一旦目をそらしてしまう。
 あれを、これから自分は受け入れるのだと考えると恐ろしくもあった。
 けれど、どうせいつかは失わねばならぬものだ。それが、サーシスの役に立つなら無意味に捨てるよりは価値がある。
 ただ、早く終わってくれればいい、ただ、それだけを願って、カペラは体を固くし、自分にも言い聞かせるように、口を開いた。
「やるなら、やれば?」
 開き直った彼女に、少し面白くなさそうな顔をした男爵は、少し考えた後、張り詰めた肉棒をカペラの口元に押し付ける。
「舐めろ」
「や――!」
 欲望の象徴のそれを突き出され、カペラは反射的に顔をそらす。
 その反応に気を良くした彼は、肉棒で彼女の頬をピタピタと叩いた。
「咥えろと、言っているんだ」
 男爵がカペラの髪を掴み上げ、顔を固定させて彼女の唇に肉棒の先端を押し付ける。
「んんっ!」
 そこまでは想定していなかったから、唇を固く結んでカペラは抵抗した。
 ここでおとなしく咥えたら、自分が彼を受け入れるような気がした。
 だが彼女のその反応に気を良くした男爵は、張り詰めた男根を彼女の口に押し当てたまま鼻を摘み上げる。
「さあ、口を開けろ」
 息が、できない。
 胸の奥からと頭の天辺から、吐き出せない空気が溜まっていく。
 自分の顔が紅潮していくのがわかる。
 でも、今、新鮮な空気を求めると、待ち構えているそれが口の中に容赦無く入ってくるだろう。
(だけど……もう……)
 ダメだと思って口を開きかけた、その時――
「男爵様っ!」
 先ほどの海賊の手下が無遠慮に扉を開けた。
 突然の出来事に、チャップマン男爵の両手の力が緩む。
 カペラはその隙をついて新鮮な空気を思う存分吸い込んだ。
「二人きりにしろと言っておいておいたはずだぞ」
 男爵は苛立たしげに手下を叱りとばす。
「すみません。不審な男が乗り込んできまして」
「不審者ではない。取引に来たときちんと説明したはずだ」
 説明をし始めた男は後ろ手に縛られていて、手下に部屋の中に蹴り込まれた。
 床に倒れた姿にカペラは驚きを隠せない。
 エリックはいつもの通り冷静だったが、カペラの顔色が変わったのを男爵は見逃さなかった。
「お前、たしか、サーシス伯爵の執事の――」
「今はグレン侯爵の元で働いております」
  チャップマン男爵はカペラとエリックを交互に見る。
「侯爵にやり手の使用人が付いたというのは、お前か」
「光栄なお言葉、ありがとうございます」
「だが、あいにく今は取り込み中だ。話はあとで聞こう。そこで黙って事が終わるまで待っていろ」
 エリックに背を向け男爵は、いきり立ったままの肉棒に手を添えてカペラに向かう。
「果たしてそれが最善、でしょうか?」
 冷静なままのエリックの声に男爵が振り返った。
「なんだと?」
「仕事の上で優先すべきは、欲ではなく、他にあるのではないかと」
「縛られている分際で貴様に何ができる? ――気が散るから、口も塞いでおけ」
 男爵の命で手下が汚そうな布で彼の口に猿轡をはめる。
「いくらやり手でも、その状態ではなにもできまい。ご主人様の婚約者が犯されるところをおとなしく見ているがいい」
 床に転がったままのエリックの無様な姿に侮蔑の笑みを投げつけてから、男爵はテーブルの上に刺さっていたナイフを手に取り、カペラの前に戻った。
「いや、やめて――」
「いいですね、その反応。ゾクゾクします」
 ナイフがランプの光を反射させ、カペラに迫る男爵の顔の上に気味の悪い陰影をはっきりと描き出す。
「前回は、自分の妻になる人だからと気を遣って薬を飲んでいただきましたが、私は嫌がる女を無理やり犯すのも好きでしてね」
 カペラの悲鳴が服を切り開く音をかき消した。
「貧乏でも貴族は貴族。平民の服は貴女には似合いませんよ」
 シュミーズの前部分が縦に切り裂かれ、布がはらりとカペラの両側に垂れる。
 余裕を取り戻した男爵は、いつもの慇懃無礼な態度に戻ってそう言うと、興奮で赤らんだ顔を近づけた。
「では、続きを始めましょうか」
 ほとんど全裸となったカペラに男爵が唇を寄せる。顔を背けたカペラの頬にべっとりと唇が押し付けられた。
 同時に腸詰肉のような指が、彼女の肌の上を滑り、膨らみを下から押し上げて先端を掴み上げる。
「いやっ」
 身をよじると、切られた服が彼女の動きに合わせて艶めかしく揺れる。服はもう何の用も足していない。強いてその用途を挙げるとするなら、男爵の気持ちを盛り上げるためだろう。
 事実、彼の表情は嫌がる女を無理やり犯す喜びに満ちている。
 さっきまでは何をされても我慢するつもりだったカペラだが、エリックの目の前となると話は別だ。
 どうか、見ないで、と願いを込めて窺った彼の瞳はじっと男爵を睨みつけていた。
「その使用人にお前の善がるところを一部始終見せて、オーウェンへ報告してもらおう」
 まるでそれがグレン侯爵への復讐であるとでも言わんとする邪悪な表情で、再び男爵がカペラに覆い被さった
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