【R18】貧乏令嬢は金色の夢を見る (改:金の波 子ヤギの夢)

るりあん

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初夜 2

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「ひぁ――っ」
 思わず漏れ出た、その場にそぐわない悲鳴に侯爵がくっと嗤い、その息がさらに彼女を乱れさせる。
 脇と、腹部と――
 普段は人の目に触れられることのないその部分を、いくつもの視線の前に晒し、そればかりか、秘するべき営みまで注視されている。
 実際にはそうではないと分かっていても、見られているのだという羞恥心が更に彼女の感度を上げた。
 両腕を片手で押さえつけられ、無防備になった腋窩にぬめりとした舌が這う。あッという声とともに腰が跳ね、ただ触れられただけなのに、体の中心から四肢に向けて心地よい痺れが迸った。
 覚悟していたこととはいえ、急にカペラは怖くなる。
 初めてを捧げる覚悟はできていた。けれど、好きでもない男の手から受けた愛撫で快楽に包まれ、それに身を委ねるところまで許してしまうのは――
 カペラはきゅっと唇を噛む。
 快楽の波に溺れてしまわないように。
 しかし、そんなことどうでもいいと嘲笑うように、あるいは彼女の決意を覆そうとするかのように侯爵の指と舌が縦横無尽に彼女の体を這いまわった。
 すでに夜着は胸の上まで捲り上げられ大きくはない膨らみが無防備に晒されている。
 彼女はさらにぎゅっと握りしめた拳を結んだ口元にあて、声が漏れないように息を詰めた。
 だが侯爵は慣れた手つきでカペラの反応の良いところを探りあてると、今度は焦らすようにそのまわりをじっとりと舐め始める。
 敏感な部分を避けているからこそじわじわと、体の隅々に染み渡るように責め立てられ、呼吸を上手く逃すことができなくなった。

「ん、ふぅ……」
 とうとう鼻から甘い呻きが零れた。
 それは、カペラ自身の耳にもいやらしく響き、頭の芯に小さな痺れを残す。

 ――やだ。
 感じたくないのに。

 沸き起こった小さな痺れに意識を持っていかれそうになったとき、身体が彼女の意思とは無関係に動いた。
 胸の頂で固くなっている部分を彼の舌の方へと。
 それに応えるように侯爵の舌がピンク色の突起を弾く。
 待ちわびていた強い快感が体の中を走り抜け、今度は唇から喘ぎとなって漏れた。
「――初めてなのに、淫らだな」
 彼女の無言の請求に応えるように舌で舐める合間、グレン侯爵は視線だけをあげてにやりと嗤った。その妖艶な笑みに、今度は彼女の下腹部がきゅっと反応する。
 頬が、熱い。

 ――そんなんじゃない。

 そう否定したくとも囁かれた言葉に体がさらに火照ったのは事実だ。
 グレン侯爵の余裕のある冷やかな笑みが、余計に彼女を煽り立てる。
 撃ち取ることなど簡単なのに逃げ惑う小さな獲物を弄ぶかのように、カペラの反応を彼は楽しんでいた。
 一方カペラは仄暗い空間の中で艶やかに嗤う彼の手で、自分だけ快楽を与えられ、追いつめられていくのはいやだった。
 とはいえ、彼女には抵抗する手段も余裕もなく、せいぜいできるのは彼の思い通りにならないようにすることだけ。その上、感じたくない、感じないようにしよう、と思えば思うほど、反対に体の感度が上がっていくのもまた事実で。
 それさえも見透かしているかのように、グレン侯爵が不敵な笑みで、柔らかい膨らみの上で固くなった蕾を口に含んだ。反対の乳首を指先が押し込んだり揉みあげたりすると同時に、温かい口の中でぬめった感触がその部分を――彼女を甚振るように動き回る。
 その二つの異なる刺激にカペラの意識は思考を放棄しそうになった。
 カペラは再び息を止めてその刺激に耐えるのだが、ねっとりと吸い上げられ、舌先で転がされた時には、背中が反射的に仰け反り、さすがに結んだ口の端から我慢できなくて声が漏れた。
 腰が勝手にくねり、膝が交互にすり合わせるように動く。
 自分の体が自分で制御できなくて、その先をねだるように動くのが恥ずかしい。
「もっと、喘げ」
 それまで胸を弄っていた侯爵の片手が彼女の膝を割って、腿の内側を撫でた。
 上下に摩るその動きが彼女の心と身体を翻弄し、まるで魔法にかけるかのようにゆっくりと彼女の体を開いていく。
 このままそこに触れられたら、どんな魔法がかかるのか。
 不安と期待が快感の波に交じってカペラを襲う。
 しかし、彼女が心の準備を整えているというのに、侯爵の手は予想に反し、あと少しというところで引き下がることを何度も繰り返していた。
 触れるか触れないかというギリギリのところで何度も焦らされて、期待が不安を上回り、カペラはとうとう自分から腰を動かした。
 溢れ出ていた液体が、秘裂に触れたグレン侯爵の指を濡らした。
「そろそろ、欲しくてたまらなくなってきたか?」
 あまりにも愉快そうに言うので、カペラは思わず顔を背ける。
 彼女の反応など気にもかけず侯爵は、濡れた指で二、三度割れ目を撫でつけると、何の予告もなくその指をカペラに突き立てた。
「んんっ――」
 十分解され、濡らされたそこは、難なく彼の指を受け入れる。
 動いていない――ただ入っているだけの指先から、水紋が広がるように波が何度も体の中を襲い掛かってくる。
「気持ちよさそうだが――まだ、先だけ、だぞ」
 入口あたりを探り、広げるように、彼の指が動いた。
 その動きがまた、胸の奥や額の上部に、カペラの経験したことのない熱くて甘い痺れを広げていく。溢れ出た蜜の肌を伝い落ちる感触さえ、彼女の劣情を煽っていくようだ。
 侯爵は体をずらし、彼女の脚を肩に担いだ。
 しっとりと濡れた茂みの奥まで、彼からは見えていることだろう。
 そう考えるだけで彼女の胸の奥がかっと熱くなる。
 彼は戸惑うことなく茂みに口を寄せ、音を立てて蜜を吸い、舐めとった。
「やっ――」
 これまで以上の痺れが一気に彼女の背筋を伝い上がり、頭の芯を襲う。
 このまま続けられれば、自分が自分でなくなりそうで、彼女は彼の口から逃れようと腰を動かした。
 しかし、しっかりと腿に腕が巻きつけられていて、敵わない。
 反対にその動きが侯爵をさらに煽情した。
 突き出された舌が、難なく茂みの奥の突起を探り当てる。
 んっ――!
「身体の力を、抜け。……声も、我慢しなくていい」
 たぶん、侯爵は嗤っている。
 けれどもそれを確認する余裕も、追い込まれるのはいやだと感じる気持ちも、彼女の中にはもう残っていなかった。
 彼女の拳をゆっくりと口元からはがした侯爵は、その指でカペラの唇を割り、口腔を責め始める。
 堰き止めるものを失い、唇と指の間にできた隙間から艶めかしい声が漏れた。
 それを助長するように、茂みの奥を責める侯爵の舌と指の動きが激しくなって、カペラの頭の中をぐいぐい掻き混ぜていく。
 膨張している小さな突起を、転がされ、舌先で弾かれ、吸い上げられる一方で、膣内に入った指先が膣壁を容赦なくこすりあげ――、
 その激しさによって生み出された大きな痺れが彼女を包み込んだ。
「は、……あっ、だ、――いやぁっ!」
 陰核を歯と舌で軽く食まれたとき、体の筋肉が一瞬硬直して、頭の中でパンパンに膨れ上がっていた痺れが大きく弾けたような気がした。
 それから弾けて舞い上がった痺れがゆっくりと彼女の体全体に降り下りてくる。
 侯爵は、肩で息をしているカペラを、まだ責め続けていた。
 肌の隅まで、感度が最高になっているのか、まだ彼女の体から離れない侯爵の舌や指先が生み出す刺激に、体がびくびく反応している。
 足りなくなった酸素を補うため、口を閉じることもできず、また、まだ引ききっていない痺れの中では、息の合間に漏れる甘い声も制御できず、カペラは侯爵の動きに合わせて喘ぎ続けた。
「や……も、……おね、がい」
 ようやく頭の中の痺れが一段落し、意識を制御できるようになっても、口にできたのはこれだけだった。
「これくらいで、音を上げるとは――」
 くくっと喉の奥で笑いながら、先ほどまでの囁きとは明らかに違う、見得を切るような口調でグレン侯爵が声を上げる。
 紗幕の向こうで起こった小さなざわめきに、そういえばこの一部始終を聞かれていたのだと、カペラは思い出す。
 指しか入れられていないのに、この乱れよう。それを彼らはどのように聞いていたのか。
 考えるとまだ痺れの残る頭の中が再び沸き返りそうで、彼女は先ほどのできごとを思い返すのを止めた。
 扉が開き、衣擦れの音に続いてぱたんと閉じられる音。
 ゆっくりと緊張が解けていく中、カペラはそれを痺れてぼんやりと霞んだ意識の向こう側で聞いていた。
「いったようだな」
 扉の方向へ視線を向けて、グレン侯爵が薄く嗤う。
 その言葉が、カペラの状態を示しているのか、それとも介添人たちのことを言っているのか、彼女には判断がつかなかった。
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